○○法ガールになりたい。

○○法ガールといえるほど法学をマスターしたいなと思い作成したブログ。司法試験受験生。最近勉強なんてやめて結婚に逃げたい。

民法総合1 3.契約当事者の確定

第1 (1)について
1 Xは、預金債権甲の払戻を請求することができるか。
(1) (a)について
 本件においては、Aが「X代理店A」名義で、Yとの間で預金契約を締結し、口座の通帳と届出印を管理していたことから、そもそも、本件預金契約の契約当事者、即ち預金者がX,Aのいずれであるかが問題となる。
ア 判例は、定期預金契約の場合は、①銀行は預金を受け入れる段階では、通常、預金者が誰であるかについて利害関係を持たないこと、②払戻段階においては銀行は預金者がだれであるかについて利害関係を有するものの、銀行の保護については、民法478条でなしうることを根拠に、このような銀行よりも実際にその金銭を出捐した者の保護を優先させるべきと考え、預金者実際に預け入れた金銭を支出した出捐者としている。
イ 他方、その後の判例では、普通預金等(消費寄託であり、いつでも預金の返還を請求することが可能なもの(666条3項))について、実質的な資金の帰属者と預金の名義人が異なる場合にはa口座開設者がだれであったか、bその際の名義はだれであったか、ⅽ預金契約締結の代理権を与えていた事情は記録上伺えたか、d口座を管理していた者がだれであったか、さらには、f金銭の実質的な所有者が誰であったかも考慮したうえで、預金者が誰であるかを判断したものがある。
ウ 以上を踏まえ、判例は、定期預金契約の場合には上記①②の理由から出捐者を預金者とし、他方、普通預金流動性のある預金の契約の場合には、預金債権が全体として誰に帰属しているのかを、a~d等といった事実をもとに判断すべきとしているのだという解釈もあり得る。
 もっとも、金融機関が犯罪に利用されることが多くなってきた昨今においては、金融機関にとって、取引名義人が実在すること・預金行為者と名義人の同一性は重大な関心事項であるから、定期預金契約の場合には出捐者を預金者とすべきとする判例法理は、昨今においては妥当しなくなっているというべきである。
そこで、イの判例は、アの判例に変更を加えるものであると考えるべきである。すなわち、契約当事者が誰であったかについては、定期預金契約であるか普通預金契約であるか否かを問わず、イにあげたa~fなどの事情を考慮して、金融機関から見て金銭の寄託者であると評価される者が、預金者であると解すべきである。
※ ウについては、次のようにすることも可能→「普通預金は定期預金と異なり、入金・払出しが自由になされ、その内容は流動性を有することから、個々の預金ごとに預金債権が成立しているわけではなく、入金・記帳がなされた時点で、個々の預入金は特定性を失い、それを組み込んだ新たな1つの残高債権が成立するものと考えられる。それゆえ、定期預金の場合と同様に、客観説に従い、出捐者を預金者と考えることは難しい。そこで、判例は、流動性のある預金については、口座の利用権限を有している者を預金者と解すべきとしたものと考えられる。そして、口座の利用権限は、金融機関と預金契約者との間の継続的な契約関係としての基本契約によって認められるものであるから、預金者(当事者)は、イの判例のa~fを考慮して、契約解釈によってその当事者と解される者と解すべきである。」
エ 本件についてみると、まず、金融機関である Y との間で普通預金契約を締結して口座を開設したのは A である。また、口座の名義は「X 代理店 A」であり、「X代理店」は肩書きと評価することができるため、「X代理店A」は、預金者として A を表示しているものと考えられる。さらに、本件口座の通帳・届出印は A が管理しており、口座の入金・出金について A がこれをなしていたことから、預金口座αはAが実質的に管理していたといえる。したがって、本件基本契約の当事者は、Aであるといえ、預金者は A となる。よって、Xは、預金債権甲の預金者はXであると主張することはできない。
(2)  (b)について
 このように、預金者がAであるとされる場合、XがYに預金債権甲の払戻を請求するためには、どのような法律構成をとることが考えられるか。
ア まず、預金の原資を信託財産としたうえで、原資を出したXを委託者かつ受益者、名義人Aを受託者とする信託が設定されていると見ることによって、Xが委託者かつ受益者として、Yに対し預金の払い戻しを請求することが考えられる。
(ア) 信託が成立するためには、まず、信託事務処理のため預金契約が締結されていること及び預金原資が信託財産であることが必要である。即ち、信託財産の委託者から受託者への財産権の移転が信託の成立要件として必要とされる。もしくは、改正信託法で、「自己信託(信3条3項、受託者=委託者)」が認められたことから、「他益信託(受益者=保険会社)である自己信託」として信託の成立が認められている必要がある。
(イ) そして、損害保険代理店委託契約(信託行為)により、保険料及び専用保管口座が、損保代理店の他の財産から分離・独立して分別管理がされている場合には、信託行為と解釈できる。
(ウ) さらに、合意解除により信託が終了し、Xに信託財産が帰属したものといえる場合には、上記請求は認められることになる。
(エ) もっとも、本件においては、そもそも信託財産の委託者から受託者への財産権の移転は観念できず、また、自己信託の成立も認められない。
(オ) よって、この構成をとることはできない。
イ 次に、AからXに、本件預金債権の譲渡があったと考えることはできないか。
 本問でAは、1998年5月6日に預金口座αの通帳・届出印をXに交付している。当該口座は損害保険代理店としての委任事務の処理のための口座であり、その口座の通帳・届出印を交付することは、損害保険代理店契約の合意解除にあたると考えることができる。そして、合意解除がなされたことにより預金債権をXに返還しなければならないため(受取物返還債務)、通帳・届出印の交付を債権譲渡と評価することができる。
ウ それゆえ、本件おいては、本件預金債権の譲渡があったとみて、Xは、Yにたいして、払い戻し請求をすることができるのが原則である。

※ また、以下の通り、債権者代位構成も可能。「A は X と損害保険代理店委託契約を締結していたところ、X は A が払戻債権を行使しない場合に、X の A に対する保険金引渡請求権(646 条 1 項)を保全するため、債権者代位権を行使することが考えられる。本件についてみると、A は二度目の不渡手形を出すことが確実であったことから、無資力であったといえる。そして、A は自ら預金債権を行使しておらず、保険金引渡請求権の弁済期も到来している。したがって、X は債権者代位権を行使して Y に対して預金債権甲の払戻を請求することができる。」
エ もっとも、本件において、Yとしては、①債務者対抗要件欠缺の抗弁、②466条の5に基づく抗弁、③相殺の抗弁を提出することが考えられる。 ※「書面でする消費貸借契約」。期限の利益喪失約款による期限の到来→無制限説で相殺可能→ここが信託との違い(信託176条「信託の存続の擬制」+信託22条「相殺禁止」)∴相殺できない。信託の場合、A個人に対する債権との相殺は認められない(譲渡禁止を認める理由がない)
(ア) ①は、債権Aから債務者Yへの通知又は債務者からの承諾があるまで、Xを債権者と認めない旨の権利主張である(467条1項)。
 本問においては、上記債権譲渡について、通知又は承諾がなされた事実はない。そのため、Xが再抗弁として通知又は承諾があったと主張立証することは困難であろう。
 よって、この抗弁は認められる。
(イ) では、②の主張はどうか。
 本件について見ると、預金契約については、譲渡禁止特約がつけられているのが通常であることに鑑みれば、仮にXが譲渡制限特約の存在を知らなかったとしても、それについて重過失があったということはできよう。
 よって、この抗弁は認められる。
(ウ) また、以下の通り、本件預金債権は、乙債権との相殺により既に消滅しているから、Yとしては、このような「債務を消滅させる事由」を、Xに対抗することが考えられる。
 相殺が認められるには、相殺適状(506条2項)であること、すなわち、a同一当事者間に互いに対立する債権が存在し、b両債権が同種の目的であり、c両債権の弁済期が到来し、若しくは自働債権の弁済期が到来しかつ受働債権の期限の利益を放棄していることのすべてを満たす必要である。相殺適状が現存していれば両債権を対当額で相殺する旨の意思表示(506条1項前段)により、相殺適状時にさかのぼって効力を生ずることになる(506条2項)。
 本件においては、金銭債権という同種の互いに対立債権の相殺の可否が問題となっているのであり、abの要件を満たす。では、ⅽの要件はどうか。乙債権の根拠となる賃金債権においては預金契約においては、期限の利益喪失特約が付されており、Aに取引停止処分がなされることも、期限の利益喪失事由に含まれているところ、本件においてAにはこれがなされているから、期限の利益を喪失し、乙債権(自働債権)については、弁済期の到来が認められる。そして、Yは、甲債権の期限の利益を自ら放棄したものと考えられる。よって、ⅽの要件も満たす。
 以上より、本件両債権は相殺適状にある。そのうえで、Yは5月6日に相殺の意思表示をしているのであるから、相殺適状時(Aに取引停止処分がなされた時点)にさかのぼって、甲債権は消滅していたことになる。よって、この抗弁も認められるから、Xの請求は認められない。
(3) 他方、仮に本件預金契約の預金者がXであるとされた場合にYは、Xに対する貸金返還請求権との相殺により甲は消滅したとして、甲の払戻を拒絶できるか*1
ア 自働債権乙と受働債権甲の間に債権の対立はなく、相殺はできない、というのが原則である。
イ しかし、普通預金契約において、銀行は預金者の返還請求により払戻義務を負うところ、弁済に代わる相殺も実質的に払戻しと同視することができる。
 また、Aが口座を開設したこと、口座の名義がA名義であること、口座管理をAが行っていたことからすると、Aが債権の準占有者にあたるということは可能である。
 そして、この場合、Yが善意無過失であったかは貸付時を基準に判断すべきところ、Yは本件においてその時点で善意無過失であったと解される。
ウ そこで、478条を(類推)適用することによりAに対する相殺をXに対抗できるものと解する。
エ よって、Yは、甲の払戻請求を拒絶することができる。
2 (2)について
(1)  (a)について
 (2)において、Gは、甲を差押え、甲を取り立てようとしている(民執157条)。
 これが認められるためには、AYで預金契約が締結され差押え時に預金として存在していること、Gによって預金債権甲の差押えがなされ、執行裁判所による差押命令の発令が発令されたこと、差押命令がY・Aに送達されたこと、それから1週間が経過したことが必要である。
(2) (b)について
ア では、Yは、相殺により預金債権甲の支払を拒絶できるか。
(ア) (ア)について
 相殺が認められるためには、上記の通り、相殺適状(506条2項)であることが必要であるところ、少なくとも自働債権の弁済期が到来していなければ、相殺は認められない。そうすると、乙債権の弁済期が6月1日だった場合には、その前提を欠くことになるから、この場合、Yは、相殺により甲の支払いを拒絶することはできない。
 他方、乙債権の弁済期が5月1日だった場合には、甲・乙はQuestions(1)の場合と同様、相殺適状にあるといえる。もっとも、本件においては受働債権である甲債権がGに差し押さえられているため、YがAとの間での相殺を第三者であるXに対抗できるためにはさらに要件が加わる。受働債権が差押えを受けた場合には、差押え前に取得した自働債権については、差押えまでに相殺の合理的期待が生じており、その期待は両債権の弁済期の先後に関係なく類型的に保護されるべきであって、差押という第三債務者に関係のない事象によってその地位が奪われるべきではないから、相殺を差押権者に対抗できる(511条1項後段)。本件においては、差押えがなされた5月6日以前に存在していた債権により、相殺しようとしていることから、この要件を満たす。
 よって、乙債権の弁済期が5月1日であった場合に限り、Yは、相殺により、請求を拒絶することができる。
(イ) (イ)について
 では、Yの約款に本件相殺条項が定められていた場合、上記と同様の帰結になるか。
このような特約が有効であるかがまず問題となるも、契約自由の原則からは公序良俗や強行法規に反しない限り相殺への期待を確実にするための合意は有効であるところ、当事者の相殺への期待は保護すべきであって、相殺条項を無効としてしまうと、相殺の担保的機能の強化を狙った合意の意味がなくなってしまうことからすると、このような特約は公序良俗に反さず有効であるといえる
 もっとも、このような特約の存在を第三者に対抗することができるかは別問題である。本件のような特約は上記のように第三者の差押えを空振りに終わらせうるものであるにもかかわらず、私的な合意の内容を公示する制度がなく、第三者は不測の不利益を被ることになる。そうであれば、このような特約を第三者に対抗することはできないというのが原則というべきである。しかし、銀行取引における相殺条項については、このような特約がなされていることは、もはや公知の事実であるといえるし、その対立債権者間の密接な牽連関係を考慮すれば、この相殺への期待は保護されるべきである。そうであれば、かかる銀行については、差押債権者に対してこのような特約の存在を対抗できるというべきである。よって、相殺条項が定められていた場合も、(ア)と同様の帰結となる。

  •  譲渡制限条項→預貯金債権は466条の5で、旧法の理解―債権譲渡は重過失の譲受人に対して「絶対無効」-と同じなので、469条の出てくる余地はないのではないかと思われる。
  •  466条3項と469条との関係は難しい

 

 

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