○○法ガールになりたい。

○○法ガールといえるほど法学をマスターしたいなと思い作成したブログ。司法試験受験生。最近勉強なんてやめて結婚に逃げたい。

百選起案 刑訴法(第10版) 1~4

 

1 強制処分と任意処分の限界

  • X、酒酔い運転、物損事故。
  • 呼気検査拒否。
  • 近隣の警察署に任意同行(午前4時30分)
  • 取り調べには応じたものの、呼気検査については拒否を続ける。
  • 母が来れば呼気検査に応じる旨の供述。
  • マッチを取りに行こうとして左手首をつかまれる。
  • 警察官の手を振り払い、襟首をつかんで肩章を引きちぎって、顔面を殴打。
  • 公務執行妨害の現行犯人として逮捕。

 

1 本件において、Xに公務執行妨害は成立するか。

2 仮に警察官がXの左手首をつかんだ行為が、「強制の処分」(197条1項但書)たる逮捕に当たるのであれば、警察官の行為は令状主義に反し違法であり、公務が違法との評価を受ける以上、公務執行妨害が成立しない余地があるため、問題となる。

(1) 「強制の処分」とは、①被処分者の意思を制圧して行われる、②被処分者の重要な権利・利益の侵害を伴う処分のことを言う。

(2) 本問における警察官の行為は、酒酔い運転の罪の疑いが濃厚な被告人をその同意を得て警察署に連行し、呼気検査に応じるよう説得し続けるうちに、被告人の母が警察署に来れば呼気検査に応じる旨を述べたので、これを待っているところを、被告人が急に退室しようとしたためさらに説得のためにとられたものであり、この行為によって、Xの意思が制圧されていたとまでは言えない(①)。また、確かに、警察官の行為は有形力の行使に当たるが、あくまで呼気検査に応じるよう被告人に説得するうえで出たものにすぎないのであるし、その程度もさほど強いものではない。よって、Xの重要な権利・利益が侵害されていたともいえない(②)。

(3) よって、本件における警察官の行為は、強制処分たる逮捕に該当せず、令状主義に反し違法ということにはならない。

3 もっとも、任意の処分にとどまる場合であっても、捜査比例の原則(197条1項本文)の観点からは、①処分の必要性・緊急性と、②これによって個人が受ける不利益等を較量したうえで、③処分が具体的状況の下で相当と認められる限度にとどまっている必要がある。

 本問における警察官の行為は、酒酔い運転の罪の疑いが濃厚であり呼気検査の説得継続中に被告人が急に退室しようとしたこと等を考慮すると、捜査の必要性、および行為に及ばざるを得なかったという緊急性が認められる(①)。他方、先述の通り、これによって制約される被告人の利益は、あくまで説得行為の過程でなされた程度も低いものである(②)。以上のことを考慮すると、本件警察官の行為は具体的状況の下で相当といえる範囲にとどまっているといえる(③)。

 よって、本件警察官の行為は捜査比例の原則の観点からも適法である。

4 そうである以上、このような適法な行為を行っていた警察官に対し、Xが殴り掛かったことは、公務執行妨害罪を構成する。

 

2 職務質問のための停止・留め置き

  • 覚せい剤使用の疑い。
  • 車両発見、停止。
  • 質問に応じようとせず、不審な行動を見せたのでエンジンキーを取り上げる。
  • 同様の前科情報が入る。
  • 4時間くらい職務質問を継続。任意同行を求めるが、自ら運転することに固執してほかの方法による任意同行をかたくなに拒否。
  • エンジンキーを一度返したものの、車に乗り込もうとしたのを両脇から抱えて阻止。
  • この間、被告人は不審な行動をとり続ける。
  • 職質開始から6時間後にようやく令状に基づき被告人の身体捜索が開始。採尿等。

 

1 本問における警察官の、①被告人の車両を発見し停止させた行為、②職務質問に際して車の窓から腕を差し入れエンジンキーを引き抜いた行為、③被告人が車に乗り込もうとしたのを両脇から抱えて阻止した行為、④被告人を6時間も現場に留め置いた行為はそれぞれ適法か。

2(1) ①について

 警察官職務執行法は、2条1項において、不審事由があることを要件に職務質問の権限を与えており、その際、職務質問の相手方を停止させることができるとしているところ、これは対象が車に乗っている場合も同様である。それゆえ、本件のように、被告人に覚せい剤使用の疑いがあり、被告人車両と思しき車を警察官が発見した場合には、「強制」に渡らない限り、任意の処分として、被告人車両を停止させることが、許容されうる。

 そこで、まず、①の行為が、「強制の処分」に該当していないかが問題となる。もっとも、「強制の処分」とは、被処分者の意思を制圧して行われる、被処分者の重要な権利・利益の侵害を伴う処分のことを言うところ、①の行為は、被処分者である被告人の意思を制圧してなされたものであるとまでは言えないし、①の行為による権利・利益の制約の程度も軽微であるといえるため、①の行為は、「強制の処分」には該当しない。

 もっとも、この場合であっても、比例原則(警職法1条2項、刑訴法197条1項)のもと、処分の必要性・緊急性と、これによる被侵害利益の性質・態様等を較量したうえで、処分が具体的状況の下で相当と認められる限度にとどまっていない場合には違法と評価されるところ、本問においては先述の通り被告人には覚せい剤使用の疑いがあり捜査の緊急の必要性があり、また、警察官は被告人車両に対して停止を指示したのみで被告人の不利益も小さかったといえるため、警察官の当該行為は具体的状況の下で相当といえる。それゆえ、この観点からも、①の行為は適法である。

(2) ②について

 警職法2条1項は、犯罪の予防・検挙という目的(警職法1条1項)の達成のために、職務質問の遂行上の便宜として、警察官に対象者を「停止させ」る権限を与えている。そうである以上、同条項はその他、警察官が職務質問を行うために必要な付随行為を行うことを容認する趣旨であるといえ、職務質問に際しては、「強制」にわたらない、ある程度の有形力を行使することが、許容されるものと解される。

 そして、②の行為は、職務質問に際して、車の窓の外から届く範囲のエンジンキーを引き抜いたというものにすぎず、被処分者の意思を制圧するものとも、被処分者の重要な権利・利益を侵害する者とも言えず、「強制」にはわたっていないというべきである。

 また、①と同様、その場合であっても、比例原則のもと、処分の必要性・緊急性と、これによる被侵害利益の性質・態様等を較量したうえで、具体的状況の下で相当と認められる限度にとどまっている必要があるところ、本件においては、被告人の覚せい剤使用の嫌疑は濃厚であり、また、道路交通法67条4項の観点からも職務質問の緊急の必要性が認められる一方、警察官は車を発進させないためにエンジンキーを引き抜いて取り上げたにすぎず、しかも警察官は被告人の態度次第ではエンジンキーを返還しようとしていたのだから、被告人の受ける不利益の程度は大きくないといえる。それゆえ、②の行為も、具体的状況の下で相当と認められる限度にとどまっており、適法であるといえる。

 (3) ③について

 上記の通り、職務質問を行うために必要な付随行為を行うことは、「強制」にわたらない限り、任意の処分として、容認されうるものとされているところ、③の行為も、拘束時間や拘束の強度さに照らせば、被告人の重要な権利・利益を侵害するものとまではいえず、「強制」にはわたらないものと解すべきである。

 そして、車による逃亡の恐れ等があり③の行為を行う緊急の必要があったといえること、他方で拘束による被告人の権利・利益の制約の程度は上記の通り軽微であったと評価できることを考慮すると、③の行為は、職務質問を行う上で必要な付随的行為として相当であるといえ、任意の処分としても適法と評価されるべきである。

(4) ④について

 では、本件で警察官によりなされた、6時間にもわたる説得行為を切り出して考えてみるとどうか。198条1項は、被疑者に任意の出頭を求めることができる旨を規定しており、そのための説得行為も、許容されうるとしているものと解される。もっとも、任意同行は文字通り被疑者の任意の協力を求めるものであり(198条1項ただし書き)、これが強制されるようなことはあってはならず、そのような場合は、説得行為は違法と評価されるものと考える。

イ ―(強制処分に該当し違法であるとする考え方)→ そして本問のように、長時間の身体拘束という重大な権利侵害が、複数の警察官らによって半ば強制的に、しかも対象者の意思に反して行われているような場合は、本件警察官による行為はもはや、強制処分に該当すると言わざるを得ない。よって、警察官の本件説得行為は違法である。

 ―(強制処分には該当しないとする考え方)→ 本問においては確かに長時間の身体拘束という重大な権利の制約が複数の警察官によりある程度強い態様で行われているが、被告人が任意同行自体を拒否しているわけではなかったことを考慮すると、特別の根拠規定がなければ許容することが相当とまでは言い切れない。そのため、警察官による本件行為は強制処分には該当しない。

 しかし、捜索差押許可状の執行が開始されるまでの間警察官が被告人による運転を阻止し、約6時間以上も被告人を本件現場に留め置いた措置は明らかに行き過ぎであり、本件説得行為は、具体的状況の下で相当なものとはいえず、比例原則の観点から違法であると言わざるを得ない。(※判例はこっち!) 

ウ よって、④については違法である。

3 では、違法な手段によって得られた証拠は、証拠能力を有するか。これについては明文の規定はないが、司法の廉潔性、将来違法捜査の抑制、適正手続の要請(憲法31条)と真実発見(1条)との調和の見地からは、令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、かつ、それを証拠として採用することが将来における違法捜査を抑止する見地から相当でない場合に証拠能力が否定されると解する。

 本件における6時間半にも及ぶ留め置きは、説得を試みるうちに適法な職務質問が長時間に及んでしまっただけであると評価でき、違反の程度は、それほど重大ではないとも言い得る。他方、覚せい剤事犯は被害者なき犯罪であり、しかも、罪証隠滅が容易な為検挙が難しい犯罪であることに鑑みると、警察官が差し押さえた覚せい剤は証拠として非常に重大であるといえる。また、本件においては、のちに令状も発布されていることにも鑑みると、本件においては、令状主義の精神を没却するような重大な違法があるとまでは言えない。また、これを採用することが将来における違法捜査を抑止する見地から相当でないとまではいえないとすべきである。

 よって、本件覚せい剤の証拠能力は肯定されるべきである。

 

百選3 職務質問のための措置

1 本問における警察官の、①ホテルの内ドアが閉められるのを防止し、内玄関へ立ち入った行為、②所持品検査のために被告人を全裸のままソファに30分間押さえつけた行為は適法か。

2(1) ①について

 警察官職務執行法は、2条1項において、不審事由があることを要件に職務質問の権限を与え、さらに職務質問の遂行上の便宜として、警察官に対象者を「停止させ」る権限を与えているところ、警察官が職務質問を行うために、「強制」にわたらない任意の処分である限り、必要な行為を行うことを容認していると解される。

 そこで、職務質問を行うためになされた①の立入行為が、まず、「強制の処分」(197条1項但書)たる捜索にわたるものでないかを検討する必要がある。ここで、「強制の処分」とは、被処分者の明示又は黙示の意思に反して、その重要な権利・利益を侵害する処分のことを言うところ、警察官が立ち入ったホテルの客室はそこを宿泊客として使用している者のプライバシーを保護するべき空間であること、また、宿泊客は通常警察官等にこの空間に立ち入ってほしくないと考えるのが通常であることを考慮すると、原則、強制処分というべきである。しかし、本件においては、料金不払いや不審事由の存在により、被告人は通常の宿泊客とは見られない状況になっていたこと、また、管理権を有するホテル側の要請があったことを考慮すると、被告人のプライバシーの要保護性は減退しているといえる。よって、①の行為は、被処分者の重要な権利・利益を侵害する処分であるとまでは言えず、強制処分には該当しない。

 もっとも、その場合であっても、比例原則のもと(警職法1条2項)、職務質問を行うために必要な①の行為は、処分の必要性・緊急性とこれによって個人が受ける不利益等を較量したうえで、処分が具体的状況下で相当と認められる限度にとどまっている必要がある。本件においては、被告人の覚せい剤使用の嫌疑は濃厚であり、また、罪証隠滅を防止するためにも、職務質問の緊急の必要性があったといえる一方、被告人の被侵害利益の要保護性は先述の通り減退しており、しかも内ドアを閉めようとした被告人を制止し内玄関に立ち入ったにすぎないのであるから、警察官による本件行為は具体的状況の下で相当と認められる限度にとどまっていたものということができる。それゆえ、①の行為は比例原則の観点からも、違法ではない。

 よって、①の行為は適法である。

(2) ②について

 被告人を全裸のままソファに30分間押さえつけたうえでなした②の本件所持品検査は適法か。

 所持品検査は職務質問と密接に関連し職務質問の効果を上げるうえで必要性、有効性の認められる行為であるから警職法2条1項の職務質問に付随する行為として、「強制の処分」にわたらない限り、任意の処分として行うことが許容されうるものと解する。もっとも、本件においては、そのために、抵抗する被告人を30分もソファに押さえ続けている。これは、その意思を制圧して行った、身体という重要な権利・利益の侵害行為に該当するといえるため、②の本件所持品検査は、もはや、令状を得ないでなされた、「強制の処分」たる逮捕に該当する。よって、②の行為は令状主義に反し違法である。

 また、仮に、②の行為が「強制」にわたらないものであるとしても、被告人を、服を着せることすらしないまま、30分もソファに押さえ続けるのは明らかにやりすぎであり、相当とは言えないため、②の行為は結局、比例原則に反し違法というべきである。

3 では、違法な手段によって得られた証拠は、証拠能力を有するか。これについては明文の規定はないが、司法の廉潔性、将来違法捜査の抑制、適正手続の要請(憲法31条)と真実発見(1条)との調和の見地からは、令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、かつ、それを証拠として採用することが将来における違法捜査を抑止する見地から相当でない場合に証拠能力が否定されると解する。

 確かに、本件における警察官の行為は、身体拘束を伴う、違法性の強いものである。もっとも、②の行為は、現場における混乱に誘発された行為といえることに鑑みれば、違法の程度は多少薄れるものといえる。他方で、覚せい剤事犯は被害者なき犯罪であり、かつ罪証隠滅が容易な為検挙が難しく警察官が差し押さえた覚せい剤は証拠として非常に重大であること等の特殊事情を考慮すると、本件においては、令状主義の精神を没却するほど重大な違法があると評価すべきではなく、また、これによって得られた証拠を採用することが将来における違法捜査を抑止する見地から相当でないとまでも言えないと評価すべきである。

 よって、本件覚せい剤の証拠能力は肯定されるべきである。

 

百選4 所持品検査―米子銀行強盗事件―

1 本件における警察官による所持品検査は適法か。

2 所持品検査は職務質問と密接に関連し職務質問の効果を上げるうえで必要性、有効性の認められる行為であるから警職法2条1項の職務質問に付随する行為であるといえ、「強制の処分」にわたらない限り、任意処分として許容されうるものと解される。

(1) そして、「強制の処分」とは、被処分者の明示又は黙示の意思に反して、その重要な権利・利益を侵害する処分のことをさすものと解すべきである。

 本件所持品検査は、①バッグのチャックを開けるという行為、②ケースの鍵をドライバーでこじ開けてその中身を調べるという行為の二段階の行為に分かれるところ、①については、これ自体、被処分者の重要な権利・利益を侵害するものとまでは言えないため、「強制の処分」には該当しない。また、②についても、①の行為の後、緊急逮捕が可能であったと考えられ、よって、どのみち逮捕に伴う捜索差押により、アタッシュケースの中身が取り調べられていたであろうことに鑑みれば、被処分者の重要な権利・利益を侵害するものであるとまでは言えず、「強制の処分」には該当しないと考えるべきである。よって、本件所持品検査は適法と解すべきである。

(2) もっとも、所持品検査は、あくまで任意の処分である職務質問の不随行為として行われるにすぎない以上、所持人の承諾の上行われるのが原則であり、これがない場合は、比例原則(同法1条2項)の下、所持品検査の必要性と緊急性、これによって侵害される個人の法益との権衡を衡量し、具体的状況の下で相当と認められる範囲でのみ許容されると解すべきである。

 これを本件について見ると、まず、所持品検査のうち①については、被疑事件が銀行強盗という重大事件であり早急に犯人を検挙する必要があったこと、被告人らの嫌疑は濃厚であったこと、かつ、凶器を所持している疑いがあったのに警察官の職務質問に対し黙秘を続けたうえ再三にわたる所持品の開披要求を拒むなど不審な挙動を取り続けていたことを考慮すると、警察官には所持品検査の緊急の必要性があったといえる一方、所持品検査の態様は蛍光中の所持品であるバッグの施錠されていないチャックを回避し内部を一瞥したに過ぎないものであるから被告人の受けるプライバシーの利益の侵害はさほど大きいものとは言えないため、本件警察官による所持品検査は相当な範囲にとどまっているといえる。他方で、①の行為を終えた時点で、緊急逮捕が可能であったことに鑑みても、逮捕手続をとらないままアタッシュケースの鍵をこじ開けたことは、手段として相当なものとは言えない。

 よって、本件所持品検査は、任意処分として許容される範囲を逸脱した違法なものである。

3 では、このような違法な所持品検査によって得られた証拠の証拠能力は肯定されるか。これについては明文の規定はないが、司法の廉潔性、将来違法捜査の抑制、適正手続の要請(憲法31条)と真実発見(1条)との調和の見地からは、令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、かつ、それを証拠として採用することが将来における違法捜査を抑止する見地から相当でない場合に証拠能力が否定されると解する。

 これを本件について見ると、既述の通り、所持品検査のうち①の行為を終えた段階で本件においては緊急逮捕の要件を備えていたものと考えられること、しかも、その後極めて接着した時間内にその場で緊急逮捕手続が行われていることにもかんがみると、②の行為は、Yを逮捕する目的で緊急逮捕手続に先行して逮捕の現場で時間的に接着してされた捜索手続と同一視しうるものである。

 そうすると、本件所持品検査には、令状主義の精神を没却するような重大な違法はないというべきであるし、これを証拠として採用したとしても将来における違法捜査を抑止する見地から相当でないとまでは言えないというべきである。

 よって、本件所持品検査によって得られた証拠の証拠能力は肯定されると考えるべきである。