○○法ガールになりたい。

○○法ガールといえるほど法学をマスターしたいなと思い作成したブログ。司法試験受験生。最近勉強なんてやめて結婚に逃げたい。

百選起案 民法Ⅱ(第8版) 21~30

百選Ⅱ-20 連帯債務者の求償と通知

1 Xとしては、以下の通り、Yに対して2825万円の求償請求(442条)をすることが考えられる。

(1) すなわち、「連帯債務者の一人」であるXが、「その全額」を代物「弁済」した本件においては、Xは、XY間の負担部分に応じた額の求償権を取得する。

(2) そうすると、本件ではXY間でその負担割合を平等とする合意がなされていたのであるから、5650万円の半額2825万円の求償権を有することになる。

(3) よって、XはYに対して、求償権の行使として、2825万円(に利息を加えた額)の請求をすることができるのが原則である。

2 もっとも、Xは、上記代物弁済に際して、Yに対して事前・事後の通知をしていなかったところ、その後、Yが、Aに対してさらに1000万円弁済してしまっている。

 このように、事前・事後の通知を怠った場合、他の連帯債務者が「善意」で行った弁済の方が有効となる(443条2項)。それゆえ、Xの弁済は、4650万円の範囲でしか有効とならず、よって、Yに対する求償請求も2325万円の範囲でしかすることができないのではないかが問題となる。

 そもそも、443条2項がこのような規定を設けたのは、事前・事後の通知を怠った弁済者より、これを知らずに(同条項の「善意で」との文言)弁済した者の保護を図らなければならないとされためである。即ち、いわば、この規定は、両者の利益衡量を図るための規定であるといえるのであるから、後にされた弁済を有効なものとして取り扱うためには、後に弁済をした者に保護に値するだけの理由がなければならないものと解される。そうであれば、後に弁済する者にも事前・事後の通知義務があることに鑑みれば、後に弁済する者が事前の通知を怠り弁済をした場合には、同条項の適用はないという結論になる。

 これを本件について見ると、YのAに対する1000万円の弁済は、Xに対する事前・事後の通知を欠いて行われたものである。よって、443条2項は適用されない結果、原則通りXの弁済こそが有効、という結論になる。

3 よって、Xの2825万円の求償請求は認容されるものと考えるべきである。

 

百選Ⅱ-21 共同不法行為者の一人に対する債務免除の効力

(1) Aは、X、Bに対して、損害賠償金3303万8681円およびこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまでの遅延損害金の支払請求権を有している。なお、X、Bの責任割合は、4対6である。

(2) そして、別訴において、A・X間では、①Xは、XがBと共同して加えた損害につき、2000万円の支払義務があることを認める、②Aはその余の請求を放棄する、との内容の訴訟上の和解(以下「本件和解」という。)をし、同日、Xは、Aに和解金2000万円を支払った。

1 Xとしては、共同不法行為者であるBの使用者であるYに対して、求償権を行使して、1200万円およびこれに対する支払の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることが考えられる(442条)。

2 共同不法行為が成立する場合には、共同不法行為者はいずれも「連帯してその損害を賠償する責任を負う」ことになる(719条1項)。

それゆえ、Xは、「連帯債務者の一人」であるといえるところ、このようなXが、本件においては、2000万円を債権者に「弁済」している。

 民法442条は、弁済額が負担部分を超えない場合であっても、弁済額を基礎として、弁済をした「連帯債務者」が、他の連帯債務者に対する求償権を取得する旨規定している。そのため、Xは、他の連帯債務者であるBに対して、その負担割合(4(X)対6(B))に応じて、1200万円(2000万円×3/5)の求償権を取得することになる。そして、その場合、Yは、Bの使用者であるから、Xは、Yに対しても1200万円の求償権を有することになる(YBは、Aに対して連帯して1200万円の支払義務を負うことになる)。

3 よって、Xは、Yに対して、1200万円およびこれに対する支払の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。

 なお、連帯債務者の一人に対する免除は、相対効しか有さないものとされているから(437条)、本件のAがXに対してなした債務免除の効果は、Bには及ばない。それゆえ、XBが連帯して負っていた債務の額から、XがAに対して支払った弁済額を控除した額につき、Bは、依然支払い債務を負うことになる。この場合、Bがこの支払い債務を履行した場合には、Bは、Xに対して、やはりその負担割合に応じて求償権を取得することになり、Aは、これを拒むことができない、ということになる。もっとも、本件において、Aが、Xに対して残額部分の債務の免除の意思表示をするに際して、同時に、B(及びY)の債務をも免除する意思を有していたといえる場合には、この限りではない。

 

百選Ⅱ―22 解除による原状回復義務と保証人の責任

1 Xの、Y1に対する、本件売買契約の解除に基づく原状回復請求としての、交付した売買代金15万円のうち、内入弁済のあった5200円を控除した残金14万4800円の返還請求は認められるか。また、XのY2に対する、保証契約に基づく履行請求としての同額請求は認められるか。

2 Y1は、「債務者」として、本件売買契約に基づく物権の引渡義務を「債務」として負っていたところ、その「全部の履行を拒絶する」意思を明確に表示している(542条1項2号)。それゆえ、Xは、本件売買契約を無催告解除することが可能である。

 また、仮に無催告解除が不可能であったとしても、本件売買契約に基づくY1の物件の引渡義務という「債務」は、履行遅滞に陥っている。そして、本件ではXはY1に対して代金を支払い済であるため、このような履行遅滞は違法であるといえる。そして、XはY1に対し、「催告」をしており、かつ、(催告の趣旨が債務者に履行の機会を与える点にあることからすれば、「相当の期間を定めて」催告をすることは必要ではなく、催告後客観的に見て相当期間を経過していればよいと解すべきところ、本件においてはこの)「相当の期間が経過」しているといえる。そして、売買契約においてその目的物の引渡債務が履行されないという「債務の不履行」は、「軽微である」とはいえない。

 それゆえ、いずれにせよ、本件売買契約の解除は可能である。

 よって、本件売買契約の解除に基づく原状回復請求権としての、XのY1に対する上記請求は、認められるものというべきである。

3 では、Y2についてはどうか。

 「売買契約の解除のように遡及効を生ずる場合には、その契約の解除による原状回復義務は本来の債務が契約解除によって消滅した結果生ずる別個独立の債務であって、本来の債務に従たるものでもない」。それゆえ、売買契約上の債務を保証する旨の契約を締結した「保証人は、特約のないかぎり、これが履行の責に任ずべきではない。しかしながら、特定物の売買における売主のための保証においては、通常、その契約から直接に生ずる売主の債務につき保証人が自ら履行の責に任ずるというよりも、むしろ、売主の債務不履行に基因して売主が買主に対し負担することあるべき債務につき責に任ずる趣旨でなされるものと解するのが相当でるから、保証人は、債務不履行により売主が買主し負担する損害賠償義務についてはもちろん、特に反対の意思表示のないかぎり、売主の債務不履行により契約が解除された場合における原状回復義務についても保証の責に任ずるものと認めるのを相当とする。」 ※不特定物の場合は保証人が自らその物を調達して債務者に代わって債務を履行する、というのが保証契約の契約内容であったとする余地がある。また、「解除に基づく原状回復義務」の履行以外については本判例の射程が及ぶかどうか、疑念を差し挟む余地がある。(結局は契約解釈の問題!)

 したがって、Y2が、本件保証契約締結に際し、右売買契約の解除による原状回復義務については保証しない旨明示し、これを契約内容としていたという事実が明らかである場合等を除き、Y2は、Y1がXに対して負う返還債務と同額の支払い義務を、保証契約に基づき負うものと解される。

 

百選Ⅱ-23 期間の定めのない継続的保証契約と保証人の解約権

1 XのYに対する保証契約に基づく履行請求としての、XA間で締結された売買契約に基づく代金の支払い請求は認められるか。

2 そもそも、①保証契約は、書面または電磁的記録によってしなければ効力は生じない。また、②個人が根保証契約を締結する場合、主たる債務、利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及び保証契約の違約金、損害賠償について全部にかかる極度額を定めなければ効力を生じない。

 XY間における保証契約締結に際しては、書面の要件は満たしている(①)。もっとも、本件保証契約は、継続的売買契約により生じる買主が将来負うべき債務を保証するものであるため、根保証契約であるところ、それにもかかわらず、極度額の定めがなかったものと考えられる(②)。

3 よって、XのYに対する上記請求は認められない。

4 また、仮に、極度額の定めがあった場合、XY間の保証契約は有効なものとなるものの、「本件のごとき期間の定めのない継続的保証契約は」、「契約後相当の期間を経過した場合」や「そうでなくとも債務者の資産状態が著しく悪化した場合」等、「保証人の主債務者に対する信頼関係が害されるに至った」場合には、「保証人として解約申入れをするにつき相当の理由がある」といえるから、「右解約により相手方が信義則上看過しえない損害をこうむるとかの特段の事情ある場合を除き、一方的にこれを解約しうるものと解するの」が「相当」である。

 本件において、「本件にあっては保証契約後相当期間経過後の解約申入れであることは…明らかであり」「Yには本件解約の申入れをなすにつき相当の理由があ」る。「他面でX側にも」上記「特段の事情はない」。

 よって、「Yのなした本件保証契約の解約申入れ」は「有効」であるから、仮に本件根保証契約の締結に当たって極度額の定めがあった場合であっても、Yは、Xに対して、解約申し入れ前までの責任しか負わないから、XのYに対する上記請求はその限度においてのみ認められる。

 

百選Ⅱ-24  根保証における元本確定前の履行請求と随伴性

1 X社は、Aが有していたY社に対する根保証契約に基づく請求権を、譲り受けたとして、Y社に対してこれを行使している。

 そこで、X社による、本件根保証契約に基づく保証債務履行請求としての7億9990万円の一部である1000万円の支払を請求は、認められるか。

2 本件根保証契約に基づく請求権は元本確定前にC、Y社へと譲渡されている。もっとも、「根保証契約を締結した当事者は、通常、主たる債務の範囲に含まれる個別の債務が発生すれば保証人がこれをその都度保証し、当該債務の弁済期が到来すれば、当該根保証契約に定める元本確定期日(※ 本件根保証契約のように、保証期間の定めがある場合には、保証期間の満了日の翌日を元本確定期日とする定めをしたものと解することができる。)前であっても、保証人に対してその保証債務の履行を求めることができるものとして契約を締結し、被保証債権が譲渡された場合には保証債権もこれに随伴して移転することを前提としているものと解するのが合理的である。そうすると、被保証債権を譲り受けた者は、その譲渡が当該根保証契約に定める元本確定期日前にされた場合であっても、当該根保証契約の当事者間において被保証債権の譲受人の請求を妨げるような別段の合意がない限り、保証人に対し、保証債務の履行を求めることができるというべきである。」 

 「そして、本件根保証契約の当事者間においては上記別段の合意があることはうかがわれない」。 ※ 根保証契約の当事者が「被保証債権の譲受人の請求を妨げるような別段の合意」をすることも認められる。根保証には契約自由の原則が妥当し、根保証の性質も元本確定前の法律関係も、根保証契約の当事者の合意によって定まる。別段の合意の例として、「主たる債務の範囲に含まれる債務のうち、元本確定期日の時点で主債務者が当初の債権者に対して負う債務のみについて保証人が責めを負う旨の定め」が挙げられる。このような合意は元本確定前の根保証の随伴性を否定するとともに、元本確定前の履行請求を禁じる趣旨だからである。

3 よって、Xは、Yに対し、保証債務の履行を求めることができる。

 

百選Ⅱ-25 

1 Xとしては、代物弁済としてAB間の売買契約に基づく代金支払請求権を譲り受けたとして、これを行使し、Bに対して、1183万余円の支払を請求することが考えられる。

上記の通り、Xは、本件債権を譲り受けている。また、Aは、上記債権譲渡をBに「通知」しているから、Xは、本件債権の取得をBに「対抗することができ」る(467条1項)。

2 これに対して、Bは、本件債権には譲渡禁止特約が付されていると主張して、Xの請求を拒むことが考えられる。

 すなわち、「当事者が…譲減制限の意思表示…をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない」(466条2項)ものの、「譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ」る(同条3項)ところ、Xは特約の存在につき「悪意」又はそれを知らないことにつき「重大な過失」があったから、Bは「その債務の履行を拒むことができる」というのである。

3 もっとも、Xは、Bは、AからXへの債権譲渡を承諾していることから、Xの請求を拒むことができないと主張することが考えられる。すなわち、466条3項の趣旨は、弁済の相手方を固定することにより、見知らぬ第三者が弁済の相手方となるといった事態を防ぐ点、すなわち、債務者の利益保護を図る点にあるのであるから、保護されるべき債務者が債権譲渡を承諾している場合には、そのような利益を放棄しているとみることができ、もはや債務者を保護すべき理由はない。とすれば、債務者が譲渡制限特約付債権の譲渡を承諾した場合には、「譲渡制限特約をもって譲受人に対抗することができないと解すべきである。したがって、Bは、Xの請求を拒むことができない。」 

4 よって、Xの請求は認められる。 ※ 預金債権の場合は物権的効力説を維持するため、カギかっこ部分を、「116条類推適用により、債権譲渡は、譲渡の時にさかのぼって有効となると解すべきである。したがって、Xへの債権譲渡は有効であり、XのBに対する請求は認められることになる」とする必要がある。

 

百選Ⅱ-26 将来発生する債権の譲渡

1 Xの、Yに対して自らが各還付請求権について取立権を有することの確認訴訟は認容されるか。

2 まず、本件契約のうち、将来の債権を目的とする部分が有効であるかが問題となるも、契約当時に、その債権が発生する可能性があったに過ぎない、将来の債権を譲渡する契約も、原則として有効であるとされている(466条の6条1項,第2項)。

 もっとも、本件譲渡契約は、将来において発生する複数の債権を目的とするものであるから、目的となる債権が特定されなければならない。そして、債権の特定は、対象債権の発生期間の始期や終期、その債権者及び債務者、債権の発生原因などによって行うべきところ、本件譲渡契約における目的債権は、AB間の継続的な診療契約に基づく債権とされており、債権者、債務者及び債権の発生原因が、明確にされている。また、発生期間の始期や終期も明確にされていることから、本件譲渡契約の対象は特定されているといえる。

 さらに、将来の一定期間内に発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約について、契約内容が譲渡人の営業活動等に対して社会通念に照らし相当とされる範囲を著しく逸脱する制限を加え、又は他の債権者に不当な不利益を与えるものであると見られるなどの特段の事情の認められる場合には、そのような契約は公序良俗に反するとして無効と解すべきである(90条)ところ、本問では、上記のように、本件譲渡契約における対象債権は、その発生原因、及び発生期間において限定されている。確かに、その期間は8年と比較的長期であるものの、譲渡人に過大な負担を課し、又は他の債権者に不当な不利益を与えるものとまではいえず、社会通念に照らし相当とされる範囲を逸脱するものとはいえない。

 それゆえ、本件譲渡契約は、有効と解すべきである。

3 そして、同一の債権に対する債権譲渡と債権差押えとの間の優劣は、債権譲渡についての第三者対抗要件が具備された時と債権差押命令が当該債権の債務者に送達された時の先後で決すべきところ、本件においては、差押命令が当該債権の債務者に送達される前に、Aが確定日付のある証書をもって本件債権譲渡の通知をすることで、債権譲渡につき第三者対抗要件が備えられていたものといえる。

 それゆえ、本件債権譲渡が、Xによる差押え優先する。

4 よって、Xの上記請求は認められない。

 

百選Ⅱ-27 債権譲渡における異議をとどめない承諾の効力

1 Xは、AY間における本件請負契約に基づく報酬債権を一部Aから譲り受けたとして、Yに対して、これを行使することが考えられる。では、これは認められるか。

2 これについて、改正前民法下では、改正前民法468条1項に基づき、「このような場合には、債務者は、右債権譲渡について異議をとどめない承諾をすれば、右契約解除を以て報酬請求権の譲受人に対抗することができない」のが原則であるとしつつ、「譲受人において右債権が未完成仕事部分に関する請負報酬請求権であることを知っていた場合には債務者は、譲受人に契約解除をもって対抗することができるものと解すべきである」としていた。もっとも、民法改正後は、異議をとどめない承諾について定めた規定が削除された。改正民法下では、「債務者は、対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる」(改正民法468条1項)ところ、具体的には、抗弁事由発生の基礎がこの時点で存在していれば、債務者は、その抗弁事由を以て譲受人に対抗することができるものと考えられる。

 本件においては、上記の通り、Xは、Yに対して本件請負契約に基づく報酬債権を行使しているところ、「債務者」であるYは、本件請負契約は既に解除されているということを、抗弁として主張することが考えられる。そして、本件請負契約の解除自体は、AからXに対する本件報酬債権の譲渡につき対抗要件が具備された後になされているものの、「請負契約は、報酬の支払いと仕事の完成とが対価関係に立つ諾成、双務契約であって、請負人の有する報酬請求権はその仕事完成引渡と同時履行の関係に立ち、かつ仕事完成義務の不履行を事由とする請負契約の解除により消滅するものであるから、右報酬請求権が第三者に譲渡され対抗要件をそなえた後に請負人の仕事完成義務不履行が生じこれに基づき請負契約が解除された場合においても、右債権譲渡前すでに反対給付義務が発生している以上、債権譲渡時すでに契約解除を生ずるに至るべき原因が存在していたものというべきである。」

 それゆえ、債務者は、この抗弁事由を以て、Xに対抗することができるのが原則である。

3 また、本件の、債務者Yの異議なき承諾が、事前になされた、抗弁放棄の包括的な意思表示であったとみることはできない。

4 よって、Xの、Yに対する報酬債権の支払い請求は認められない。

 

百選Ⅱ-28 債権譲渡と相殺

 

1 Xは、XA間の売買契約に基づく代金債権をAから譲り受けたとして、これをYに対して行使している。これは認められるか。

2 ここで、Yとしては、Aに対して有していた170万円の債権を以て、相殺の主張をすることで、上記請求の一部の履行を拒むことが考えられる。

(1) まず、Yの170万円の自働債権も、Xの373万円の受働債権も、いずれも金銭債権であって、「同種の目的を有する債務」(505条1項)である。

(2) また、170万円の自動債権の弁済期は、倒産整理のために既に期限の利益を失っており、相殺主張時に既に弁済期が到来している。他方、Xの373万円の受働債権についても弁済期が到来しているものと解される。(仮に弁済期が到来していなかったとしても、期限の利益を放棄することもできる。)そのため、「双方の債務が弁済期にある」といえる。

(3) もっとも、受働債権については、AからYに譲り渡されその旨の通知(467条1項)がなされているため、債務者対抗要件が具備されてYへの帰属が確定し、もはや「2人が互いに」上記各債権を有しているとはいえない 。

(4) よって、相殺の抗弁は原則として認められないはずである。

(5) しかし、170万円の自働債権は、373万円の受働債権の前に取得した債権であるとして、なお相殺を対抗することができるのではないか(469条1項)。

 「債務者」は、「対抗要件具備時」より前に取得した譲渡人に対する債権による相殺を、譲受人に対抗することができる(同条項)ところ、170万円の自働債権は、「対抗要件具備時」より前に既に発生(取得)していた債権である。

(6) よって、Yは、Xの請求に対して、これを以て、相殺を対抗することができる 。

3 よって、相殺の意思表示(506条1項)をすることにより、Yは、Xの請求のうち、170万円の履行を拒むことが可能である。

 

百選Ⅱ-29 債権譲渡の対抗要件の構造

1 Xとしては、第三者異議の訴えは認められるか。これが認められるためには、Xに対してなされた本件債権譲渡の効力を、Yに対抗できることが必要である。

2 467条の趣旨は、債務者の債権譲渡の有無についての認識を通じ、その有無が第三者に公示される点にあるから、確定日付ある通知を有する者らの優劣は、債務者への通知到着時の先後で判断すべきである。 ※ 到達時説。同時到着の場合、各譲受人は、債務者に対しそれぞれの譲受債権全額の弁済を請求することができ、譲受人の1人から弁済の請求を受けた債務者は、他の譲受人に対する弁済その他の債務消滅事由が存在しない限り、弁済の責めを免れることはできない(最判昭55.1.11)。どちらの譲受人も債務者に対する対抗要件は具備していることになるし、債務者が債務の履行を免れるのは妥当でないからである。なお、到着の先後関係が不明である場合は、通知は同時に第三債務者に到着したものとして取扱いのが相当である(最判平5.3.30)。また、互いに相手方に対して自己が優先的地位にある債権者であると主張することが許されない関係に立つので、公平の原則から、分割請求が認められると考えるべきである。債権者不確知を理由に債務者が供託した場合には,債権額に応じて供託金額を按分した額の供託金還付請求権をそれぞれ分割取得するとした。 ※ なお、予約完結による債権譲渡の効力は,予約についてなされた確定日付ある通知や承諾をもって第三者に対抗することはできない(最判平13.11.27)。予約の時点で確定日付のある通知や承諾がなされても、債務者は、これによって予約完結権の行使により当該債権の帰属が将来変更される可能性を了知するにとどまり、当該債権の帰属に変更が生じた事実を認識するものではないからである。

 そして、「債権者が、債権譲渡証書に確定日付を受け、これを即日短時間内に債務者に交付したときは、民法467条2項所定の確定日付ある通知があつたものと認めることができる」ところ、本件においては、Xが、Yの債権譲渡通知がBに到達する前に、これをなしている。

3 よって、本件においては、XがYに優先するため、Xの第三者異議の訴えは認められるものと解すべきである。

 

百選Ⅱ-30

1 Xは、Yに対して、供託金62万円の還付請求権の取立権を有することの確認請求をすることが考えられる。

 そして、Xのこの請求が認められるためには、Xが還付請求権を有していることが必要であるとこと、具体的には、Xが本件債権を取得しており、これをYに対抗できることが必要である。

2 Xは、本件において、昭和60年9月24日、本件債権を差し押さえているから、①の要件を充たす。また、同日、本件債権差押通知がBに送違されているから、②の要件も充たす。

 よって、上記請求は認められるとも思える。

3 もっとも、本件において、Yは、昭和60年9月18日、本件債権をAから譲り受けているところ、Aが、同月19日、Bに対して「確定日付のある証書によって」「通知」(47条2項)し、本件債権譲渡通知が同月21日、Bに到達したことにより、Yも、第三者対抗要件を備えている。そこで、債権が二重譲渡され、両譲受人が確定日付ある通知を備えた場合はいかにして優劣を決定すべきか、条文上明らかでなく、問題となる。

 ここで、法が対抗要件として通知を要求した趣旨は、債務者による譲渡の認識を通じて公示する点にある。そうだとすれば、債務者の認識の先後を基準とすべきである。しかし、本件債権差押通知及び本件債権護渡通知がBに送違されたのは昭和60年9月24日であるところ、その先後関係は不明であり、その相互間の優劣を決することができない。このような場合、各通知は同時にBに到達したものとして取り扱うのが相当である。そこで、確定日付ある通知が債務者の下に同時到違し或いはその戦後が不明である場合、どのように処理すべきかが問題となる。

 法が第三者対抗要件として確定日付を要求した趣旨は、譲渡人・債務者の通謀によって、譲渡の通知の日時を遡らせて第三者の権利を害することを可及的に防止ずる点にあるにすぎないのであるから、この場合であっても、確定日付の先後をもって判断すべきではない。そうであれば、債務者に対する対抗要件は「通知」で足りる(467条1項)以上、どちらの譲受人も債務者に対する対抗要件は具備していることとなる本件においては、債務者が債務の履行を免れるのは妥当でないため、どちらの譲受人も、債務者に対して債権全額の履行を請求することができると考える。

 しかし、このような場合には、上記のとおり、互いに相手方に対して自己が優先的地位にある債権者であると主張することが許されない関係に立つ。そこで、各債権者は、公平の原則に照らし、債権額に応じて按分した額の供託金還付請求権をそれぞれ分割取得するものと解するのが相当である。

3 よって、Xの請求は、31万円の供託金還付請求権を有するとの限度で認められる。