○○法ガールになりたい。

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百選起案 刑訴法(第10版) 13~16

 

13 勾留の要件

1 本件勾留請求は認められるか。

2 その実体的要件を満たしているかが問題となる。

(1) 勾留請求は、その者が「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合」で、かつ、60条1項各号に掲げる事由がある場合にすることができる(207条1項、60条1項)。そしてこの場合、勾留の必要がないといえない限り(87条1項・207条1項)、裁判官は速やかに勾留状を発しなければならない(207条5項本文)。

(2)ア まず、「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」に関しては、本件においては、認められる。

イ また、60条1項各号該当性も、被疑者には、罪障を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるといえるため(2号)、認められる。

ウ もっとも、交流の必要性については、被疑者を勾留することによる公益的な利益と、勾留されることにより被疑者が受ける不利益とを比較衡量して判断すべきところ、被疑者は、前科前歴がない会社員であり、逃亡のおそれが否定されていることなどに照らせば、本件において勾留の必要性の判断を左右する要素は、罪証隠滅の現実的可能性の程度と考えられる。本件が京都市内の中心部を走る朝の通勤通学時間帯の地下鉄車両内で発生したもので、被疑者が被害少女に接触する可能性が高いことを示すような具体的な事情がうかがわれないことからすると、罪証隠滅の現実的可能性は低いといえる。
(3) よって、本件勾留請求は、その実体的要件を満たさない。

3 よって、本件勾留請求は認められない。

 

14 逮捕の違法と勾留

1 本件勾留中に得られた供述調書は、証拠能力を有するか。違法収集証拠排除法則により、本件供述調書の証拠能力が否定されるかについて検討するにあたり、その前提として、本件供述調書を得るまでの、逮捕、勾留の過程に違法はなかったかを検討する。

2 逮捕について

(1) 本件逮捕に至るまでの警察官の一連の行為は、実質的に、令状を得ないままなされた「強制の処分」たる逮捕に当たり、令状主義に反し違法ではないか。

(2) ここで、「強制の処分」とは、被処分者の意思を抑圧し、その重要な権利・利益を侵害する処分を言うものと解される。

 本件逮捕は、①職務質問及び任意同行、②同所において約2時間にわたり事情聴取を行ったあと、さらに、③被告人の嫌疑は濃厚であるが緊急逮捕するには無理がありなお継続して取調べをする必要があると判断し半ば自棄になって同意した被告人を飯山署への同行させ、逮捕状が発付されるまでの間その場に止まらされたという、一連の行為の後に、なされている。

 まず、①のうち職務質問については、警察官C,Dが事前に入っていた犯人の情報とその人相・服装等が手配人物に酷似し、かつ、そのズボンが濡れていて足の方が泥で汚れていた被告人をみとめていたことに鑑みれば、被告人には不審事由があったといえるため、その要件を満たすため、適法であるといえる。また、職務質問を継続するために被告人を前記駅付近から同駅待合室へ、同所から更に栄駐在所へ同行した一連の行為は、その経過・態様に照らし警察官職務執行法2条2項の任意同行に該当し何ら違法の点は認められない。

 次に、②の、2時間にわたる事情聴取も、被告人が①の任意同行に任意に応じていたことに鑑みると、被告人の意思を抑圧するものとは言えないため、「強制の処分」には該当せず、令状主義違反の疑いは生じない。

 もっとも、③については、取調べ中、依然として否認を続けていた被告人が、午前零時を過ぎた後、「既に逮捕しているなら遅いから留置場で寝かせてほしい。まだ逮捕していないなら帰らせてもらう」旨を述べて椅子から立ち上がってもなお、警察官がそれを制し、結局、逮捕状が出るまでその場にとどまらせたというのである。このことは、被告人の意思に反することは明らかであり、しかも、その場所、方法、違法態様、時刻、同行後の状況等からして、被告人の身体という権利を身体拘束により強度に制約するものであることに鑑みれば、逮捕と同一視できる程度の「強制の処分」に該当するものといえ、このことは、令状主義違反の違法を構成する。

 以上より、本件逮捕手続においては、違法があるといえる。

3 勾留について

(1) もっとも、その後の勾留については、実体的要件を満たしていたがゆえに、令状審査をクリアしている。それ故、勾留手続き自体に違法はない。

(2) そこで、上記逮捕手続の違法が、勾留の適法性にも影響を及ぼさないかが問題となる。
 ここで、本件においては、「買物袋窃取の犯人が乗って逃走した自動車をその2,3時間後に被告人が運転しており、しかも警察官の停止合図を無視して逃走したこと、約1週間前に遠隔地の刑務所を出所したばかりで、しかも運転免許をもたない被告人が数時間前に盗まれた自動車を運転していたことなどからすると、右実質的逮捕の時点において緊急逮捕の理由と必要性はあったと認めるのが相当である」という事情がある。そして、このことに、「右実質的逮捕の約3時間後には逮捕令状による通常逮捕の手続がとられていること、右実質的逮捕の時から48時間以内に検察官への送致手続がとられており、勾留請求の時期についても違法の点は認められないことを合わせ考えると、右実質的逮捕の違法性の程度はその後になされた勾留を違法ならしめるほど重大なものではないと考える。」「また他に右勾留を違法無効とするような事情は記録上何ら認められない。」

(3) よって、本件勾留は適法である。

4 本件勾留中に得られた供述調書について

 そうすると、留中に作成された被告人の供述調書は、違法を帯びない。

 よって、違法収集証拠であるとすることはできないと考えるべきである。

 

15 再逮捕・再勾留

 「本件についてみると、関係記録により本件事案の重大さ、その捜査経緯、再勾留の必要性等は別紙(一)記載の申立理由中に記載されているとおりであると認められ、その他、前回の勾留が期間延長のうえその満了までなされている点についても、前回の勾留は本件被疑事実のみについてなされたのではなく、本件を含む相互に併合罪関係にある五件の同種事実(別紙(二))についてなされたものであることなどの点も考慮すると、本件の如き重大事犯につき捜査機関に充分な捜査を尽させずにこれを放置することは社会通念上到底首肯できず、本件について被疑者を再び勾留することが身柄拘束の不当なむしかえしにはならないというほかなく前記の極めて例外的な場合に該当すると認めるのが相当である。…以上によると」勾留請求は適法である。

参考 H28司法試験

1 本件逮捕の適法性について

(1) 本件の警察官の甲に対する二度目の逮捕は適法か。

(2) 刑訴法が203条以下の規定により逮捕及び勾留による身体拘束について厳格な期間制限を設けた趣旨は、自身の自由に対する不当な蒸し返しを防ぐ点にあるのであるから、同一事件につき再逮捕をすることは原則として許されないと言うべきである(再逮捕禁止の原則)。もっとも、199条3項は再逮捕が許される場合があることを前提としている。また、捜査の流動性に鑑みても、再逮捕を一切認めないとするのは、人権保障に配慮を図りつつも真実の発見を目指すという刑訴法の目的からは、妥当ではない。

 そこで、例外的に、逮捕と釈放の繰り返しによる自由侵害を凌駕する「合理的な理由」がある場合には、再逮捕も許容されると言うべきである。具体的には、本問のように先行逮捕が適法であったが証拠不十分により釈放されたといったような場合の再逮捕の可否が問題となっている場合は、①重要な新証拠の発見等の事情の変更の有無、②再逮捕の合理的な必要性、③再逮捕により被逮捕者が被る不利益の程度等の事情を考慮して、被逮捕者の利益と対比してみてもなお再逮捕は真にやむを得ないと言えるかどうかにより判断されるべきである。

 本件についてこれをみる。本件では、甲が証拠不十分により釈放されたあとに、3月5日にV方で盗まれた彫刻1店を甲自身が古美術店に売却していたという重大な新証拠が発見されている。また、犯行当日男が慌てた様子でV方玄関から出てきて走り去るのを目撃したWが、甲の写真を含む多数の人物写真から、甲の写真を示し、「この男に間違いありません」と述べている。また、本件被疑事実には放火という社会的法益を侵害する重大な犯罪が含まれており、また、甲が単身居住であったということを考慮すると、罪証隠滅・逃亡のおそれも認められ、よって、逮捕の必要性も認められる。そうすると、本件においては、再逮捕の高度の必要性が認められる。他方、確かに、甲は一度目の逮捕に引き続く勾留により、20日間勾留されているが、これは甲が一貫して黙秘を続けていた結果であり、やむを得ないものということができる。 また、彫刻1店を美術展へ売却したという新事実はH県から離れたL県内で生じていたのであり、県をまたいでの捜査は甲を一度目に逮捕した時点では発見することは困難であったと言えるから、再逮捕はやむを得ないものであったと言える。

(3) よって、本件逮捕は適法である。

2 本件逮捕に引き続く再勾留の適法性

(1) 本件の再勾留は適法か。再逮捕が原則として禁止される趣旨からすると、再勾留も再逮捕と同様、原則として禁止されるべきであるが、やはり再逮捕の場合と同様、再勾留を認める必要があることも否めない。

 確かに、勾留は逮捕と異なり再勾留を予定した明文はない。しかし、勾留は、上述の通り再逮捕を予定している逮捕と密接な関係にある(207条1項本文参照)。そうすると、再逮捕同様,法は再勾留を許容していると解すべきである。

 そこで、再勾留も、再逮捕の場合と同様、その合理的必要性が認められ、被逮捕者の利益と対比してみてもなお再勾留は真にやむを得ないと言える場合には、許容されるというべきである。とはいえ、勾留は逮捕より身体拘束時間が長いので、再勾留の肯否は再逮捕の場合より厳格に判断されなければならない。

(2) 再逮捕の適法性の検討の際にも述べたとおり、本件の被疑事実が人の生命身体に関わる重大犯罪であること、また、新証拠の発見がなされ甲の嫌疑が更に深まっており、また、再勾留の必要性が高度に生じていると言える。また、先行する勾留期間は20日間と長期にわたるものの、前記のとおり、これにも、甲が一貫して被疑事実を否認していたという、捜査が長引いてもやむをえない合理的理由があったと言える。また、売却先の古美術店はH県から離れたL県内にあり、県をまたぐ捜査には時間がかかるので先行の逮捕、勾留期間にかかる事実を覚知できなくともやむを得ない。以上からすると、本件において捜査機関に強制捜査を断念させることは肯定し難く、被逮捕者の利益と対比してみてもなお、再勾留は真にやむを得ないと言える。

(3) よって、本件勾留も適法である。

 

先行逮捕が違法な場合の再逮捕;この点、司法の廉潔性及び将来の違法逮捕抑止の見地からは、先行逮捕が違法な場合の再逮捕には慎重であるべきである。もっとも、勾留請求が却下されることにより先行逮捕の違法が宣言されたこととなり、これにより司法の廉潔性や将来の違法逮捕の抑止の要請は相当程度充足されるといえる。そこで、違法の程度、犯罪の重大性、再逮捕を許さないことによる捜査への影響等を総合考慮して再逮捕の可否を判断すべきと考える。

 

16 別件逮捕勾留と余罪取調べ

令和元年司法試験

第1 設問1小問1について

1 本件逮捕勾留は適法か。その判断にあたって、まず、本件逮捕がその実体的要件を満たしているかが問題となる。

(1) 通常逮捕は、「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(199条1項)がある場合に、逮捕の必要性(199条2項但書、規則143条の3)が認められる限りで、することができる。

(2) 本件においては、甲がかつて勤めていたX社の社長から、「甲は、売掛金の集金及び経理業務を担当していたが、平成30年11月20日に顧客Aから集金した3万円を着服したことが発覚して同年末に退職した」旨の供述が得られている。そのうえで、「平成30年11月20日、自宅に集金に来た甲に3万円を渡した」とのAの供述調書が得られていたこと、それにもかかわらず、Aから集金した3万円がX社に入金されたことを裏付ける帳簿類は見当たらなかった旨の捜査報告書が疎明資料として提出されていたことを考慮すると、甲には、本件逮捕の被疑事実である業務上横領罪を「犯したことを疑うに足りる相当な理由」があったといえる。

 また、甲は逮捕当時アパートで単身生活をしており、また、無職であったことに鑑みると、被害額は比較的少額であったとしても,甲には逃亡のおそれがあり、逮捕の必要性もあったといえる。

(3) よって、本件逮捕は実体的要件を満たしている。

2 では、本件勾留はその実体的要件を満たしているといえるか。

(1) 勾留請求は、その者が「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合」で、かつ、60条1項各号に掲げる事由がある場合にすることができる(207条1項、60条1項)。そしてこの場合、勾留の必要がないといえない限り(87条1項・207条1項参照)、裁判官は速やかに勾留状を発しなければならない(207条5項本文)。

(2) まず、「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」に関しては、上記の通り、認められる。

 そこで、60条1項各号に掲げる事由があるかが問題となるも、上記の通り、逃亡のおそれ(3号)がある場合には該当する。また、勾留質問において甲が、Aへの集金の事実を「覚えていない」としてその容疑を否認していることから、罪証隠滅のおそれ(2号)がある場合にも該当する。

 では、勾留の必要はあるといえるか。本件勾留の被疑事実は業務上横領罪(刑法253条)という比較的重大な事件であるところ、勾留の必要がないといえる事情も見受けられない。

(3) よって、本件勾留も、その実体的要件を満たしているといえる。

3 また、本件では勾留延長がなされているが、これが適法かも問題となる。

(1) 勾留延長が認められるためには、「やむを得ない事由」(208条2項)がなければならない。

(2) 本件業務上横領に関する捜査は未了であって、上記罪証隠滅・逃亡のおそれを払拭しつつ、さらなる捜査を続ける必要があったといえる。そして、Yの出張等の都合により、取り調べがなかなかできなかったこと、また、甲のアリバイを証明すべきパチンコ店I店の防犯カメラが修理中でそのチェックをするのを3月14日まで待たなければならなかったことを考慮すると、このような延長は「やむを得ない事由」に基づくものであるといえる。

(3) よって、本件勾留延長もその要件を満たしているといえる。

4 もっとも、上記のように逮捕・勾留・勾留延長のそれぞれの要件が具備されていたとしても、本件逮捕勾留は、逮捕要件を具備していない強盗致傷事件(本件)の捜査の目的で、逮捕要件を具備している業務上横領罪(別件)を被疑事実としてなされた別件逮捕勾留である可能性がある。仮にそうだとすれば、このような逮捕勾留は違法と評価されるのではないか。

 ↓

 (別件基準説) これについては、逮捕勾留につきそれぞれその実体的要件が具備されている以上、それ自体違法であると評価されることはないというべきである。捜査官の主観をも考慮して裁判官にその適法性を判断させるのは現実的ではないし、また、別件逮捕勾留の意図があっただけでその後実際に本件取り調べが行われなかった場合にまでその逮捕勾留が違法と評価されるのは妥当でないからである。

 よって、本件逮捕勾留は適法である。

( ⇒ もっとも、刑事訴訟法が司法審査の上、身体拘束を受けた被疑者にはある程度の取調べ受忍義務を課していることからすれば(198条1項参照)、身体拘束につき司法審査の及んでいない本件の取調べについては、被疑者には受忍義務がないためあくまで任意処分として許容されるに過ぎないと解すべきである。ただし、余罪が本罪と密接に関連し、若しくは同種事犯である等は、余罪の捜査が本罪の捜査としても重要な意味を持つから、本罪に付随並行して余罪につき受忍義務を課した取調べを行うことが許されると解される。本件において、強盗致傷事件と業務上横領事件とは、密接に関連しておらず、また、同種事犯でもない。それゆえ、余罪捜査が本罪の捜査としても重要な意味を持つとはいえず、強盗致傷事件の取り調べにつき受忍義務を課すことはできない。

 そこで、本件についての取調べが、任意の処分として許容されるか取り調べを受けるか否かについての被疑者の自由が実質的に保障されていたといえるかが問題となるも、本件においては、捜査機関が任意の取り調べであることを告知しており、その上で強盗致傷事件の取調がなされているのである。

 よって、このような余罪取り調べも適法というべきである。)

 ↓ あるいは

(1) (本件基準説) このような本件取調べを主な目的とした別件逮捕勾留を認めてしまうことは、令状主義の潜脱を認めることになる。また、本件で別途逮捕勾留することになれば身体拘束期間に厳格な制限を加えた刑事訴訟法の趣旨(203条から205条まで、208条)を没却することにもなる。それゆえ、このような別件逮捕勾留は違法であると言わなければならない。もっともそこで、本件目的だったかどうかを判定するに当たっては別件逮捕勾留にあたるか否かは主観の問題にすぎないため、①別件についての逮捕・勾留の実質的な必要性の程度、②身体拘束後の取調べ状況、③別件と本件の関連性の程度など等を客観的に見て、別件逮捕勾留であるかどうかを事後的に判断すべきである。

(2) 本件においては、身体拘束の基礎となった業務上横領の20時間よりも余罪であるはずの強盗のほうがその取調べ時間が40時間と倍になっている。さらに、業務上横領罪は法定刑だけを見れば必ずしも軽微とはいえないものの被害額はわずか3万円に過ぎず、当初X社社長は被害届の提出を渋っていたにもかかわらずPが繰り返し説得し被害届を提出させたことを考慮すると、業務上横領罪を被疑事実とする逮捕勾留の実質的な必要性はそこまで高くなかったといえる。そうであるとすれば、業務上横領罪についての取調も勾留延長間際まで行われていたことを考慮してもなお、このような逮捕は、当初から業務上横領での身体拘束状態を利用して本件たる強盗致傷での取調を利用することを目的としていたものといえる。

(3) よって、このような逮捕は、令状主義を潜脱するものとして違法である。

  ↓ もしくは、

(1) (実体喪失説) そもそも刑訴法が令状審査・厳格な期間制限を課したうえで逮捕・勾留の理由とされた被疑事実について被疑者を勾留することを認めた趣旨は、あくまでその被疑事実について、起訴・不起訴の決定を下すために、被疑者の逃亡及び罪証隠滅を防止した状態で捜査を行わせるためである。そうであるとすれば、身体拘束がその基礎となった犯罪(別件)の捜査のために利用されず、主として他罪(本件)の捜査のために利用されているような場合には、別件による身体拘束としての実体を失い、違法となると言うべきである。そしてこれは、①別件と本件の取調状況及び取調時間の比率、②別件と本件の関連性、③別件自体の捜査がいつ頃完了していたか、また、④客観的な事情から判断される本件取調の目的等を考慮して判断されるべきである。

(2) 本件においては、身体拘束の基礎となった業務上横領の20時間よりも、余罪であるはずの強盗のほうが40時間と倍になっている。また、強盗致死での捜査が業務上横領の解明に役立つという関係にはなく、両者の関連性は見受けられない。また、本件においては、司法警察官Pは被害届の提出を渋るX社社長を繰り返し説得し続け被害提出を提出させ、その結果、甲を業務上横領罪で逮捕するに至っている。さらに、業務上横領罪は法定刑だけを見れば必ずしも軽微とはいえないものの被害額はわずか3万円に過ぎず、当初X社社長は被害届の提出を渋っていたにもかかわらずPが繰り返し説得し被害届を提出させたことを考慮すると、業務上横領罪を被疑事実とする逮捕勾留の実質的な必要性は底まで高くなかったといえる。そうであるとすれば、業務上横領罪についての取調も勾留延長間際まで行われていたことを考慮してもなお、このような逮捕は、当初から業務上横領での身体拘束状態を利用して本件たる強盗致傷での取調を利用することを目的としていたものといえる。もっとも、別件自体の捜査も、勾留延長満期直前の3月19日まで行われている。また、この勾留延長自体、上記のように業務上横領罪の捜査のためにはやむを得なかったことを考慮すると、このような逮捕は、未だ別件による身体拘束としての実態体を失っていないというべきである。

(3) よって、本件逮捕は適法である。(→余罪取調の限界の話はしなくてもよい。考慮要素として十分検討されているので)