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百選起案 民法Ⅰ(第8版) 41~50

百選Ⅰ-41

1 XのYらに対する所有権に基づく本件土地についての本件付記登記の抹消登記手続請求及び本件土地の明渡請求は認められるか。

2 上記請求が認められるためには、Xに本件土地の所有権が帰属していることが必要である。

(1) 農地の所有権を移転するには、原則として農地法所定の許可を必要とし(農地3条1項)許可が得られないと所有権は移転しないところ、この許可申請は、「当事者が連署」した許可申請書によりすることになっている(農地法施行規則10条1項柱書)ことから、農地の売買の場合、買主は売主に対して許可申請協力請求権を有するが、この請求権は「民法167条1項の債権に当たる」。

 それゆえ、この請求権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき或いは権利を行使することができる時から10年間これを行使しない場合は、債務者の援用により、時効によって消滅する(145条、166条1項)。

 本件においては、Yが上記請求権を行使できる状態になったときから10年が経過している。それゆえ、Xが消滅時効を援用した場合には、Yの請求権は消滅し、本件土地の所有権はXに確定的に帰属するはずであった。

(2) もっとも、本件において、Xは、この消滅時効の援用をなしていない。「時効による債権消滅の効果は、時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効が援用されたときにはじめて確定的に生ずるものと解するのが相当であ」り、消滅時効の援用がされるまでの間は、未だ、本件土地の所有権がXに確定的に帰属するという効果は生じていないことになる。

(3) そして、農地の売買契約後、許可を得ないうちに当該農地が非農地化した場合、非農地化した経緯等をも考慮したうえで、もはや農地法は適用されなくなるから、許可なしに所有権が買主に移転することを認めるべきであるところ、本件土地は、Xが時効を援用しない間に、すでに非農地化している。すなわち、Xが時効を援用せず、消滅時効の効果によりXに本件土地の所有権が確定的に帰属する前に、Yらは本件土地を取得したといえ、他方、Xは本件土地の所有権を失ったものといえる。

3 よって、Xの上記請求は認められない。

 

百選Ⅰ-42 時効の援用権者

1 X1は、Yに対して、本件根抵当権設定登記抹消登記手続請求をすることが考えられるところ、その根拠は、根抵当権に基づく妨害排除請求権に求められる。

 このようなXの請求が認められるためには、①X1が本件不動産について根抵当権を有していることと、②本件不動産についてY名義の根抵当権設定登記がされていることが必要であるところ、いずれも認められる。

 よって、X1の上記請求は認められるのが原則である。

2 他方、これに対して、Yは、本件根抵当権設定登記は、Yの有する貸金返還請求権を被担保債権とする根抵当権設定契約に基づくものであり、登記保持権原がある旨反論することが考えられる。

 他方、X1としては、Yが上記貸金債権を「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しな」かったため「時効によって消滅」(166条1項1号)しており、付従性により登記保持権原も消滅していると主張することが考えられる。

(1) そこで、後順位根抵当権者たるX1が時効を「援用」することができる「当事者」、すなわち「権利の消滅について正当な利益を有する者」(145条)にあたるかが問題となる。

(2) ここで、時効の「援用」は、時効の利益を受けることを良しとしない者の意思を尊重するための制度である。にもかかわらず、時効の利益を間接的に受けるに過ぎない者が「援用」できるとすると、直接に利益を受ける者の意思を無視する結果となり、「援用」の制度趣旨を没却してしまう。したがって、「権利の消滅について正当な利益を有する者」とは、時効により直接に利益を受ける者に限定すべきである。

 そして、後順位抵当権者は、目的不動産の価格から先順位抵当権によって担保される債権額を控除した価額についてのみ優先して弁済を受ける地位を有するものであるところ、先順位抵当権の被担保債権が消滅すると、後順位抵当権者の抵当権の順位が上昇し、これによって被担保債権に対する配当額が増加することがあり得るが、この配当額の増加に対する期待は、抵当権の順位の上昇によってもたらされる反射的な利益にすぎないというべきである。

 このように、後順位抵当権者が先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができるとした場合に受け得る利益は、上記のとおりのものにすぎず、消滅時効を援用することができないとしても、目的不動産の価格から抵当権の従前の順位に応じて弁済を受けるという後順位抵当権者の地位が害されることはないのである。

  • 「第三取得者」(145条かっこ書)は、被担保債権が消滅すれば抵当権が消滅し、これにより所有権を全うすることができる関係にあり、消滅時効を援用することができないとすると、抵当権が実行されることによって不動産の所有権を失うという不利益を受けることがあり得る。このように、後順位抵当権者と第三取得者とは、その置かれた地位が異なるものであるというべきである。

 そうすると、後順位抵当権者は先順位抵当権の被担保債権の消滅により直接利益を受ける者に該当するものではないと解するのが相当である。

とすれば、X1は「権利の消滅について正当な利益を有する者」にはあたらない。

(3) したがって、X1の主張は認められない。

3 よって、X1の請求は認められない。

  • 最判昭9.26は、「金銭債権の債権者は、その債務者が、他の債権者に対して負担する債務について、その消滅時効を援用しうる地位にあるのにこれを援用しないときは、債務者の資力が自己の債権の弁済を受けるについて十分でない事情にあるかぎり、その債権を保全するに必要な限度で、民法423条1項本文の規定により、債務者に代位して他の債権者に対ずる債務の消滅時効を援用することが許される」。また、「他人の債務のために物上保証人となっている場合に」も同様、「その被担保債権について」主たる債務者が「その消滅時効を援用しうる地位にあるのにこれを援用しないときは、債務者の資力が自己の債権の弁済を受けるについて十分でない事情にあるかぎり、その債権を保全するに必要な限度で、民法423条1項本文の規定により、債務者に代位して他の債権者に対する債務の消滅時効を援用することが許される」。よって、債務者の無資力等の要件を充たす場合には、後順位抵当権者も、その債権者としての地位に基づいて、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができると考えられる。

 

百選Ⅱ-43

1 Xは、Yに対して、請求異議の訴えを提起し、「その債務名義による強制執行の不許を求める」ために、「異議」(民事執行法35条1項)の事由として、YのXに対する貸金債権(以下「本件債権」という)の消滅時効(166条1項1号)を主張することが考えられる。

 本件債権の弁済期は昭和21年8月29日であり、昭和31年7月の時点で、「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しな」かった(同号)といえる。したがって、本件債権は「時効によって消滅する」(同号)のが原則である。

2 これに対して、Yは、Xが、時効完成後の昭和33年3月7日付の手紙でYに対して本件借金を元本だけに減額してもらいたい、そうしてくれると同年中に分割払いで返済できることを申し入れていることから、「時効の利益」の「放棄」(146条)があったと主張することが考えられる。しかし、「放棄」とは、時効の完成を認識した上で行うものであるところ、Xは時効の完成を認識していないから、「時効の利益」の「放棄」があったとはいえない。

 もっとも、時効完成後に債務を承認した場合、このような行為は時効による債務消滅の主張と相容れない行為であり、債権者においてももはや時効の援用をしない趣旨であると考えるであろう。そこで、債権者保護の観点から、信義則(1条2項)上、債権者の側に信義則違反の事情が認められる場合を除き、時効援用権を喪失すると構成すべきところ、Yに信義則違反の事情は認められない。

 したがって、Xは、信義則上、時効援用権を喪失する。

3 よって、Xの請求は認められない。

 

百選Ⅰ-44 消滅時効の起算点

1 Xらの、Yに対する、安全配慮義務違反を理由とする、債務不履行責任の追及としての、損害賠償請求は認められるか(415条1項)。

2 一定の契約関係に基づき特別の社会接触の関係に入った当事者は、当該法律関係の付随義務として相手方に対して信義則上の義務を負うことがあるというべきである。それゆえ、雇用関係やこれと同等の実質的な労務関係にある当事者のうち、使用者側は、報酬支払い義務にとどまらず、人的(選任・教育;道交法条の義務違反はこの範囲内)物的設備を編成し、雇用者として合理的な注意を尽くすという、従業員の生命及び健康等を危険から保護するための義務を負うことになる(安全配慮義務)。このことは、雇用者が国である場合も異なることはない。

 本件においては、Xらと国の間には雇用契約関係があったといえる。そうであれば、国は、Xらに対して上記のような安全配慮義務を負っていたといえるところ、具体的には、Xらが炭鉱での労働過程でじん肺症にり患しないよう防止する措置を取る義務を負っていたといえる。それにもかかわらず、本件において、国は、この義務に違反しており、債務不履行があるといえる。

 それゆえ、Xらの上記請求は認められるのが原則である。

3 もっとも、Yとしては、Xが上記請求権を「権利を行使することができる」ときから10年間」行使しなかったため、「時効によって消滅」(166条1項2号)すると主張することが考えられる。

(1) そこで、そもそも、本件請求権の時効の起算点をいかに解すべきかが問題となる。

(2) これについて、「契約上の基本的な債務の不履行に基づく損害賠償債務は、本来の債務と同一性を有するから、その消滅時効は、本来の債務の履行を請求し得る時から進行するものと解すべきである」が、「安全配慮義務違反に基づく損害賠償債務は、安全配慮義務と同一性を有するものではない。」なぜなら、「安全配慮義務は、特定の法律関係の付随義務として一方が相手方に対して負う信義則上の義務であって、この付随義務の不履行による損害賠償請求権は、付随義務を履行しなかった結果により積極的に生じた損害についての賠償請求権であり、付随義務履行請求権の変形物ないし代替物であるとはいえないからである。」

 そして、「一般に、安全配慮義務違反による損害賠償請求権は、その損害が発生し」、損害賠償請求権が成立した時を、その起算点とすべきである。この時点で、被害者は、「同時にその権利を行使することが法律上可能となる」ためである。

 もっとも、「病状進行の有無や程度、速度の多様」なじん肺の特異性からすれば、本件安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求権の消滅時効の起算点は、現実に「損害賠償請求権を行使することが可能とな」ったとき、すなわち、「各人にとって最も重い行政決定を受けた日(=最終の行政上の決定を受けた時)」とすべきである。

(3) そうすると、本件においては、未だ消滅時効期間は、経過していないということができる(166条1項1号、2号参照)。

4 よって、Xらの上記請求は認められる。

 

百選Ⅰ-45 自己の物の時効取得

1 本件におけるXの、Yに対する、所有権に基づく妨害排除請求としての本件家屋の明渡請求は認められるか。この請求が認められるためには、Xに本件家屋の所有権が帰属している必要がある。

(1) Xは確かに、本件家屋を競落し、所有権取得登記を経由しているが、本件においてYはこれよりも先にAから本件家屋の贈与を受けていたのであるから、XとYは対抗関係に立ち、二重譲渡により先に対抗要件を備えた者が確定的に所有権を取得する結果、もう一方の者は遡及的に所有権を喪失することとなる(177条)。

(2) そうすると、本件においても先に登記を備えたXが確定的に所有権を取得することになる。

(3) よって、本件におけるXのYに対する請求は認められることになりそうである。

2 とはいえ、Yは取得時効を援用することにより、本件家屋を取得することができるのではないか(162条2項)。

 不動産の時効取得は、時効取得完成前に登記を経由した第三者に対しては、登記をしなくても時効取得をもって対抗することができるため問題となる。

(1) これが認められるためには、Yが①10年間、②他人の物を、③所有の意思に基づき、④平穏かつ公然とその占有を継続し、⑤かつ、占有の開始時に善意、⑤無過失であったことが必要である。

(2) しかし、本件においてYは、本件家屋が自己の所有物であることを主張している。そのため、自己物は時効取得の対象とはならず、Yは本件家屋を時効取得することはできないのではないか。

 ここで、時効制度の趣旨は、永続した事実状態を尊重してこれを実体法上の権利関係に高め、かつ、真実の立証の困難性を救済することにある。そうだとすれば、自己物を永く占有する者であってもその登記を経由していない等のために所有権取得の立証が困難である場合や、所有権の取得を第三者に対抗することができない等の場合には時効制度の趣旨を及ばせる必要があるといえる。そのため、自己物・他人物を区別する必要はなく、162条が文言上、「他人の物」としているのは、通常の場合において自己物について取得時効を援用することは無意味であるからという理由に過ぎず、自己物について取得時効の援用を許さない趣旨のものではないというべきである。

 よって、自己物でも時効取得は可能であると解する(②)。

(3) そして、占有者は、所有の意思を持って、善意で、平穏に、かつ公然と占有をするものと推定されるから(③④⑤)、10年間本件家屋を占有していたYは(①)、自身が無過失であったことを立証しさえすれば(⑥)、援用することにより(145条)、本件家屋を時効取得することができる。

3 よって、XのYに対する請求は認められない。

 

百選Ⅰ-46 前主の無過失と10年の取得時効

1 Xらは、Y2に対して、①所有権に基づく本件土地(Y1⇒C⇒Y1⇒D⇒Y2と譲渡された約2万坪の土地)の所有権確認請求、②所有権に基づく妨害排除請求としての所有権移転登記抹消登記手続請求、③所有権に基づく返還請求としての引渡請求をすることが考えられる。

2 まず、①が認められるためには、a. Xらが本件土地を所有していることが必要である。また、②が認められるためには、aに加え、b. 本件土地についてY2名義の所有権移転登記がされていることが必要である。さらに、③が認められるためには、aに加え、c. Y2が本件土地を占有していることが必要である。

 そして、b,cについては認められることから、以下、aについて検討する。

(1) まず、Aが本件土地を所有していたことは認められるところ、BがAを相続し、さらにXらがBを相続しているから、Xらの本件土地所有という要件は満たされそうである。

(2) これに対して、Y2は、短期取得時効の成立により、Y2が本件士地の「所有権を取得する」(162条2項)から、Xらは本件土地の所有権を喪失したと反論することが考えられる。そこで、その要件を検討ずる。

ア まず、木件土地を「10年間…占有(162条2項)」することが必要であるところ、「占有者の承継人は…自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる」(187条1項)ところ、Cが約4年間、Y1が約3年間、Dが約4年間本件士地を占有している。そして、「前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定」される(186条2項)ところ、本件においては、186条2項の推定を覆す事情は見当たらないから、Y2らは、本件土地を「10年間…占有」したと認められる。

イ 次に、「所有の意思」「平想」、「公然」(同項)については、「占有者は、所有の意思をもって、善意で、平親に、かつ、公然と占有をするものと推定」される(186 条1項)ところ、かかる推定を覆す事情はないため、認められる。

ウ 次に、「他人の物」(162条2項)は要件とならない。取得時効は、当該物件を永続して占有するという事実状態を、一定の場合に、権利関係にまで高めようとする制度であるから、所有権に基づいて不動産を永く占有する者であっても、その登記を経由していない等のために所有権取得の立証が困難であったり、または所有権の取得を第三者に対抗することができない等の場合において、取得時効による権利取得を主張できると解することが制度本来の趣旨に合致するものというべきであり、162条が時効取得の対象物「他人の物」としたのは、通常の場合において、自己の物について取得時効を援用することは無意味であるからにほかならないのであって、同条は、自己の物について取得時効の援用を許さない趣旨ではないからである。

エ 最後に、上記のとおり、186条1項により「その占有の開始の時に、善意」であったことは推定されるが、「過失がなかった」(162条2項)ことは推定されない。ここで、最初の占有者であるCは「その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかった」と認められるが、Y1には「過失」があった。そこで、「占有の開始の時」の善意・無過失を誰についで判断すべきかが問題となる。

 187条2項が「前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する」としているのは、「瑕疵のないことはもちろんのこと、瑕疵のあることもまた承継する」という意味であり、占有と瑕疵のみを承継するという意味ではない。

 また、同一人による占有継続の場合には、占有開始時に善意・無過失であれば足りることとの均衡を図る必要がある。とすれば、「占有の開始の時」の善意・無過失はCについて判断すべきであるから、「その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかった」と認められる。

オ したがって、短期取得時効が成立し、Xらは本件土地の所有権を喪失する。

3 よって、Xらの請求は認められない。

 

百選Ⅰ-47 賃借権の時効取得

1 Xらは、Yらに対して、所有権に基づく返還請求として、本件建物収去本件土地明渡請求をすることが考えられる。

 この請求が認められるためには、①Xらが本件土地を所有していることと、②Yらが本件建物を所有して本件土地を占有していることが必要であるところ、いずれも認められる。

 よって、Xらの上記請求は認められるのが原則である。

2 これに対して、YらはEF間で締結された賃貸借契約に基づく賃借権を相続したとして、Yらには占有正権限があると主張することが考えられる。しかし、かかる賃貸借契約は他人物賃貸借契約に過ぎないから、賃借権を所有者たるXらに対抗することはできない。したがって、かかる主張は認められない。

3 そこでYらとしては、賃借権を時効取得(163条)したとして、占有正権限を主張することが考えられる。

(1) まず、賃借権は「所有権以外の財産権」(同条)にあたる。不動産賃借権は占有を要素とし、権利行使の維続性が予定されており、地上権とほとんど変わらない機能を有するからである。

(2) 次に、「占有者は…平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定」される(186条1項)ところ、かかる推定を覆す事情はないため、Yらは、「平穏に、かつ公然と」(同条)との要件も満たす。

(3) 次に、「行使する」(同条)とは、「物の使用及び収益」(601条)をいうところ、これが認められるためには、土地の継続的利用という外形的事実の存在が必要である。また、「自己のためにする意思をもって」(163条)と認められるためにはその用益が賃借の意思に基づくものであることが客観的に表現されていることが必要である。 

 本件において、Fは、本件建物に居住し、その敷地として本件土地を使用する一方、その賃料はEの姉を通じてEに支払ってきた。また、Fが死亡し、Yらが相続した後は、Y1が本件建物に居住し、前記と同様の方法で昭和55年分まで賃料の支払を続けてきた。さらに、F及びYらは、以上の期間中、Xらや本件土地の前所有者から本件土地の明渡しを求められることはなかった。

 以上の事実に鑑みれば、土地の継続的用益という外形的事実が存在し、かつ、その用益が賃借の意思に基づくものであることが客観的に表現されているといえる。とすれば「自己のためにする意思をもって…行使する」と認められる。

(4) 最後に、「前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定」される(186条2項)ところ、Fは、昭和25年5月12日に本件土地について用益を開始することで占有を開始し、昭和45年5月12日の時点でも本件土地を占有していたという証拠があるから、その「占有は、その間継続したものと推定」される。そして、かかる「推定」を覆す事情はないから、「20年…を経過」(163条)したと認められる。

(5) したがって、Yらは「その権利」たる賃借権「を取得する」(同条)。

3 そして、Yらは、本件「土地の上に借地権者が登記されている」本件「建物を所有」しているため、賃借権を「第三者」たるXら「に対抗することができる」(借地借家法10条1項)。

4 よって、Xらの請求は認められない。

 

百選Ⅰ-48

1 XのYに対する本件土地所有権に基づく本件建物収去土地明け渡し請求は認められるか。

2 この請求が認められるためには、①Xが本件土地の所有権を有しており、それにもかかわらず、②Yが本件土地の上に建物を所有し、本件土地を占有していることが必要である。本件においては、Xは、本件土地を本件土地に付着していた抵当権の実行処分による公売で取得しており、①の要件を満たす。また、②についても、本件においてはその要件を満たしている。

 よって、Xの請求は認められるのが原則である。

3 もっとも、ここで、Yとしては、自身は本件土地の賃借権を時効取得したと主張し、占有権限を主張することが考えられる。

(1) これについて、確かに、賃借権も、「所有権以外の財産権」(163条)にあたるから、これを時効により取得することは可能である。それゆえ、Yが、「善意で、平穏に、かつ、公然と」(186条1項参照)、かつ、無過失で、「自己のためにする意思をもって」(163条)、「10年」、賃借権を「行使」してきたと考えられる本件においては(186条2項参照)、Yは「その権利」たる賃借権「を取得する」(同条)ことになる。

(2) 他方で、「抵当権の目的不動産につき賃借権を有する者は、当該抵当権の設定登記に先立って対抗要件を具備しなければ、当該抵当権を消滅させる競売や公売により目的不動産を買い受けた者に対し、賃借権を対抗することができないのが原則である。」なぜならば、抵当不動産が競売された場合、最先順位抵当権者に対抗できない抵当不動産賃借権は、たとえ買受人の所有権移転登記より先に対抗力を具備していても、売却によってそれは失効し、買受人に対抗できなくなるためである(民事執行法59条2項)。そして、「このことは、抵当権の設定登記後にその目的不動産について賃借権を時効により取得した者があったとしても、異なるところはないというべきであ」り、「不動産につき賃借権を有する者がその対抗要件を具備しない間に、当該不動産に抵当権が設定されてその旨の登記がされた場合、上記の者は、上記登記後、賃借権の時効取得に必要とされる期間、当該不動産を継続的に用益したとしても、競売又は公売により当該不動産を買い受けた者に対し、賃借権を時効により取得したと主張して、これを対抗することはできないことは明らかである。」 ※ 確かに、不動産の時効完成後、登記を備えないまま、第三者に不動産が譲渡され登記されたときは、その時点で時効取得者の占有形態は変容したといえ、新たな占有が開始されたと考えることができるから、その時点から時効期間が経過すれば、その第三者は時効完成前の第三者となり、時効取得者は第三者に対し登記なくして時効取得を対抗できるとも思えるが、本件のような場合は、民事執行法59条2項の存在ゆえに、この法理は否定される。

 これを本件について見ると、Yは、賃借権の登記や借地借家法10条に基づく対抗要件等を備えていない。

 そうすると、確かに、本件においては、Xの抵当権設定登記の時から、賃借権という、「所有権以外の財産権」(163条)を、「善意」、「平穏」、かつ、「公然」と(186条1項参照)、かつ、無過失で、「自己のためにする意思をもって」(163条)、「20年」「行使」してきたと考えられるため、Yは新たに「その権利」たる賃借権「を取得する」(同条)ための要件を満たしているものといえるが、Yのこの時効取得の主張は、そもそも、主張自体失当ということになる。

(3) それゆえ、Yの時効取得の主張は認められない。

3 よって、Xの上記請求は認められる。

 

百選Ⅰ-49 物権法定主義

1 Xの執行異議の訴えは認められるか。

2 本件において、Xは、執行異議の訴えにおいて、Aの有する温泉専用権が、Xに担保として譲渡されているところ、これが、Yに優先すると主張することが考えられる。そこで、そもそも、温泉専用権というものに、物権的権利性が認められるかが、まず、問題となる。そして、温泉専用権というものに物権的権利性が認められる場合には、次に、物権法定主義について定めた民法175条と抵触しないかが問題となる。

 これについて、「本件係争の温泉専用権即ち所謂湯口権」は、当該温泉が所在する長野県松本地方においては、「温泉湧出地より引湯使用する……物権的権利」に属している。そして、民法175条の言う「法律」には慣習法も含まれると解されるところ、その地方には、「温泉湧出地から引湯使用する一種の物権的権利に属し、源泉地の所有権と独立して処分されるという地方慣習法」が存在する。それゆえ、温泉専用権には物権的権利性が認められるものと解すべきであり、また、このように解しても、物権法定主義との関係で問題はない。

3 もっとも、「地方慣習法」に基づいて「如上の排他的支配権」を肯認する以上は、「此の種権利の性質上民法第177条の規定を類推し」、第三者をしてその権利の変動を「明認」させるに足りるべき「特殊の公示方法」を講ずるのでなければ、第三者にこれを対抗しえないと解すべきである。

 では、具体的に、いかなる「公示方法」を要するか。一般に、地下水の利用は土地所有権の行使(207条)に含まれるから、地下水の利用権は土地の譲渡に随伴するものであるといえるが、温泉専用権の土地所有権からの独立性の程度には幅がある。それゆえ、①登記されていない立木と同様、明認方法を施すことによってはじめて土地から独立した取引客体と認められる場合には、源泉地と共に処分するときは源泉地所有の移転登記で足り、別個に処分するときに限り明認方法によって温泉専用権の移転を明確にする必要がある一方、②建物と同様、土地とは常に別個の財産とみるべき場合にはたとえ源泉地と共に処分する場合でも源泉地所有権の移転登記とは常に別個の明認方法が必要となる。そして、①②のいずれであるかも地方慣習法によって判断すべきところ、本件においては・・・

 そこで、このルールの下、XとYのいずれが優先するかについて検討するに・・・

 それゆえ、本件においては、○○が優先するということになる。

4 よって・・・

 

百選Ⅰ-50 土地崩壊の危険と所有権に基づく危険防止請求

1 Xは、Yに対して、本件土地所有権に基づく物権的妨害排除請求として、本件危険を防止するのに必要な措置を実施することを請求しているが、これは認められるか。

2 上記請求は、①その土地の所有権を有している者が、その土地に侵害が生じているという場合に、②その侵害を生じさせている物の所有者に対して、③その侵害が違法と評価される限りで、することができる。

(1) 本件土地は、Xの所有である(①)。

(2) また、本件土地には、Y所有の家屋の一部が崩落する危険が生じているため、②の存在も認められる。

(3) では、上記侵害を生じさせた甲土地の所有者はYであるところ(②)、この侵害は違法と評価されるか(③)。

ア 土地・家屋等の所有者が、その権利を行使することにより、他の土地の所有権の行使を妨げている場合には、それが土地所有権の行使に関する相当の注意義務に違反する限り、違法と評価すべきであると考える。

 そこで、具体的にいかなる場合に、所有権行使が相当の注意義務に違反するものといえるかが問題となる。これについては、土地所有者は、その危険を除去しうる立場にあるたことに鑑みれば、当該侵害が不可抗力に起因する場合、または被害者が自らその危険を作出した場合等、被害者がその侵害を認容すべき義務を負う場合でない限り、その土地所有者に相当の注意義務違反があったと(擬制)するのが妥当であると考えられる。

イ 本件においては、上記の通り甲土地の所有者はYであるところ、Xの土地に本件侵害を生じさせたことは、不可抗力であるとは言えない。また、被害者であるXにこれを認容すべき義務があるとの特段の事情もない。

ウ よって、③の要件も満たされる。

(4) 以上より、Xの上記請求は認められる。