○○法ガールになりたい。

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百選起案 民法Ⅱ(第8版) 31~40

百選Ⅱ-31 重畳的債務引受

1 X1、2が、Y1に対し、消費貸借契約に基づく350万円の貸金返還請求をすることができるためには、Y1が同契約に基づく賃金債務を負担していることを要する。もっとも、Y1は、上記消費貸借契約の当事者ではない。それゆえ、Y1は上記請求をする事ができないのが原則である。

2 もっとも、Y1は、Y2をして上記債務を重畳的に引受ける旨Xらとの間で約していることから、Y1も、上記債務を負担しているということはできないか。

(1) (※ 判例においては「重畳的に」と明記されているため問題ないが、「重畳的」か「免責的」か明らかでない場合は、以下のように検討する必要がある。「Aに免責してしまうと債権の効力が弱められてしまうことになるから債権者Xらとしては免責的債務引受には通常は承諾しないものと考えられる。そのため、このようなXらの合理的意思を踏まえてなされたXY1間の債務引受契約は、重畳的債務引受契約(470条)であると解すべきである」⇒ ) そして、重畳債務引受は、債権者と引受人となる者との契約がなされた場合(470条2項)、或いは、債務者と引受人となる者との契約に加え債権者の引受人となる者に対する承諾の意思表示がなされた場合に、その効力を生ずる。

 そして、本件においては、債権者Xらと引受人となるY1が上記契約を締結している。

 よって、本件重畳的債務引受契約は有効であるといえる。

(2) そして、重畳的債務引受がその効果を発揮した場合、「併存的債務引受の引受人は」、特段の合意があった等の特段の事情がない限り、「債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する」ことになる(470条1項)。そして、本件においては、このような特段の事情はなかったものと考えられるから、Aの債務を併存的に引受けたY1は、Aと連帯して、上記債務を負担することになる。

(3) よって、Xらの請求は認められる。

4 確かに、本件においては、Y1と連帯してAが負担していた債務が、時効消滅している。しかし、改正民法下において、時効の完成は相対効しか有さないものとされているためXらは債務の全額をY1に対して請求することができる。(※ この場合であってもY1は弁済したその全額を基礎に、Aに対して求償できることから、不都合はない。)

 また、「引受人は、併存的(重畳的)債務引受により負担した自己の債務について、その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができる」(471条1項)ところ、本件においては、「その効力が生じた時に」Aが主張できた抗弁はなかったものと解される。

 よって、上記結論となる。

 

百選Ⅱ-32 建物賃借人の地代弁済と第三者弁済

1 本件において、YはXらに対し、土地所有権に基づく返還請求権として、建物退去の請求をしている。そして、かかる請求が認められるためには、Yが土地を所有しており、かつ、Xらが建物に入居することでその土地を占有していることを要するところ、本問においては、この要件を満たしている。よって、Yの請求は認められるのが原則である。

2 もっとも、本問において、Yは、Zに対して土地を賃借している。そして、土地賃貸借契約において、土地賃貸人は、土地賃借人及び土地賃借人から建物を借り受けた者が、建物を利用することにより、その土地を占有されることを想定している。そうであれば、YZ間の賃貸借契約が有効である限り、土地賃借人からその上に存在する建物を借り受けたXらには、その土地を占有する権限が認められる。

それゆえ、Xらは、自身らに占有権限があることを主張して、Yからの請求を拒むことが考えられる。

3 しかし、「土地賃借権が消滅する」に至った場合には、「建賃借人は土地賃貸人に対して、賃借建物から退去して土地を明け渡すべき義務を負う」ことになるところ、Xらは、本件において、Yは、Zの賃料不払いを理由に、YZ間の土地賃貸借契約を解除したとしてこれを主張することが考えられる。他方で、Xらは、自身らが既にZの賃料債務を第三者弁済していることからZに債務不履行はないとして、本件は解除の要件を満たさないと反論することになろう。

(1) では、これは認められるか。

(2) 「弁済をするについて正当な利益を有する者」は、債務者の意思にかかわらず、「債務の弁済」を、「することができる」(474条1項、2項)。そこで、Xらがこの「正当な利益」を有するかが問題となる。

 これについては、「借地上の建物の賃借人はその敷地の地代の弁済について、」「正当な利益」「を有すると解するのが相当である。」なぜならば、上記の通り、「建物賃借人と土地賃貸人との間には直接の契約関係はないが、土地賃借権が消滅するときは、建賃借人は土地賃貸人に対して、賃借建物から退去して土地を明け渡すべき義務を負う法律関係にあ」るところ、「建物賃借人は、敷地の地代を弁済し、敷地の賃借権が消滅することを防止することに法律上の利益を有するものと解されるからである。」

(3) よって、Xらの第三者弁済は有効である。

 それゆえ、YZ間の賃貸借契約は、解除の要件を満たさないため、依然、有効なままである。

4 それゆえ、本件においては、依然、YZ間の賃貸借契約は有効なままであり、Xらは本件土地を占有する権限を有しているものといえる。

  よって、YのXらに対する請求は認められないことになる。

  • 同様、改正前の民法500条の法定代位に関する裁判例では、抵当権設定後の抵当物件の賃借人や共同抵当の目的となっている数個の不動産の一部の賃借人は、抵当債務の弁済について、正当な利益を有するとされる。

 

百選Ⅱ-33 指名債権の二重譲渡と民法478条

1 Xは、Yに対する本件債権を、Aから譲り受けたとして、これを行使し、その残額の支払いを請求している。では、認められるか。

2 まず、本件債権は、Xだけでなく、Bにも譲渡されていることから、その優劣が問題となる。すなわち、債権譲渡は、譲渡人から債務者に対する「通知」又は債務者の「承諾」が、「確定日付のある証書によって」なされた場合でなければ、債務者以外の第三者に対して対抗できない(467条2項)ところ、この確定日付ある通知又は承諾が複数なされた場合、その優劣をいかに図るべきか。

 ここで、467条の趣旨は、債務者の債権譲渡の有無についての認識を通じ、その有無が第三者に公示される点にあるから、確定日付ある通知を有する者らの優劣は、債務者への確定日付ある上記通知又は承諾の到着時の先後で判断すべきである。この理は、債権の譲受人と同一債権に対し仮差押命令及び差押・取立命令の執行をした者との間の優劣を決する場合においても異ならないと解すべきである。

 そうすると、本件においては、AからXを相手方とする確定日付ある債権譲渡の通知が、Bの仮差押命令及び差押・取立命令の送達より前に送達されているため、本件債権を二重譲渡された関係にあるXとBとでは、Xが優先するということになるはずである。

  • なお、本件は、優先するAX間の譲渡契約が解除され、それが通知され、さらに解除が撤回され、それが通知されたという事情がある。しかし、債権譲渡の解除は、(遡及効肯定説に立つと債権の復帰であり、遡及効否定説に立つと)新たな譲渡であるということができるところ、これを債務者に対抗するためには譲渡人Aからではなく譲受人Xから通知しなければならない。ところが、本件では、譲渡人Aから解除通知がなされたため、結果的にAは債権譲渡の解除を債務者Yに対抗できないこととなるため、Yとの関係ではいまだXが優先するということとなる。

3 もっとも、本件においては、Yは、既にBに対して、本件債権譲渡の対象となっていた債務を弁済してしまっている。

(1) このように、「二重に譲渡された指名債権の債務者が、民法467条2項所定の対抗要件を具備した他の譲受人……よりのちにこれを具備した譲受人……に対してした弁済についても、同法四七八条の規定の適用があるものと解すべきである。」なぜならば、上記「指名債権が二重に譲渡された場合……の理は、……債務者の劣後譲受人に対する弁済の効力についてまで定めているものとはいえ」ないためである。すなわち、「その弁済の効力は、債権の消滅に関する民法の規定によつて決すべきものであり、債務者が、右弁済をするについて、劣後譲受人の債権者としての外観を信頼し、右譲受人を真の債権者と信じ、かつ、そのように信ずるにつき過失のないときは、債務者の右信頼を保護し、取引の安全を図る必要がある」。

  • 「このような見解を採ることは、結果的に優先譲受人が債務者から弁済を受けえない場合が生ずることを認めることとなるが、その場合にも、右優先譲受人は、債権の準占有者たる劣後譲受人に対して弁済にかかる金員につき不当利得として返還を求めること等により、対抗要件具備の効果を保持しえないものではないから、必ずしも対抗要件に関する規定の趣旨をないがしろにすることにはならないというべきである。」

(2) そこで、以下、本件が、478条の要件を満たすか同課を検討する。

ア ここで、「民法478条所定の『善意』とは、弁済者において弁済請求者が真正の受領権者であると信じたことをいうものと解すべきところ」、本件において、Yは、Bこそが「正当な取立権限を有する者と信じた、というのであるから」、「善意であつたというべきである。」

イ また、「民法467条2項の規定は、指名債権の二重譲渡につき劣後譲受人は同項所定の対抗要件を先に具備した優先譲受人に対抗しえない旨を定めているのであるから」、「債務者としても」原則として「優先譲受人に対して弁済すべき」であるし、優先譲受人を保護すべき要請も働く。それゆえ、「債務者において、劣後譲受人が真正の債権者であると信じてした弁済につき過失がなかつたというためには、優先譲受人の債権譲受行為又は対抗要件に瑕疵があるためその効力を生じないと誤信してもやむを得ない事情があるなど劣後譲受人を真の債権者であると信ずるにつき相当な理由があることが必要であると解すべきである。」

 本件においては、Xへの債権譲渡の確定日付ある通知が、Bの仮差押命令及び差押・取立命令より先にYのもとに送達されていたというのであるから、Yとしては、少なくともBに「弁済すべきか否かにつき疑問を抱くべき事情があつたというべきであつて」、Bの「仮差押命令及び差押・取立命令が裁判所の発したものであるとの一事をもつて、いまだ」YにBが真の債権者であると信ずるにつき相当の理由があつたということはできない。

 よって、Yが、債権差押・取立命令等を発した裁判所の判断に過誤なきものと速断して、取立権限を有しないBに対して弁済したことに、過失がなかつたものとすることはできない。

ウ よって、本件においては、478条の要件は満たさない。

(3) それゆえ、YのBに対する弁済は無効である。

4 よって、XのYに対する上記請求は認められるものというべきである。

 

百選Ⅱ-34 預金担保貸付けと民法478条の類推適用

1 Xは、Yに対して、XY間で締結された定期預金契約に基づき、預金の返還を請求することが考えられる。

2 もっとも、Yとしては、以下のように、預金の返還を拒むことが考えられる。

(1) まず、Yは、定期預金債権を受働債権、貸付金債権を自働債権とする相殺(505条1項本文)を主張することが考えられる。

 相殺が認められるには、①同一当事者間に互いに対立する債権が存在し、②両債権が同種の目的であり、③両債権の弁済期が到来していること、のすべてを満たして相殺適状(506条2項)にある必要がある。そのような場合には、④両債権を対当額で相殺する旨の意思表示(506条1項前段)をすることにより、相殺適状時にさかのぼって効力を生ずる(506条2項)ことになる。

 しかし、YはあくまでBに対して貸付をしたにすぎないのであって、YはXに対して貸付金債権を有しているわけではないから、本件においては、①の要件を満たさない。

 したがって、相殺の主張は認められない。

(2) そこで、Yは、478条の類推適用を主張することが考えられる。すなわち、Yは、将来定期預金債権と貸付金債権とを相殺することを見込んで、Bに対して貸付けを行ったものであるところ、定期預金への担保設定・貸付け・相殺予約・相殺という銀行の一連の行為は、経済的機能の点で定期預金債権の期限前払戻し、すなわち、「弁済」(同条)と同視できる。したがって、同条を類推適用すべきである。

 そこで、以下、「弁済」を除く、同条の要件を検討する。

ア まず、Bは、Xの届出印と同一の印影のある申込書類及び預金証書を提出してXを名乗っており「受領権者…以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するもの」(同条)にあたる。

イ 次に、「弁済をした者」であるYは「普意であり、過失がなかった」(同条)といえるか。その基準時をいつと考えるきか問題になる。たしかに、実際に「弁済」と同視される行為は相殺であるから、相殺時を基準時とすべきであるかに思える。しかし、この場合は、預金と相殺することを予定して貸し付けているのである以上、貸付け時における信頼を保護すべきであるから、貸付け時を基準時とすべきである。

 以下、Yの善意・無過失について検討するに・・・(不明。以下、Yに善意・無過失はなかったもの仮定する)・・・以上のことからすれば、Yは、貸付時において善意・無過失であったといえる。

ウ 以上より、本件においては、「弁済」以外の478条の要件を満たす。

3 よって、478条類推適用によりYは保護される結果、Xの上記請求をYは拒むことができる。

  • 定期預金の期限前払戻しは、日常的には「中途解約」とも呼ばれ、まずは解約があり、これが有効になりはじめて弁済も意味をもつ。そこで、弁済の効力を論じる以前に解約の有効性を検討すべきであり、詐称代理人による解約の場合には表見代理が成立しない限り、解約の効力は本人に帰属せず、478条の問題も生じないとも考えられる。しかし、銀行は解約の申入れに応じるのが原則であることからすれば、期限前の払戻しであっても、期限到来後の通常の払戻しと実質的に異ならない。したがって、定期預金の期限前払戻しも「弁済」にあたり、478条が適用され、銀行の払戻しは債権の準占有者に対する弁済として有効となると解する。

 

百選Ⅱ-35 現金自動入出機による預金の払戻と民法478条

1 XのYに対する預金返還請求は認められるか。本件において、XY間では預金契約が締結されている。それゆえ、これに基づく、上記請求は認められるというのが原則である。

2 もっとも、本件においては、無権限者のした機械払の方法による預金の払戻しがなされている。それゆえ、Yは、この払戻し(弁済)は、478条の適用ないし類推適用により、有効であると主張し、既にXの預金返還請求権は消滅しているとして、Xの上記請求を拒むことが考えられる。

(1) そこで、そもそも、機械払の方法による預金の払戻し(弁済)に、478条を適用ないし類推適用できるかが問題となるも、機械払いの方法による場合であっても弁済者を保護する必要がある以上、これを肯定すべきであり、「これが非対面のものであることをもって同条の適用を否定すべきではない。」

(2) 478条により弁済が有効とされるためには、弁済者が、相手が債権者又は受領権者でないことにつき善意無過失でなければならないところ、ATMから預金債権の払戻がなされたという、機械払いの方法による場合は、銀行が悪意である可能性はほとんどないため、過失の有無を判断することになる。

 しかし、機械としてのATMにつき過失を観念することはできない。そこで、無過失というためには、払戻しの際に機械が正しく作動したことだけでなく、銀行において、機械システムの設置管理の全体について、可能な限度で無権限者による払い戻しを排除しうるよう注意義務を尽くしていたことを要するとすべきである。

(3) これを本件について見るに、Yは、「通帳機械払のシステムを採用していたにもかかわらず、その旨をカード規定等に規定せず、預金者に対する明示を怠り」、そのために、Xは、「通帳機械払の方法により預金の払戻しを受けられることを知らなかったというのである。」

 「無権限者による払戻しを排除するためには、預金者に対し暗証番号、通帳等が機械払に用いられるものであることを認識させ、その管理を十分に行わせる必要があることにかんがみると、通帳機械払のシステムを採用する銀行がシステムの設置管理について注意義務を尽くしたというためには、通帳機械払の方法により払戻しが受けられる旨を預金規定等に規定して預金者に明示することを要するというべきであるから」、Yが、「通帳機械払のシステムについて無権限者による払戻しを排除し得るよう注意義務を尽くしていたということはできず」、Yには、「本件払戻しについて過失があったというべきである。」

 確かに、Xは、「本件暗証番号を本件車両の自動車登録番号の4桁の数字と同じ数字とし、かつ、本件通帳をダッシュボードに入れたまま本件車両を自宅近くの駐車場に駐車していたために、何者かにより本件通帳を本件車両ごと盗まれ、本件暗証番号を推知されて本件払戻しがされたものと認められるから、本件払戻しがされたことについては」、Xにも、「帰責事由が存するというべきであるが、この程度の帰責事由をもって」、Yに「過失がある」との前提事実が覆されることはないというべきである。

(4) したがって、本件払戻しについて、478条により弁済の効力を認めることはできない。

3 よって、XのYに対する上記請求は認められる。

 

  • 預金者の確定 ⇒ 判例は、定期預金契約の場合は、①銀行は預金を受け入れる段階では、通常、預金者が誰であるかについて利害関係を持たないこと、②払戻段階においては銀行は預金者がだれであるかについて利害関係を有するものの、銀行の保護については、民法478条でなしうることを根拠に、このような銀行よりも実際にその金銭を出捐した者の保護を優先させるべきと考え、預金者実際に預け入れた金銭を支出した出捐者としている。他方、その後の判例では、普通預金等(消費寄託であり、いつでも預金の返還を請求することが可能なもの(666条3項))について、実質的な資金の帰属者と預金の名義人が異なる場合にはa口座開設者がだれであったか、bその際の名義はだれであったか、ⅽ預金契約締結の代理権を与えていた事情は記録上伺えたか、d口座を管理していた者がだれであったか、さらには、f金銭の実質的な所有者が誰であったかも考慮したうえで、預金者が誰であるかを判断したものがある。以上を踏まえ、判例は、定期預金契約の場合には上記①②の理由から出捐者を預金者とし、他方、普通預金流動性のある預金の契約の場合には、預金債権が全体として誰に帰属しているのかを、a~d等といった事実をもとに判断すべきとしているのだという解釈もあり得る。もっとも、金融機関が犯罪に利用されることが多くなってきた昨今においては、金融機関にとって、取引名義人が実在すること・預金行為者と名義人の同一性は重大な関心事項であるから、定期預金契約の場合には出捐者を預金者とすべきとする判例法理は、昨今においては妥当しなくなっているというべきである。そこで、後者の判例は、前者の判例に変更を加えるものであると考えるべきである。すなわち、契約当事者が誰であったかについては、定期預金契約であるか普通預金契約であるか否かを問わず、a~fなどの事情を考慮して、金融機関から見て金銭の寄託者であると評価される者が、預金者であると解すべきである。

 

百選Ⅱ-36 弁済による代位

1 「主たる債務者」Aの「委託を受け」た保証人であるXは、「主たる債務者」Aに「代わって」454万円を債権者Bに「弁済」しているところ、このような場合、XはAに対する求償権を取得する(性質は不当利得)。

 そして、本件においては、Xが代位弁済したとき、AはXに代位弁済額及び年18.25%の割合による遅延損害金を支払う旨の合意がXA間であったところ、このような合意も契約自由の原則の観点からは有効であると解されるから、Xは、Aに対して、弁済した金額454万円とその翌日からの遅延損害金年18.25%を請求できることになる(459条1項、2項、442条2項、419条1項)。

2 また、それと同時に、Xは、Bの有していた原債権に加えて、抵当権等の「担保」も、取得し、上記求償権の範囲内で行使することができるようになる(500条・501条)。そこで、Xとしては、Bが有していた、甲根抵当権にかかっていくことができる。それゆえ、本件においては、甲根抵当権を実行しようとしている後順位抵当権者であるYに対して、配当異議の訴えを提起することが考えられる。

 そして、本件において、XとCの間では、Xが弁済をした場合にはXはCに対しその根抵当権の全部につき代位し、上記求償権の範囲で根抵当権全部を行使することができる旨の合意があったというのであるから、Xとしては、この合意に基づき、Yに対して配当を要求することが考えられる。では、これは認められるか。

(1) まず、契約自由の原則からは、XA間の合意だけでなく、XC間の合意も有効と解すべきである。

(2) もっとも、契約の相対効からすれば、Xは、この合意をYに対抗することができないのではないか。

 そもそも、弁済による代位の制度は、代位弁済者が求償権の範囲内で原債権およびその担保を行使することを認める制度である。そうであるとすれば、甲が担保する債権はあくまで原債権であるから、弁済者は後順位抵当権者等との間で物権的な対抗問題を生ずる関係には立たないし、後順位抵当権者は登記で公示されている先順位抵当権の担保額を受忍する立場にあるものといえる。また、後順位抵当権者の、法定代位割合を基準とした配当が受けられるとの期待はあくまで事実上のものに過ぎず、保証人間の特約によって生じる反射的な不利益を、後順位抵当権者は甘受せざるを得ない地位にあるといえる。

 それゆえ、Xは、上記合意を、Yに対抗できる。

3 よって、Xは、本件の合意に基づく割合の配当を、要求することができると言うべきである。もっとも、抵当権者は、もともと、原債権の元本及び最後の2年分の利息についてのみ配当を受けることができるにすぎないから、Xは、この制約を受ける。

 

百選Ⅱ-37 担保保存義務免除特約の効力

1 「債権者が故意又は過失によってその担保を喪失し、又は減少させたときは」、「弁済をするについて正当な利益を有する者」は、「代位をするに当たって担保の喪失又は減少によって償還を受けることができなくなる限度において、その責任を免れる」とされている(504条1項)ところ、本件において、「債権者」Yは、「故意」に、追加担保を放棄することによって「担保を喪失」させている。そのため、連帯保証人であって「弁済をするについて正当な利益を有する者」(500条)であるCは、「代位をするに当たって担保の喪失又は減少によって償還を受けることができな」った限度において、即ち、追加担保の放棄によって償還ができなくなった時価○○万円全額について「責任を免れる」ことになるのが原則であり(504条1項)、また、その後、Cから責任が消滅した地位を相続したXも、この免責効を主張することができるのが原則である。

2(1) もっとも、「債権者が担保を喪失し、又は減少させたことについて取引上の社会通念に照らして合理的な理由があると認められるときは」、上記免責の効力は認められない(504条2項)。これを本件についてみると、Yが「本件追加担保を放棄したことは、金融取引上の通念から見て合理性を有」するものといえる。

 それゆえ、Yとしては、これを主張することにより、上記501条によるXの免責効を否定することができる。

 そうである以上、Xは、Cから責任が消滅していない地位を相続したことになり、Xは、連帯保証人としての債務を免れないことになる。

(2) また、Yとしては、CY間で、「根抵当権設定者は、貴金庫がその都合によってほかの担保若しくは保証を変更、解除しても免責を主張しません」との特約がなされていたことをあげ、Cは504条1項によっても免責されなかったこと、及び、その地位を相続したXは依然連帯保証人としての債務を負い続けていることを主張することが考えられる。

ア そこで、まず、このような特約の効力が問題となる。

 504条は任意規定であって、このような特約を締結すること自体否定されていない。そのため、本件免責特約自体は有効である。

イ そして、①「当該保証等の契約及び特約が締結されたときの事情、その後の債権者と債務者との取引の経緯、債権者が担保を喪失し、又は減少させる行為をした時の状況等を総合して」、債権者の行為が、「金融取引上の通念から見て合理性を有」する場合で、かつ、②「保証人等が特約の文言にかかわらず、正当に有し、又は有しうべき代位の期待を奪うものとは言えないときは」、③「他に特段の事情がない限り」、上記特約は効力を発揮するものと解される。このような場合は、信義則違反・権利濫用の問題は生じないためである。

 これを本件について見ると、上記の通り、Yが「本件追加担保を放棄したことは、金融取引上の通念から見て合理性を有」するものといえるし、「本件不動産を担保として提供したA及びその相続人らの本件追加担保への正当な代位の期待を奪うものとはいえない」。また、「他に特段の事情のあることの主張立証」もない。

 よって、本件においては、本件特約の効力が生じるものといえる。

ウ したがって、Yによる追加担保の放棄によっては、Xに、504条1項による免責の効果は生じなかったというべきであり、そうである以上、Xは、責任が消滅していない連帯保証人としての地位を承継したものといえる。

3 よって、Xは、依然、連帯保証人としての責任を負うものであるといえる。

 

百選Ⅱ-38 時効消滅した債権による相殺と相殺適状の要件

1 YのXに対する金銭消費貸借契約に基づく貸金返還請求は認められるか。

 これについて、Yは、金銭消費貸借契約に基づきXに対して金銭を交付しているところ、Yの上記請求は認められるのが原則である。

2 もっとも、Xとしては、Xが過払金返還請求権を有していることを挙げて、これを自働債権とし、Yの上記請求権を受働債権とする相殺を抗弁として主張することが考えられる。他方で、Yとしては、Xが有する過払金返還請求権は、既に、時効消滅していると反論することになろう。

 この点につき、いかに解すべきか。

(1) 相殺が認められるには、①同一当事者間に互いに対立する債権が存在し、②両債権が同種の目的であり、③両債権の弁済期が到来していること(505条1項)、のすべてを満たして相殺適状(506条2項)にある必要がある。このような場合には、④両債権を対当額で相殺する旨の意思表示(506条1項前段)をすることにより、相殺適状時にさかのぼって効力を生ずる(506条2項)ことになる。 ※ なお、③につき、「また、受働債権の債務者がいつでも期限の利益を放棄することができることを理由に両債権が相殺適状にあると解することは、上記債務者が既に享受した期限の利益を自ら遡及的に消滅させることとなって、相当でない。したがって、既に弁済期にある自働債権と弁済期の定めのある受働債権とが相殺適状にあるというためには、受働債権につき、期限の利益を放棄することができるというだけではなく、期限の利益の放棄又は喪失等により、その弁済期が現実に到来していることを要するというべきである。」

 そして、時効により消滅した債権を自働債権とする相殺の場合、「当事者の相殺に対する期待を保護するという民法508条の趣旨に照らせば」、「同条が適用されるためには、消滅時効が援用された自働債権はその消滅時効期間が経過する以前に受働債権と相殺適状にあったことを要すると解される。」

(2) これを本件について見るに、「消減時効が援用された本件過払金返還請求権については、上記の相殺適状時において既にその消滅時効期間が経過していたから、本件過払金返還請求権と本件貸付金残債権との相殺に同条は適用され」ない。

(3) それゆえ、Xがした相殺はその効力を有しない。

3 よって、YのXに対する上記請求はその全額について認められる。

 

百選Ⅱ-39 差押と相殺

1 本件の、XがAのYに対する預金債権を差し押さえてする、Yに対する支払い請求は認められるか。

2 Yとしては、A会社に対する貸付債権との相殺により、上記預金債権は消滅しているとして、上記Xの請求を拒むことが考えられる。では、これは認められるか。

(1) 相殺が認められるには、①同一当事者間に互いに対立する債権が存在し、②両債権が同種の目的であり、③両債権の弁済期が到来していること、のすべてを満たして、④取り立て前に相殺適状(506条2項)であることが必要であり、相殺適状が現存していれば、⑤両債権を対当額で相殺する旨の意思表示(506条1項前段)により、相殺適状時にさかのぼって効力を生ずる(506条2項)。

 そして、本件のように、受働債権であるAのYに対する預金債権がXに差し押さえられているような場合には、YがAとの間での相殺を第三者であるXに対抗できるためには、さらに、⑥自働債権が差押え前に取得したものであるか、或いは、⑤’自働債権を発生させる原因が差押前にあったといえる必要がある。 ※⑤については差押えまでに相殺の合理的期待が生じており、その期待は両債権の弁済期の先後に関係なく類型的に保護されるべきであって、差押という第三債務者に関係のない事象によってその地位が奪われるべきではないからである。それゆえ、相殺を差押権者に対抗できる(511条1項後段)。 ※⑤’ 現実に債権を取得したのが差押後だとしても、自働債権を発生させる原因が差押前にあれば、その時点で相殺に対する合理的な期待があり、そのような期待をその後に第三債務者に関係のない差押によって覆されることは不当であるからである。それゆえ、511条2項本文では、差押前の原因に基づいて生じた債権については、その取得が差押後であっても差押えに相殺をもって対抗できるとしている。 ※他方で、差押え後に取得した自働債権については、そもそも差押え時点においては反対債権を第三債務者は有していなかったのだから、相殺の期待権も発生していなかった一方で、仮に差押え後に取得した反対債権で受働債権を相殺できるとすれば、反対債権による相殺権の付着していなかった受働債権を差し押さえた差押え権者の地位が事後的に覆されることになって不当である。よって、差押え後に取得した反対債権での相殺をもって原則として差押権者に対抗することはできない(511条1項前段)。同様、差押前の原因に基づいた生じた債権であっても、それを差押後に第三者から取得した場合は、差押え前に第三債務者において相殺の具体的期待権を形成していたとはいえないから相殺は対抗できない(511条2項後段)。 ※そして、511条2項前段の相殺権の拡張は、差押前における相殺の合理的期待を根拠とするから、ここでいう「差押前の原因」とは、(ア)自働債権の取得の直接の原因が差押前に存すること、だけでは足りず、(イ)当該自働債権と受働債権の内容および相互の関連性を考慮したとき、相殺への期待を直接かつ具体的に基礎づける原因であることが必要である。

(2) まず、本件の貸付債権と預金債権はともに金銭債権であるから、「2人以上が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合」に当たる(①②)。また、特約により、自働債権たる賃金債権は既に弁済期が到来しているといえるし、受働債権たる預金債権については期限の利益を放棄する意思表示が可能であるところ(136条)、やはり、特約により期限の利益の放棄の意思表示が当然になされていたといえる。よって、③の要件を満たす。そして、本件の特約内容に鑑みれば、本件においては、Xの差押えと同時に、即ち、取立前に、本件貸付債権と預金債権は相殺適状にあったものといえる(④)。

 そのうえで、Xは、第1審の口頭弁論期日において相殺の意思表示をしている(⑤)のであって、この相殺の効果は、相殺適状時、すなわち、Xの差押時にさかのぼって、生じていたことになる。

  かつ、本件貸付債権は差押命令がYに送達された日よりも前に発生しているから、「差押え前に取得した債権」にあたり、Yは、この相殺の効果をXに対抗できることになる。

3 よって、Xの上記請求は認められない。

 

百選Ⅱ-40 事情変更の原則の要件

1 XらのYに対する本件契約に基づくゴルフ場の優先的優待的利用権の主張は認められるか。

2 Yとしては、事情変更の原則の適用により、Xらは上記権利を有していないとして、Xらの上記請求を拒むことが考えられる。

(1) では、これは認められるか。

(2) 事情変更の原則を適用するためには、契約締結後の事情の変更が、客観的に観察して信義誠実の原則上、当事者を契約によって拘束することが著しく不合理と認められる場合であることを要する。

 すなわち、①契約締結後に著しい事情(当該契約の基礎となっていた客観的事情)の変更が生じた場合で、②著しい事情の変更を当事者が予見できず、しかも、③著しい事情の変更が当事者の責に帰すべからざる事由によって生じたものであるといえるといった要件を満たし、④契約どおりの履行を強制することが著しく公平に反し、信義則にもとることいえる場合には、事情変更の原則の適用があるものといえる。

 「一般に、事情変更の原則の適用に関していえば、自然の地形を変更しゴルフ場を造成するゴルフ場経営会社は、特段の事情のない限り、ゴルフ場ののり面に崩壊が生じ得ることについて予見不可能であったとはいえず、また、これについて帰責事由がなかったということもできない。けだし、自然の地形に手を加えて建設されたかかる施設は、自然現象によるものであると人為的原因によるものであるとを問わず、将来にわたり災害の生ずる可能性を否定することはできず、これらの危険に対して防災措置を講ずべき必要の生ずることも全く予見し得ない事柄とはいえないからである。」

 具体的に、「本件についてこれをみ……に、……本件ゴルフ場は自然の地形を変更して造成されたものであり」、契約当事者である「Aがこのことを認識していたことは明らかであるところ、同社に……特段の事情が存在したことの主張立証もない」。よって、「本件においては、……同社が本件ゴルフ場におけるのり面の崩壊の発生について予見不可能であったとはいえず、また、帰責事由がなかったということもできない。」

(3) それ故、本件においては事情変更の原則の適用は否定される。

3 よって、XらのYに対する請求は認められる。