○○法ガールになりたい。

○○法ガールといえるほど法学をマスターしたいなと思い作成したブログ。司法試験受験生。最近勉強なんてやめて結婚に逃げたい。

百選起案 憲法(7版) 17~20

百選17 前科照会事件

1 意見の要旨

 本件のY市長がAの代理人B(弁護士)の前科照会に対して回答した行為は、Y市長が負うべき、前科情報等の保管上の注意義務に違反するものであるといえるから、XのY市に対する損害賠償請求(国家賠償法1条1項)は認められる。

2 前科情報等の保管上の注意義務と、国家賠償法上の「過失」ないし「違法」

 憲法13条後段は、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」を保障しているところ、具体的には、人間の人格的生存に不可欠な権利を保障しているものと解される。そして、前科等は、個人のプライバシーのうちでも最も他人に知られたくないものの一つであり、前科等をみだりに公開されない自由は、人間の人格的生存にとって不可欠なものとして、憲法13条後段によって保障されると解すべきである。

 そうであるとすれば、「選挙資格の調査のために作成保管する犯罪人名簿に記載されている」住民の「前科等をみだりに漏えい」させないようにする注意義務を、その管理者である「市区町村長」は負っているというべきである。

 具体的には、「前科等の有無が訴訟等の重要な争点となっていて、市区町村長に照会して回答を得るのでなければ他に立証方法がないような場合には」、「市区町村長」は、「裁判所から前科等の照会」若しくは「弁護士法23条の2に基づく照会」に応じて「前科等につき回答をすることができ」るものと解されるが、この場合であっても、なお、その取扱いには格別の慎重さが要求されるものといわなければならない。

 それにもかかわらず、「市区町村長」が、このような注意義務に反したような場合には、国家賠償法上の「過失」ないし「違法」の要件が満たされることになるものと解される。

3 具体的検討

 「本件において、Xの前科等の照会文書には、照会を必要とする事由として、『中央労働委員会京都地方裁判所に提出するため』とあったにすぎないというのであり、このような場合に、市区町村長が漫然と弁護士会の照会に応じ、犯罪の種類、軽重を問わず、前科等のすべてを報告することは」、「市区長村長」が負うべき前科情報等の保管上の注意義務に違反するものと言わなければならない。

 それゆえ、本件においては、国家賠償法上の「過失」ないし「違法」の要件が満たされることになる。

4 その他

 また、上記注意義務に違反する行為を行ったY市長は、「公共団体の公権力の行使に当たる公務員」であり、上記注意義務に違反する行為は、その「職務を行うについて」のものであるといえる。

5 結論

 よって、Y(市)は、Xに与えた「損害」を賠償する義務を負うから、XのYに対する国家賠償請求は認められるものと解される。

 

百選18 講演会参加者リストの提出とプライバシー侵害

1 意見の要旨

 Y大学が本件名簿の写しを警察に無断で提出した行為(以下「本件行為」という。)は、Xらの個人情報等をみだりに開示されない自由(13条後段)という「法律上保護される利益」を「侵害」(民法709条)するものであるから、XのYに対する損害賠償請求は認められる。

2 憲法13条後段の規定と、民法709条の規定との関係

 ここで、憲法13条後段によって保障される権利ないし自由が侵害されたという場合には、民法709条にいう「権利」ないし「法律上保護される利益」の「侵害」が認められる結果、同条に基づく損害賠償が可能となるものと解される。

3 権利保障

 憲法13条後段は、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」を保障しているところ、具体的には、人間の人格的生存に不可欠な権利を保障しているものと解される。

 確かに、本件で問題となっている個人情報等は、個人識別等を行うための単純な情報であって、その限りにおいては、秘匿されるべき必要性が必ずしも高いものとはいえない。しかし、このような個人情報についても、本人が提供した相手から自由に第三者へと情報が流通し、大量に集積され分析の対象とされる場合には、個人の内面に迫りうる可能性も生じる。また、住所等といった個人情報は、氏名とセットで利用される場合には本人の現時点でのライフスタイルを推知しやすいという特質を持つ。したがって、本人が、自己が欲しない他者にはみだりにこれを開示されたくないと考えることは自然なことである。

 よって、みだりに個人情報等を開示されない自由は、個人の人格的生存に不可欠なものとして、憲法13条後段によって保障されるものと解される。そして、この自由は、民法709条にいう「法律上保護される利益」に該当する。

4 「侵害」

 上記のとおり、このようなブライバシーに係る情報は、取扱い方によっては、個人の人格的な権利利益を損なうおそれのあるものであるから、慎重に取り扱われる必要がある。それゆえ、本件講演会の主催者として参加者を募る際にXらの本件個人情報を収集したY大学が、Xらの意思に基づかずに、みだりにこれを他者に開示した場合には、Y大学は、Xらのみだりに個人情報等を開示されない自由という「法律上保護される利益」を侵害したことになる。

 これを本件についてみると、上記のとおり、プライバシーに係る情報は、取扱い方によっては、個人の人格的な権利利益を損なうおそれのあるものであるから、本件名簿への記入をもって、プライバシーに係る情報を警察に提出することについて、定型的な推定的同意があったと認めることはできない。また、Y大学が本件個人情報を驚察に開示することをあらかじめ明示した上で本件講液会参加希望者に本件名簿へ記入させるなどして開示について承諾を求めることは容易であったものと考えられ、それが困難であった特別の事情がうかがわれない本件においては、本件個人情報を開示することについてXらの同意を得る手続をとることなく、Xらに無断で本件個人情報を警察に開示したY大学の行為は、Xらが任意に提供したプライバシーに係る情報の適切な管理についての合理的な期待を裏切るものであり、Xらのプライバシーを「侵害」するものであるといえる。

5 その他

 そして、本件においては、これに「よって」、Xらに慰謝料等の「損害」が生じている。そして、Y大学には、少なくとも、これらにつき、「過失」があったものといえる。

6 結論

 よって、Y大学によるXらの個人情報等を開示した行為は、不法行為を構成するため、XのYに対する損害賠償請求は認められる。

 

百選19 住基ネット事件

1 意見の要旨

 Yらが、Xらの氏名・生年月日・性別・住所の四情報に住民票コード及び転入・出生等の変更情報を加えた本人確認情報を市町村・都道府県・国の機関等で共有してその確認ができるネットワークシステムを構築し、Xらの上記情報を保管・管理した行為は、Xらの個人情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を侵害するものではない。

 それゆえ、XのYに対する国家賠償請求は認められない。

2 みだりに個人情報等を第三者に開示ないし公開されない自由

 憲法13条後段は、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」を保障しているところ、具体的には、人間の人格的生存に不可欠な権利を保障しているものと解される。そして、本件のような、個人に関する情報は、個人識別等を行うための単純な情報であって、その限りにおいては、秘匿されるべき必要性が必ずしも高いものとはいえない。しかし、このような個人情報についても、大量に集積され分析の対象とされる場合には、個人の内面に迫りうる可能性も生じる。また、住所等といった個人情報は、氏名とセットで利用される場合には本人の現時点でのライフスタイルを推知しやすいという特質を持つ。したがって、本人が、自己が欲しない他者にはみだりにこれを開示されたくないと考えることは自然なことである。よって、みだりに個人情報等を第三者に開示ないし公開されない自由は、個人の人格的生存に不可欠なものとして、憲法13条後段によって保障されるものと解される。

3 国家賠償法1条1項にいう「損害」の有無

 もっとも、「住基ネットによって管理・利用等される本人確認情報は、氏名、生年月日、性別及び住所から成る四情報に、住民票コード及び変更情報を加えたものにすぎない」ところ、このうち「四情報は、人が社会生活を営む上で一定の範囲の他者には当然開示されることが予定されている個人識別情報であり、変更情報も、転入、転出等の異動事由、異動年月日及び異動前の本人確認情報にとどまるものでこれらはいずれも」、それ自体、「個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報とはいえない。これらの情報は、住基ネットが導入される以前から、住民票の記載事項として、住民基本台帳を保管する各市町村において管理利用等されるとともに、法令に基づき必要に応じて他の行政機関等に提供され、その事務処理に利用されてきたものである。そして、住民票コードは、住基ネットによる本人確認情報の管理、利用等を目的として、都道府県知事が無作為に指定した数列の中から市町村長が一を選んで各人に割り当てたものであるから、上記目的に利用される限りにおいては、その秘匿性の程度は本人確認情報と異なるものではない。」

 そうであれば、これらの情報を管理・利用するシステムが、「正当な行政目的」の下、構築・運用され、かつ、「システム上の欠陥等により外部から不当にアクセスされるなどして本人確認情報が容易に漏えいする具体的な危険」がないよう整えられており、「受領者による本人確認情報の目的外利用又は本人確認情報に関する秘密の漏えい等」を防止する措置も設けられているといった場合には、このようなシステムのもと市町村長等により個人情報等の管理・利用がなされたとしても、これにより、Xらの個人情報等をみだりに第三者に開示ないし公表されない自由が侵害されているということはできないものというべきである。なぜならば、「本人確認情報が法令等の根拠に基づかずに又は正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示又は公表される具体的な危険が生じているということ」はできないからである。そして、このような場合には、国家賠償法上の「損害」の損害は認められないということになる。

 これを本件について見ると、住基ネットは、「法令等の根拠に基づき、住民サービスの向上及び行政事務の効率化という正当な行政目的の範囲内で行われているものということができる」。また、「住基ネットのシステム上の欠陥等により外部から不当にアクセスされるなどして本人確認情報が容易に漏えいする具体的な危険はない」のであるし、「受領者による本人確認情報の目的外利用又は本人確認情報に関する秘密の漏えい等は、懲戒処分又は刑罰をもって禁止されていること、住基法は、都道府県に本人確認情報の保護に関する審議会を、指定情報処理機関に本人確認情報保護委員会を設置することとして、本人確認情報の適切な取扱いを担保するための制度的措置を講じている」。

 それゆえ、本件においては、Xらの、個人情報等をみだりに第三者に開示ないし公表されない自由が侵害されているものとは言えない。それ故、国家賠償法上の「損害」の要件は満たされない。

4 結論

 よって、XのY(市)に対する国家賠償請求は認められないものと解される。

 

百選20 車内広告放送と「とらわれの聴衆」

1 意見の要旨

 Yによる車内放送は、Xの、聞きたくない音を聞かされない自由(憲法13条後段)を侵害するものではなく、よって、XのYに対する人格権に基づく放送の差止請求や、上記自由の侵害を理由とする損害賠償請求は認められないものと解される。

2 憲法13条後段の規定と、民法709条、人格権に基づく差止め請求との関係

 憲法13条後段によって保障される権利ないし自由が侵害されたという場合には、民法709条にいう「権利」ないし「法律上保護される利益」の「侵害」が認められる結果、同条に基づく損害賠償が可能となり、また、憲法13条後段によって保障される権利ないし自由は、下記の通り、人格権といえるため、この権利が侵害され又は侵害される危険がある場合には、人格権に基づく差止め請求が可能となるものと解される。

3 聞きたくない表現を聞かされない自由について

 憲法13条後段は、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」を保障しているところ、具体的には、人間の人格的生存に不可欠な権利を保障しているものと解される。

 「他者から自己の欲しない刺戟によって心の静穏を乱されない」ことは、個人の人格的生存にとって必要なことである。それゆえ、聞きたくない音を聞かされない自由は、個人の人格的生存に不可欠な権利として、同条項によって保障されるものと解される。

 そして、この自由は、民法709条にいう「法律上保護される利益」に該当し、また、差止請求の基礎となる人格権に該当する。

3 709条に基づく損害賠償請求及び人格権に基づく差止請求が認められるための要件

 もっとも、騒音等については、社会共同生活を営むうえで一般通常人であれば当然それを受忍すべき限度が存在する。それゆえ、民法709条に基づく損害賠償請求及び人格権に基づく差止請求が認められるのは、その侵害行為が受忍限度を超える「違法な侵害である」といえる場合に限られる。

4 具体的検討

 「公共の場所においては」上記自由「の保護が希薄と」なり、「受忍すべき範囲が広くなる」とする。確かに、「乗客にとって目的地に到達するため利用せざるをえない交通機関のなかでの放送」は「これを聞くことを事実上強制される」ので「とらわれの聞き手」という問題が発生し、しかも、「特定の表現のみが受け手に強制的に伝達されるところでは表現の自由の保障は典型的に機能するものではなく。その制約をうける範囲が大きい」ものといえるが、「Yは放送の内容を控えめにし、一定の基準に従って実施するに至っ」ていたのであるから、その放送が「受忍の範囲をこえた」違法な「侵害であ」ったということはできない。

5 結論

 よって、XのYに対する人格権に基づく放送の差止請求や、上記自由の侵害を理由とする損害賠償請求は認められないものと解される。