○○法ガールになりたい。

○○法ガールといえるほど法学をマスターしたいなと思い作成したブログ。司法試験受験生。最近勉強なんてやめて結婚に逃げたい。

百選・Law Practice民訴法 起案 13~24

【13】 任意的訴訟担当――業務執行組合員 (最大判昭和45・11・11)

1 Xは自己の名で、若しくはA組合構成員の代表者として、A組合が有するYに債権を理由に訴訟を提起することはできるか。

2 まず、Xが当事者能力を有することは間違いない(28条、民法3条1項)。

3 とはいえ、Aのような組合が有する権利義務は、構成員全員の総有に属するものであるから、原則として固有必要的共同訴訟として構成員全員が原告とならなければならず、Xにこのような債権につき当事者適格が認められるかが問題となる。

(1) これについて、法律の規定がない以上、法定訴訟担当の構成を取ることはできない。

(2) また、明文ある任意的訴訟担当である選定当事者制度(30条)を利用することは、選定があったとは言えない以上、不可能である。

(3) そこで、明文なき任意的訴訟担当の可否が問題となる。

 選定当事者について定めた規定は、任意的訴訟担当が許容される原則的な場合を示すにとどまり、これ以外の任意的訴訟担当を許さないとするものではないと解すべきである。しかし、安易にこれを許容すれば、弁護士代理の原則や訴訟信託の禁止の趣旨に反し、依頼者の利益の侵害、訴訟の混乱を招くおそれがある。そこで、上記弁護士代理の原則や訴訟信託の禁止を回避潜脱するおそれがなく、かつ、合理的必要性が認められる場合には任意的訴訟担当が許容されると解する。

 また、この構成を取る場合は、その前提として、授権が必要である。

ア 本件では、組合の規約にはXに訴訟遂行をさせる旨の規定はなかったものの、A企業体を代表して業務執行及びその財産を管理する権限を与える旨が規定されていた。そうであるとすれば、Xが当事者となる訴訟について任意的訴訟担当の授権があったと見ることができるというべきである。

イ そしてこのような授権に基づき、上記のように、代表者、すなわち共同の利益を有する多数の者(30条参照)がそのうちの一人に訴訟遂行権限を授与したような場合は、明文なき任意的訴訟担当を認める際に生じるおそれはないというべきである。

ウ さらに、共同の利益を有する者が多数いる場合、一人一人が訴訟に携わるのではなく、Xに対して訴訟をゆだねるということには、合理的必要性が認められる。

エ よって、A組合員の任意的訴訟担当となることも許容されるというべきである。

(4) そうであれば、上記のような場合には、Xは、本件につき任意的訴訟担当として当事者適格を有しうる。

4 よって、XはYに対して本件訴訟を提起することができる。

 

【14】 法人の内部紛争(1) ――原告適格 (最三小判平成7・2・21)

 確認の訴えにおいては、基本的に、原告が訴訟物たる権利義務の主体である場合は、その者に原告適格があると認められる。しかし、訴訟物たる権利義務関係の者も、その権利関係の確認によってみずからの実体法的地位を確保できる関係にある者(保護法益の帰属主体)と認められる場合には、原告適格が認められることになる。  他方、確認の訴えの被告適格は、原告の保護法益と対立拮抗する利益を主張している者に与えられる。 ⇒ 本件訴えは、Xらが、自らの地位ないし権利関係についての確認等を請求するものではなく、ZがYの代表役員の地位にないことの確認及びこれを前提に前期登記の抹消をそれぞれ請求するものであるから、その訴えの利益、原告適格を肯定するには、組織上、XらがYの代表役員の任免に関与するなど代表役員の地位に影響を及ぼすべき地位について法律上の利害関係を有していることを要する。本件Xらは、Yの機関ではなく、代表役員の任免に関与する立場にないのみならず、自らが代表役員によって任免される立場にもないなど代表役員の地位について法律上の利害関係を有しているとはいえないから、上記確認等を求める訴えの原告適格を有しない。

  • もっとも、確認の訴えにおいては、まず確認の利益の存否が問われる。しかも、この利益の有無は、当該事件の原被告間の紛争を確認判決によって解決する必要があるか、または有効適切に解決しうるかという判断であるから、確認の利益があるということになれば、その原告および被告は当事者適格が当然にあることになる。それゆえ、確認の訴えでは、当事者適格の問題は確認の利益の問題と説かれるのがふつうである(p269)。しかし、特定の権利関係について訴えによって選択された被告が、紛争解決のために有効適切な者であるかという観点から、確認の利益の判断が行われる場合もある。

 

【15】 法人の内部紛争(2)――被告適格 (最一小判昭和44・7・10)

 当事者適格(被告適格)は、原則として、訴訟物たる権利法律関係について法律上利害が対立している者に認められる。すなわち、正当な被告は、原則として、訴訟物たる権利法律関係についての法的利益の帰属者であるということになる。

  • 法的利益の帰属者であれば、訴訟の結果に最も強い利害・関心があり、①十分な訴訟追行を期待できること、②敗訴判決を受けることは、保護される利益を処分したのと同じ効果をもたらすことから、その帰属主体を当事者として訴訟手続に関与させるべきであることからすれば、このように解するのとが妥当である。

 1 自身が宗教法人の代表役員及び責任役員の地位にあることの確認を、宗教法人を被告とすることなく、同宗教法人の代表役員・責任社員及び同宗教法人の住職の任免権を有する他の包括宗教法人を被告として、求めることはできるか。法人の内部紛争における被告適格が問題となる。

2 ↓ 上記規範

 法人の理事者が、理事者たる地位の確認を訴求する場合、その訴訟物足る権利法律関係についての法的利益の帰属者は、法人である。

3 よって、本件訴訟の被告適格は、法人に認められる。

  • 法人を相手方とした場合、その請求を認容する確定判決により、その者が当該法人との間においてその執行機関としての組織法上の地位にあることが確定されると、事柄の性質上、右判決は、対世的効力を有するため、右理事者の地位をめぐる関係者間を根本的に解決することができる。
  • 他方、法人を当事者とすることなく、当該法人の理事者たる地位の確認を求める訴えを提起することは、たとえ請求を認容する判決が得られても、その効力が当該法人に及ばず、同法人との間では何人もその判決に反する法律関係を主張することを妨げられない。そのため、理事者の地位をめぐる当事者間の紛争を根本的に解決する手段として有効適切な方法とはいえない。

 

【16】 意思能力 (最二小判昭和29・6・11)

1 精神上の障害を有し、その精神能力が12,3歳の児童と同程度の者がなした控訴及び控訴取下げは有効か。

2 たしかに、訴訟能力が、個々の訴訟行為の有効要件であることにかんがみれば、補正・追認のない限り、訴訟行為は無効とも思える。

 しかし、訴訟能力の趣旨は、自己の利益のため十分な訴訟追行が期待できない者を保護する点にある。そうであるにもかかわらず、訴訟無能力者が自己の訴訟追行の効果を消滅させようとした訴えの取り下げを無効としてしまうと、訴訟の続行によりかえって訴訟無能力者を害することとなり、右趣旨に反する。

 そこで、訴訟無能力者が自ら提起した訴えの取り下げは、有効と考える。

3 したがって、上記の者の控訴取下げを無効とし、上記の者の控訴に基づき、本案の審理判決をしたことは正当である。

 

【17】 離婚訴訟と特別代理人 (最二小判昭和33・7・25)

1 心神喪失の常況にあるものを被告とする離婚訴訟において、原告の申立てに基づき、被告の特別代理人(民訴法35条)を選任することはできるか。

2 特別代理人は、その訴訟限りの臨時の法定代理人である性質を有するものであるが、離婚のような本人の自由なる意思に基づくことを必須の要件とする一身に専属する身分行為は代理に親しまない。

3 よって、このような場合に、被告の特別代理人(同法35条)を選任することはできない。

 

【18】 代表権と表見法理 (最三小判昭和45・12・15)

Law Practice【基本問題6】 代表権と表見代理

1 本件では、Y 社の代表取締役ではなく、Y 社の代表者としての資格を有する者ではない A に対して訴状が送達されている。法人を被告として訴える場合、訴状に法人に加えてその代表者の名前を表示し(37 条、133 条 21 号)、代表者に対して訴状を送達する必要がある(37 条、102 条 1 項)。

 そして、原告としては、法人の代表者が誰であるかは、登記を見て判断せざるを得ないところ、登記簿上の代表者が真の代表者でなかった場合、訴え提起その他の訴訟行為は、補正または追認がなされない限り不適法となるのが原則である。そうすると、これを看過してなされた判決は、当事者が真の代表者によって代表されなかったという点で、法令違反の瑕疵があることになるため、控訴審裁判所は、第 1 審の訴訟手続に関する法令違反を理由として、その判決を取り消すことになる。

 したがって、本件でも、Y 社の代表取締役ではなく、Y 社の代表者としての資格を有する者ではないに対して訴状が送達されている以上、原則として、控訴審裁判所は、原判決を取り消し、事件を第 1 審裁判所に差し戻して X に補正の機会を付与することになる。

2(1) もっとも、Y 社の商業登記簿に代表者として A が記載されていた本件のように、原告が被告の代表者を誤った原因が誤った商業登記簿にあり、そのような記載が被告側の過誤に起因するような場合にも、原判決を取り消すことが妥当ではないのではないか。このような場合に、実体法上の表見法理の規定を類推適用して、外観を信頼した相手方を保護すべきではないか。訴訟手続における実体法上の表見法理の規定(民法 109 条、商法 24 条、会社法 354 条、908 条 1 項等)の類推適用の可否が問題となる。

(2) この点について、確かに、取引関係に関する訴訟においては、訴え提起を取引関係の延長として理解する余地もあり、登記を怠った法人を保護するために相手方と裁判所の犠牲の下に訴訟をやり直すことは衡平に反するとして、実体法上の表見法理の規定を類推適用し、従前の訴訟追行の効果が被告法人に帰属すると考えることもできそうである。しかし、実体法上の表見法理の規定は、取引安全の保護のための規定であり、訴訟手続そのものは、実体法上の取引行為と異なる。また、商法 24 条は、表見支配人について、支配人と同一の権限を認めて善意の相手方を保護しているが、裁判上の行為をその適用範囲から除外しており、訴訟行為については相手方の保護を否定している。さらに、表見法理の類推適用の可否は、基本的には相手方の善意悪意によって決せられることから、訴訟手続に実体法上の表見法理の規定を類推適用するとすれば、手続の安定が害されることになり、それゆえかえって訴訟経済に反する可能性もある。また、より実質的には、法人の背後には多くの人間がいるのであるから、真の代表者によって訴訟を追行される法人背後者の利益(法人にとっての裁判を受ける権利)を重視すべきである。すなわち、仮に表見法理の類推適用を認めるとすると、法人が真正な代表者によって裁判を受ける権利(憲法 32 条)を奪うことにもなりかねないし、代表権の欠缺を絶対的上告理由とする 312 条 2 項 4 号、再審事由とする 338 条 1 項 3 号は無意味な規定となる。

 そうすると、訴訟のやり直しをさせられる相手方の保護は、余計な支出を余儀なくされた第 1 訴訟の訴訟費用・弁護士報酬を法人に負担させること等により図るにとどめるべきである。

(3) したがって、実体法上の表見法理の規定は、訴訟行為には類推適用されないものと解する。

3 よって、本件訴訟手続においても、実体法上の表見法理の規定を類推適用することはできない。

 それゆえ、本件では、X に対して訴状の補正を命じ(137 条 1 項)、また、Y 社に真正な代表者がいない場合には、X の申立てに応じて特別代理人を選任する(37 条、35 条 1 項)などして、正当な権限を有する者に対しあらためて訴状の送達をすることを要し、X がこのような補正手続をとらない場合には訴えを却下すべきことになる。

 そして、このような補正命令の手続は、事柄の性質上第 1 審裁判所においてなすべきものと解すべきであるから、控訴審裁判所としては、原判決を取り消し、事件を第 1 審に差し戻して X に補正の機会を付与すべきである。

 

【19】 訴訟代理人の代表権の範囲 (最一小判昭和38・2・21)

1 前事件(A〔Yの先代〕からXに対する金銭債権に関する事件であり、この弁済期日を延期し、かつ分割払いとするかわりに、その担保としてX所有の不動産について、A〔Yの先代〕のために抵当権の設定がなされたもの)においてXが訴訟代理人弁護士Cに対し民訴法55条2項所定の和解の権限を授与し、かつ、当該委任状(書面)が前事件の裁判所に提出されている場合に、和解の代理権は抵当権の設定にも及ぶか。55条2項が定める和解の代理権の範囲が問題となる。

2 代理人の代理権の範囲は、一般に、代理権を授与する本人の意思を基準として定まる。弁護士に訴訟代理権を与えた場合には、その経験や専門性に対して一定の信頼をよせ、紛争の合理的な解決のために幅広い和解権限も含めたほとんど無制限ともいえる代理権を与える意思であると考えるのが適切である。

3 本件のような抵当権の設定は、和解により紛争を終結させるため、訴訟物に関する互譲の一方法としてなされたものであることが伺え、さらに、上記のような紛争の経過も踏まえれば、前記C弁護士が授権された和解の代理権限には、上記抵当権設定契約をなす権限も包含されていたものといえる。

 

Law Practice【発展問題 2】 訴訟代理人の代理権

1 本件では、X から Y に対する係争地の賃借権の終了による土地の明渡請求において、①Y は X から係争地を金 1 億円で買い受ける。売買代金は、5 年間の分割払いとする。②上記買受代金の支払を担保するため、係争地および建物に X のために抵当権を設定する、旨の和解がなされている。

 訴訟代理人は、委任を受けた事件について、反訴、参加、強制執行、仮差押えおよび仮処分に関する訴訟行為をし、かつ、弁済を受領することができる(55 条 1 項)。他方で、反訴の提起、訴えの取下げ、和解、請求の放棄・認諾、控訴・上告の提起など一定の事項については、当事者本人による特別の授権が必要となる(55 条 2 項)。

 本件では、A 及び B 弁護士の委任状において、訴訟上の和解についても授権がなされているところ、このような和解の授権によって、①及び②のような、訴訟物以外の権利義務関係を和解の対象とすることはできるか。いかなる内容の和解に代理権の範囲が及ぶのかが、明文上明らかでなく問題となる。

2 法が和解を特別授権事項とした趣旨は、和解が勝訴を求める当事者(依頼人)の通常の意思から必ずしも導き出せないものであり、当事者本人に重大な結果をもたらす事項(267 条参照)であることから、慎重を期し、当事者の利益を図ることにある。そうすると、訴訟代理人の和解権限の範囲を無制限に認めることは妥当でない。他方で、訴訟上の和解は、その内容が元々非定型的なものであり、互譲の内容として、訴訟物以外の法律関係を取り込むことで、紛争の柔軟な解決を図るものであるから、少しでも訴訟物以外の法律関係が含まれているからといって和解が認められないのであれば、抜本的な紛争解決ができず、一旦成立したはずの和解が無効となるという点で法的安定性を害することになりかねず、妥当でない。そこで、訴訟物以外の権利義務関係であっても、訴訟物と一定の関連性を有する事項であれば、訴訟代理人の和解権限が及ぶものと解する。そして、訴訟物と一定の関連性を有する事項かどうかは、一般の取引観念に照らして、その事項が互譲により当該事件を解決するために必要・有用であり、かつ、本人が当該事件の解決として予測可能なものであるかどうかによって判断すべきと解する。

 本件についてみると、確かに、本件訴訟は、X から Y に対する係争地の賃借権の終了による土地の明渡請求であるから、①及び②の和解事項は、訴訟物以外の権利関係についての和解である。もっとも、借地関係の紛争に際しては、借地人による底地の買受けという形で紛争が終結することはしばしばあり、金額についても 1 億円と高額であるものの、5 年間という長期に渡って分割払いをすることを内容としており、それによって Y に著しく不利益を及ぼすものではない。他方で、X にとっても、長期といっても許容の範囲内での期間であるといえる。 したがって、①の事項については、一般の取引観念に照らして、その事項が互譲により当該事件を解決するために必要・有用であり、かつ、本人が当該事件の解決として予測可能なものであるといえ、それゆえ訴訟物と一定の関連性を有する事項といえるので、A および B の和解権限の範囲内のものといえる。さらに、和解で分割払いの合意をするためには、それを担保する措置についても併せて合意されることが一般的であるから、このような抵当権の設定は、訴訟物に関する互譲の一方法として当該事件を解決するために必要・有用なものといえる。そして、これは X および Y の予測可能なものである。したがって、②の事項についても、訴訟物と一定の関連性を有する事項として、A および B の和解権限の範囲内のものといえる。

3 よって、①および②の和解は、A および B の和解権限の範囲内のものとして、有効である。

 

【20】 弁護士による代理――双方代理 (最大判昭和38・10・30)

1 弁護士が職務を行い得ない事件のうち、弁護士法25条1項の事件につき職務を行った場合に、その訴訟行為の効力が問題となる。

2 訴訟行為の効力を検討するに当たっては、相手方当事者の保護の視点をも当然考慮すべきであるところ、相手方当事者において、これに同意し又はその違背を知り若しくは知り得たにもかかわらず、何ら異議を述べない場合には、相手方たる当事者を保護する必要はない。他方で、当該訴訟行為を無効とすることは訴訟手続の安定と訴訟経済を著しく害することになることからすれば、相手方たる当事者が、弁護士に前記禁止規定違反のあることを知り又は知りえたにもかかわらず、何ら異議を述べることなく訴訟手続を進行せしめ、第二審の口頭弁論を終結させたときは、責問権の喪失(90条本文)に準じ、当該訴訟行為は完全にその効力を生じ、弁護士法の禁止規定に違反することを理由として、その無効を主張することは許されないものと解する。

 これを本件について見るに・・・

 

【21】 給付の訴え――登記請求訴訟 (最二小判昭和41・3・18)

1 Xの所有する不動産について、Y1、Y2、Y3と順次登記が経由された場合の抹消登記請求訴訟について、XがY3に敗訴している場合に、Y1・Y2に対する抹消登記の実行方法はない。そのような場合に、Y1・Y2に対する抹消登記手続請求訴訟の訴えの利益を認めることができるかが問題となる。

2 不動産登記の抹消登記手続を求める請求は、被告の抹消登記申請という意思表示を求める請求であって、その勝訴の判決が確定すれば、それによって、被告が右意思表示をしたものとみなされ(民執法174条)、その判決の執行が完了するものである。

3 したがって、抹消登記の実行をもって、右判決の執行と考える必要はなく、例えば、Y3からY2に任意の登記移転がされる可能性等があるから、Y1・Y2に対する抹消登記手続請求訴訟の訴えの利益を認めることができる。

 

【22】 将来給付の訴え――大阪国際空港事件 (最大判昭和56・12・16)

1 135条は、将来給付の訴えにつき、「あらかじめその請求をする必要がある場合に限り」これを許容すべき旨を規定している。そこで、同条のもとで、本件のような、継続的な不法行為に対する将来の損害賠償請求について請求権としての適格性(請求適格)が認められるか、このような場合には、原告の請求権の原因となる事実すら未だ発生していないことが多いことから、が問題となる。

2 そもそも、請求適格の有無の判断においては、不法行為の終了まで何度も訴えを提起しなければならない原告の起訴負担と、事情の変更により損害が消滅・減少した場合に、請求異議の訴え(民事執行法35条)を提起しなければならない被告の起訴負担に配慮する必要がある。そこで、起訴負担の公平分担の見地から、①請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在し、その継続が予想されるとともに、②請求権の成否及びその内容(金額)につき、債務者に有利な影響を生ずるような事情の変動があらかじめ明確に予想し得、③しかもこれについて請求異議の訴えによりその発生を証明してのみ執行を阻止し得るという負担を債務者に課しても格別不当とはいえない場合に限り、請求適格が認められると考える。

 これを本件について見ると・・・

 

Law Practice 基本問題8 将来給付の訴えについて

1 設問前段について

(1) X は、Y 病院の室外機の騒音により精神的・身体的被害を受けていると主張して、口頭弁論終結時から将来の被害がやむときまでに生じる精神的・身体的被害を理由とする損害額の支払を求めて提訴しているところ、このような、継続的な不法行為に対する将来の損害賠償請求については、原告の請求権の原因となる事実すら未だ発生していないことが多いことから、請求権としての適格性(請求適格)が認められるかが問題となる。

(2) そもそも、請求適格の有無の判断においては、不法行為の終了まで何度も訴えを提起しなければならない原告の起訴負担と、事情の変更により損害が消滅・減少した場合に、請求異議の訴え(民事執行法35条)を提起しなければならない被告の起訴負担に配慮する必要がある。そこで、起訴負担の公平分担の見地から、①請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在し、その継続が予想されるとともに、②請求権の成否及びその内容(金額)につき、債務者に有利な影響を生ずるような事情の変動があらかじめ明確に予想し得、③しかもこれについて請求異議の訴えによりその発生を証明してのみ執行を阻止し得るという負担を債務者に課しても格別不当とはいえない場合に限り、請求適格が認められると考える。

 本件についてみると、確かに、Y は、2 年間という長期間にわたって、室外機 10 台を年中稼働させてきている。この点について、Y は病院であり、病院の運営もある以上、それらをすぐに停止・除去することは実際上考えにくいことから、将来の請求権の基礎となるべき事実関係・法律関係がすでに存在し、その継続が予測される(①)。しかし、規制値を上回る騒音を X に到達させない方法は多様にあると考えられ、Y が予定している防音対策の効果によっては、将来の騒音被害は受忍限度内のものとして損害賠償請求権は成立しないか、または損害額が減少する可能性も十分考えられる。したがって、請求権の成否や内容に関して、債務者に有利な影響を与える事情の変動があらかじめ明確に予測し得る事由に限定されているとはいえない(②不充足)。また、そうである以上、このような変動を請求異議事由として Y 側に提訴及び証明の負担を課すことは不当であるといえる(③不充足)。

 よって、本件将来の損害賠償請求部分については、「あらかじめ請求をする必要がある場合」にはあたらず、請求適格を欠くため、将来給付の訴えの利益は認められない。

(3) 以上より、裁判所は、この請求について訴え却下の判断をすべきである。

2 設問後段について・・・(省略)・・・

 

【23】 遺言無効確認の訴え (最三小判昭和47・2・15)

Law Practice 基本問題9 確認の利益(1) -遺言無効確認の訴え-

1 設問前段について

(1) 本件では、X1 は Y に対して、遺言無効確認訴訟を提起しているところ、このような過去の法律行為を対象とする確認の訴えに確認の利益は認められるか。

(2) 確認の訴えは権利関係を観念的に確定するものであり、性質上確認対象が無限定である上、確認判決は執行力を有しない。そこで、確認の利益は、紛争解決の必要性・実効性がある場合に限り認められると考える。具体的には、確認対象の適否、即時確定の利益の存否、方法選択の適否により判断すべきところ、本件においては、確認対象の適切性が問題となる。

 これについて、過去の法律関係を確認してみても、その後、法律関係の変動の可能性が常に存在する以上、通常は現在の紛争解決に有効・適切とはいえないため、過去の法律関係の確認には、通常は確認の利益が認められないのが原則である。もっとも、過去の法律関係が多くの派生的な法律関係の基礎となっており、過去の法律関係を確定することが、現在の紛争の直接的かつ抜本的な解決のため必要かつ適切と認められる場合もありうる。よって、そのような場合には、例外的に、過去の法律関係の確認にも、確認の利益が認められるものと解する。

 これを本件についてみると、遺言が無効であれば、X1 は法定相続分の持分権を有することになるのに対して、遺言が有効であることを前提とすれば、遺留分減殺請求権を行使し遺留分につき持分権を有することになる。また、持分権確認訴訟や持分権に基づく移転登記請求訴訟が可能であるとしても、これらの訴訟の間で遺言の有効性について統一的な判断がなされるとは限らないため、X1 は前者で遺言有効の判断により敗訴し、後者で遺言無効の判断により敗訴するおそれもあり、これらの訴訟によってはかえって紛争が複雑化することになる。よって、現在生じている遺産分割をめぐる紛争を抜本的に解決するためには、本件遺言の有効性について既判力をもって確定することが極めて有益である。したがって、本件遺言無効確認の訴えは、過去の法律関係が多くの派生的な法律関係の基礎となっており、過去の法律関係を確定することが、現在の紛争の直接的かつ抜本的な解決のため必要かつ適切と認められる場合といえるため、確認対象として適切である。

(3) また、方法選択の適否については、具体的紛争の解決にとって、確認訴訟という手段が有効かつ適切であることを要するところ、本件においては、これも認められるものと解される。

 さらに、即時確定の必要性については、原告の権利ないし法律関係につき危険ないし不安が現存しており、その除去のため確認判決を得ることが必要かつ適切な場合であることを要するところ、現在Aは既に死亡しており、相続人間に争いが生じていることから、これについても問題なく認められる。

(4) よって、本件遺言無効確認の訴えには、確認の利益が認められるから、裁判所は本件確認訴訟につき審理を行い本案判決をすべきである。

2 設問後段について

(1) X1 が提起した遺言無効確認訴訟について請求棄却判決がなされ、これが確定した場合に、X2は改めて本件遺言の無効確認訴訟を提起することはできるか。

(2) 民事訴訟は実体法上の権利の実現・処分のプロセスである以上、実体法上の管理処分権の帰属の態様が考慮されるべきである。すなわち、目的物を全員でなければ処分できないような場合には、訴訟法上も固有必要的共同訴訟として扱い、単独で処分できるような場合には、訴訟法上も個別訴訟を許容すべきと解する。もっとも、当事者適格は訴訟追行権という訴訟法上の権能に係わる問題でもある以上、紛争解決の実効性や訴訟経済等の訴訟政策的観点も考慮する必要があるものと解する。

 本件についてみると、遺言無効確認訴訟の確認対象は相続財産に対する権利の全部または一部の不存在の主張であり、共同相続人に管理処分権が共同的に帰属するものと考えることは困難である。また、確かに、遺言無効確認訴訟において全員が当事者となることは、後行する遺産分割手続を円滑に進めるという点では望ましいが、しかし、これを固有必要的共同訴訟とする考え方は、訴訟を複雑化させるおそれがある点、関係者に無用の負担を課する点で妥当でない。よって、遺言無効確認の訴えは、通常共同訴訟であると解すべきである。

(3) したがって、X1 は単独で本件遺言無効確認の訴えを提起することができ、仮に請求棄却判決がなされ、これが確定した場合でも、X2 は改めて本件遺言の無効確認訴訟を提起することができるということになる。 ※矛盾された判決がなされたとしてもそれは判決の相対効からやむを得ないものといえよう。

 

【24】 遺産確認の訴え (最一小判昭和61・3・13)

1 遺産確認の訴えに確認の利益が認められるか。

 確認の訴えは権利関係を観念的に確定するものであり、性質上確認対象が無限定である上、確認判決は執行力を有しない。そこで、確認の利益は、紛争解決の必要性・実効性がある場合に限り認められると考える。具体的には、確認対象の適否、即時確定の利益の存否、方法選択の適否により判断すべきである。

2(1) 遺産確認の訴えは、当該財産が現に共同相続人による遺産分割前の共有関係にあることの確認を求める訴えであり、現在の法律関係を確認するものとして、対象選択の適切性が認められる。

(2) また、その原告勝訴の確定判決は、当該財産が遺産分割の対象たる財産であることを既判力をもって確定し、これに続く遺産分割の手続において及びその審判の確定後に当該財産の遺産帰属性を争うことを許さないという意味で、紛争が蒸し返される可能性を遮断し、原告の意思に適った紛争の解決を図ることができるため、紛争解決のために有効・適切であるといえ、方法選択の適切性も認められる。

(3) さらに、・・・ため、即時確定の利益も認められる。

3 現在の紛争の直接的かつ抜本的な解決のため必要かつ適切であるといえるため、確認の利益が認められる。