○○法ガールになりたい。

○○法ガールといえるほど法学をマスターしたいなと思い作成したブログ。司法試験受験生。最近勉強なんてやめて結婚に逃げたい。

百選起案 憲法(7版) 12~16

百選12 猿払事件

第1 意見の要旨

 公務員の政治的行為を罰則を以て制限する国家公務員法(102条1項、110条1項19号)及びその委任を受けた人事院規則(14‐7)は、憲法21条1項、31条に反するものではなく、合憲である。また、Xが本件のような政治的行為を行ったことを以て、上記規定に基づき、Xを処分したことも、憲法21条1項、31条には反さず、合憲である。

第2 憲法21条1項違反の検討

1 法令違反の検討

(1) 保障

 憲法21条によって保障される「表現」は、自己の人格を形成・発展させ、民主政の過程に関与するという、自己実現・自己統治の価値を有するものであるところ、政治的行為はその最たるものとして保障される。そして、公務員も日本国民であることは変わりがないから、かかる自由を享有するものである。

(2) 制約

 それにもかかわらず、同法は、制限を加えることなく、「人事院規則で定める」(法102条1項)「政治的目的」のもと行われた「政治的行為」を規制し、罰則を課すことで(110条1項19号)、公務員の政治活動の自由を制約している。

(3) 正当化

ア 政治活動の自由は自己統治の価値が正面から妥当する場面であるし、政治活動の自由は立憲民主政の政治過程にとって不可欠の基本的人権であって民主主義社会を基礎付ける重要な権利である。また、国家公務員法102条1項の規定は、刑罰法規の構成要件となっているため、罰則によって政治活動を禁止する点で重大な制約であるともいい得る。しかし、他方で、「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」とする憲法15条2項の規定からして公務は国民の全体に対する奉仕として運営されるべきものである。そこで、公務員の政治的中立性を損なうおそれのある公務員の政治的行為を禁止することは、①禁止の目的が正当であると認められ、②一定の政治的行為を禁止したことが目的との間で合理的な関連を有し、かつ、③政治的行為を禁止することにより得られる利益と禁止ずることにより失われる利益との均衡を失していない限り、「合理的で必要やむを得ない限度にとどまるもの」であるといえるから、憲法21条1項に反するものとは言えないと解すべきである。

イ まず、禁止の目的について考えると、もし公務員の政治的行為のすべてが自由に放任されるときは、おのずから公務員の政治的中立性が損なわれ、その職務の遂行ひいてはその属する行政機関の公務の運営に党派的偏向を招くおそれがあり、行政の中立的運営に対する国民の信頼が損なわれることを免れない。また、公務員のこのような党派的偏向は、逆に政治的党派の行政への不当な介入を容易にし、行政の中立的運営が歪められる可能性が一層増大するばかりでなく、そのような傾向が拡大すれば、本来政治的中立を保ちつつ一体となって国民全体に奉仕すべき責務を負う行政組織の内部に深刻な政治的対立を生み出し、そのため行政の能率的で安定した運営は阻害され、ひいては議会制民主主義の政治過程を経て決定された国の政策の忠実な遂行にも重大な支障をきたすおそれがあり、このようなおそれは行政組織の規模の大きさに比例して拡大すべく、かくては、もはや組織の内部規律のみによってはその弊害を防止することができない事態に立ち至る。したがって、このような弊害の発生を防止し、行政の中立的運営とこれに対する国民の信頼を確保するため、公務員の政治的中立性を損うおそれのある政治的行為を禁止することは、まさしく憲法の要請に応え、公務員を含む国民全体の共同利益を擁護するための措置にほかならないのであって、その目的は正当なものというべきである。

ウ 次に、この目的と禁止される政治的行為との関連性について考える。

 上記の通り、公務は国民の全体に対する奉仕として運営されるべきものである一方、政治活動の自由は自己統治の価値が正面から妥当する場面であること、政治活動の自由は立憲民主政の政治過程にとって不可欠の基本的人権であって民主主義社会を基礎付ける重要な権利であること等に鑑みれば、国家公務員法102条1項の「政治的行為」とは、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが、観念的なものにとどまらず、現実的に起こり得るものとして実質的に認められるものを指し、規則11-7第5項3号、第6項13号も、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものを禁止の対象となる政治的行為として規定したものであると解するべきであるところ、このように解する以上、イで挙げた目的を達成するために、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれがあると実質的に認められる政治的行為を禁止することは、禁止目的との間に合理的な関連性があるものと認められる。 ※ 「このことは、たとえその禁止が、公務員の職種・職務権限、勤務時間の内外、国の施設の利用の有無等を区別することなく、あるいは行政の中立的運営を直接、具体的に損なう行為のみに限定されていないとしても、異なるところはない。特に、規則14-7第5項3号第6項13号の政治的行為は、政治的偏向の強い行動類型に属するものにほかならず、政治的行為の中でも、公務員の政治的中立性の維持を損なうおそれが強いと認められるものであり、政治的行為の禁止目的との間に合理的な関連性をもつものである。」(猿払事件上告審より)=合憲限定解釈する以上当然の帰結

エ そして、公務員の政治的中立性を損うおそれのある行動類型に属する政治的行為を、これに内包される意見表明そのものの制約をねらいとしてではなく、その行動のもたらす弊害の防止をねらいとして禁止するときは、同時にそれにより意見表明の自由が制約されることにはなるが、それは、単に行動の禁止に伴う限度での間接的、付随的な制約に過ぎない。しかも、上記のように国家公務員法102条1項にいう「政治的行為」の文言を限定的に解釈する以上、公務員の政治活動の自由に対する制約は、必要最小限のものとなっている。

 他面、禁止により得られる利益は、公務員の政治的中立性を維持し、行政の中立的運営とこれに対ずる国民の信頼を確保するという国民全体の共同利益なのであるから、得られる利益は、失われる利益に比してさらに重要なものというべきであり、その禁止は利益の均衡を失するものではない。

(4) 結論

 したがって、不件各条項は、本件自由を侵害するものではない。

2 処分違憲の検討

(1) 権利保障

(2) 制約

(3) 正当化

 既述の通り、国家公務員法102条1項の「政治的行為」とは、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが、観念的なものにとどまらず、現実的に起こり得るものとして実質的に認められるものを指し、規則11-7第5項3号、第6項13号も、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものを禁止の対象となる政治的行為として規定したものであると解するべきであり、このように解したうえで、同条項の規定を具体的に適用し処分をする限り、その処分は合憲とされるべきである。

 そして、こうしたおそれが認められるか否かは、当該公務員の地位、その職務の内容や権限等、当該公務員がした行為の性質、態様、目的、内容等の諸般の事情を総合して判断するのが相当であるところ、本件行為は、特定の地区の労働組合協議会事務局長である郵便局職員が、同労働組合協議会の決定に従って選挙用ポスターの掲示や配布をしたものであり、これは公務員により組織される団体の活動としての性格を有するものであり、勤務時間外の行為であっても、その行為の態様からみて当該地区において公務員が特定の政党の候補者を国政選挙において積極的に支援する行為であることが一般人に容易に認識され得るようなもので、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる。

(3) 結論

 よって、Xによる本件政治的行為は、国家公務員法102条1項の「政治的行為」にあたる。そうである以上、Xが本件政治的行為をしたゆえをもって、Xに刑罰を科すことも、憲法21条1項には反さず、合憲である。

第3 憲法31条違反の検討

1 憲法31条は刑罰内容の適正も保障している。それゆえ、公務員の政治活動の自由を制約し、罰則が科す規定については、罪刑の均衡が保障されていなければならない。そして、いかなる政治的行為にいかなる刑を科すことができるかについての立法に関しては、国会の裁量にゆだねられている。

 これを踏まえて、国家公務員法110条1項19号について検討するに、懲戒処分と刑罰とは、その目的、性質、効果を異にする別個の制裁なのであるから、前者と後者を同列に置いて比較し、司法判断によって前者の存在をもってより制限的でない他の選びうる手段であると軽々に断定することは、相当ではない。

 国家公務員法110条1項は、19号所定の政治的行為を公務員が行った場合に3年以下の懲役または100万円以下の罰金に処するとしているところ、一概に政治的行為といってもその態様や影響力等は多種多様であって、19号は、その枠内で、判断権者の裁量の下、問題となる行為の政治的中立性を害するおそれの程度を判断し、それに応じて相応の刑を科すことを予定しているものと解される。そうである以上、同号は、罪刑の均衡がとれていないものとはいえないと解すべきである

2 また、本件処分は、このような合憲・有効な規定を、その裁量の枠内で適用することによりなしたものであるといえる。

3 よって、国家公務員法110条1項19号の規定及び本件処分は憲法31条に反するものではない。

第4 結論

 よって、国家公務員法(102条1項、110条1項19号)及び人事院規則(14‐7)及びこれに基づく本件処分は、憲法21条1項、31条に反するものではなく、合憲である。

 

オマケ:寺西判事補事件

第1 意見の要旨

第2 憲法21条1項違反の検討

1 適用違憲

(1) 権利保障

 21条1項の表現の自由基本的人権のうちでもとりわけ重要なものであり、その保障は裁判官にも及ぶ。裁判官も一市民としてかかる自由を有することは当然である。

(2) 制約

(3) 正当化

 上記自由も、絶対的なものではなく、憲法上の他の要請により制約を受けることがあるのであって、憲法上の特別な地位である(76条 3項、78条乃至80条など)裁判官の職にある者の言動については、おのずから一定の制約を免れないというべきである。そこで、裁判官に対し「積極的に政治運動をすること」を禁止することは、裁判官の表現の自由を一定範囲で制約することにはなるが、制約が合理的で必要やむを得ない限度にとどまるものである限り、憲法の許容するところであるといわなければならず、具体的には、禁止の目的が正当であって、その目的と禁止との間に合理的関連性があり、禁止により得られる利益と失われる利益との均衡を失するものでないなら、憲法21条1項に違反しないというべきである。

 これをもって本件を検討すると、禁止の目的は、裁判官の独立及び中立・公正を確保し、裁判に対する国民の信頼を維持するとともに、三権分立主義の下における司法と立法、行政とのあるべき関係を規律することにあると解されるところ、この立法目的は正当である。

 そして、上記の通り裁判官の職にある者の言動についてはおのずから一定の制約を免れないというべきである一方、政治活動の自由は自己統治の価値が正面から妥当する場面であること、政治活動の自由は立憲民主政の政治過程にとって不可欠の基本的人権であって民主主義社会を基礎付ける重要な権利であること等に鑑みれば、裁判所法52条1号のいう「積極的に政治運動をすること」とは、組織的、計画的又は継続的な政治上の活動を能動的に行う行為であって裁判官の独立及び中立・公正を現実的に害するおそれがあるものを指すものと解すべきである。そうすると、このように解する以上、裁判官が「積極的に政治運動をすること」を禁止するという手段と、裁判官の独立及び中立・公正を害し、裁判に対する国民の信頼を損なうおそれを防止するという目的との間には、合理的な関連性があることは明らかである。

 さらに、裁判官が積極的に政治運動をすることを、これに内包される意見表明そのものの制約をねらいとしてではなく、その行動のもたらす弊害の防止をねらいとして禁止するときは、それは単に行動の禁止に伴う限度での間接的、付随的な制約にすぎないし、上記のように限定的に解釈する以上、裁判官の政治活動の自由に対する制約は最小限にとどめられているといえる。他面、禁止により得られる利益は、裁判官の独立及び中立・公正を確保し、裁判に対する国民の信頼を維持する等であるから、得られる利益は失われる利益に比して更に重要なものというべきであり、その禁止は利益の均衡を失するものではない

(4) 結論

2 適用違憲の検討

(1) 権利保障

(2) 制約

(3) 正当化

 上記の通り、裁判所法52条1号のいう「積極的に政治運動をすること」とは、組織的、計画的又は継続的な政治上の活動を能動的に行う行為であって裁判官の独立及び中立・公正を現実的に害するおそれがあるものを指すものと解すべきであるところ、このように解し、同号を適用する限り、その処分は、憲法21条1項に反さず合憲とされるべきである。そして、上記おそれがあるといえるかを具体的に判断するに当たっては、行為の内容、行為の行われるに至った経緯、行われた場所等の客観的な事情のほか、行為をした裁判官の意図等の主観的な事情をも総合的に考慮して決するのが相当である。

 これを本件について見ると、「裁判官が、その取扱いが政治的問題となっていた法案を廃案に追い込もうとする党派的な運動の一環として開かれた集会において、会場の一般参加者席から、裁判官であることを明らかにした上で、『当初、この集会において、盗聴法と令状主義というテーマのシンポジウムにパネリストとして参加する予定であったが、事前に所長から集会に参加すれば懲戒処分もあり得るとの警告を受けたことから、パネリストとしての参加は取りやめた。自分としては、仮に法案に反対の立場で発言しても、裁判所法に定める積極的な政治運動に当たるとは考えないが、パネリストとしての発言は辞退する。』との趣旨の発言をした行為は、…右集会の参加者に対し、右法案が裁判官の立場からみて令状主義に照らして問題のあるものであり、その廃案を求めることは正当であるという同人の意見を伝えるものというべきであり、右集会の開催を決定し右法案を廃案に追い込むことを目的として共同して行動している諸団体の組織的、計画的、継続的な反対運動を拡大、発展させ、右目的を達成させることを積極的に支援しこれを推進するものであって、裁判所法52条1号が禁止している『積極的に政治運動をすること』に該当する。」

(4) 結論

 

百選13 堀越事件

1 意見の要旨

 公務員の政治的行為を罰則を以て制限する国家公務員法(102条1項、110条1項19号)及びその委任を受けた人事院規則(14‐7)に基づき、Xを処分したことは、憲法21条1項、31条には反さず、合憲である。 適用違憲の検討しかしていない!

2 憲法21条1項違反の検討

(1) 権利保障

 憲法21条によって保障される「表現」は、自己の人格を形成・発展させ、民主政の過程に関与するという、自己実現・自己統治の価値を有するものであるところ、政治的行為はその最たるものとして保障される。そして、公務員も日本国民であることは変わりがないから、かかる自由を享有するものである。

(2) 制限

 それにもかかわらず「人事院規則で定める」(法102条1項)「政治的目的」のもと行われた「政治的行為」を行ったとして、Xを起訴したことは(110条1項19号)、公務員Xの政治活動の自由に対する制約であるといえる。

(3) 正当化

 ここで、憲法15条2項は、「すべて公務員は、全体の奉仕者であ」ると定めているところ、国家公務員法102条1項は、国民全体に対する奉仕を旨として、国の行政機関における公務は、憲法の定める我が国の統治機構の仕組みの下で、議会制民主主義に基づく政治過程を経て決定された政策を忠実に遂行するため、「行政の中立的運営を確保」し、「これに対する国民の信頼を維持すること」をその趣旨としているものと解される。そして、このような行政の中立的運営が確保されるためには、公務員による「政治的行為」を禁止し、公務員が、政治的に公正かつ中立的な立場に立って職務の遂行に当たることが必要となる。他方、公務員にも、日本国民として、上記の通り、憲法上、表現の自由(21条1項)としての政治活動の自由を保障されているところ、この精神的自由は立憲民主政の政治過程にとって不可欠の基本的人権であって、民主主義社会を基礎付ける重要な権利である。このことに鑑みると、上記の目的に基づく法令による公務員に対する政治的行為の禁止は、国民としての政治活動の自由に対する必要やむを得ない限度にその範囲が画されるべきものである。このような本法102条1項の文言、趣旨、目的や規制される政治活動の自由の重要性に加え、同項の規定が刑罰法規の構成要件となることを考慮すると、同項にいう「政治的行為」とは、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが、観念的なものにとどまらず、現実的に起こり得るものとして実質的に認められるものを指すものと解される。このように、同条項にいう「政治的行為」を限定的に解釈し、これを適用する限り、同条項に基づく処分は、憲法21条1項に反しないものといえる。

 これを本件について見るに、Xが行った本件配布行為は、管理職的地位になく、その職務の内容や権限に裁量の余地のない公務員によって、職務と全く無関係に、公務員により組織される団体の活動としての性格もなく行われたものであり、また、公務員による行為と認識し得る態様で行われたものではない。

 よって、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものとはいえないから、本件処分は、上記のように限定的に解釈した「政治的行為」に該当するものであるといえる。

(3) 結論

 よって、Xによる本件政治的行為は、国家公務員法102条1項の「政治的行為」にあたる以上、Xを有罪とすることは、憲法21条1項に反さず、合憲である。

3 憲法31条違反の検討

(1) 憲法31条は刑罰内容の適正も保障している。それゆえ、公務員の政治活動の自由を制約し、罰則が科す規定については、罪刑の均衡が保障されていなければならない。

(2) もっとも、いかなる政治的行為にいかなる刑を科すことができるかについての立法に関しては、国会の裁量にゆだねられているところ、懲戒処分と刑罰とは、その目的、性質、効果を異にする別個の制裁なのであるから、前者と後者を同列に置いて比較し、司法判断によって前者の存在をもってより制限的でない他の選びうる手段であると軽々に断定することは、相当ではない。そして、国家公務員法110条1項は、19号所定の政治的行為を公務員が行った場合に3年以下の懲役または100万円以下の罰金に処するとしているところ、一概に政治的行為といってもその態様や影響力等は多種多様であって、19号は、その枠内で、判断権者の裁量の下、問題となる行為の政治的中立性を害するおそれの程度を判断し、それに応じて相応の刑を科すことを予定しているものと解される。そうである以上、同号は、罪刑の均衡がとれていないものとはいえないと解すべきであり、この規定自体、合憲・有効なものであるといえる。

(2) そして、本件処分は、このような合憲・有効な規定を、その裁量の枠内で適用することによりなしたものであるといえる。

(3) よって、「政治的行為」を行ったXに本件のような刑を科したことも、憲法31条に反するものではない。

4 結論

 よって、国家公務員法(102条1項、110条1項19号)及び人事院規則(14‐7)に基づく本件処分は、憲法21条1項、31条に反するものではなく、合憲である。

 

百選14 よど号ハイジャック記事抹消事件

1 意見の要旨

 監獄法31条2項及び監獄法施行規則86条1項に基づき、Xらが私費で購読していた読売新聞につき、昭和45年3月31日付夕刊から4月2日付朝刊まで赤軍派学生が日航機「よど号」を乗っ取った事件についての記事(以下「本件記事」という。)を全て黒く塗りつぶしたものをXらに配布したことは、Xらの新聞閲読の自由(21条1条)を制約するものではない。それゆえ、国家賠償法1条1項に基づく請求は認められない。

2 権利保障

 各人が、自由に、さまざまな意見・知識・情報に接し、これを摂取する機会をもつことは、その者が個人として自己の思想及び人格を形成・発展させ、社会生活の中にこれを反映させていくうえにおいて欠くことができないものであり、民主主義社会における思想及び情報の自由な伝達、交流の確保という基本的原理を真に実効あるものたらしめるためにも、必要なところである。それゆえ、これらの意見、知識情報の伝達の媒体である新聞紙・図書等の閲読の自由が憲法上保瞭されるべきことは、21条1項の規定の趣旨、目的から、いわばその派生原理として当然に導かれると解すべきである。

 したがって、新聞閲読の自由は、「表現の自由」の一環として保障されている。

3 制約

 それにもかかわらず、監獄法31条2項及び監獄法施行規則86条1項に基づき、Xらが私費で購読していた読売新聞の本件記事を全て黒く塗りつぶしてXらに配布したことは、Xらの新聞閲読の自由を制約するものであるといえる。

4 正当化

 本件記事は赤軍派学生が日航機「よど号」を乗っ取った事件についての記事であるところ、かかる事件は多分に政治的色彩を有するものであるから、自己統治の価値が十分に妥当するものであるといえる。また、本件処分が、Xらが最も閲読したいであろう本件記事を閲読できなくなる点に鑑みれば、その制約の程度が弱いとはいえない。さらに、確かに、未決勾留によって拘禁された者についても、逃亡又は罪証隠滅の防止を目的として、その者の身体的自由及びその他の行為の自由に一定の制限が加えられることは、やむをえないが、他方で、未決勾留者は、原則として一般市民としての自由を保障されるべき者である。そこで、被拘禁者の閲読の事由の制限は真に必要と認められる限度においてのみ認められると解するべきである。もっとも、拘置所は、多数人をその意に反して拘束するという特殊なストレスのかかる場所であり、秩序違反や騒動行為の蓋然性や危険性が高いことも否定できない。そこで、明らかに差し迫った危険の発生が具体的に予見されることまでを要求することはできない。そこで、①閲読を許すことにより、監獄内の規律及び秩序の維持上放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があり、②制限の程度が障害発生の防止のために必要かつ合理的な範囲にとどまっているといえるかによって、新聞閲読の自由に対する制約の合憲を判断すべきである。そして、監獄法31条2項及び監獄法施行規則 86条1項が「監獄ノ規律ニ害ナキモノ」という抽象的な文言を使用していること、当該新聞紙図書等の閲読を許すことによって監獄内における規律及び秩序の維持に放置することができない程度の障害が生ずる相当の蓋然性が存するかどうか、及びこれを防止するためにどのような内容、程度の制限措置が必要と認められるかについては、監獄内の実情に通暁し、直接その衝にあたる監獄の長による個々の場合の具体的状況のもとにおける裁量的判断にまつべき点が少なくない。そこで、①の蓋然性の有無の判断については、監獄長に要件裁量が認められるから、その裁量権の逸脱・濫用がある場合に限り、上記新聞閲読の自由に対する制約は、違憲であり、かつ、「違法」(行訴法30条)であると評価されることになると考える。具体的には、障害発生の相当の蓋然性があるとした長の認定に合理的な根拠があり、その防止のために当該制限措置が必要であるとした長の判断に合理性が認められる限り、長の措置は適法として是認すべきであると解する。

 これを本件についてみると、本件処分当時までの間に、公安事件関係の被拘禁者らによる拘置所内の規律及び秩序に対するかなり激しい侵害行為が相当頻繁に行われていた。また、本件処分に係る各新聞記事はいずれもいわゆる赤軍派学生によって敢行された航空機乗っ取り事件に関するものであるため、公安事作関係の被告人として拘禁されていたXらに対し本件各新聞記事の閲読を許した場合には、拘置所内の静穏が攪乱され、所内の規律及び秩序の維持に放置することのできない程度の障害が生ずる可能性もある。したがって、障害発生の相当の蓋然性があるとした長の認定に合理的根拠が認められる。また、かかる障害発生を防止ずるために必要であるとして上記乗っ取り事件に関する各新聞記事の全部を抹消する措置をとったことについても、当時の状況のもとにおいてはやむを得ず、本件処分が必要であるとした長の判断に合理性が認められる。

 よって、木件処分に裁量権の逸脱・濫用は認められない。

5 結論

 以上より、本件処分は、新聞閲読の自由を侵害するものではなく、違憲、「違法」ではない。

 

百選15 賭博行為の自由

1 意見の要旨

 賭博行為の自由は、憲法13条後段によっても保障されない。それゆえ、刑法186条2項の規定は、合憲であり、また、同条項に基づきXが賭博行為を行ったがゆえにXを処分したことも、合憲である。

2 権利

 憲法13条後段は、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」を保障しているところ、具体的には、人の人格的生存にとって不可欠な権利を、それが法的保護に値する限りにおいて、保障する趣旨であると解される。

 そうすると、「賭博行為は、……単なる偶然の事情に因り財物の獲得を僥倖せんと相争うがごときは、国民をして怠惰浪費の弊風を生ぜしめ、健康で文化的な社会の基礎を成す勤労の美風(憲27条1項参照)を害するばかりでなく、甚だしきは暴行、脅迫、殺傷、強窃盗その他の副次的犯罪を誘発し又は国民経済の機能に重大な障害を与える恐れすらあるのである」それ自体「公共の福祉に反する」行為なのであって、このような行為をすることは、およそ法的保護に値するとはいいがたい。

 よって賭博行為の自由は、憲法13条後段によっても保障されないものと解すべきである。

3 賭博行為規制の合理性

 確かに、「これを認める立法の当否は」別途、「問題となり得るが」、上記の通り、「賭博行為は、……国民をして怠惰浪費の弊風を生ぜしめ、健康で文化的な社会の基礎を成す勤労の美風(憲27条1項参照)を害するばかりでなく、……その他の副次的犯罪を誘発し又は国民経済の機能に重大な障害を与える恐れすらある」それ自体「公共の福祉に反する」行為なのであるから、これを一律に刑罰を以て規制することとした、刑法182条2項の規定は、合理性を有するものであるといえる。

4 結論

 よって、賭博行為を規制する刑法186条2項の規定は有効であり、これに基づく本件処分も有効である。

 

百選16 京都府学連事件

1 意見の要旨

 本件における警察官の撮影行為は、被告人のみだりにその容ぼう等を撮影されない自由(憲法13条後段)を侵害するものではなく、また、憲法31条・35条に反するものでもないため、適法なものである。それ故、このような適法な行為を行った警察官に対して傷害を加えたことは、公務執行妨害罪・傷害罪を構成する。

2 憲法13条後段違反の検討

(1) 権利保障

 憲法13条後段は、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」を保障しているところ、具体的には、国民の私生活上の自由が、警察権等の国家権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しているものということができる。

そして、個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有するものというべきである。

(2) 制約

 それにもかかわらず、本件において警察官は、被告人の容ぼう等を許可なく撮影することで、被告人のみだりにその容ぼう等を撮影されない自由を制約している。

(3) 正当化

 「(これを肖像権と称するかどうかは別として、少なくとも、)警察官が、正当な理由もないのに、個人の容ぼう等を撮影することは、憲法一三条の趣旨に反し、許されないものといわなければならない」が、「個人の有する右自由も、国家権力の行使から無制限に保護されるわけでなく、公共の福祉のため必要のある場合には相当の制限を受けることは同条の規定に照らして明らかである。そして、犯罪を捜査することは、公共の福祉のため警察に与えられた国家作用の一つであり、警察にはこれを遂行すべき責務があるのであるから(警察法二条一項参照)、警察官が犯罪捜査の必要上写真を撮影する際、その対象の中に犯人のみならず第三者である個人の容ぼう等が含まれても、これが許容される場合がありうるものといわなければならない。」そこで、①「現に犯罪が行なわれもしくは行なわれたのち間がないと認められる場合であつて」、②「しかも証拠保全の必要性および緊急性があり」、かつ、③「その撮影が一般的に許容される限度をこえない相当な方法をもつて行なわれるとき…は、その対象の中に、犯人の容ぼう等のほか、犯人の身辺または被写体とされた物件の近くにいたためこれを除外できない状況にある第三者である個人の容ぼう等を含むことになつても」、「撮影される本人の同意がなく、また裁判官の令状がなくても、警察官による個人の容ぼう等の撮影が許容され」、「憲法一三条……に違反しないものと解すべきである。」

 「これを本件についてみると、……本件……集団行進集団示威運動においては、……被告人」は「先頭集団」のさらに「列外最先頭に立って行進していた」ところ、この行進は、「京都府公安委員会が付した……条件に外形的に違反する状況であった」ため、警察官は、「この状況を現認して、許可条件違反の事実ありと判断し、違法な行進の状態および違反者を確認するため、……被告人の属する集団の先頭部分の行進状況を撮影したというのであり、その方法も、行進者に特別な受忍義務を負わせるようなものではなかつたというのである。」そうであるとすれば、警察官の「写真撮影は、現に犯罪が行なわれていると認められる場合になされたものてあつて、しかも多数の者が参加し刻々と状況が変化する集団行動の性質からいつて、証拠保全の必要性および緊急性が認められ、その方法も一般的に許容される限度をこえない相当なものであつたと認められる」。

(4) 結論

 よって、本件の警察官による撮影行為は、被告人のその容ぼうをみだりに撮影されない自由を侵害するものではない。

2 憲法31条・35条違反の検討

 憲法31条は、自由に対する制約は、a. その根拠となる有効な法律に基づき、b. 適正な手続のもと、なされなければならないものとしている。そして、憲法35条は、令状主義について規定しているところ、令状主義の要請を満たさなければ、bの要件を満たさないものと解される。

 捜査活動は、強制にわたらない限り、刑訴法197条1項によって行うことができるものと解されるところ、本件写真撮影行為は、上で検討したことからすれば、任意の処分の枠内に収まっているということができるから、aの要件を満たす。

 また、上記①②③の要件を満たす場合には、刑訴法上、本件写真撮影行為は検証令状によらずすることができたというのであるから、これを得ないでした本件においても、bの要件も満たすということができる。

 よって、本件写真撮影行為は、憲法31条・35条に違反しないものといえる。

3 結論

 以上より、本件警察官の写真撮影行為は、憲法13条後段、憲法31条・35条に反するものではなく、合憲・適法であり、被告人がこれに反撃を加えた行為は、公務執行妨害罪・傷害罪を構成する。