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百選起案 民法Ⅱ(第8版) 11~20

  

百選Ⅱ-11 金銭債権について債権者代位権を行使できる範囲

1 Xの、Y2、Y3~Y9に対する債権者代位訴訟は、認容されるか。

2 代位による請求が認められるためには、423条1項以下の要件を満たす必要がある。それゆえ、Xは以下の通り主張立証する必要がある。

(1) まず、Xは、A公団が有していたY1に対する債権を取得しているため、Y1に対して、「自己の債権」を有しているといえる。

(2) また、問題文の通り、「債務者」であるY1は、Y2、Y3~Y9に対して、債権を有しているため、「債務者に属する権利」があるといえる。

(3) さらに、Y1は、十分な資力を有していないうえ、Y2、Y3~Y9に対して債権を行使していないから、Xは「自己の債権」を「保全するために」債権者代位請求をする「必要がある」といえる。

(4) そして、Xの有する「債権」は、「金銭の支払い……を目的とするもの」である。

(5) よって、Xは、Y2、Y3~Y9がY1に対して負担する債務を、自ら(X)に支払うよう、Y2、Y3~Y9に求めることができる(423条の3)。

(6) もっとも、「被代位権利」であるY1がY2、Y3~Y9に対して有する権利は「可分である」。そして、XのY1に対する債権の額は、231万2364円80銭であることから、その限度で、Y2、Y3~Y9に対して、自ら(X)に直接支払うよう請求することができるにとどまる。

3 よって、債権者代位訴訟は、上記限りで認容される。そして、XがY2、Y3~Y9からこの限度での支払いを受けた場合には、Xは、Y1に対して有する債権を自働債権、Y1のXに対する不当利得返還請求権を受働債権として両債権を相殺(505条1項)することで、事実上の優先弁済を受けることができる。なお、この場合、Xは、Y2、Y3~Y9のいずれに対しても債権者代位訴訟を提起することができる。そして、いずれかに対する訴訟が認容された場合であっても、執行に至るまでは、Xの「自己の債権」は消滅しないため、いずれに対する訴訟も認容されてしまう可能性があるが、その場合は、執行段階における調整がなされれば足りると考える。

 

百選Ⅱ―12 金銭債権を保全する債権者代位権と債務者の無資力要件

(1) XらおよびAは、Y2およびY3に対し、A所有の本件土地を代金604万6000円で売り渡し、代金完済と引換えに本件土地の所有権移転登記手続をなすことを約した。しかし、その後、Aは、死亡し、XらおよびY1はAを共同相続した(後記相続分からすればAの子供はX1~X11とY1の計12名)。

(2) その後、共同相続人間で遺産分割につき紛争が生じたため、Y2・Y3の残代金債務は完済されず、したがってY2・Y3への所有権移転登記手続もなされないまま時が経ったが、 Y2およびY3は、XらおよびY1に対し、「Y2・Y3においてそれぞれ残代金を支払うから、本件土地所有権移転登記手続に必要な委任状、印鑑証明書、戸籍謄本を送付されたい。」旨を催告した。Xらはこれに応じ、残代金の支払いを受けるのと引換えに、Y2・Y3に対し本件土地所有権移転登記手続を履行するための書類を送付した。しかし、ひとりY1のみが、これに応じなかった。Y2およびY3は、Y1が催告に応じないため登記を経由することができないことを理由に、Xらに対し残代金の支払をしなかった。

(3)  Xらは、Y1に対して、どのような法的手段を行使できるか。

1 Xらとしては、登記手続に協力しないY1に対して、本件売買契約に基づく代金請求権を被保全債権として、Y2、Y3の有するY1に対する所有権移転登記手続請求権を代位行使することが考えられる。

2 前提として、423条によれば被保全債権は金銭債権に限定されていないから、特定の債権の内容実現のため、債権者代位権の転用を認めるべきである。そして、この場合は、責任財産保全ではなく特定の債権の内容実現を図る場合なので、債務者の無資力は要しないことになる。

 もっとも、本件においては、代金債権という金銭債権を被保全権利としていることから、この転用の場面には当たらず、無資力要件を満たす必要があるのではないかが問題となる。これについては、423条の趣旨が、責任財産保全にあることからすれば、責任財産保全という債権者代位請求の本来の目的のための代位行使を本来型とし、他方で、それ以外の目的のための代位行使を転用型と考えるべきである。そして、金銭債権はその性質上、一般財産の中に吸収されるものであるから、金銭債権を被保全債権とする代位の目的は、原則として、責任財産保全のためと評価すべきであるが、本件においては、Xらは、代位に当たって、究極的には代金債権という金銭債権を保全するためではあるが、直接的には同時履行の抗弁権を外し、請求権の行使を可能とすることを直接の目的としていると説明できることから、転用型というべきである。よって、本件において無資力要件を満たす必要はない。

3 以上を前提に、Xらの債権者代位請求が認められるかについて検討する。

(1) まず、Xらは、Y2、Y3に対して売買契約に基づく代金債権という、「自己の債権」を有しているといえる。

(2) また、「債務者」であるY2、3は、Y1に対して所有権移転登記抹消登記手続請求という債権を有しているため、「債務者に属する権利」があるといえる。

(3) さらに、上記の通り本件においては無資力要件は満たす必要がないところ、Y2、Y3がY1に対して債権を行使していないことをもって、Xらには「自己の債権」を「保全するために」債権者代位請求をする「必要がある」ということができる。

4 よって、Xらは、Y2、Y3がY1に対して有する所有権移転登記抹消登記手続き請求権を、代位行使することができる。そしてこの場合、請求が認容されれば、直接、Y2、3に対するY1の登記の意思表示が擬制されることになる。

 

百選Ⅱ-13 被害者による保険金請求権の代位行使

(1) Aの相続人であるX1・X2は、Y1に対して、自賠法3条に基づく請求権を有している。

(2) そして、Y1は、Y2に対する、自動車対人賠償責任保険契約に基づく債権500万円を有している。

(3) そのため、Aの相続人である両親X1・X2は、Y2保険会社に対して、XらがY1に対して有する損害賠償請求権に基づき、Y1がY2保険会社に対して有する保険金請求権を民法423条により代位行使すると主張した。

1 Xらの債権者代位請求は認められるか。

2 前提として、423条によれば被保全債権は金銭債権に限定されていないから、特定の債権の内容実現のため、債権者代位権の転用を認めるべきである。そして、この場合は、責任財産保全ではなく特定の債権の内容実現を図る場合なので、債務者の無資力は要しないことになる。もっとも、本件においては、代金債権という金銭債権を被保全権利としていることから、この転用の場面には当たらず、無資力要件を満たす必要があるのではないかが問題となる。

 これについては、423条の趣旨が、責任財産保全にあることからすれば、責任財産保全という債権者代位請求の本来の目的のための代位行使を本来型とし、他方で、それ以外の目的のための代位行使を転用型と考えるべきである。そこで、本件でXらが、Y1のY2に対する保険契約に基づく請求権を代位行使しようとしている目的が、責任財産保全のためではないといえる場合には、本件は、転用型というべきであって、無資力要件を満たす必要はないと考えるべきである。そして、金銭債権はその性質上、一般財産の中に吸収されるものであるから、金銭債権を被保全債権とする代位の目的は、原則として、責任財産保全のためと評価すべきであるため、本件は、本来型というべきである。

 よって、本件においては、無資力要件を満たす必要がある。

3 以上を前提に、Xらの債権者代位請求が認められるかについて検討する。

(1) まず、Xらは、Y1に対して自賠法3条に基づく「自己の債権」を有しているといえる。

(2) また、「債務者」であるY1は、Y2に対して保険契約に基づく債権を有しているため、「債務者に属する権利」があるといえる。

(3) もっとも、本件においては、上記の通り無資力要件を満たす必要があるところ、この要件を満たさないため、Xらには「自己の債権」を「保全するために」債権者代位請求をする「必要がある」ということができない。

4 よって、Xらは、Y1がY2に対して有する保険契約に基づく債権を、Y1に代わって行使することができない。

 

百選Ⅱ-14 詐害行為取消権の性質

1 Xは、受益者であるY2を被告として(424条の7第1項1号)、Y1、2間でなされた山林の売買契約の取消請求をするとともに、所有権移転登記抹消登記請求をすることが考えられる。

2(1) 責任財産保全という趣旨からは、詐害行為取消権を行使できる「債権者」(424条1項本文)とは、金銭債権を有する者をいうと解されるところ、Xは、Y1に対して売掛債権という金銭債権を有していたのであるから、ここでいう「債権者」に当たる。

(2) 次に、Y1、2間でなされた売買契約は、Y1が既に無資力状態であるにもかかわらずなされたものである(或いは、Y1、2間でなされた売買契約によりY1は債務超過に陥るに至っている)というのであるから、このようなY1の行為は、「債権者を害する」ものであると言える。そしてY1は、これを認識していたといえるから、「債務者が債権者を害することを知ってした」といえる。

(3) また、Xの上記債権は、Y1、2間の売買契約がなされる前にすでにXが有していたものであるから、「第2項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたもの」(424条3項)である。

(4) さらに、Y1は、売買契約当時、「債権者を害することを知らなかった」(424条1項但書 )ということはできない。

3 そのため、Xは、Y2を被告として本件売買契約の取消を主張し、併せて、所有権移転登記抹消登記請求をすることが可能である。

 

百選Ⅱ-15 特定物債権と詐害行為取消権

1 Xの本件請求は認められるか。

2 以下、本件取消請求及び抹消登記手続請求が認められるか否かを検討する。

(1) まず、詐害行為取消権は責任財産保全のための制度であるから、「債権者」(同員柱書)は、「第1頂に規定する行為の前の原因に基づいて生じた」(424条3項)、「強制執行により実現することのでき」る(同条4項)金銭債権を有する者に限られる。

 本件代物弁済がなされたのは昭和27年6月であるところ、Xは、これより前の昭和25年9月に、Aとの間で本件建物の代物弁済契約を締結している。そして、Xは、本件代物弁済がなされた時点で、かかる契約の履行不能に基づく損害賠償請求権(415条1項本文)という債権を取得するところ、かかる債権は、上記代物弁済契約という「前の原因に基づいて生じた」「強制執行により実現することのでき」る金銭債権である。

 とすれば、Xは、「債権者」にあたる。 ※「特定物債権を被保全債権とする詐害行為取消請求権は認められるか」という問題は、「前の原因に基づいて生じた」という要件の検討の中に吸収される。

(2) 次に、本件代物弁済は「債務者がした既存の債務についでの…債務の消減に関する行為」(424条の3第1項柱書)であり、「債務者の義務に属…しないもの」(同条2項柱書)にあたる。また、本件代物弁済がなされた当時、Aには他に資産がなかったというのであるから、「その行為が、債務者が支払不能になる前30日以内に行われたものである」(同項1号)といえる。さらに、Aは、Bと通謀しているから、「その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものである」(同項2号)と認められる。

(3) 最後に、「受益者から転得した者である」Yは、本件代物弁済について悪意であり、「その転得者が、転得の当時債務者がした行為が債権者を害することを知っていた」(421条の5第1号)とはいえない。

(4) したがって、その要件を充足する。

3 それゆえ、Xは、本件代物弁済の「取消し」を「請求」(424条の6第2項前段)することができるところ、本件代物弁済の目的である本件建物は不可分であるので、その全体につき取消しを請求することができるのが原則である(424条の8反対解釈)。また、Xは、「転得者が転得した財産の返還」として、Yに対して本件建物の所有権移転登記手続をするよう「請求することができる」(424条の6第2項前段)のが原則である。

 もっとも、本件代物弁済により、Bの抵当権の抹消登記がなされているところ、このような場合にまで現物返還を認めると、抵当権者が一般債権者の地位に落ちてしまい、抵当権者に酷であるし、本来共同担保を構成していない部分まで責任財産とすることになり、債権者及び債務者を不当に利する。そこで、目的物の価格から抵当権の被担保債権を控除した残額についての一部取消しが認められるにとどまると解すべきである。また、「財産の返還」を認めると、取消しの範囲以上の返還を認めることになってしまい妥当でないから、「その財産の返還をすることが困難である」(同項後段)と認められる。したがって、Xは目的物の価格から抵当権の被担保債権を控除した「価額の償還を請求することができる」(同項後段)にとどまる。そうすると、本件においては、「その返還の請求が金銭の支払…を求めるものであるとき」にあたるから、Xは、Yに対して、直接、「その支払…を…求めることができる」(124条の9第2項)ことになる。

4 よって、Xの請求は、本件建物の価格から抵当権の被担保償権を控除した残額についての一部取消しを求める限度、本件建物の価格から抵当権の被担保債権を控除した価額の支払請求の限度で認められる。そして、この場合、Xは、上記損害賠償請求権を自働債権、受領した金銭の返還請求権を受働債権とする相殺(505条1項本文)によって、事実上の優先弁済を受けることができる。

 

百選Ⅱ-16 特定物債権者の詐害行為取消しと自己に対する所有権移転登記請求

1 Xの本件請求は認められるか。

2 以下、本件取消請求及び抹消登記手続請求が認められるか否かを検討する。

(1) まず、詐害行為取消権は責任財産保全のための制度であるから、「債権者」(同員柱書)は、「第1頂に規定する行為の前の原因に基づいて生じた」(424条3項)、「強制執行により実現することのでき」る(同条4項)金銭債権を有する者に限られる。

 本件贈与がなされるより前に、Xは、Y1(の相続人)に対する、Y1が死亡したということを停止条件とする所有権移転登記請求権を有していたところ、Xは、本件贈与がなされた時点で、かかる契約の履行不能に基づく損害賠償請求権(415条1項本文)という債権を取得する。かかる債権は、本件贈与の「前の原因に基づいて生じた」「強制執行により実現することのでき」る金銭債権である。

 とすれば、Xは、「債権者」にあたる。

(2) 次に、Y1は、本件贈与によって無資力になっているところ、本件贈与というY1の行為は、「債権者を害する」ものであると言える。そしてY1は、これを認識していたといえるから、「債務者が債権者を害することを知ってした」といえる。

(3) さらに、受益者であるY2は、本件贈与当時、「債権者を害することを知らなかった」(424条1項但書 )ということはできない。

3 よって、Xは、Y2を被告として本件贈与を取消を主張することが可能である。もっとも、民法424条以下による「詐害行為取消権は、究極的には債務者の一般財産による価値的満足を受けるため、相殺権者の共同担保の保全を目的とするものであるから、このような制度の趣旨に照らし、特定物債権者は目的物自体を自己の債権の弁済に充てることはできない」と解すべきである。それゆえ、「特定物の引渡請求に基づいて直接自己に所有権移転登記を求めることは許されない」。Xは、債権者全員のために本件贈与の取消を主張したうえで抹消登記請求することができるのみである。

 

百選Ⅱ-17 債権譲渡通知と詐害行為取消権

1 Y1興業およびY2会社による、X商事に対する、本件譲渡通知につき詐害行為による取消しを求める本件反訴は認められるか。

2 そもそも、債務者が自己の第三者に対する債権を譲渡した場合において、債務者がこれについてした確定日付のある債権譲渡の通知は、詐害行為取消権行使の対象とならないと解するのが相当である。

 詐害行為取消権の対象となるのは、債務者の財産の減少を目的とする行為そのものであるところ、債権の譲渡行為とこれについての譲渡通知とはもとより別個の行為であって、後者は単にその時から初めて債権の移転を債務者その他の第三者に対抗し得る効果を生じさせるにすぎないものだからである。すなわち、譲渡通知の時に債権移転行為がされたこととなったり、債権移転の効果が生じたりするわけではないため、債権譲渡行為自体が詐害行為を構成しない場合には、これについてされた譲渡通知のみを切り離して詐害行為として取り扱い、これに対する詐害行為取消権の行使を認めることは相当とはいい難い。

3 よって、Y1,Y2による本件反訴は認められないものというべきである。

4 なお、本件の債権譲渡の実態は債権の譲渡担保であるから、譲渡担保の実行としての債権譲渡通知の取消しを争うことも考えられる。もっとも、債務者から財産が逸出するのはあくまで譲渡担保設定時点とみるべきことからすれば、実行行為独自の取消しは認められないものと解すべきである。

 とはいえ、本件譲渡担保契約は、譲渡人の信用を維持するために譲渡通知を危機時期まで遅らせ、しかも譲渡人の危機時期に停止条件を成就させて対抗要件を具備するタイプである。そこで、本件のような譲渡人の危機時期を停止条件とする債権譲渡「契約は、破産法72条2号〔現行162条1項)の規定の趣旨に反し、その実効性を失わせるものであって、その契約内容を実質的にみれば、上記契約に係る債権譲渡は、債務者に支払停止等の危機時期が到来した後に行われた債権譲渡と同視すべきものであ」るとして、破産管財人による債権譲渡自体の否認を認めた判例(最判平成16・7・16民集58巻5号1744頁同旨,最判平成16-9・14判時1872号64頁2事件)の趣旨を援用して、YらはAからXへの債権譲渡自体を実質的に担保実行・譲渡通知時点で行われたものとして取り消すことが可能なのではないかと思われる。

 

百選Ⅱ-18 詐害行為の一部取消しと価額償還

1 X会社の、Yに対する、本件代物弁済予約および譲渡担保契約の取消しならびにそれらを原因とする所有権移転登記請求権保全仮登記および所有権移転登記の抹消登記手続請求は認められるか。

2 本件代物弁済予約及び本件譲渡担保契約について

(1) まず、詐害行為取消権は責任財産保全のための制度であるから、「債権者」(同員柱書)は、「第1頂に規定する行為の前の原因に基づいて生じた」(424条3項)、「強制執行により実現することのでき」る(同条4項)金銭債権を有する者に限られる。

 Xは、本件代物弁済予約より前に、被保全債権である本件売掛債権を有していたところ、かかる債権は、上記代物弁済予約の「前の原因に基づいて生じた」「強制執行により実現することのでき」る金銭債権である。とすれば、Xは、「債権者」にあたる。

(2) 次に、本件代物弁済及び本件譲渡担保契約は、それぞれ、「債務者がした既存の債務についての…債務の消減に関する行為」、「債務者がした既存の債務についての担保の供与」(424条の3第1項柱書)にあたり、「債務者の義務に属…しないもの」(同条2項柱書)にあたる。また、本件代物弁済予約がなされた当時、Aには他に資産がなかったというのであるから、「その行為が、債務者が支払不能になる前30日以内に行われたものである」(同項1号)といえる。さらに、Aは、Yと通謀しているから、「その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものである」(同項2号)と認められる。

(3) したがって、詐害行為取消請求の要件を充足する。

3 それゆえ、Xは、本件代物弁済予約及び本件譲渡担保契約の「取消し」を「請求」(424条の6第2項前段)することができるところ、本件代物弁済予約・本件譲渡担保契約の目的となった本件土地建物は不可分であるので、その全体につき取消しを請求することができるのが原則である(424条の8反対解釈)。また、Xは、「受益者に移転した財産の返還」として、Yに対して本件土地建物の所有権移転登記請求権保全仮登記及び所有権移転登記手続をするよう「請求することができる」(424条の6第2項前段)のが原則である。もっとも、本件代物弁済予約及び本件譲渡担保契約により、抵当権の抹消登記がなされているところ、このような場合にまで現物返還を認めると、抵当権者が一般債権者の地位に落ちてしまい、抵当権者に酷であるし、本来共同担保を構成していない部分まで責任財産とすることになり、債権者及び債務者を不当に利する。そこで、目的物の価格から抵当権の被担保債権を控除した残額についての一部取消しが認められるにとどまると解すべきである。また、「財産の返還」を認めると、取消しの範囲以上の返還を認めることになってしまい妥当でないから、「その財産の返還をすることが困難である」(同項後段)と認められる。したがって、Xは目的物の価格から抵当権の被担保債権を控除した「価額の償還を請求することができる」(同項後段)にとどまる。そうすると、本件においては、「その返還の請求が金銭の支払…を求めるものであるとき」にあたるから、Xは、Yに対して、直接、「その支払…を…求めることができる」(124条の9第2項)ことになる。

4 よって、Xの請求は、本件土地建物の価格から抵当権の被担保償権を控除した残額についての一部取消しを求める限度、本件建物の価格から抵当権の被担保債権を控除した価額の支払請求の限度で認められる。そして、この場合、Xは、上記被保全債権を自働債権、受領した金銭の返還請求権を受働債権とする相殺(505条1項本文)によって、事実上の優先弁済を受けることができる。

 

百選Ⅱ-19 第三者の債権侵害と不法行為

(1) Aは, Yらに対し,本件立木を最低価格2万円で売却するよう委任し,その報酬として売買成立の際5000円をAより支払うこと,もし立木を2万円以上で売却した場合には,超過部分に対しさらに2分5厘を報酬として支払うので,なるべく高価に売却するよう依頼した(以下「本件委任契約」という。)。

(2) その後、Y2の代理人Y3が,代金2万7000円で買い受ける意思があることを知ったYらは、本件委任契約の本旨に背いてAに損害を与え,自己らが不当に利益を得ることを企て,Y3に対し,本件委任契約の内容を示して犯意を告げたところ,Y3もこれに加担することとなり,一同協議のうえ,代金を2万1000円として本件立木をY2に売却する一方,Yらは,現金5000円ならびに本件立木中の落葉樹代1000円を,Aに隠してY2より受領することとし,本件立木を代金2万1000円で売買した旨の公正証書を作成し,その後,Yらは,上記差額合計6000円を受領した。

1 Xは、Yら及びY2,Y3に対して、不法行為に基づく損害賠償請求(709条)をすることが可能か。

2 709条は、①故意または過失による、②権利、利益の侵害行為の存在が見受けられ、③これによって、④損害が生じているといえる場合に、その賠償を請求することができるとしている。

 ここで、②については、それが違法と評価される必要があるところ、債権は相対性があることから、第三者による債権侵害は、違法性を欠き、②の要件を充足しない結果、不法行為を構成しないのではないかが問題となるも、債権も財産権である以上、不可侵性を有するのであり、第三者による債権侵害は違法となりうる。そして、違法となるか否かは被侵害利益の種類と侵害行為の態様を相関的に考察して決定される以上、個別具体的に、違法性の有無を判断すべきであるところ、本件において、Yらは委任に背き、また、Y2,3らもこれに共謀参加して、Xの財産権を殊更侵害したのであるから、この要件を満たすものと考えるべきである(②)。

 また、Yら及びY2,3は②につき故意を有しており(①)、本件においては②によって(③)、本件差額6000円分の損害を被っているといえる(④)。

3 以上より、Yら及びY2,3は、この6000円分の損害を賠償する義務を負う。なお、Yら及びY2,3は、「共同の不法行為によって」Xという「他人に損害を加えた」ものといえるから、この賠償責任を各自連帯して負うことになる。

 よって、Xによる上記請求は可能である。

 

百選Ⅱ-20 連帯債務者の求償と通知

1 Xとしては、以下の通り、Yに対して2825万円の求償請求(442条)をすることが考えられる。

(1) すなわち、「連帯債務者の一人」であるXが、「その全額」を代物「弁済」した本件においては、Xは、XY間の負担部分に応じた額の求償権を取得する。

(2) そうすると、本件ではXY間でその負担割合を平等とする合意がなされていたのであるから、5650万円の半額2825万円の求償権を有することになる。

(3) よって、XはYに対して、求償権の行使として、2825万円(に利息を加えた額)の請求をすることができるのが原則である。

2 もっとも、Xは、上記代物弁済に際して、Yに対して事前・事後の通知をしていなかったところ、その後、Yが、Aに対してさらに1000万円弁済してしまっている。

 このように、事前・事後の通知を怠った場合、他の連帯債務者が「善意」で行った弁済の方が有効となる(443条2項)。それゆえ、Xの弁済は、4650万円の範囲でしか有効とならず、よって、Yに対する求償請求も2325万円の範囲でしかすることができないのではないかが問題となる。

 そもそも、443条2項がこのような規定を設けたのは、事前・事後の通知を怠った弁済者より、これを知らずに(同条項の「善意で」との文言)弁済した者の保護を図らなければならないとされためである。即ち、いわば、この規定は、両者の利益衡量を図るための規定であるといえるのであるから、後にされた弁済を有効なものとして取り扱うためには、後に弁済をした者に保護に値するだけの理由がなければならないものと解される。そうであれば、後に弁済する者にも事前・事後の通知義務があることに鑑みれば、後に弁済する者が事前の通知を怠り弁済をした場合には、同条項の適用はないという結論になる。

 これを本件について見ると、YのAに対する1000万円の弁済は、Xに対する事前・事後の通知を欠いて行われたものである。よって、443条2項は適用されない結果、原則通りXの弁済こそが有効、という結論になる。

3 よって、Xの2825万円の求償請求は認容されるものと考えるべきである。