○○法ガールになりたい。

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百選・Law Practice会社法 起案 5~8

5  発起人の開業準備行為  最高裁昭和 33 10 月 24 日第二小法廷判決

【事実の概要】 Xは、いまだ設立手続未了で設立登記をしていない訴外A株式会社の発起人であるYとの間で、野球実施に関する契約を締結した。その際、A会社主催名義のポスター等の配布・宣伝があったことや、Yも主催者側を代表して挨拶する等、Yは上記契約締結に関する経過事実をすべて了知した上で、A会社がいまだ存在しないにもかかわらず(存在するかのように)その代表者としてXと契約を締結したという経緯がある。約定の報酬を得られなかったXはYに対して、民法 117 条 1 項を根拠として、野球実施に関わる金員および遅延損害金の支払いを求めた。

【問題の所在】 ①会社の執行機関としての発起人の権限は、開業準備行為に及ぶか。②発起人の行為の効果が成立後の会社に帰属しない場合、発起人はその行為の相手方に対していかなる責任を負うか。

【規範】 ①発起人は会社の設立がその職務である以上、その権限は会社の設立に直接必要な行為のほか、設立に法律上・経済上必要な行為にまで及ぶ。もっとも、開業準備行為については、成立後の財産的基礎を危うくするため、法が特に変態設立事項として許容した財産引受け(会社法 28 条 2 号、33 条、46 条、93 条)の他は認められないと解する。②民法 117 条 1 項の趣旨は、代理人であると信じてこれと契約した相手方を保護することにある。会社がいまだ存在しないにもかかわらず、これを存在するものと信じて会社の代表者と契約を締結した相手方の保護は、同条が予定する類似の利益状況にあるため、同条を類推適用して保護すべきと解する。

【あてはめ・結論】 ①Y が将来成立すべき A 会社の宣伝目的で Xと野球試合実施に関する契約を締結した行為は、開業準備行為にあたる。したがって、発起人の権限に属するものとはいえず、その効果は、設立後の会社に当然帰属するものではない。②それゆえ、会社の代表者を名乗るYを、会社が存在しかつYがその代表者であると信じて本件契約を締結したXは、117条類推適用によって保護される結果、Yに対して報酬請求権の履行を求めることができる。

 

6 財産引受けの無効主張と信義則 最高裁昭和 61 9 月 11 日第一小法廷判決

【事実の概要】 X会社はY会社の設立発起人代表Aに対して、1つの工場に属する一切の事業を譲渡した。X会社は、Y 会社設立後、Y会社に対して、残代金の支払いを求める訴えを提起したところ、Y 会社は本件営業譲渡契約について原始定款の記載がないことなどを理由に、本件営業譲渡契約が無効であるとして争った。

【問題の所在】 ①定款に記載のない財産引受けについて、設立後の会社が(法定)追認した場合、その効力をいかに解すべきか。②無効主張を信義則上制限すべき場合はあるか。

【規範】 ①財産引受けには、その目的物の価値の過大評価によって、成立後の会社の財産的基礎を害する危険があるため、これを可及的に防止する必要がある。このような事情の下、会社法 28 条 2 号が定款に記載のない財産引受けについて無効としている趣旨は、広く株主・債権者等の会社の利害関係人を保護する点にある。そうすると、定款に記載のない財産引受けは何人との関係においても常に無効と解すべきであり、また、設立後に会社において事後設立に関する株主総会決議などの手続を履践してもその瑕疵が治癒されるものではなく、会社が追認したとしても有効にならないと解すべきである。②無効の主張期間があまりに遅すぎたり、無効を主張するに至った経緯等を考慮して、信義則上、無効主張が制限される場合がある。

【あてはめ・結論】 そもそも、本件譲渡は、A が Y 会社の発起人組合の代表者として設立中の Y 会社のために会社の設立を停止条件として、積極消極両財産を含む営業財産を取得する旨の契約であると認められるため、財産引受けにあたる。①定款に記載のない財産引受けは会社に対して「効力を生じない」(会社法 28 条)以上、本件において、設立後の会社が(法定)追認していたとしても、これによって、財産引受は有効なものとはならない。②X 会社は本件営業譲渡契約に基づく債務をすべて履行済みであり、他方で、Y 会社は右の履行について苦情を申し出たことはない。また、Y 会社は、本件営業譲渡契約が有効であることを前提に、X 会社に対し本件営業譲渡契約に基づく自己の債務を承認し、その履行として譲渡代金の一部を弁済し、かつ、譲り受けた製品・原材料等を販売又は消費している。さらに、Y 会社は原始定款に所定事項の記載がないことを理由とする無効事由について、契約締結後約 9 年間もの長期間に亘って主張しておらず、この度、初めて主張するに至っている。以上に鑑みれば、Y 会社が本件営業譲渡契約について、28 条 2 項の規定違反を理由にその無効を主張することは、法が本来予定した Y 会社の株主・債権者等の利害関係人の利益を保護するという意図に基づいたものとは認められず、既に遅滞に陥った本件営業譲渡契約に基づく自己の残債務の履行を拒むためのものというべきであり、信義則に反し許されない。したがって、Y 会社が本件営業譲渡契約について 28 条 2 項違反を理由として無効主張することは、特段の事情があるものとして、認められない。

  • ①財産引受けの相手方(譲渡人)が定款の記載の欠缺を奇貨として事後的に契約の無効を主張する事案(東京高判昭和 42 年 7 月 21 日など)、②会社の経営が上手くいかなくなった後で、財産引受けの無効を主張して会社において譲渡代金の支払義務を免れ、あるいは返還を受けようとする事案(本事案など)がある。

 

7  設立費用の帰属  大審院昭和 2 7 月 4 日第一民事部判決

【事実の概要】 新聞広告の取扱いを業とするX会社は、設立手続中のA株式会社の発起人であるY1・Y2・Y3の依頼により、株主募集の新聞広告を行ったことから、同人らに対して、その広告料の 7312 円 20 銭 5厘を連帯して支払うことを求める訴えを提起した。なお、A社の創立総会は、設立費用中の 2 万 2102 円 60 銭を広告料として承認していた。

【問題の所在】 設立費用について定款に記載があり(会社法 28 条 4 号)、創立総会によって承認された場合に、会社設立当時まだ弁済されていない債務の帰属。

【結論】 設立費用の金額が定款に記載され、創立総会において承認されている場合には、当該設立費用によって生じる権利義務は当然に会社に移転する。したがって、当該広告費用支払義務は会社が負担すべきもので、発起人は当該義務を負うべきものではない。

 

  • 論証まとめ

【設立中の会社理論→発起人の権限の範囲】 会社は設立登記によって成立する(会社法49条)が、それ以前にも権利能力なき社団たる設立中の会社として社会的に実在している。そして、設立中の会社と成立後の会社は実質的に同一であるから、発起人が設立中の機関として、その権限の範囲内でなした行為の効果は成立後の会社にそのまま引き継がれることになる。そこで、いかなる行為が発起人の権限の範囲内の行為であるといえるかが問題となるところ、設立中の会社は会社の設立を目的とするものであるから、その執行機関である発起人の権限が及ぶのは、会社の設立を直接目的とする行為及び会社設立のために会社の設立にとって法律上・経済上必要な行為に限られるというべきである。

【開業準備行為、営業行為、財産引受の可否】 それゆえ、開業準備行為や営業行為は発起人の権限の範囲内の行為には含まれず、仮に発起人がこれらの行為をしたとしても、会社には帰属しないというべきである。そして、これは、開業準備行為のうち、発起人が成立後の会社のため会社の成立を停止条件として特定の財産を譲り受けることを約する、いわゆる財産引受(会社法28条2号)も同様である。なお、開業準備行為に関しては、28条2号の規定を類推適用し、発起人の権限の範囲のものと考えることができないかが(一応)問題となる。しかし、開業準備行為については、その外延が不明確であり、会社財産の形成を害するおそれがあるため、28条2号を類推適用することはできず、発起人の権限の範囲には含まれないと考える。財産引受には、(目的物が過大評価された場合は、成立後の会社は高い対価を支払って対象財産を買わなければならなくなるという、)現物出資にも似た弊害が生じるおそれがあり、仮に財産引受に対する規制を敷かなければ、現物出資の潜脱手段としてこれが用いられるおそれがある。それゆえに、法はこれを回避するために財産引受の際は定款への記載等を要件としているものと考えられる。そうすると、法は、あくまで例外的に、その要件を満たす限りで財産引受を発起人の権限の範囲内の行為として認め、成立後の会社に効果帰属するとしているにすぎないと解すべきである。よって、定款への記載のない財産引受は会社との関係では絶対無効と解すべきであり、また、追認も認められないと解すべきである。

※ それゆえ、事後設立等の手続を履践することによって解決を図るべきである。

※ 財産引受にも検査役の調査は必要!:免除は33条10項

【補足】 発起人や発起人組合は、上記の通り財産引受が無効であるからといって、当然にその契約上の権利を取得し、義務を負うわけではない。財産引受は、(発起人が会社のために会社の成立を条件として特定の財産提供者から一定の財産を譲り受ける契約をいい、)設立中の会社の名において締結される(、会社の成立を条件として契約上の権利義務が直接会社に帰属することを内容とする)契約であるためである。もっとも、例外的に、財産引受契約を締結する際に発起人と相手方の間で「仮に本件財産引受が無効となった場合には発起人(組合)が契約上の権利義務の帰属者となる」旨の特約をしていた場合や、発起人(組合)が未だ成立していない会社の代表取締役を名乗り財産引受契約をなしたといった民法117条の類推適用が可能な場合 (※この場合、「類推適用」となるのは「本人」たる会社がいまだ実在していない時点における法律行為であるためである) 、その行為が発起人組合の目的の範囲内に含まれる場合等には、発起人(組合)に契約上の権利義務が帰属する可能性はある。

 「発起人が複数存在する場合には発起人組合が形成される。そして、発起人組合が民法上の組合の性質を有するものである以上、組合の業務執行の決定は組合員の過半数で行われる(民法670条1項)。よって、このような決定があった場合、当該契約の効力は発起人組合に帰属すると解される。そして、その場合、組合員である発起人は、連帯してその責任を負うことになる(商法511条1項)。

 (そしてこのような場合、相手方との合意により発起人(組合)の契約上の地位を成立後の会社が個別に譲り受けることは可能である。とはいえ、会社の財産的基礎を危うくしないよう、会社成立前に発起人のした行為の効果は当然には会社に帰属させてはならないというべきであって、会社が発起人(組合)の契約上の地位を譲り受けたものといえるかどうかの判断に際しては、禁反言的な事情の存在等、相手方保護の要請との関係で慎重に判断すべきである。)なお、財産引受契約が無効な場合であっても、会社の対応や使用の既成事実などの積み重ねにより財産引受の有効性について相手方の信頼が生じているという場合には、会社は信義則上、定款記載がないことを理由に、財産引受の効果が生じないと主張することはできないというべきである。

【設立費用の帰属】 設立費用とは、株式会社という一個の営利社団法人を作り出すために必要な行為から生じた費用を言うところ、この設立費用は、本来成立後の会社が負担すべきものであるが、無制限の負担を許すと、発起人の濫用によって成立後の会社の財産的基礎が害されるおそれがある。そこで、これを防止すべく、会社法 28 条 4 号、33 条は、原子定款に記載がない限り、設立費用の負担は会社に帰属しないものとしている。よって、実際に要する設⽴費⽤が定款記載額を超過している場合には、債権者は、契約締結の先後(または履⾏期の先後)、あるいは按分で請求することができるにすぎないことになる。

 他方で、定款の認証費用及び登録免許税等は、その金額が客観性を有しており、過大計上のおそれがないことから、原子定款に記載しなくても効力が生じるものとされている(会社法28条4号括弧書き、会社規則5条4号)。したがって、会社の原子定款に設立費用に関する記載があったか否かにかかわらず、成立後の会社は両費用を負担しなければならない。

【現物出資】 設⽴時発⾏株式と引き換えに⾏われる現物出資については、原始定款に出資者の⽒名、当該財産およびその価額並びにその者に対して割り当てる設⽴時発⾏株式の数を記載しなければ効⼒を⽣じない(会社28条1号)ところ、一応これを履践しているものの、出資した物の評価額が定款記載の額より著しく不⾜する場合には、発起⼈および設⽴時取締役は、会社に対して連帯してその不⾜額を⽀払う義務を負う(会社52条1項)ことになる。

 

Law Practice4 現物出資

1 Xとしては、成立後の株式会社に対して、以下の通り請求することが考えられる。

(1) 現物出資財産の不足額填補責任

ア 発起人・設立時取締役について

 現物出資財産の客観的価格が、定款に記載または記録した価格に著しく不足する場合は、発起人および設立時取締役は、不足分を株式会社に対し、連帯して支払う義務を負う(52 条 1 項)ところ、本件現物出資財産の客観的価格(100万円程度)は、定款には記載された価格(2000万円)に著しく不足している。

 そして、Y1~Y3は発起人であり、そのうち、Y1,2は設立時取締役である。

 したがって、原則として、Y1~Y3は不足分1800万円を、Y 社に対し、連帯して支払う義務を負う。なお、本件が発起設立であれば、設立時取締役であるY1・2は、自らの無過失を証明することにより上記責任を免れることができる(52条2項2号)が、募集設立の場合は103条1項が 52条2項2号を準用しないため免責の余地はない。他方、Y3は「第28条1号(現物出資)の財産を給付した」発起人(52条2項柱書)であるため、いずれの場合も無過失責任を負うことになる。

イ   証明者について

 また、検査役の調査に代わる証明をした者(52条3項・33条10項3号)は、不足額填補責任を負うべき発起人・設立時取締役と連帯して同様の責任を負うのが原則である(52条3項)ところ、Y4・5はの証明者であるから、Y社に対し、Y1〜3(ただし、Y1,Y2が52条2項2号の規定によりその責任を免れる場合はその限りではない)と連帯して不足分1800 万円の支払義務を負うことになる。ただし、Y4,Y5も、本件設立行為が発起設立であった場合には、自らの無過失を証明することができれば、上記責任を負わないことになる(52条3項)。

(2)  任務懈怠責任

ア また、上記不足分の1800 万円を「損害」として、「発起人」Y1〜Y3は、連帯して、任務懈怠責任(53 条 1 項、54 条)を負わないか。

イ 発起人は株式会社の設立に関して善管注意義務を負う(民法 644 条)ところ、Y3は本件現物出資財産の客観的価格が定款記載の価格に不足することを知っていた。また、Y1・2はこれを了承していた。それゆえ、Y1〜3は善管注意義務に反していたものといえる。したがって、「任務を怠った」といえ、任務懈怠責任を負う。

(3) 以上より、Y社の株主Xは、株主代表訴訟(847条1項)に基づいて Yらに上記責任を追及することができる。

2 次に、株主Xとしては、53条2項に基づきY1〜3に対し、直接第三者責任を追及することが考えられる。

 しかし、本件の損害は、上記不足額によりY社に損害が生じた結果、株主Xに損害が生じた間接損害である。間接損害事例において、株主が「第三者」として任務懈怠責任を追及できるとすれば、会社からの任務懈怠責任の追及の可否によって、①53条2項所定の者が同じ行為を理由に、株主代表訴訟による任務懈怠責任の追及と第三者責任の追及といった二重の危険を追及されることになるか、或いは、②会社が有していた損害賠償請求権を株主が奪う結果になるところ、これは、不当である。また、株主は、上記の通り株主代表訴訟(847条・423条)によって損害を回復することができるのであるから、間接損害事例の場合、株主はここでいう「第三者」にあたらないと考える。

 よって、53条2項に基づきY1~Y3に対して直接第三者責任を追及することはできない。

 

Law Practice5 定款に記載のない財産引受けの効力について

1 小問(1)について

(1) 本件売買契約の財産引受(28条2号)該当性について

 財産引受けとは、発起人が設立中の会社のために、第三者との間で、会社の成立を停止条件として特定の財産を譲り受ける旨の契約であるところ、本件売買契約は、Y社発起人Aが設立中の同社のために、X社との間で、会社の成立を停止条件として本件マンションを譲り受ける旨の契約であるから、財産引受け(28条2号)に当たる。

(2) 財産引受の有効性について

 ここで、設立中の会社は実質的に成立後の会社と同一のものであるから、設立中の会社の機関として発起人その権限の範囲内で行った行為による権利義務は、当然に成立後の会社に承継されると解される。そこで、発起人の行った財産引受の効果が会社に帰属するか、即ち発起人が行った財産引受が有効であるかの検討に当たっては、発起人の権限の範囲内の行為に財産引受が含まれるかを検討する必要がある。これについては、設立中の会社は会社の設立を目的とするものであるから、その執行機関である発起人の権限が及ぶのは、会社の設立を直接目的とする行為及び会社設立のために会社の設立にとって法律上・経済上必要な行為に限られるというべきである。それゆえ、開業準備行為の一類型である財産引受は発起人の権限の範囲内の行為とはいえない。

 そして、法は、開業準備行為が成立後の会社の経済的基礎を危うくする危険があることに鑑みて原則として発起人の権限の範囲に含まれない行為であるとしたうえで、財産引受を会社成立後に円滑にその目的である事業を行うことができるようにするために所定の要件を満たした場合に限って、発起人の権限内の行為に含まれるとしている。そうすると、定款に記載のない財産引受は、原則どおり、開業準備行為として発起人の権限の範囲外にあるものとして絶対的に無効であると解すべきである。ただし、無効を主張することが信義則に反するといえる特段の事情がある場合はこの限りでない。

 本件売買契約は、Y社の原始定款に記載されていない財産引受けであるところ、本件売買契約は絶対的に無効である。そして、Y 社がこの無効を主張することが信義則に反するといえる特段の事情もない。

 したがって、Y社は、X 社に対して本件売買契約の無効を主張することができる。

(3) よって、Y社は本件代金の支払請求を拒むことができる。

2 小問(2)

 上記のように、本件売買契約は絶対的に無効であるから、Y社はこれを追認することはできない。よって、Y社は、Xに対して、本件売買契約に基づいて本件マンションの引渡しを請求することはできない。

  

8  株式の仮装払込みの効力  最高裁昭和 38 12 月 6 日第二小法廷判決

【事実の概要】 訴外 A 会社は、Y1~Y8(Y ら)を発起人として、昭和 24 年 11 月 5 日に設立登記をした。Y らは、設立に際し引き受けた A 会社株式の払込みについて、発起人総代であった Y1 を主たる債務者とし、他の発起人を連帯保証人として訴外 B 銀行から 200 万円を借り受け、その全額を払込取扱機関であった B 銀行に株式払込金として払い込んだ。その後 Y1 は、B 銀行から払込金保管証明書の発行を受け、A 会社の設立登記を完了した。A 会社の設立後、同社は B 銀行より払込金 200 万円の払戻しを受け、その全額を Y1 に貸し付け、Y1 は A 会社から貸付けを受けた 200 万円を、B 銀行からの借入れの返済にあてた。X は、A 会社に対して売掛代金債権を有していたが、A 会社に資力がなかったため、Y らに対しても発起人の責任として 200 万円の支払を求めた。

【問題の所在】 仮装払込みの判断基準(考慮要素)と効力。

【規範】 ここに、「払込みを仮装」(会社法 52 条の 2 第 1 項 1 号参照)にあたるかどうは、①会社成立後借入金を返済するまでの期間の長短、②払戻金が会社資金として運用された事実の有無、③借入金の返済が会社の資金関係に及ぼす影響の有無等を考慮し、当該払込みが実質的には会社の資金とする意図なく単に外形を装ったに過ぎないものといえるかどうかによって判断すべきと解する。当初から真実の株式の払込として会社資金を確保する意図がなく、一時的な借入金をもって単に払込の外形を整え、株式会社成立の手続後直ちに払込金を払い戻してこれを借入先に返済するような場合には、営業活動の基盤である資本の充実は何ら図られないのであるから、払込としての効力は有しない。

  • 平成 26 年改正会社法では、払込みを仮装した発起人・引受人は、会社に対して、払込みを仮装した払込金額の全額を支払う義務を負うものとした(会社法 52 条の 2 第 1 項、102 条の 2 第1 項、213 条の 2 第 1 項 1 号)。さらに、仮装払込みに関与した取締役・発起人・執行役も、注意を怠らなかったことを証明しない限り、払込みを仮装した発起人等が支払うべき額と同額の金銭を、連帯して会社に支払う義務を負うこととした(会社法 52 条の 2 第 2 項、3 項、103 条 2 項、213 条の 3 第 1 項。会社規則7 条の 2、18 条の 2、46 条の 2)。
  • 払込みが仮装された場合の株式の成否 ⇒ 平成 26 年改正会社法は、払込みを仮装した者に前述の支払義務を課し、その支払義務を履行するまでは、仮装払込みにかかる株式について株主の権利を行使することができないとした(会社法 52 条の 2 第 4 項、102 条 3 項、209 条 2 項)。また、仮装払込みにかかる株式が譲渡されたときは、引受人らの支払義務が履行されていなくても、その第三者は譲り受けた株式について株主の権利を行使することができるとしている(会社法52 条の 2 第 5 項、102 条 4 項、209 条 3 項)。これらの規定は、仮装払込みがされた場合にも引受人等は失権せず、株式は引受人等の下で有効に成立することを前提としていると解すべきである。したがって、平成 26 年改正会社法の下では、仮装払込みであったことが判明した場合に、払込みは無効なものとして扱われるが、それによって引受人等が失権したことにはならず、株式は払込みを仮装した引受人等の下で有効に成立すると解すべきである。
  • 仮装払込みと新株発行無効原因となるか ⇒ 新株発行の無効は、新株の引受人や譲受人、会社債権者など多数の利害関係者に影響を及ぼすことになるため、あらゆる瑕疵が新株発行の無効原因となると解するのは妥当でない。したがって、新株発行無効の訴えにおける無効原因は、このような利害関係者の利益を犠牲にしても新株発行を無効とするべき重大な瑕疵に限られると解する。そして、現物出資財産の実価不足(会社法213条参照)や不公正な払込金額による通謀引受(会社法212条参照)の場合にも、仮装の払込みの場合と同種の問題が生じるにもかかわらず新株発行無効原因とはされていないことからこれと均衡を図る必要があること、また、個々の株式に関わる瑕疵であって新株発行全体に共通する瑕疵ではないものは従来から重大な瑕疵にはあたらないとされていることに鑑みれば、仮装の払込みは、新株発行を無効とするべき重大な瑕疵にはあたらず、新株発行無効原因とはならないというべきである。

 

Law Practice6 払込みの仮装について

1 小問(1)

(1)  Y1による出資金の払込み

ア Y1は、Z社設立後すぐにP銀行Q支店のZ専用口座から出資金を引き出して、これを自己のP銀行に対する借入金返済に充てているが、このY1による払込みは、預合いとして無効とならないか。

(ア) ここで、預合いとは、発起人が払込取扱金融機関と通謀して出資金の払込みを仮装する行為をいう。

(イ) 本件において、Y1は、Z社への払込取扱金融機関のP銀行Q支店から5000万円を借り入れて払込みをしている。しかし、Y1は融資担当部長Tと通謀して、同支店Z社成立後直ちに払込金を引き出し、借入金の支払いに充てており、払込金は実質的にはZ社の資金となっていない。それゆえ、Y1の払込みは、発起人が払込取扱金融機関の役職員と通謀して出資金の払込みを仮装する行為といえる。

(ウ) したがって、Y1の払込みは、預合いに当たる。

イ では、預合いによる払い込みは有効か。

これについては、預合いによる払い込みによっては現実に資金確保がなされたとは評価できず、資本充実の原則に反するため、「払い込み」にあたらないと考えるべきである。

 このことは、法が、出資の履行を仮装した発起人は、仮装した出資に係る金額の金銭の支払もしくは金銭以外の財産全部の給付する義務を負うとし(52条の2第1項)、当該仮装払込みに関与した発起人または設立時取締役も連帯して当該額を支払う義務を負うとして(同条2項、3項)、預合による払込みを無効と考えても会社債権者の利益を損なうことはないように配慮をはかっていることからも明らかである。

ウ したがって、Y1 のした払込みは無効である。

(2) Y2による出資金の払込み

ア 本件において、Y1はY2の依頼を受けて、Zの口座から出資金を引き出して、これをY2のR銀行に対する借入金の弁済に充てている。そこで、Y2のした払込みは、見せ金として無効とならないかが問題となる。

(ア) 見せ金とは、発起人が払込取扱金融機関以外から金銭を借り入れて払込みを行った後、成立後の会社の取締役に就任して直ちに会社から払込金を引き出し、借入金の弁済に充てることで出資金の払込みを仮装する行為をいう。見せ金は、払込みの形式は整えているものの、実質的に見れば、それによって会社の営業資金は何ら確保されていないため無効と解するべきである。そして、見せ金に当たるか否かの判断は、①借入金を返済するまでの期間の長短、②会社資金としての運用の事実、③借入金返済と会社資金関係との関係などの事情を考慮して行う。

(イ) Y2は、払込取扱金融期間でないR銀行S支店から5000万円を借り入れて払込みを行った後、Z社が成立してからわずか1週間後には、同社代表取締役 Y1に依頼して、払込金を引き出し、借入金の弁済に充てている。それゆえ、借入金を返済するまでの期間は短いといえる(①)。もっとも、Z社は、Y2の借入金を弁済したことによる求償権を放棄することで、実際には、当該求償債権と設立費用債務(本件賃料債務)を相殺したことを認めており、Z 社がY2に対して、負う設立費用債務が消滅する形で同社財産の形成に寄与している(② ③)。

(ウ) よって、実質的に出資金の払込みを仮装する行為とはいえず、Y2のした払込みは、見せ金には当たらない。

イ それゆえ、Y2の払込は有効である。

2 小問(2)

 Y1の払込みは、上記のように預合いである。そのため、預合いの罪(965 条)が成立する。また、Y1は代表取締役として自己の債務の弁済のためにZ社の財産である払込金を流用しているところ、この行為は、特別背任(960条)が成立する。

よって、Y1はこれらの罪責を負う。

 

ロースクール演習会社法5 会社設立時と成立後の会社の増資時における見せ金・会社資金による払込みの効力等について

1 設問1について

(1) 会社が対外的信用を得る目的で、Aらは懇意にしている銀行の担当者に相談し、会社が成立された後で少しずつ返済することにして、出資金を預けていることにしてもらい、登記を済ませる方法は、預合いに当たらないか。預合いとは、①発起人が払込取扱い機関と通謀して、②借入れを返済するまでは預金を引き出さないことを約束したうえで、③払込取扱い機関から借入れをして、それを払込に充てる行為をいう。そうすると、本件で採用しようとしている上記方法は、②③を通謀(①)のうえなすものであるから、預合いに当たる。

 預合いは、会社財産の形成に役だっておらず、会社の資本充実の要請に反しかねない。よって、かかる払込は無効である。それゆえ、仮装払込をした発起人は、会社に対して、仮装した金額の全額の支払い義務を負う(52条の2第1項、102条の2)。また、任務懈怠責任として、会社・第三者に生じた損害を賠償する責任を負う(53条1項、2項)。さらに、預合いは犯罪であるから(965条)、この罪責を負い得る。加えて、その仮装に関与した発起人や設立時取締役も同様の支払義務を負い、連帯債務者となる(52条の2第2項・3項、103条2項・3項)。

(2) 次に、設立の際に一時的に知人等から資金を借り、株式の払込をして一定の資本金を確保したような体裁を整え、設立後すぐに返済する方法はいわゆる見せ金にあたらないか。

 見せ金とは、発起人が払込取扱機関以外の者から借り入れた金を払込みに充てて会社を設立した上、会社の成立後それを引き出して借入金の返還に充てる行為をいう。このような見せ金については、確かに、個々の行為は有効であるが、全体としてみると、個々の行為は仮装払込みのためのカラクリの一環をなしているにすぎないため、見せ金による払込みは全体として無効であると解される。ただし、見せ金では個々の行為が適法であるから、見せ金か否かの判断を慎重にしなければならない。具体的には、①借入金を返済するまでの期間の長短、②会社資金としての運用の事実の有無、③借入金の返済が会社の資金関係に及ぼす影響の有無等の諸点から総合判断すべきである。本件では、①借入金を返済するまでの期間が短く、②会社資金としての運用の事実の無く、③借入金の返済が会社の資金関係に及ぼす影響が有れば、見せ金にあたる。

 そして、見せ金による払込についても、払込を仮装するからくりの一環であるという実質を重視して無効と解すべきであり、また、かかる見せ金による仮装払込をした発起人は、預合いの場合と同様の責任を負うことになる。その仮装に関与した発起人や設立時取締役も同様である。

 また、見せ金をした発起人の責任任務懈怠責任として、会社・第三者に生じた損害を賠償する責任を負う(53条1項、2項)。金銭の取得行為をなした取締役の責任任務懈怠責任が発生する(423条、429条)。なお、代表取締役が会社から借り受けて弁済したような場合には、利益相反取引(356条1項2号)となり、任務懈怠の推定等の効果が生じる(423条3項1号、428条)。さらに、募集設立で払込金保管証明書発行する払込取扱金融機関も、その責任を負い得る(64条2項)。

 加えて、仮装払込がひいては、設立無効原因(828条1項1号)にもつながりうる。すなわち、会社の設立に際して発行する株式の効力について有効説を採用したとしても、会社に現実に出資される財産が最低出資額を下回る限り、資本充実の観点からは、設立は無効と解さざるを得ない。(仮装払込による場合でも発行された株自体は有効であるとすると、25条2項の設立無効事由はないことになる。)

  • ただし、出資額に占める仮装払込の割合の多寡にかかわらず、仮装払込により発行された株式について、会社の設立後に現実に出資された場合には設立無効事由は消滅すると解される。もっとも、取引安全を図る趣旨から、悪意または重大な過失なくして株式や株主となる権利を譲り受けた者による権利行使は認められる(52条の2第4項・5項、102条3項・4項)。
  • こうした仮装払込の責任に関する規律は、その後の募集株式の引受人や新株予約権者等(それらの関与者も含む)についても、ほぼ同様に広範囲で設けられている(213条の2・3、282条2項・3項、286条の2・3、会社規則46条の2・62条の2)。

2 設問2について・・・(省略)