○○法ガールになりたい。

○○法ガールといえるほど法学をマスターしたいなと思い作成したブログ。司法試験受験生。最近勉強なんてやめて結婚に逃げたい。

百選起案 民法Ⅱ(第8版) 41~50

百選Ⅱ-41 契約上の地位の移転

1 XのYに対する履行不能に基づく損害賠償請求は認められるか。

2 本件において、XY間では、Yを貸主、Xを借主とする、Y所有本件土地の賃貸借契約が締結されていたところ、賃貸借契約締結後、本件土地の所有権がYからAへと移動し、かつ、AがXの本件土地の使用収益を拒むことにより、Yは、Xに対して賃貸目的物たる本件土地を使用収益させることができなくなっている。そうすると、賃貸借契約に基づき借主たるXに本件土地を使用収益させる義務を負っていたYには、債務不履行があるかにも思える。

3 しかし、仮に、賃貸人たる地位が、賃貸目的物である本件土地の所有権と共に、Aに移転しているということができるのであれば、2のようなXの主張は、失当であるといえる。そこで、賃貸目的物の所有権が移転した場合、同時に賃貸人たる地位も移転するかが問題となる。

(1) このような賃貸人の地位の移転は契約上の地位の移転であるから、賃借人Xの承諾がない限り、認められないのではないのが原則である(539条の2)。

(2) もっとも、本件土地がYからAに売却された場合は、「不動産が譲渡された」と言えるところ、仮に、Xが、本件土地賃貸借につき対抗要件たる登記を備えていた場合や、「借地借家法……10条……による賃貸借の対抗要件を備えた場合」は、本件土地の賃貸人たる地位は、本件土地の譲受人たるAに移転することになる(605条の2第1項)。

ア そこで、まず、605条の2第1項の所定の要件を満たさない限りは、賃借人の承諾なき賃貸人の地位の移転はおよそ認められないのではないかが問題となる。

 605条の2第1項が上記のように不動産賃借権に対抗要件が認められる場合に限って賃貸人の地位の移転が認められるとしたのは、不動産賃借権に対抗要件が認められない場合には、そもそも賃借人は賃貸人にその地位を対抗し得ない結果、賃貸人たる地位の移転を生じさせる必要がないからである。そうであるとすれば、605条の2第1項は、賃借権に対抗要件が認められない場合であっても、そうであれば、本件のように、新賃貸人があえて賃借人の存在を認め賃貸人たる地位を旧賃貸人から承継する旨の合意をした場合にまで賃貸人たる地位の移転を認めない趣旨ではないものと解すべきである。

 そして、605条の2が、所定の要件を備えた場合に、賃貸目的不動産の譲渡と共に不動産の賃貸人たる地位も賃借人の承諾なしに移転するものとした趣旨は、①不動産の賃貸人が賃借人に対して負う各種の債務が、不動産の所有権と結合した債務であるがゆえに、賃貸不動産の所有権を取得した者は当然にこの種の債務を引き受けるべき性質のものであること、他方、②賃貸不動産の所有権を手放した者は当然にこの種の債務を免れることができると考えるべきであること、さらに、③不動産賃貸人の義務は賃貸人が誰であるかによって履行方法が特に異なるわけでもない没個性的なものであること、④不動産所有権の移転があったときに新所有者にその義務の承継を認めるほうが賃借人にとってむしろ有利であることにあるところ、この根拠は、本件のように、旧賃貸人たるYと新賃貸人であるAとの間で賃貸人の地位を移転する旨の合意がなされていたような場合にも妥当する。

 そうであれば、本件のようのような場合には、賃貸人たる地位の移転を、肯定すべきである。 ※ただし、判例は特段の事情なき限りとしている(=特段の事情とは、契約により賃貸人の債務が没個性的でなくなっているといえる場合等と解される)

(3) よって、本件土地賃貸借契約における賃貸人は、Aであるといえる。

4 よって、Xの上記請求は認められない。

  • なお、当然承継の場合、法は、賃借人の賃料二重払の危険を回避すべく、新賃貸人に対抗要件として、「賃貸物である不動産について所有権の移転の登記」(605条の2第3項)を要求している。この理は、当然承継の場合だけでなく、本件のような場合にも妥当するため、本件においても、AがXに賃貸人たる地位を主張する場合には、本件土地の所有権移転登記を得る必要があると考える。
  • 他方、上記趣旨に鑑みれば、少なくとも債務不履行に基づく損害賠償請求が提起されたという本件のような場合には、Xは「賃貸人たる地位を失った」ということを対抗するために「Aに登記を移転している」必要はないのではないかと思われる。

 

百選Ⅱ-42 付随的債務の不履行と解除

1 Xは、Yに対して、甲・乙両土地の所有権確認請求及び所有権移転登記手続請求をすることが考えられるところ、これらの請求が認められるためには、いずれも、Xが甲・乙両土地を所有していることが必要である。

(1) Xは、甲士地の所有権取得原因として、YA間の売買契約及びAX間の売買契約の締結を主張することが考えられる。また、乙土地の所有権取得原因として、YX間の売買契約の締結を主張することが考えられる。

(2) これに対して、Yは、YA間の売買契約及びYX間の売買契約の履行遅滞解除(541条本文)を主張することが考えられる。そこで、これは認められるか、その要件を検討する。

ア まず、YA間の売買契約について検討する。

 Yは、甲土地に対する昭和23年度から27年度までの租税金4718円の償還を求めたが、Aはこれに応じなかったから、「相手方が…その履行の催告をし、その期間内に履行がない」(同条本文)と認められる。なお、「催告」の趣旨は、債務者に最後の履行の機会を与える点にあるから、「相当の期間」を定めることは必ずしも必要でない。

 そこで、催告解除の可否について検討する。

Aは、本件各売買契約に基づき、「その代金を支払う」義務(555条)を負っていたところ、代金の授受は完了しているから、かかる義務は履行されている。

 他方、売買の目的物である土地に対する売買契約の分として賦課されるべき地租又はこれに代わる固定資産税のような公租公課は、別段の合意がない限り、売買の目的物を使用収益し得る者において負担すると解するのが最も衡平に適するから、575条の法意に照らし、少なくとも売買目的物の引渡し及び代金支払が完了した後の公租公課は、買主において負担すべきものであるところ、甲士地の代金の投受及び引渡しが完了していることからすると、買主たるAは、YがAのために納付した租税金の償還義務という「債務」(541条本文)を負っていたというべきである。しかし、Aは、かかる「債務を履行し」(同条本文)ていない。

 しかし、上記のとおり、Aが租税金の償還義務を履行しなかったとしても、YA間の売買契約の目的が達せられないものとはいえないことに鑑みれば、かかる「債務の不履行」は、「その契約及び取引上の社会通念に照らして軽徴である」(同条ただし書)。

 したがって、YA間の売買契約の履行遅滞解除は認められない。

イ 次に、YXの売買契約について検討するに、YX間の売買契約においては、公租公課は買主が負担する旨の特約があったことから、買主たるXは、YがXのために納付した租税金の償還義務という「債務」を負っていたというべきである。しかし、Yが、乙士地に対する昭和23年度から27年度までの租税金の償選を求めたところ、Xは、これに応じて同金額をY方に持参して現実に提供しているから、かかる「債務を履行しない」とは認められない。

ウ したがって、YX間の売買契約の履行遅滞解除も認められない。

2 よって、Xの請求は認められる。

 

百選Ⅱ-43 債務の不履行の軽微性と解除

1 XのYに対する所有権移転登記抹消登記手続請求及び乙建物及び丙工作物収去並びに同土地明渡の請求は認められるか。

2 上記請求が認められるためには、Xが本件土地を所有していることが必要であるところ、Yとしては、XY間で本件土地を目的物とする売買契約の存在を主張することが考えられる。他方、Xとしては、この売買契約の債務不履行解除を主張することが考えられる。

(1) そこで、本件土地を目的物とする売買契約の解除は認められるか。

(2)ア 本件において、Xは、本件土地上の所有権移転登記の存在を知ったことから「人を介して、本登記を抹消し改めて仮登記をすること」をYに対して申し入れており、「催告」をしたものといえる。なお、「催告」の趣旨は、債務者に最後の履行の機会を与える点にあるから、「相当の期間」を定めることは必ずしも必要でない。

 そこで、催告解除の可否について検討する。

イ Yは、まず、本件各売買契約に基づき、「その代金を支払う」義務(555条)を負っていたところ、代金の授受は完了しているから、かかる義務は履行されているといえ、よって、この点につき債務不履行はない。

 他方、本件売買契約に付加された特別の約定に基づき、Yは、本件土地の所有権移転登記手続は代金完済と同時にしかできない、代金完済までYは本件土地上に建物その他の工作物を建造しない、との債務を負っていたところ、Yは、この約条に違反しており、よって、かかる「債務を履行し」(同条本文)ていないものといえる。

ウ では、Yの上記債務不履行は、「その契約及び取引上の社会通念に照らして軽徴である」(同条ただし書)か。

 本件の約定は、「外見上は売買契約の付随的な」約定「とされていることは……明らかであり、したがって、売買契約締結の目的には必要不可欠なものではないが、売主にとっては代金の完全な支払の確保のために重要な意義を持つものであり、買主もこの趣旨のもとにこの点につき合意したものである」と認められる。そうであれば、本件約定の「不履行は契約締結の目的の達成に重大な影響を与えるものであるから」、このような約定により生じた債務の「不履行」は、「軽微である」とはいえない。

(3) 以上より、本件においては、催告解除の要件が満たされる。

3 よって、XY間の売買契約の債務不履行解除は認められる結果、Xの上記請求は認められる、ということになる。

 

百選Ⅱ-44 複合的契約における債務不履行と契約解除

1 X1は、Yに対する、本件不動産の売買代金から60万円を控除し、これに特約に基づく違約金を加えた額の半額の支払請求のほか、Yに対して、会員権登録料及び入会預り金の返還請求をしているところ、これは、屋内プールの完成債務の履行遅滞を理由とした本件売買契約及び本件会員権契約(以下「本件各契約」という。)の履行遅滞解除に基づく原状回復請求権(545条1項本文)に基づく。

2 そこで、上記解除の要件について検討する。

(1) まず、Xらは、屋内プールの建をYに再三要求したにもかかわらず、Yは建設に着工すらしないから、「相手方が…その履行の催告をし、その期間内に履行がない」(同条本文)と認められる。なお「催告」の趣旨は、債務者に最後の履行の機会を与える点にあるから、「相当の期間」を定めることは必ずしも必要でない。

(2) そこで、本件においては、催告解除の要件を満たしているかどうかについて検討する(541条本文)。

ア Yが「履行しない」「債務」としては、上記のとおり、屋内プールの完成債務が挙げられる。しかし本件各契約の目的は、契約の客体がマンションと本件クラブの会員権で異なる財産権であることに鑑みれば、あくまで別個の契約とみるべきであるところ、屋内プールの完成債務は、本件会員権契約に基づく債務である。そうだとすると、本件会員権契約に基づく「債務を履行しない」とはいえるとしても、本件売買契約に基づく「債務を履行しない」とはいえないのが原則である。

イ もっとも、密接な関連性を有ずる2個以上の契約についてまで、かかる原則を貫くのでは、契約当事者の合理的意思に反する。そこで、形式上2個以上の契約であっても一定の場合には解除を認めるべきである。具体的には、契約において重要であるのは、契約当事者がどのような目的で何を約定したのかという点であるから、①両契約の目的が相互に密接に関連付けられていて、②社会通念上いずれかが履行されただけでは契約を締結した目的が全体としては達成されないと認められる場合には、例外的に、一方の契約上の「債務を履行しない」ことをもって、他方の契約上の「債務を履行しない」ということができると解する。

 本件不動産は、屋内プールを含むスポーツ施設を利用することを主要な目的としたいわゆるリゾートマンションである。また、本件マンションの広告や売買契約書には、本件クラブ「会員権付」との記載があり、また、同売買契約書の記戦及び本件クラプの会則によれば、本件マンションの区分所有権の購入者はその購入と同時に本件クラブの会員になるとされ、さらに同会則では、区分所有権を他に譲渡したときはクラブの会員たる資格は消滅すること、区分所有権を譲り受けた者はYの承認を得て新会員として登録できることとされていた。さらに、本件マンションの分譲広告や案内書等には、本件クラプの施設内容として、テニスートや屋外プール等が完備されているほか、平成4年9月末には屋内プール、ジャグジー等が完成予定である旨記載されていた。本件マンションの分譲広告や案内書等には本件クラブの施設内容が詳細に記載されており、本件マンションの区分所有権を取得し、会員権を取得すれば本件クラブの施設を自由に使うことができるものとされている。

 以上の事実に鑑みれば、本件マンションの区分所有権と本件クラプの会員権には密接な関連性が認められるし、マンションを購入する者にとって、本件クラブの施設を利用できなければ本件各契約全体の目的を達することはできないといえる。

 とすれば、本件各契約の目的は相互に密抜に関連付けられていて、社会通念上いずれかが履行されただけでは契約を締結した目的が全体としては達せられないと認められる。

ウ したがって、Yは、本件各契約に基づく「債務を履行しない」といえる。

(2) さらに、上記のとおり、契約を締結した目的が全体としては達成されないと認められるから、「債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微である」(同条ただし書)とは認められない。

(3) したがって、その要件を充たす。

3 よって、Xらの請求は認められる。

 

百選Ⅱ-45 他人の権利の売買の解除と買主の使用利益の返還義務

1 Xは、Yに対して、売買契約の解除を理由とする、原状回復請求権に基づく代金返還請求権及びその利息請求権を行使することが考えられる。

2 この請求が認められるためには、XY間の売買契約が、解除されているといえることが必要である。そこで、以下、無催告解除の要件が満たされているかを検討する。

(1) 本件において、Yは、結果債務として、上記売買契約に基づき目的物たる本件自動車をXに引き渡す義務を負っていたところ、本件自動車はYの物ではなかったために、Yは、本件自動車を、Xに引き渡すことができなかった。

 それゆえ、Yには債務不履行があるといえる。

(2) そして、本件は、「債務の全部」が履行不能である場合に当たるため(542条1項1号)。

(3) よって、Xは、本件売買契約を無催告解除することができる。

3 それゆえ、XのYに対する上記請求は認められることになる。もっとも、Yとしては、①その場合、自らがXに対して原状回復請求権として本件自動車の返還請求権を有していたところ、本件自動車はすでに滅失しているため、上記返還請求権はその価格の返還請求権に転化していること、②本件売買契約が解除されるまでの間のXの本件自動車の使用利益の価格返還請求権を自らは有していることを主張したうえで、①②の請求権を以て、Xの上記請求権とその対当額において相殺する意思表示をすることが考えられる。

(1) ①について

ア 「売買契約解除による原状回復義務の履行として目的物を返還することができなくなった場合において、その返還不能が、給付受領者の責に帰すべき事由ではなく、給付者のそれによって生じたものであるときは、給付受領者は、目的物の返還に代わる価格返還の義務を負わないものと解するのが相当である。」

イ 本件においては、「中古自動車の販売業者である上告人(Y)は、訴外Aから買い受けた本件自動車を、…被上告人(X)に転売し、被上告人(X)は、…代金…全額を支払つてその引渡を受けた」ところ、「本件自動車は、…訴外会社…が所有権留保特約付で割賦販売したものであって、…Aは、本件自動車を処分する権限を有していなかった」というのであり、「訴外会社が、留保していた所有権に基づき、…本件自動車を執行官の保管とする旨の仮処分決定を得、…その執行をしたため、本件自動車は、被上告人(X)から引き揚げられた」という経緯がある。そして、「被上告人(X)」が、「右仮処分の執行を受けて、はじめて本件自動車が上告人(Y)の所有に属しないものであることを知」ったという本件においては、「上告人(X)が、他人の権利の売主として、本件自動車の所有権を取得してこれを被上告人(X)に移転すべき義務を履行しなかつたため、被上告人(Y)は、所有権者の追奪により、上告人(X)から引渡を受けた本件自動車の占有を失い、これを上告人(Y)に返還することが不能となった」ものということができる。

 そうすると、本件自動車の返還義務の不能は、Xの責めに帰すべき事由によるものではなく、むしろ、Yに起因するものであるといえる。

ウ よって、本件においてXは、本件自動車の返還に代わる価格返還の義務は負わない。

(2) ②について

ア 「売買契約が解除された場合に、目的物の引渡を受けていた買主は、原状回復義務の内容として、解除までの間目的物を使用したことによる利益を売主に返還すべき義務を負うものと解すべきである」。なぜならば、「解除によって」、当事者は、545条1項に基づき、「当該契約に基づく給付がなかったと同一の財産状態を回復させる」必要があるところ、「譲渡を受けた目的物を解除するまでの間に使用したことによる利益をも返還させる」べきだからである。

イ そして、他人物売買であってもその契約自体は有効に成立し、当事者はこれに基づく債務を相手方に対して負うのであるから、解除の場面においても契約当事者は互いに相手方に対して上記原状回復義務を負うものと解される。そうである以上、アの理は、「他人の権利の売買契約において、売主が目的物の所有権を取得して買主に移転することができず、民法561条の規定により該契約が解除された場合」であっても、妥当するものと解すべきである。

 確かに、売主に使用利益を返還しなければならないとすると、買主が悪意の占有者である場合には、買主は使用利益を所有者にも返還しなければならない(民法190条)から買主に二重の負担を強いる可能性があり負担である。もっとも、買主が売主の請求に応じて使用利益を返還した場合には、買主は使用利益をもはや有していないものといえるから、真の所有者は買主に対するこれを返還する義務を免れ、真の所有者は売主に対して不当利得返還請求をすることができるのみであり、他方、買主が真の所有者に対して使用利益を返還した場合にも同様売主に対する使用利益の返還義務を免れることができる、とすれば、この不都合は回避できる。

ウ よって、「他人の権利の売買契約において、売主が目的物の所有権を取得して買主に移転することができず、民法561条の規定により該契約が解除された場合」であっても、売主は、原状回復請求として、買主に、目的物の使用利益の返還を請求することができるものと解すべきである。

  • 若しくは、「確かに、売主に使用利益を返還しなければならないとすると、買主が悪意の占有者である場合には、買主は使用利益を所有者にも返還しなければならない(民法190条)から買主に二重の負担を強いる可能性があり負担である」、としたうえで、「 真の所有者が他人物売買の売主に対して使用利益を返還する意思がないと客観的に認められる場合等は、上記危険はないのであるし、 b. 売主に使用利益を返還する必要がないとすると、買主が善意の占有者である場合は使用利益を所有者に返還する必要はなく(民法189条)、それにもかかわらず売主から代金全額と利息を取得することになり、不当であるから、a、bのような場合には、「『他人の権利の売買契約において、売主が目的物の所有権を取得して買主に移転することができず、民法561条の規定により該契約が解除された場合』であっても、売主は、買主に対して使用利益の返還請求権を行使することができるものと解すべきである」とすることも可能。いずれにせよ本件においては、bの場合に該当するため、同様の結論になる。

(3) よって、Yの反論は、②についてのみ認められる。以下の通り、相殺の要件を満たすからである。

ア 相殺が認められるには、a. 同一当事者間に互いに対立する債権が存在し、b. 両債権が同種の目的であり、c. 両債権の弁済期が到来していること、のすべてを満たして相殺適状(506条2項)にある必要がある。そのような場合には、d. 両債権を対当額で相殺する旨の意思表示(506条1項前段)をすることにより、相殺適状時にさかのぼって効力を生ずる(506条2項)ことになる。

イ 本件においては、Xは売買契約に基づく代金返還請求権及び利息請求権、Yは本件自動車の使用利益返還請求権という金銭債権を、互いに有しており、a、bの要件を満たす。

ウ また、上記債権はそれぞれ、(特約のない限り)契約時、解除時(ではないかと思われる)に弁済期が到来しているため、cの要件も満たす。

4 よって、Yは、口頭弁論において相殺の意思表示をすることによって(d)、その対当額につき、Xの請求を拒むことができる。

5 また、上記の通り、Yは使用利益返還請求権、Xは代金返還請求権と利息請求権を有するところ、使用利益と利息返還請求権は、それぞれ同時履行の関係に立つといえるため、Yは、利息返還請求権については、同時履行の抗弁権を行使して、主張して拒むことも可能である。

 

百選Ⅱ-46 約款一般の拘束力

1 XらのYに対する保険契約に基づく保険金支払請求権は認められるか。これについては、XY間で保険契約が締結されている以上、肯定されるのが原則である。

2 もっとも、Yとしては、本件免責条項の存在を以て、上記請求を拒むことが考えられる。

(1) そこで、まず、本件免責条項の有効性が問題となる。

(2) ここで、仮に、本件約款が、定型約款(民法548条の2第1項本文)に該当するのであれば、①定型取引を行うことの同意をした者が、定型約款を契約の内容とする旨の合意をした場合(1号)、あるいは、②定型約款を準備したものが予め「定型約款を契約の内容とする」旨を相手方に表示していた場合(2号)には、原則として、当事者間は定型約款に含まれる個別条項に合意し、これを当事者双方の契約の内容としていたとみなされることになる。

ア そこで、そもそも、本件約款は民法548条の2のいう「定型約款」に当たるかが問題となる。

(ア) まず、「定型取引において」といえるためには、ある特定の者が、その個性に着目しない「(不特定)多数の者」を相手として行う取引でなくてはならないところ、本件のような保険契約は不特定多数の顧客を対象としてそれらの顧客の個性を問わずに一律に締結される契約である。

(イ) また、「定型取引において」といえるためには、同時に、一方当事者においてそのような契約内容を定めることの合理性が一般的に認められる取引でなければならないところ、本件のようなサービスの性質からして、多数の相手方に対して同一の内容で契約を締結することはむしろビジネスモデルとして要求されているものと言える。

(ウ) また、定型約款に該当するというためにはその約款を契約内容に組み入れることを目的として契約を締結する必要がある(「契約の内容とすることを目的として」との文言)ところ、本件においてはこの要件も満たしているものと解される。

(エ) 以上からすると、本件免責条項は、民法548条の2のいう定型約款にあたるというべきである。

ウ そして、本件において、契約が締結されるにあたり、①②のいずれかの要件を満たしていたのではないかと考えられる。それゆえ、本件約款は、原則として、本件保険契約の内容となっていたといえる。

エ もっとも、この定型約款が「相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして第1条第2項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるもの」に該当し、Xは本件約款に合意をしなかったものとみなされないか。

 本問における、免責条項の内容は、当該条項がなければ認められたはずのXの保険金請求権という権利を制限・加重するものである。もっとも、これは、当該条項そのものの内容、合意内容の希薄性、契約締結の態様、健全な取引慣行など取引全体にかかる事情を「取引上の社会通念に照らして」「相手方の利益を一方的に害する」といはいえない。

オ よって、XY間における本件約款は、有効なものといえる。

3 よって、Yは、本件約款の存在を、Xに対して主張することが可能である。

 

百選Ⅱ―47 贈与と書面

1 Xらの、AY間の本件土地を目的物とする贈与契約の不存在を前提とする、所有権に基づく本件土地の所有権移転登記抹消登記手続請求は認められるか。

2 AY間の上記贈与契約が有効かが問題となる。

(1) AY間では、贈与契約が締結されているところ、贈与契約は諾成契約であるため、これ自体を以て、本件贈与契約の効力は生じているものといえる。

(2) もっとも、贈与契約が「書面」によらない場合、贈与をする側は、撤回の意思表示をすることができる。そこで、本件において、贈与契約は「書面」によらないものであったといえるかが問題となる。

ア 「民法550条が書面によらない贈与を取り消しうるものとした趣旨は、贈与者が軽率に贈与することを予防し、かつ、贈与の意思を明確にすることを期するためである」。それゆえ、「贈与が書面によってされたといえるためには、贈与の意思表示自体が」明確に「書面によって」なされていることまでは必要でなく、また、「書面が贈与の当事者間で作成されたこと、又は書面に無償の趣旨の文言が記載されていることも」必ずしも必要ではない。すなわち、「書面に贈与」をすること、或いは既に「されたことを確実に看取しうる程度の記載があれば足りるものと解すべきである。」そしてこれは、その作成の動機や経緯、方式及び記載文言等に照らして考えるべきである。

イ 「これを本件についてみるに、…Xらの被相続人である亡Aは、…宅地…を贈与したが、前主であるBからまだ所有権移転登記を経由していなかったことから、Yに対し贈与に基づく所有権移転登記をすることができなかったため、同日のうちに、司法書士Cに依頼して」、「『右土地をYに譲渡したからBからYに対し直接所有権移転登記をするよう』求めたB宛ての内容証明郵便による書面を作成し、これを差し出した、というのであり、右の書面は、単なる第三者に宛てた書面ではなく、贈与の履行を目的として、亡Aに所有権移転登記義務を負うBに対し、中間者である亡Aを省略して直接Yに所有権移転登記をすることについて、同意し、かつ、指図した書面であ」る。

ウ このように、その作成の動機・経緯、方式及び記載文言に照らして考えるならば、贈与者である亡Aの慎重な意思決定に基づいて作成され、かつ、贈与の意思を確実に看取しうる書面というのに欠けるところはなく、民法550条にいう書面に当たるものと解するのが相当である。」

(3) それゆえ、A、およびその相続人であるXは、本件贈与契約を撤回することはできない。よって、本件贈与契約は有効である。

3 よって、上記Xの請求は認められない。

 

百選Ⅱ-48 手付の交付と履行に着手した当事者による解除

1 XのYに対する、本件不動産の売買契約に基づく移転登記手続請求と本件不動産の引渡請求は認められるか。これについては、XY間で本件不動産の売買契約が締結されている以上、認められるとも思える。

2 もっとも、本件売買契約に際しては手付の交付がなされているため、Yとしては、本件売買契約の手付解除を主張し、上記請求を拒むことが考えられる。

(1) まず、この手付の性質が一体何であったかが問題となるも、すべての手付は別段の合意がない限り、解約手付、すなわち契約当事者の一方が契約の履行に着手するまでは買主はその手付を放棄し、売主は手付の倍額を現実に提供して一方的に契約を解除することを認めるものであると推定される(557条1項)ところ、本件では、解約手付については特にこれを排除する合意がなされていなかったものといえるから、少なくとも、解約手付としての性質を有していたものといえる。

 よって、Yは解除の意思表示をすることにより、Xに対して手付の倍額80万円を現実に提供しさえすれば、解除ができるはずである(557条1項)。

(2) もっとも、Xとしては、Yはすでに、「当事者」として、「履行に着手」しており、557条1項に従えば、Yにより手付解除は認められないと主張することが考えられる。

ア ここで、557条1項が手付け損・倍返しにとる解除を「履行に着手」するまでに限定した趣旨は、履行に着手した当事者が相手方からの解除によって不測の損害を被ることを防止しもってその利益を保護する点にある。そうだとすれば、「履行に着手」の意義も、かかる保護に値するだけの利害を持つに至った状況を言うと解すべきであり、具体的に、「履行に着手」とは、客観的に外部から認識し得るような形で履行行為の一部をなし、又は履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合を指すと解すべきである。

 また、上記趣旨に鑑みれば、557条1項にいう「当事者の一方」とは、かかる不測の損害を被る者、すなわち、解除の相手方を意味すべきである。「未だ履行に着手していない当事者は、契約を解除されても、自らは何ら履行に着手していないのであるから、これがため不測の損害を蒙るということはなく、仮に何らかの損害を蒙るとしても」、手付の「倍額の償還を受けることにより…填補される」ものであるといえるし、「解除権を行使する当事者」が、「たとえ履行に着手していても、自らその着手に要した出費を犠牲にし、更に手付を放棄し又はその倍額の償還をしても、なおあえて契約を解除したいというのであ」れば、「かような場合に、解除権の行使を禁止すべき理由はな」いうえ、「自ら履行に着手したからといって、これをもって、自己の解除権を放棄したものと擬制すべき法的根拠もない」ためである。

 以上を小括すると、557条1項は、自ら「履行に着手した者」は、「履行に着手」した場合であっても、手付解除をすることができる、としているものと解すべきである。

イ これを本件について見るに、確かに、本件においては、「Yが本件物件の所有者たる大阪府に代金を支払い、これをXに譲渡する前提としてY名義にその所有権移転登記を経たという」行為は、「特定の売買の目的物件の調達行為にあたり、単なる履行の準備行為にとどまらず、履行の着手があったものと解するを相当とする。」しかし、「本件では、Xが履行に着手した形跡はなく、YはXが履行に着手しない間に、手付倍戻しによる解除をしている」。

ウ 以上より、「解除の効果は問題なく認められ」る。

3 よって、XのYに対する上記請求は認められない。

  • 違約手付の合意があった場合は、損害賠償額が予定されたものと推定される(420条3項)。損害賠償とは別個の違約罰であるとするのは契約当事者にとって酷であり、また、通常それを想定していないと言えるからである。ここで、違約手付は契約の拘束力を強めるものであり、一旦成立した契約の一方当事者が任意にそれを消滅させる権利を留保して契約の拘束力を弱める解約手付とは性質を異にするため、違約手付の趣旨であることは解約手付であることを妨げないかが問題となる。しかし、違約手付と解約手付が併存する場合は、履行の着手前においては解約手付として機能し、その後に債務不履行があった場合には違約手付として機能するということになる。このように、両者が機能する場面は異なっているのであるから、両者が併存するとしても矛盾は生じない。よって、違約手付であることは解約手付であることを妨げないものと解する。

 

百選Ⅱ-49 買主が悪意の場合における他人の権利の売主の債務不履行責任

1 Xが、Yに対して、本件売買契約の債務不履行責任の追及として、損害賠償請求及び、解除の主張をすることは可能か。

2 債務不履行に基づく損害賠償請求について

(1)ア まず、他人の物を目的物とする場合であっても、そのような売買契約は、債権的には有効である。

イ では、本件XY間の売買契約に基づき、Yは具体的にいかなる債務を負っていたものいうべきか。

 本件売買契約を締結する際、Xは、その時点でYは本件土地の所有権を有しておらず、それゆえ、YがAから本件土地の所有権を取得できた場合に限って、本件土地のXへの引渡し、登記は可能であるということを、知っていた。そこで、Yとしては、自身は、本件売買契約に基づき、Aから本件土地の所有権を取得するために尽力するという手段債務を負っていたに過ぎないと主張することが考えられる。

 しかし、売買契約という形式をとっている場合には、当事者としては、その目的物の引渡を完了する義務を売主側は負っていると考えるのが通常であること、本件売買契約においてXらはYがAから本件土地を取得することができなかった場合を想定した条項を設けていなかったこと等に鑑みれば、Yは、本件売買契約において、本件土地を引き渡し、その登記のための手続をする義務を結果債務として負っていたものと解するのが相当である。

ウ このように、Yは、本件売買契約において、本件土地の引渡義務を負っていたにもかかわらず、本件土地が他人の物であったがゆえに、これらの義務を果たすことができなかった。よって、Yが、本件土地の真の所有者Aから本件土地の所有権をおよそ得得ないと客観的に認められる時点で、Yの「債務の履行」は「不能」となっていたといえる(415条1項、2項1号)といえる。

(2) もっとも、上記の通りYが負っていたのは結果債務であるところ、結果債務の場合、免責がありうる。免責事由については、当事者間においてそのような事情から生じるリスクを債務者が引きうけていたかどうかを、契約および取引上の社会通念(415条1項但書)を考慮して、合理的に解釈して判断するべきである。

 ここで、Yとしては、上記の通り、本件売買契約を締結する際、Xは、その時点でYは本件土地の所有権を有しておらず、それゆえ、YがAから本件土地の所有権を取得できた場合に限って、本件土地のXへの引渡し、登記は可能であるということを、知っていたことを挙げ、本件のAがYへの本件土地の所有権移転を拒絶した場合のリスクは、Yではなく、Aが引受けていたはずであるとすることで、自身には免責事由が認められると主張することが考えられる。

 もっとも、売買契約において、通常、売主は、目的物の引渡を契約利益として保障しているものと解される。そうであるとすれば、特に合意がなされていない本件において、Yは、売買契約に基づき、本件のAがYへの本件土地の所有権移転を拒絶した場合のリスクも引き受けていたものと考えるのが相当である。

 よって、免責事由も認められない。

(3) それゆえ、XのYに対する債務不履行に基づく損害賠償請求は認められるものと考えるべきである。

3 解除について

 上記の通り、Yが、本件土地の真の所有者Aから本件土地の所有権をおよそ得得ないと客観的に認められる時点で、Yの「債務の履行」は「不能」となっていたといえる(415条1項、2項1号)以上、同時に、「債務の全部の履行が不能である」場合という無催告解除の要件も満たすものといえる(542条1項1号)といえる。

 よって、XのYに対する本件売買契約の解除の主張も認められるものと考えられる。

4 よって、Xの上記請求はいずれも認められる。

 

百選Ⅱ-50 売買後に規制された土壌汚染と契約不適合

1 Xは、Yに対して、契約不適合責任の追及として、土壌汚染の調査及び対策に要した費用12億円余のうち約4億6000万円の損害賠償請求をすることが考えられる(415条1項本文、564条)。では、これは認められるか。

2 そもそも、本件において、①引き渡された目的物が、②「債務者がその債務の本旨に従った履行をしない」ものである、すなわち、種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるといえるかが問題となる。

(1) ①について

まず、本件においては、売買契約に基づき、一応は目的物が引き渡されている(①)。

(2) ②について

 では、上記引渡された本件土地には、契約の内容に適合しないものであるといえるか。

 本件土地には、ふっ素による土壌汚染があるところ、XY間の売買契約において、その目的物である本件土地が、ふっ素による土壌汚染がない土地であることが、その契約の内容となっていたといえる場合には、本件土地は、「品質」に関して契約の内容に適合していないといえる。そこで、XYの契約において、その目的物についていかなる「品質」を有することが予定していたのか、その欠陥等をどこまで契約に織り込んでいたのかを、検討する必要がある。

ア まず、売買契約の当事者間において目的物がいかなる「品質」(562条1項)を有することが予定されていたかについては、売買契約締結当時の取引観念をしんしゃくして判断すべきである。

イ 本件売買契約締結当時、取引観念上、ふっ素が土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるとは認識されておらず、担当者もそのような認識を有していなかったのであり、ふっ素が、それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるなどの有害物質として、法令に基づく規制の対象となったのは、本件売買契約締結後であったというのである。

 そして、本件売買契約の当事者間において、本件土地が備えるべき属性として、その土壌に、ふっ素が含まれていないことや、本件売買契約締結当時に有害性が認識されていたか否かにかかわらず、人の健康に係る被害を生ずるおそれのある一切の物質が含まれていないことが特に予定されていたとみるべき事情もうかがわれない。

ウ そうすると、本件売買契約締結当時の取引観念上、それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるとは認識されていなかったふっ素について、本件売買契約の当事者間において、それが人の健康を損なう限度を超えて本件土地の土壌に含まれていないことが予定されていたものとみることはできない。

(3) したがって、XY間の売買契約において、その目的物である本件土地が、ふっ素による土壌汚染がない土地であることが、その契約の内容となっていたとはいえないため、引渡された本件土地には(①)、契約不適合はないということになる(②不充足)。

3 そのため、Yは、ふっ素による土壌汚染が存在しない木件土地を引き渡す「債務」(415条1項本文)を負っていたとはいえず、Yに債務不履行はない。

4 よって、Xの請求は認められない。