○○法ガールになりたい。

○○法ガールといえるほど法学をマスターしたいなと思い作成したブログ。司法試験受験生。最近勉強なんてやめて結婚に逃げたい。

ケースブック行政法 第1章~第5章 まとめ

 

1-1 墓地埋葬通達事件

1 訴訟選択

2 訴訟要件

本件通達は、取消訴訟の対象たる「処分」(行政事件訴訟法3条2項)に該当するか。

 ここに、取消訴訟の対象となる「処分」とは、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。 ※ 取消訴訟は主観訴訟であり、国民の権利義務の実効的な救済を図ることを目的とするものであるから、処分性の判断においても、実効的な権利救済を図るために、当該行為を取消訴訟で争わせる必要があるかどうかという点も考慮されるべきと解する。

 一般に、「通達は、……上級行政機関が関係下級行政機関および職員に対してその職務権限の行使を指揮し、職務に関して命令するために発するものであり、このような通達は右機関および職員に対する行政組織内部における命令にすぎないから、これらのものがその通達に拘束されることはあつても、一般の国民は直接これに拘束されるものではな」い。確かに、「本件通達は従来とられていた法律の解釈や取扱いを変更するものではあるが、それはもつぱら知事以下の行政機関を拘束するにとどまるもので、これらの機関は右通達に反する行為をすることはできないにしても、国民は直接これに拘束されることはな」い。

 しかも、本件「通達が直接に上告人の…墓地経営権、管理権を侵害したり、新たに埋葬の受忍義務を課したりするものとはいいえない」うえ、「本件通達が発せられたからといつて直ちに上告人において刑罰を科せられるおそれがあるともいえ」ないのであるから、本件通達は、「国民の権利義務、法律上の地位に直接具体的に法律上の影響を及ぼすような行政処分」には該当しない。

3 よって、「本件通達中所論の趣旨部分の取消を求める本件訴は許されないものとして却下」されるべきである。

 

1-2 徳島市公安条例事件

1 訴訟選択

2 訴訟要件

3 本案

(1)  「本条例三条三号、五条の規定は、道路交通法七七条一項四号、三項、一一九条一項一三号、徳島県道路交通施行細則一一条三号に違反するもの」であり(憲法94条)、条例制定権の限界を超えるものとして違法ではないか。そうであれば、このような違法な法律に基づいてなされた処分も違法であるため問題となる。

2 条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容、効果を比較し、両者に矛盾抵触があるかどうかによって判断すべきである。そして、条例が法令とは別の目的に基づく規律を意図し条例の適用により法令の規定の目的・効果を阻害しないとき、法令と条例が同一の目的であっても法令がその規定により全国的に一律に同一内容の規律を施す趣旨ではなく地方の実情に応じて別段の規制をすることを容認する趣旨であるときは、法令と条例は抵触しないものと解される。

 「これを道路交通法七七条及びこれに基づく徳島県道路交通施行細則と本条例についてみると、徳島市内の道路における集団行進等について、道路交通秩序維持のための行為規制を施している部分に関する限りは、両者の規律が併存競合していることは、これを否定することができない。」もっとも、「道路交通法七七条一項四号は、同号に定める通行の形態又は方法による道路の特別使用行為等を警察署長の許可によつて個別的に解除されるべき一般的禁止事項とするかどうかにつき、各公安委員会が当該普通地方公共団体における道路又は交通の状況に応じてその裁量により決定するところにゆだね、これを全国的に一律に定めることを避けているのであつて、このような態度から推すときは、右規定は、その対象となる道路の特別使用行為等につき、各普通地方公共団体が、条例により地方公共の安寧と秩序の維持のための規制を施すにあたり、その一環として、これらの行為に対し、道路交通法による規制とは別個に、交通秩序の維持の見地から一定の規制を施すこと自体を排斥する趣旨まで含むものとは考えられず、各公安委員会は、このような規制を施した条例が存在する場合には、これを勘案して、右の行為に対し道路交通法の前記規定に基づく規制を施すかどうか、また、いかなる内容の規制を施すかを決定することができるものと解するのが、相当である」。「そうすると、……条例における重複規制がそれ自体としての特別の意義と効果を有し、かつ、その合理性が肯定される場合には、道路交通法による規制は、このような条例による規制を否定、排除する趣旨ではなく、条例の規制の及ばない範囲においてのみ適用される趣旨のものと解するのが相当であり、したがつて、右条例をもつて道路交通法に違反するものとすることはできない」。そして、「本条例は集団行進等に対し許可制をとらず届出制をとつて」おり、また、「本条例五条は、……道路交通法所定の刑種以外の刑又はより重い懲役や罰金の刑をもつて処罰されることとなつている」が、「それ自体」、「合理性を有するものということができる」し、道路交通法が、具体的にこのような規制を「定めることを否定する趣旨を含んでいるとは考えられないところであるから」、これらの規定が、上記「法に違反して無効であるとすることはできない。」

4 よって、「本条例三条三号、五条の規定は、道路交通法七七条一項四号、三項、一一九条一項一三号、徳島県道路交通施行細則一一条三号に違反するもの」とはいえないため、有効である。

 

1-3 福岡市伝習館高校事件

1 訴訟選択

2 訴訟要件

3 本案

(1) 懲戒処分についての裁量の有無・規範

(2) 裁量の逸脱・濫用について

 「 学校教育法五一条、二一条所定の教科書使用義務に違反する授業をしたこと」、「法規としての性質を有する」「高等学校学習指導要領(昭和三五年文部省告示第九四号)から逸脱する授業及び考査の出題をしたこと等を理由とする県立高等学校教諭に対する懲戒免職処分は、各違反行為が日常の教科(日本史、地理B)の授業、考査に関して行われたものであつて、教科書使用義務違反の行為は年間を通じて継続的に行われ、右授業等は学習指導要領所定の当該各科目の目標及び内容から著しく逸脱するものであるほか、当時当該高等学校の校内秩序が極端に乱れた状態にあり、当該教諭には直前に争議行為参加による懲戒処分歴があるなど判示の事実関係の下においては、社会観念上著しく妥当を欠くものとはいえ」ない。

(3) よって、本件処分は「懲戒権者の裁量権の範囲を逸脱したものとはいえない。」

4 結論

 

1-4 サーベル登録事件

1 訴訟選択

2 訴訟要件

3 本案

(1) 銃砲刀剣類登録規則4条2項の規定は、法律の委任の範囲を超えたものとして、違法・無効ではないか。そうであるとすれば、これに基づく本件処分も違法であるため問題となる。

(2) 「銃砲刀剣類所持等取締法(以下「法」という。)一四条一項による登録を受けた刀剣類が、法三条一項六号により、刀剣類の同条本文による所持禁止の除外対象とされているのは、刀剣類には美術品として文化財的価値を有するものがあるから、このような刀剣類について登録の途を開くことによって所持を許し、文化財として保存活用を図ることは、文化財保護の観点からみて有益であり、また、このような美術品として文化財的価値を有する刀剣類に限って所持を許しても危害の予防上重大な支障が生ずるものではないとの趣旨によるものと解される」。

 そして、「このような刀剣類の登録の手続に関しては」、法一四条三項・五項の委任を受けて、「銃砲刀剣類登録規則」が規定しているところ、「その趣旨は、……規則においていかなる鑑定の基準を定めるかについて」「法の委任の趣旨を逸脱しない範囲内において、所管行政庁に専門技術的な観点からの一定の裁量権」を認めることにあるものと考えられる。

 そうすると、「規則が文化財的価値のある刀剣類の鑑定基準として、前記のとおり美術品として文化財的価値を有する日本刀に限る旨を定め、この基準に合致するもののみを我が国において前記の価値を有するものとして登録の対象にすべきものとしたことは、法一四条一項の趣旨に沿う合理性を有する鑑定基準を定めたものというべきであるから、これをもって法の委任の趣旨を逸脱する無効のものということはできない」以上、銃砲刀剣類登録規則4条2項の規定は、法律の委任の範囲を超えたものではなく、有効である。

(3) よって・・・

4 結論

 

1-5 幼児接見不許可事件

1 訴訟選択

2 訴訟要件

3 本案

(1) 監獄法施行規則120条は法律の委任の範囲を超えたものとして違法・無効ではないか。仮にそうであるとすれば、これに基づきなされた本件処分も違法であるとして、国家賠償請求が認められうるため問題となる。

(2) 旧監獄法50条には「接見の立ち合い、信書の検閲その他接見及び信書に関する制限は法務省令をもって定める」と規定し、それを受けて、旧監獄法施行規則120条で「14歳末満の者には在監者と接見することを許さない」と規定し、旧監獄法施行規則124条は「所長において処遇上その他必要があると認めるときは旧監獄法施行規則120条の制限を免除できる」と規定している。

 旧監獄法は、被拘留者の接見の自由に配慮するという観点から、原則として接見を許可される者につき制限を加えないということをその趣旨とし、また、規則へその具体化立法をさせる際の委任の趣旨にしていたものと解されるところ、規則120条・124条が、「原則として被勾留者と幼年者との接見を許さないことと」したうえで、所長に接見を許可するにあたっての広い裁量を与えたことは、この委任の趣旨に反するものといえる。

(3) よって、これらの規定は、法50条の委任の範囲を超えるものといわなければならないため、違法・無効であると解すべきである。

4 もっとも~(国家賠償請求の検討)

5 結論

 

1-6 児童扶養手当打切事件

1 訴訟選択

2 訴訟要件

3 本案

(1) 児童福祉手当法施行令1条の2第3号括弧書部分は、委任の範囲を超えた違法・無効なものではないか。そうであれば、これに基づく本件処分も違法であるため問題となる。

(2) 「委任の範囲については、その文言はもとより、法の趣旨や目的、さらには、同項が一定の類型の児童を支給対象児童として掲げた趣旨や支給対象児童とされた者との均衡等をも考慮して解釈すべきである。」

 「法は、父と生計を同じくしていない児童が育成される家庭の生活の安定と自立の促進に寄与するため」、「世帯の生計維持者としての父による現実の扶養を期待することができないと考えられる児童、すなわち、児童の母と婚姻関係にあるような父が存在しない状態、あるいは児童の扶養の観点からこれと同視することができる状態にある児童を」、「類型化して」その支給対象としていると解されるところ、「施行令1条の2第3号は、本件括弧書を設けて、父から認知された婚姻外懐胎児童を支給対象児童から除外することとしている」ことは、「認知によって当然に母との婚姻関係が形成されるなどして世帯の生計維持者としての父が存在する状態になるわけで」はないこと、「父から認知されれば通常父による現実の扶養を期待することができるともいえない」こと等に鑑みれば、「婚姻外懐胎児童が認知により法律上の父がいる状態になったとしても、依然として法4条1項1号ないし4号に準ずる状態が続いているものというべきである」から、「施行令1条の2第3号が本件括弧書を除いた本文において、法4条1項1号ないし4号に準ずる状態にある婚姻外懐胎児童を支給対象児童としながら、本件括弧書により父から認知された婚姻外懐胎児童を除外することは、法の趣旨、目的に照らし両者の間の均衡を欠き、法の委任の趣旨に反するものといわざるを得ない。」

(3) 「以上のとおりであるから、施行令1条の2第3号が父から認知された婚姻外懐胎児童を本件括弧書により児童扶養手当の支給対象となる児童の範囲から除外したことは法の委任の趣旨に反し、本件括弧書は法の委任の範囲を逸脱した違法な規定として無効と解すべきである。」

 なお、このように法令の一部のみが「違法なものと評価される場合に、その…部分のみを無効とすることとしても、いまだ何らの立法的判断がされていない部分につき裁判所が新たに立法を行うことと同視されるものとはいえない」から、「本件括弧書を無効として本件処分を取り消すことが、裁判所が立法作用を行うものとして許されないということはできない」。

4 結論

 

1-8 高根町水道条例事件

1 訴訟選択

①別荘給水契約者であるXらによる、行政事件訴訟法3条4項の無効等確認の訴え

②本件改正条例による改定後の基本料金と改定前の基本料金との差額分の水道料金の債務不存在確認の訴え

2 無効確認の訴え

 抗告訴訟の対象となる「処分」とは、公権力の主体たる国又は公共団体の行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものを言うところ「本件改正条例は、旧高根町が営む簡易水道事業の水道料金を一般的に改定するものであって、そもそも限られた特定の者に対してのみ適用されるものではなく、本件改正条例の制定行為をもって行政庁が法の執行として行う処分と実質的に同視することはできないから、本件改正条例の制定行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらないというべきである」。

 よって、前者については不適法却下を免れない。

3 不存在確認の訴え

(1) 訴訟要件

 実質的当事者訴訟としての不存在確認訴訟の訴訟要件は、確認の利益が認められること、すなわち、①方法選択の適切性(訴訟類型の補充性)、②確認対象選択の適切性、③即時確定の現実的必要性(紛争の成熟性)が認められることにあるところ、本件においては、この要件を満たしているものと解される。

(2) 本案

 そして、仮に本件改正部分が、法律の範囲内のものといえない場合には、本件改正部分は違法・無効であるため、Xらはこれに基づく義務を負担する必要がないといえる結果、本件確認訴訟は認められることになる。それ故、この点につき検討する。

 「普通地方公共団体が経営する簡易水道事業の施設は地方自治法244条1項所定の公の施設に該当するところ、同条3項は、普通地方公共団体は住民が公の施設を利用することについて不当な差別的取扱いをしてはならない旨規定している。」そして「普通地方公共団体が設置する公の施設を利用する者の中には、当該普通地方公共団体の住民ではないが、その区域内に事務所、事業所、家屋敷、寮等を有し、その普通地方公共団体に対し地方税を納付する義務を負う者など住民に準ずる地位にある者が存在することは当然に想定されるところ」、「上記のような住民に準ずる地位にある者による公の施設の利用関係に地方自治法244条3項の規律が及ばないと解するのは相当でなく、これらの者が公の施設を利用することについて、当該公の施設の性質やこれらの者と当該普通地方公共団体との結び付きの程度等に照らし合理的な理由なく差別的取扱いをすることは、同項に違反するものというべきである。」「別荘給水契約者は、旧高根町の区域内に生活の本拠を有しないという点では同町の住民とは異なるが、同町の区域内に別荘を有し別荘を使用する間は同町の住民と異ならない生活をするものであることなどからすれば、同町の住民に準ずる地位にある者ということができる」ところ、「本件改正条例における水道料金の設定方法は、本件別表における別荘給水契約者と別荘以外の給水契約者との間の基本料金の大きな格差を正当化するに足りる合理性を有するものではない」し、「同町において簡易水道事業のため一般会計から毎年多額の繰入れをしていたことなど論旨が指摘する諸事情は、上記の基本料金の大きな格差を正当化するに足りるものではない」ため、「本件改正条例による別荘給水契約者の基本料金の改定は、地方自治法244条3項にいう不当な差別的取扱いに当たるというほかはない」ものといえる。「以上によれば、本件改正条例のうち別荘給水契約者の基本料金を改定した部分は、地方自治法244条3項に違反するものとして無効というべきである。」

 よって、不存在確認の訴えについては認められるものと考えるべきである。

 

1-9 リコール署名無効事件

1 訴訟選択

2 訴訟要件

3 本案

(1) 「公務員につき議員の解職請求代表者となることを禁止している地方自治法施行令(以下「地自令」という。)の規定が地方自治法(以下「地自法」という。)85条1項に違反し無効といえるか。そうであれば、これに基づく本件処分は違法であるため問題となる。

(2) 地方自治法は、「議員の解職請求について、解職の請求と解職の投票という二つの段階に区分して規定しているところ、同法85条1項は、公選法中の普通地方公共団体の選挙に関する規定(以下「選挙関係規定」という。)を地自法80条3項による解職の投票に準用する旨定めているのであるから、その準用がされるのも、請求手続とは区分された投票手続についてであると解される。このことは、その文理からのみでなく、①解職の投票手続が、選挙人による公の投票手続であるという点において選挙手続と同質性を有しており、公選法中の選挙関係規定を準用するのにふさわしい実質を備えていること、②他方、請求手続は、選挙権を有する者の側から当該投票手続を開始させる手続であって、これに相当する制度は公選法中には存在せず、その選挙関係規定を準用するだけの手続的な類似性ないし同質性があるとはいえないこと、③それゆえ、地自法80条1項及び4項は、請求手続について、公選法中の選挙関係規定を準用することによってではなく、地自法において独自の定めを置き又は地自令の定めに委任することによってその具体的内容を定めていることからも、うかがわれるところである。したがって、地自法85条1項は、専ら解職の投票に関する規定であり、これに基づき政令で定めることができるのもその範囲に限られるものであって、解職の請求についてまで政令で規定することを許容するものということはできない。」そうすると、「本件各規定は、地自法85条1項に基づき公選法89条1項本文を議員の解職請求代表者の資格について準用し、公務員について解職請求代表者となることを禁止している」と解されるころ、これは、「既に説示したとおり、地自法85条1項に基づく政令の定めとして許される範囲を超えたものであ」るといえる。

(3) よって、「その資格制限が請求手続にまで及ぼされる限りで」、上記規定は、「無効と解するのが相当である。」

 4 結論

 

1-10 医薬品ネット事件

1 訴訟選択

2 訴訟要件

3 本案

(1) 改正薬事法施行規則の「店舗販売業者が店舗以外の場所にいる者に対する郵便その他の方法による医薬品の販売又は授与を行う場合には一定の医薬品の販売又は授与は行うことができない旨」の規定、「上記一定の医薬品の販売若しくは授与又は情報提供はいずれも有資格者との対面により行う旨」の規定は、新薬事法の委任の範囲外の規制を定めるものであって違法・無効ではないか。

(2) 「一般に、専門技術的事項は必ずしも国会の審議になじまず、また、状況の変化に対応した柔軟性を確保する必要がある事項は法律で詳細に定めることが適当ではないため、こうした事項については法律の委任に基づいて行政機関が規定を定めること、すなわち委任命令によることが認められている」が、「授権規定の文理のほか、授権規定が下位法令に委任した趣旨、授権法の趣旨・目的及び仕組みとの整合性、委任命令によって制限される権利ないし利益の性質等」を考慮して、委任命令が授権法の委任の範囲を逸脱しているといえるような場合には、そのような委任命令は違法無効とされることになる。そして、「授権の趣旨を検討する際には、…立法過程における議論をも踏まえるべき」である。

 「新施行規則による規制は、…一般医薬品の過半を占める第一類医薬品及び第二類医薬品に係る郵便等販売を一律に禁止する内容のものである」ところ、「新薬事法36条の5及び36条の6は、いずれもその文理上は郵便等販売の規制並びに店舗における販売、授与及び情報提供を対面で行うことを義務付けていないことはもとより、その必要性等について明示的に触れているわけでもなく、医薬品に係る販売又は授与の方法等の制限について定める新薬事法37条1項も、郵便等販売が違法とされていなかったことの明らかな旧薬事法当時から実質的に改正されていない」。「また、新薬事法の他の規定中にも、店舗販売業者による一般用医薬品の販売又は授与やその際の情報提供の方法を原則として店舗における対面によるものに限るべきであるとか、郵便等販売を規制すべきであるとの趣旨を明確に示すものは存在しない。なお、検討部会における議論及びその成果である検討部会報告書並びにこれらを踏まえた新薬事法に係る法案の国会審議等において、郵便等販売の安全性に懐疑的な意見が多く出されたのは上記事実関係等のとおりであるが、それにもかかわらず郵便等販売に対する新薬事法の立場は上記のように不分明であり、その理由が立法過程での議論を含む上記事実関係等からも全くうかがわれないことからすれば、そもそも国会が新薬事法を可決するに際して第一類医薬品及び第二類医薬品に係る郵便等販売を禁止すべきであるとの意思を有していたとはいい難い。そうすると、新薬事法の授権の趣旨が、第一類医薬品及び第二類医薬品に係る郵便等販売を一律に禁止する旨の省令の制定までをも委任するものとして、上記規制の範囲や程度等に応じて明確であると解するのは困難であるというべきである。」

(3) 「したがって、新施行規則のうち、店舗販売業者に対し、一般用医薬品のうち第一類医薬品及び第二類医薬品について、①当該店舗において対面で販売させ又は授与させなければならない(159条の14第1項、2項本文)ものとし、②当該店舗内の情報提供を行う場所において情報の提供を対面により行わせなければならない(159条の15第1項1号、159条の17第1号、2号)ものとし、③郵便等販売をしてはならない(142条、15条の4第1項1号)ものとした各規定は、いずれも上記各医薬品に係る郵便等販売を一律に禁止することとなる限度において、新薬事法の趣旨に適合するものではなく、新薬事法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効というべきである。」

4 結論

 

 ***

 

行政行為の職権取消し

 行政行為の職権取消しとは、行政行為の成立に瑕疵があることを理由として、行政庁がその効力を遡及的に失わせることをいう。

 【法律の根拠の要否】不要;法律による行政の原理からは、これを取り除くことは当然の要請(適法性の回復)であるし、公益違反の除去は、行政目的に合致する(合目的性の回復)ためである。

 ※ 授益的処分の撤回については、①行政行為の性質及び有効期間の有無、②相手方の帰責性の有無、③反対利害関係者の利益等があり、そこから根拠法が撤回を許容しているかを解釈する。

 

授益的行為の職権取消し (撤回)及び撤回権(取消権)の制限

 いかなる場合に許されるか(不利益VS公益上の必要性)

 授益的行政行為の職権取消 (撤回)は、相手方の既得権を侵害する場合もあり、相手方の利益を保護することも必要となる。そこで、相手方の帰責性、取消(撤回)されようとする行政処分の性質等に照らし、当該行政行為の取消(撤回)により相手方が被る不利益を考慮しても、なお撤回すべき公益上の必要性が高いと認められる場合に撤回が許されると考える。

※ 撤回の場合、職権取消以上に、国民の信頼保護・権利利益保護とのバランスを考慮する必要性は高い。

 

2-1 農地買収処分後「約三年四箇月を経過した」後に、「買収目的地のうちに宅地約二百坪(全買収地の一〇分の一にも足りない面積)、が含まれている」として、これを取消すことは、講学上、職権取消に該当するところ、職権取消のために法律の根拠は不要と解される。法律による行政の原理からは、これを取り除くことは当然の要請(適法性の回復)であるし、公益違反の除去は、行政目的に合致する(合目的性の回復)ためである。もっとも、職権取消しによっては、相手方の既得権が侵害される場合もあることから、相手方の利益を保護する必要が生じうる。そこで、相手方の帰責性、撤回されようとする行政処分の性質等に照らし、当該行政行為の撤回により相手方が被る不利益を考慮しても、なお撤回すべき公益上の必要性が高いと認められる場合にのみ、職権取消は許されるものと考えるべきところ、本件のような場合には、「買収農地の売渡を受くべき上告人の利益を犠牲に供してもなおかつ買収令書の全部(農地に関する部分を含む)を取り消さなければならない公益上の必要がある」場合に限って許容されるものと解すべきである。

 

2-4 「被上告人医師会が昭和五一年一一月一日付の指定医師の指定をしたのちに、上告人が法秩序遵守等の面において指定医師としての適格性を欠くことが明らかとなり、上告人に対する指定を存続させることが公益に適合しない状態が生じた」という場合に、被上告人医師会が指定を取消すことは、講学上、撤回に該当するところ、撤回の場合も、法律上の別段の根拠は不要と解される。法律による行政の原理からは、これを取り除くことは当然の要請(適法性の回復)であるし、公益違反の除去は、行政目的に合致する(合目的性の回復)ためである。もっとも、撤回によっては、相手方の既得権が侵害される場合もあることから、相手方の利益を保護する必要が生じうる。そこで、相手方の帰責性、撤回されようとする行政処分の性質等に照らし、当該行政行為の撤回により相手方が被る不利益を考慮しても、なお撤回すべき公益上の必要性が高いと認められる場合にのみ、職権取消は許されるものと考えるべきところ、「実子あっせん行為のもつ右のような法的問題点、指定医師の指定の性質等に照らすと、指定医師の指定の撤回によって上告人の被る不利益を考慮しても、なおそれを撤回すべき公益上の必要性が高いと認められるから、法令上その撤回について直接明文の規定がなくとも、指定医師の指定の権限を付与されている被上告人医師会は、その権限において上告人に対する右指定を撤回することができるものというべきである。」  = 実子あっせん行為は、①戸籍制度の信頼性の確保、②子の法的地位の安定性確保、③未成年者の養子縁組に家庭裁判所の許可を要するとした民法798条の趣旨、④近親婚の危険性排除、➄子の福祉に対する配慮、⑥医師の職業倫理に反するものであることを挙げて、指定医の撤回によってもたらされる不利益を公益が上回ることから、撤回は許されると判示した。

2-2

  • 無効確認訴訟における無効原因については、明文の規定がないため、その判断基準が問題となる。
  • これについては、公定力の要請と国民の権利の救済との調和の観点から、行政行為に重大かつ明白な瑕疵がある場合には無効事由たる瑕疵があると考える。(※ 具体的には、瑕疵の重大性は、行政制度の根幹にかかわる重要な要件に違反している場合に認められる。また、被処分者に処分の効力を甘受させることが著しく不当であるかどうかにも着目する必要がある。)

 

2-3 

  • もっとも、(瑕疵の明白性については、処分成立の当初から誤認であることが外形上客観的に明白である場合をいう(外見上一見明白説)ところ、)課税処分等、第三者の保護を考慮する必要がない行政処分の場合は、瑕疵が重大であることをもって、無効事由となると考える。(※ そして、無効事由たる瑕疵については、当該瑕疵が行政行為の無効を帰結せざるを得ないような重大な瑕疵であるかどうかを問題となる法律関係のもとで個別的な利益衡量により判断するのが妥当というべきである。)
  •  そこで、 「一般に、課税処分が課税庁と被課税者との間にのみ存するもので、処分の存在を信頼する第三者の保護を考慮する必要のないこと等を勘案すれば、当該処分における内容上の過誤が課税要件の根幹についてのそれであつて、徴税行政の安定とその円滑な運営の要請を斟酌してもなお、不服申立期間の徒過による不可争的効果の発生を理由として被課税者に右処分による不利益を甘受させることが、著しく不当と認められるような例外的な事情のある場合には、前記の過誤による瑕疵は、当該処分を当然無効ならしめるものと解するのが相当である」とされている。⇒そしてこれは、被課税者にとって「著しく酷であるとい」えるか、「課税行政上格別の支障・障害をもたらすと」言った事情があるか等を考慮し、比較衡量の上、判断すべきである。

 

2-7

  • 人間の生命、身体、健康、そして環境に対する危険性を前にすれば、原子炉設置許可処分の法的安定性ならびに同処分に対する当事者及び第三者の信頼保護の要請などは比較の対象にならないとして明白性要件を不要にしている。
  • そこで、このような場合にも、瑕疵が重大であることをもって、無効事由となると考える。

 

【小括】 明白性要件不要→①課税処分(ⅰ第三者の保護を考える必要がない、ⅱ課税された者に帰責性がない、ⅲ真実の所有者に課税する余地がある。)、②人の生命等重要な保護法益が脅威にさらされる場合(Ex.もんじゅ事件)

 

2-5 公定力とは、違法な行政行為であっても、当然に無効と認められる場合を除いては、正当な取消権限を有する国家機関によって取り消されるまでは有効なものと扱われる効力をいう。公定力が認められる根拠は、立法者が取消訴訟という訴訟類型を設けていることから、処分に違法があるときは専ら取消訴訟を利用することが想定されており、それ以外の訴訟類型で処分の有効性を争うことはできないということにある(取消訴訟の排他的管轄)。なお、公定力が認められる実質的根拠は、行政目的の早期実現・行政上の法律関係の安定・行政に対する国民の信頼の保護にある。 

⇒ 刑事訴訟と公定力;もっとも、あらかじめ取消訴訟によって当該命令の違法性を確定すべきとすると、被告人は罪を犯したことを理由として処罰されるのではなく、取消訴訟で勝訴できなかったことを理由として処罰されることになりかねない。さらに、取消訴訟には出訴期間の制約があるため、取消訴訟を提起できない場合もあり、被告人に酷な結果となりかねない。したがって、刑事訴訟は、その特殊性から公定力との抵触を論じることがそもそも適当ではない領域として理解すべきである。よって、刑事訴訟内で処分の違法性を主張することは認められる。 ※ しかも、刑事訴訟は、処分の効力を問題にするわけではなく、取消訴訟の排他的管轄を問題にするわけではない。

 

2-10 ⇒ 国家賠償と公定力「公定力は、行政行為の効力にのみかかわるものである。そして、国家賠償請求訴訟において争われるのは、行政行為の効力ではなく、金銭賠償を認める前提としての違法性の存否にすぎない。したがって、国家賠償請求訴訟において、行政行為の違法性を主張することは、当該行政行為の効力を否定するものではないため、公定力に反しない。よって、国家賠償請求訴訟において処分の違法性を主張することは認められる。」「このことは、国家賠償請求を認めた場合に実質的に処分の取消を認めたのと同一の効果を生じる場合であっても、異なるところはない」

 

2-6

(省略)

 

2-8

(省略)

 

2-9 東京都建築安全条例事件 違法性の承継

 

 仮に後続処分の取消訴訟において先行処分の違法性を自由に争えるとするならば、先行処分の出訴期間が経過した後も、後続処分の取消訴訟において、実質的に先行処分の違法性を争えることになってしまい、行政法上の法律関係の早期安定を図った行訴法14条の趣旨に反し、また、先行処分の公定力を実質的に否定してしまうことになる。そこで、原則として違法性の承継は認められず、後続処分の取消訴訟における違法事由として先行処分の違法を主張することはできないものと考える。

 もっとも、実効的権利救済の観点から、①実体的に見て先行処分と後行処分とが一つの目的ないし効果の実現に向けられたものであり、②先行処分につき手続保障を充足していなかったといえる場合に、違法性の承継が認められると考えるべきである。

※違法性の承継が問題となるのは先行行為が処分性を有する場合である。

⇒ ①安全認定と建築確認とはもともとは一体的に行われていたものであって、両者が結合して接道義務を充足しているとの法的効果が与えられる(=結合して最終的な法的効果が発生した後に争わせてもよいと考えられる)

 ②安全認定を周辺住民が知ることは困難であるから、先行処分を取消訴訟で争うための手続的保障が不十分である(=安全認定の通知が申請者以外にはない)

注)先行処分が重大かつ明白な瑕疵を有し無効とされる場合には、無効な行為を前提に後続処分がなされている以上、違法性の承継を論ずるまでもなく、後続処分には違法事由があることになる。

 

3-1 個人タクシー事件

1 訴訟選択

2 訴訟要件

3 本案  ▽改正法を前提とすると、以下のようになる。

(1) 行政手続法(行手法)5条違反の主張

ア 「申請」(行手法2条3号)に対する処分について行政庁は「審査基準」(同法2条8号ロ)を「定める」義務を負い(同法5条1項)、「行政上特別の支障」がない限り、これを「公にしておく」義務を負う(同条3項)。

 本件免許申請拒否処分は、「申請に対する処分」(行手法2条3号参照)にあたる。したがって、Yは、予め審査基準を具体的に定め、行政上特別の支障があるときを除き、公にしておく義務を負っていた(行手法5条) 。

イ それにもかかわらず、本件においては、審査基準が公表されてはいなかった。そして、そのことにつき、「行政上特別の支障」があったわけでもない。

ウ したがって、このことは、行手法5条に反し、違法というべきである。

(2)  手続的瑕疵と処分の取消事由との関係

ア それでは、このような手続的瑕疵は処分の取消事由となるか。行手法に規定された手続を履践せずになされた処分の効力については、明文上規定がないため問題となる。

イ ここで、行手法が、告知・聴間、理由の提示、文書閲覧、審査基準の設定公表を明確に行政庁の行為義務として定めているのは、適正手続によってのみ処分を受けるという意味での手続的権利を国民に保障する趣旨と考えるべきであるから、手続違反も国民の権利を侵害するものとして処分の取消事由となりうると解すべきである。

尤も、行政手続経済の観点からは、すべての手続的瑕疵が取消事由となると解すべきではなく、手続的瑕疵は、その違法が重大である場合に限り取消事由となるものと解する。

ウ 本件についてみると、Xは、仮に当該審査基準が適切に設定・公表されていたならば、具体的に申請までに、免許を得るために具体的な対応も採ることができたはずである。

また、そもそも、審査基準の設定・公表は、申請者の利益を図る趣旨から、行手法上、明確に行為義務として位置づけられている(行手法5条)。そうすると、審査基準を公表していなかったという瑕疵は、申請者に予め具体的な要件を知らせ、申請が不公正に取り扱われることを防ぐという審査基準の趣旨を没却するものであり、手続上重大な違法があったというべきである。

(3) よって、上記手続的瑕疵は、処分の取消事由となる。

4 結論

 

3-2 大分税務署法人税増額更正事件

1 訴訟選択

2 訴訟要件

3 本案

(1) 行手法8条1項違反

 そもそも、行手法8条1項本文の趣旨は、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服申立ての便宜を図る点にある。そうだとすれば、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して処分がなされたかを、その理由自体から了知しうるものでなければならない。そして、かかる趣旨に鑑みれば、いかなる程度の理由を示すべきかは、①当該処分の根拠法令の規定内容、②当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無、③当該処分の性質及び内容、当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮して決すべきと考える。

 これを本件について見ると・・・

(2)  手続的瑕疵と処分の取消事由との関係

ア それでは、このような手続的瑕疵は処分の取消事由となるか。行手法に規定された手続を履践せずになされた処分の効力については、明文上規定がないため問題となる。

イ ここで、行手法が、告知・聴間、理由の提示、文書閲覧、審査基準の設定公表を明確に行政庁の行為義務として定めているのは、適正手続によってのみ処分を受けるという意味での手続的権利を国民に保障する趣旨と考えるべきであるから、手続違反も国民の権利を侵害するものとして処分の取消事由となりうると解すべきである。

尤も、行政手続経済の観点からは、すべての手続的瑕疵が取消事由となると解すべきではなく、手続的瑕疵は、その違法が重大である場合に限り取消事由となるものと解する。

ウ 本件についてみると、上記の行手法8条1項の趣旨に鑑みれば、その違反は、重大なものであるといえる。

(3) そうであれば、このような瑕疵は、処分の取消事由となるものと解される。

(4) もっとも、理由の追完により、その瑕疵は治癒されないか。

 取消訴訟段階で理由の追完を認めることは、処分時において不十分な理由であっても付記すればよいことになり、行手法8条1項の趣旨に反する。すなわち、行政の恣意抑制機能に反するし、十分な防御活動ができないという点で不服申立ての便宜が害されることになってしまう。したがって、取消訴訟段階で行政庁が理由の追完をすることは認められないというべきである。

 

3-5 中京税務署法人税増額更正事件 ▽続き

(5) なお、処分時に理由を明らかにしてさえいれば(理由附記に不備がなければ)、行政庁の恣意を抑制することはできるし、処分の同一性が認められる範囲内での理由の差替えについては相手方も予測しうるから、相手方の争訟便宜を図る趣旨に反するとはいえない。そこで、処分の同一性が認められる限りにおいて、理由の差替え・追加が認められると考える。

4 結論

 

3-8 一級建築士免許取消事件

建築士法10条1項2号又は3号による建築士に対する懲戒処分について見ると、同項2号及び3号の定める処分要件はいずれも抽象的である上、これらに該当する場合に同項所定の戒告、1年以内の業務停止又は免許取消しのいずれの処分を選択するかも処分行政庁の裁量に委ねられている。そして、建築士に対する上記懲戒処分については、処分内容の決定に関し、本件処分基準が定められているところ、本件処分基準は、意見公募の手続を経るなど適正を担保すべき手厚い手続を経た上で定められて公にされており、しかも、その内容は、前記…のとおりであって、多様な事例に対応すべくかなり複雑なものとなっている。そうすると、建築士に対する上記懲戒処分に際して同時に示されるべき理由としては、処分の原因となる事実及び処分の根拠法条に加えて、本件処分基準の適用関係が示されなければ、処分の名宛人において、上記事実及び根拠法条の提示によって処分要件の該当性に係る理由は知り得るとしても、いかなる理由に基づいてどのような処分基準の適用によって当該処分が選択されたのかを知ることは困難であるのが通例であると考えられる。これを本件について見ると、本件の事実関係等は前記…のとおりであり、本件免許取消処分は上告人X1の一級建築士としての資格を直接にはく奪する重大な不利益処分であるところ、その処分の理由として、上告人X1が、札幌市内の複数の土地を敷地とする建築物の設計者として、建築基準法令に定める構造基準に適合しない設計を行い、それにより耐震性等の不足する構造上危険な建築物を現出させ、又は構造計算書に偽装が見られる不適切な設計を行ったという処分の原因となる事実と、建築士法10条1項2号及び3号という処分の根拠法条とが示されているのみで、本件処分基準の適用関係が全く示されておらず、その複雑な基準の下では、上告人X1において、上記事実及び根拠法条の提示によって処分要件の該当性に係る理由は相応に知り得るとしても、いかなる理由に基づいてどのような処分基準の適用によって免許取消処分が選択されたのかを知ることはできないものといわざるを得ない。このような本件の事情の下においては、行政手続法14条1項本文の趣旨に照らし、同項本文の要求する理由提示としては十分でないといわなければならず、本件免許取消処分は、同項本文の定める理由提示の要件を欠いた違法な処分であるというべきであって、取消しを免れないものというべきである。そして、上記のとおり本件免許取消処分が違法な処分として取消しを免れないものである以上、これを前提とする本件登録取消処分もまた違法な処分として取消しを免れないものというべきである。」

 

3-6 旅券発給拒否処分理由附記事件

「旅券法一三条一項五号をみるに、同号は「前各号に掲げる者を除く外、外務大臣において、著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある者」という概括的、抽象的な規定であるため、一般旅券発給拒否通知書に同号に該当する旨付記されただけでは、申請者において発給拒否の基因となつた事実関係をその記載自体から知ることはできないといわざるをえない。したがつて、外務大臣において旅券法一三条一項五号の規定を根拠に一般旅券の発給を拒否する場合には、申請者に対する通知書に同号に該当すると付記するのみでは足りず、いかなる事実関係を認定して申請者が同号に該当すると判断したかを具体的に記載することを要すると解するのが相当である。そうであるとすれば、単に「旅券法一三条一項五号に該当する。」と付記されているにすぎない本件一般旅券発給拒否処分の通知書は、同法一四条の定める理由付記の要件を欠くものというほかはなく、本件一般旅券発給拒否処分に右違法があることを理由としてその取消しを求める上告人の本訴請求は、正当として認容すべきである。」

 

3-3 群馬中央バス事件

1 訴訟選択

2 訴訟要件

3 本案

(1) 手続的瑕疵の認定

(2)  手続的瑕疵と処分の取消事由との関係

ア それでは、このような手続的瑕疵は処分の取消事由となるか。行手法に規定された手続を履践せずになされた処分の効力については、明文上規定がないため問題となる。

イ ここで、行手法が、告知・聴間、理由の提示、文書閲覧、審査基準の設定公表を明確に行政庁の行為義務として定めているのは、適正手続によってのみ処分を受けるという意味での手続的権利を国民に保障する趣旨と考えるべきである。それゆえ、手続違反も国民の権利を侵害するものとして処分の取消事由となりうると解すべきである。また、このことは、被処分者に手続的権利が保障されている昨今においては、個別法によって定められた手続きに違反があった場合も異なることはないと考えるべきである。

 一般に、行政庁が行政処分をするにあたって、諮問機関に諮問し、その決定を尊重して処分をしなければならない旨を法が定めているのは、処分行政庁が、諮問機関の決定(答申)を慎重に検討し、これに十分な考慮を払い、特段の合理的な理由のないかぎりこれに反する処分をしないように要求することにより、当該行政処分の客観的な適正妥当と公正を担保するが目的である。したがって、①行政処分が諮問を経ないでなされた場合はもちろん、②これを経た場合においても、当該諮問機関の審理、決定(答申)の過程に重大な法規違反があるということができる。

ウ よって、①②のような手続上の瑕疵がある場合、それは、処分の取消事由となる。

(3) 結論

 

3-4 ニコニコタクシー事件

(省略) 13条1項1号違反も処分の取消事由となるものと考えるべきである。

 

3-7 成田新法事件

 「憲法三一条の定める」手続保障の要請は、「直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続については、それが刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。」「しかしながら、同条による保障が及ぶと解すべき場合であっても、一般に、行政手続は、刑事手続とその性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様であるから、①そもそも「行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会」等の手続き保障を与えるべきか、②与えるとしてどの程度の手続き保障を与えるかは、「行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではないと解するのが相当である。」

 すなわち、①具体的場面において同条による保障が及ぶかを検討し、及ぶと判断された場合には、②たとえ、(行手法の規定を適用除外としている場面や、)行手法がある手続きを定めていない場面であっても、適用除外、法の未制定が、比例原則の観点から行政目的を達成するうえで最小限でありやむを得ないものといえるかを検討する必要がある。 

 

小括① 行政手続―申請に対する処分(行手法2条3号)

⑴定義:法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(許認可等)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているもの(行手法2条3号)。

⑵義務:①審査基準の設定・公表義務(5条1項、3項)、②標準処理期間を定めた場合の、当該期間の公表義務(6条2項)、③申請に対する審査・応答(7条)、④拒否処分をする場合の理由の提示(8条1項本文)、⑤他の行政庁の動向配慮による遅延をしない義務(11条1項)

⑶努力義務:①標準処理期間の設定自体(6条1項)、②審査の状況・見通し、申請に必要な情報などの情報提供(9条)、③公聴会の開催(10条)、④共管事務の迅速処理のための行政庁間協力(11条2項)

 

小括② 行政手続き―不利益処分(行手法2条4号)

⑴定義:行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分(行手法2条4号)。申請に対する処分との違いは、不利益処分は「職権」に基づき行われる。

⑵義務:①聴聞、弁明の機会の付与(13条1項);聴聞手続は、⑴許認可等を取り消す不利益処分、⑵名あて人の資格または地位を直接に剥奪する不利益処分、⑶法人につき役員の解任、従業員の解任、会員の除名を命じる不利益処分の場合に採られる(13条1項1号イ・ロ・ハ)。また行政庁の裁量により相当と認めるときは聴聞手続を認めている(同号ニ)、②理由の提示(14条1項本文、なお、「差し迫った必要がある場合」には理由の提示は免除される(14条1項ただし書))、③処分の通知(15条、30条)、④文書等の閲覧(18条)。

⑶努力義務:処分基準の設定・公表(12条)

 

4-1 日光太郎杉事件

1 訴訟選択

2 訴訟要件

3 取消事由―裁量の逸脱・濫用(行訴法30条)―

(1)  裁量の有無

処分にいてのき行政庁の裁量の有無及びその広狭に関しては、規定文言の抽象性・概括性、国民の自由の制約の程度、専門技術性及び公益上の判断の必要性、制度上及び手続上の特別の規定の有無等を考慮して個別に判断すべきである。

土地収用法は『公共の利益の増進と私有財産の調整をはかり、もつて国土の適正且つ合理的な利用』を目的とする(同法一条参照)ものであるが、この法の目的に照らして考えると、同法二〇条三号所定の『事業計画が土地の適正且つ合理的な利用に寄与するものであること』という要件は、その土地がその事業の用に供されることによつて得らるべき公共の利益と、その土地がその事業の用に供されることによつて失なわれる利益(この利益は私的なもののみならず、時としては公共の利益をも含むものである。)とを比較衡量した結果前者が後者に優越すると認められる場合に存在するものであると解するのが相当である」ところ、「建設大臣の、この要件の存否についての判断は、具体的には本件事業認定にかかる事業計画の内容、右事業計画が達成されることによつてもたらされるべき公共の利益、右事業計画策定及び本件事業認定に至るまでの経緯、右事業計画において収用の対象とされている本件土地の状況、その有する私的ないし公共的価値等の諸要素、諸価値の比較衡量に基づく総合判断として行なわるべきものと考えられる」。このような既定の文言やその複雑微妙な調整に基づく判断の必要性に鑑みると、建設大臣には、本件処分につき広い裁量があるものと考えるべきである。

(2) 裁量の逸脱・濫用の有無(行訴訟30条)

もっとも、「この点の判断が前認定のような諸要素、諸価値の比較考量に基づき行なわるべきものである以上」、建設大臣が、「この点の判断をするにあたり、①本来…重視すべき諸要素、諸価値を不当、安易に軽視し(過小評価)、②その結果当然尽すべき考慮を尽さず(考慮不尽)、③または本来考慮に容れるべきでない事項を考慮に容れ(他事考慮)もしくは④本来過大に評価すべきでない事項を過重に評価し(過大評価)、これらのことにより…判断が左右されたものと認められる場合には…裁量判断の方法ないしその過程に誤りがあるものとして」、処分も「違法となるものと解するのが相当である。

これを本件について見ると、建設大臣の判断は、①「本件土地付近の有するかけがいのない諸価値ないし環境の保全という本来最も重視すべきことがらを不当、安易に軽視し」、②「その結果、本件道路がかかえている交通事情を解決するための手段、方法の探究において、尽すべき考慮を尽さなかつた」ものといえ、しかも、③「本件土地付近のもつ前記のようなかけがいのない諸価値ないしはそのもつすぐれた環境が国民共有の財産として、長く将来にわたり保全さるべきことにかんがみれば、オリンピツクの開催に伴なう一時的な自動車交通量増加の予想というような、目前、臨時の事象は、本件事業計画が土地の利用上適正かつ合理的なものと認めらるべきかどうかの判断にあたつては、本来、考慮に容れるべきことがらではなかつたというべきである」にもかかわらずこれを考慮し、④「暴風による倒木(これによる交通障害)の可能性および樹勢の衰えの可能性という、本来過大に評価すべきでないことがらを過重に評価した」ものといえる。

それゆえ、建設大臣の判断には、「その裁量判断の方法ないし過程に過誤があ」ちといえるところ、「これらの過誤がなく、これらの諸点につき正しい判断がなされたとすれば、…建設大臣の判断は異なつた結論に到達する可能性があつたものと認められる」ため、「建設大臣の判断は、その裁量判断の方法ないし過程に過誤があるものとして、違法」である。

4 結論

 

4-2 神戸全税関事件

1 訴訟選択

2 訴訟要件

3 本案

(1) 裁量の有無・広狭について

  処分についての行政庁の裁量の有無及びその広狭に関しては、規定文言の抽象性・概括性、国民の自由の制約の程度、専門技術性及び公益上の判断の必要性、制度上及び手続上の特別の規定の有無等を考慮して個別に判断すべきである。

公務員に対する懲戒処分は、当該公務員に職務上の義務違反、その他、単なる労使関係の見地においてではなく、国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務することをその本質的な内容とする勤務関係の見地において、公務員としてふさわしくない非行がある場合に、その責任を確認し、公務員関係の秩序を維持するため、科される制裁である。ところで、国公法は、同法所定の懲戒事由がある場合に、懲戒権者が、懲戒処分をすべきかどうか、また、懲戒処分をするときにいかなる処分を選択すべきかを決するについては、公正であるべきこと(七四条一項)を定め、平等取扱いの原則(二七条)及び不利益取扱いの禁止(九八条三項)に違反してはならないことを定めている以外に、具体的な基準を設けていない。したがつて、懲戒権者は、懲戒事由に該当すると認められる行為の原因、動機、性質、態様、結果、影響等のほか、当該公務員の右行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等、諸般の事情を考慮して、懲戒処分をすべきかどうか、また、懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきか、を決定することができるものと考えられるのであるが、その判断は、右のような広範な事情を総合的に考慮してされるものである以上、平素から庁内の事情に通暁し、都下職員の指揮監督の衝にあたる者の裁量に任せるのでなければ、とうてい適切な結果を期待することができないものといわなければならない。それ故、公務員につき、国公法に定められた懲戒事由がある場合に、懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは、懲戒権者の裁量に任されているものと解すべきである。」

(2) 裁量の逸脱・濫用について

「懲戒権者が右の裁量権の行使としてした懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合」には、裁量権の範囲外にあるものとして違法と評価されるべきである(行訴法30条)。「したがつて、裁判所が右の処分の適否を審査するにあたつては、懲戒権者と同一の立場に立つて懲戒処分をすべきであつたかどうか又はいかなる処分を選択すべきであつたかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、」客観的に、「懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきものである。」

 これを本件について見るに・・・

 

4-3 余目町個室付浴場事件

1 訴訟選択

2 訴訟要件

3 本案

(1) ここで、仮に、「被告会社のトルコぶろ営業に先立つ本件認可処分が行政権の濫用に相当する違法性を帯びている」といえるのであれば、「A児童遊園の存在を被告会社のトルコぶろ営業を規制する根拠にすることは許されないことになる」。

(2)  「本来、児童遊園は、児童に健全な遊びを与えてその健康を増進し、情操をゆたかにすることを目的とする施設(児童福祉法四〇条参照)なのであるから、児童遊園設置の認可申請、同認可処分もその趣旨に沿つてなされるべきものであ」るから、仮に、「被告会社のトルコぶろ営業の規制を主たる動機、目的とする余目町のA児童遊園設置の認可申請を容れ」認可処分がされた場合には、行政権の濫用に相当する違法性があ」るといえるため、「被告会社のトルコぶろ営業に対しこれを規制しうる効力を有しないといわざるをえない」。

そして、「本件当時余目町において、被告会社のトルコぶろ営業の規制以外に、A児童遊園を無認可施設から認可施設に整備する必要性、緊急性があつたことをうかがわせる事情は認められない」こと等に鑑みれば、本件認可処分は「被告会社のトルコぶろ営業の規制を主たる動機、目的とする」ものであったということができる。

(3) 「そうだとすれば」、A児童遊園設置の認可処分は違法・無効であるため、「児童福祉法七条に規定する児童福祉施設の存在」という要件を欠く結果、被告会社への営業規制は許されないこととなる。

4 結論

よって、被告会社に無罪の言渡をすべきものである。

 

4-4 マクリーン事件

(省略) その判断が全く事実の基礎を欠き、又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかである場合には、裁量権の逸脱濫用が認められるとした。

 

4-5 伊方原発訴訟

1 訴訟選択

2 訴訟要件

3 本案

(1)  裁量の有無・広狭

 処分についての行政庁の裁量の有無及びその広狭に関しては、規定文言の抽象性・概括性、国民の自由の制約の程度、専門技術性及び公益上の判断の必要性、制度上及び手続上の特別の規定の有無等を考慮して個別に判断すべきである。

ここで、「原子炉を設置しようとする者は、内閣総理大臣の許可を受けなければならないものとされており(規制法二三条一項)、内閣総理大臣は、原子炉設置の許可申請が、同法二四条一項各号に適合していると認めるときでなければ許可してはならず(同条一項)、右許可をする場合においては、右各号に規定する基準の適用については、あらかじめ核燃料物質及び原子炉に関する規制に関すること等を所掌事務とする原子力委員会の意見を聴き、これを尊重してしなければならないものとされており(同条二項 ※なお、昭和五三年法律第八六号による改正により、実用発電用原子炉の設置の許可は被上告人の権限とされ、同法附則三条により、右改正前の規制法の規定に基づき内閣総理大臣がした右原子炉の設置の許可は、被上告人がしたものとみなされることとなった。)、原子力委員会には、学識経験者及び関係行政機関の職員で組織される原子炉安全専門審査会が置かれ、原子炉の安全性に関する事項の調査審議に当たるものとされている(原子力委員会設置法(昭和五三年法律第八六号による改正前のもの)一四条の二、三)。また、規制法二四条一項三号は、原子炉を設置しようとする者が原子炉を設置するために必要な技術的能力及びその運転を適確に遂行するに足りる技術的能力を有するか否かにつき、同項四号は、当該申請に係る原子炉施設の位置、構造及び設備が核燃料物質(使用済燃料を含む。)、核燃料物質によって汚染された物(原子核分裂生成物を含む。)又は原子炉による災害の防止上支障がないものであるか否かにつき、審査を行うべきものと定めている。原子炉設置許可の基準として、右のように定められた趣旨は、原子炉が原子核分裂の過程において高エネルギーを放出する核燃料物質を燃料として使用する装置であり、その稼働により、内部に多量の人体に有害な放射性物質を発生させるものであって、原子炉を設置しようとする者が原子炉の設置、運転につき所定の技術的能力を欠くとき、又は原子炉施設の安全性が確保されないときは、当該原子炉施設の従業員やその周辺住民等の生命、身体に重大な危害を及ぼし、周辺の環境を放射能によって汚染するなど、深刻な災害を引き起こすおそれがあることにかんがみ、右災害が万が一にも起こらないようにするため、原子炉設置許可の段階で、原子炉を設置しようとする者の右技術的能力並びに申請に係る原子炉施設の位置、構造及び設備の安全性につき、科学的、専門技術的見地から、十分な審査を行わせることにあるものと解される。右の技術的能力を含めた原子炉施設の安全性に関する審査は、当該原子炉施設そのものの工学的安全性、平常運転時における従業員、周辺住民及び周辺環境への放射線の影響、事故時における周辺地域への影響等を、原子炉設置予定地の地形、地質、気象等の自然的条件、人口分布等の社会的条件及び当該原子炉設置者の右技術的能力との関連において、多角的、総合的見地から検討するものであり、しかも、右審査の対象には、将来の予測に係る事項も含まれているのであって、右審査においては、原子力工学はもとより、多方面にわたる極めて高度な最新の科学的、専門技術的知見に基づく総合的判断が必要とされるものであることが明らかである。そして、規制法二四条二項が、内閣総理大臣は、原子炉設置の許可をする場合においては、同条一項三号(技術的能力に係る部分に限る。)及び四号所定の基準の適用について、あらかじめ原子力委員会の意見を聴き、これを尊重してしなければならないと定めているのは、右のような原子炉施設の安全性に関する審査の特質を考慮し、右各号所定の基準の適合性については、各専門分野の学識経験者等を擁する原子力委員会の科学的、専門技術的知見に基づく意見を尊重して行う内閣総理大臣の合理的な判断にゆだねる趣旨と解するのが相当である。」よって、本件処分につき内閣総理大臣には広い要件裁量が認められる。

(2) 裁量の逸脱・濫用

「以上の点を考慮すると、右の原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであって現在の科学技術水準に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。」

 そして、「原子炉設置許可処分についての右取消訴訟においては、右処分が前記のような性質を有することにかんがみると、被告行政庁がした右判断に不合理な点があることの主張、立証責任は、本来、原告が負うべきものと解されるが、当該原子炉施設の安全審査に関する資料をすべて被告行政庁の側が保持していることなどの点を考慮すると、被告行政庁の側において、まず、その依拠した前記の具体的審査基準並びに調査審議及び判断の過程等、被告行政庁の判断に不合理な点のないことを相当の根拠、資料に基づき主張、立証する必要があり、被告行政庁が右主張、立証を尽くさない場合には、被告行政庁がした右判断に不合理な点があることが事実上推認されるものというべきである」ところ・・・

4 結論

 

4-6 エホバの証人剣道拒否事件

(省略) 処分が全く事実の基礎を欠くか又は社会観念上著しく妥当を書き、裁量権の逸脱濫用が認められる場合には違法とされるとした。

「…以上によれば、信仰上の理由による剣道実技の履修拒否を、正当な理由のない履修拒否と区別することなく、代替措置が不可能というわけでもないのに、代替措置について何ら検討することもなく、体育科目を不認定とした当教員らの評価を受けて、原級留置処分をし、さらに、不認定の主た由及び全体成績について勘案することなく、2年続けて原級留置となったため進級等規程及び退学内規に従って学則にいう『学力劣等で成業の見込みがないと認められる者』に当たるとし、退学処分をしたという上告人の措置は、考慮すべき事項を考慮しておらず、又は考慮された事実に対する評価が明白に合理性を欠き、その結果、社会観念上著しく妥当を欠く処分をしたものと評するほかはなく、本件各処分は、裁量権の範囲を超える違法なものといわざるを得ない。」

 

4-7 呉市公立学校施設使用不許可事件

1 訴訟選択

2 訴訟要件

3 本案

(1) 裁量の有無・広狭

 

 

 

 

 確かに、「従前の許可の運用は、使用目的の相当性やこれと異なる取扱いの動機の不当性を推認させることがあったり、比例原則ないし平等原則の観点から、裁量権濫用に当たるか否かの判断において考慮すべき要素となったりすることは否定できない。」また、「教育研究集会は、…教員らによる自主的研修としての側面をも有しているところ、その側面に関する限りは、自主的で自律的な研修を奨励する教育公務員特例法19条、20条の趣旨にかなうものというべきである。」さらに、「過去、教育研究集会の会場とされた学校に右翼団体街宣車が来て街宣活動を行ったことがあったというのであるから、抽象的には街宣活動のおそれはあったといわざるを得ず、学校施設の使用を許可した場合、その学校施設周辺で騒じょう状態が生じたり、学校教育施設としてふさわしくない混乱が生じたりする具体的なおそれが認められるときには、それを考慮して不許可とすることも学校施設管理者の裁量判断としてあり得るところである」ものの、「本件不許可処分の時点で、本件集会について具体的な妨害の動きがあったことは認められず(なお、記録によれば、本件集会については、実際には右翼団体等による妨害行動は行われなかったことがうかがわれる。)、本件集会の予定された日は、休校日である土曜日と日曜日であり、生徒の登校は予定されていなかったことからすると、仮に妨害行動がされても、生徒に対する影響は間接的なものにとどまる可能性が高かったということができる。」これらのことに鑑みると、「本件集会を学校施設で開催することにより教育上の悪影響が生ずるとする評価を合理的なものということはできない。」

さらに、「教育研究集会の中でも学校教科項目の研究討議を行う分科会の場として、実験台、作業台等の教育設備や実験器具、体育用具等、多くの教科に関する教育用具及び備品が備わっている学校施設を利用することの必要性が高いことは明らかであり、学校施設を利用する場合と他の公共施設を利用する場合とで、本件集会の分科会活動にとっての利便性に大きな差違があることは否定できない」こと、「本件不許可処分は、校長が、職員会議を開いた上、支障がないとして、いったんは口頭で使用を許可する意思を表示した後に、上記のとおり、右翼団体による妨害行動のおそれが具体的なものではなかったにもかかわらず、市教委が、過去の右翼団体の妨害行動を例に挙げて使用させない方向に指導し、自らも不許可処分をするに至ったというものであり、しかも、その処分は、県教委等の教育委員会と被上告人との緊張関係と対立の激化を背景として行われたものであった」こと等を考慮すると、「本件中学校及びその周辺の学校や地域に混乱を招き、児童生徒に教育上悪影響を与え、学校教育に支障を来すことが予想されるとの理由で行われた本件不許可処分は、重視すべきでない考慮要素を重視するなど、考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠いており、他方、当然考慮すべき事項を十分考慮しておらず、その結果、社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたものということができる。」

よって、「本件不許可処分」は、「裁量権を逸脱したものである」。

4 結論

 

4-8 小田急事件

1 訴訟選択

2 訴訟要件

3 本案

(1) 裁量の有無・広狭

都市計画法は、…都市施設について、土地利用、交通等の現状及び将来の見通しを勘案して、適切な規模で必要な位置に配置することにより、円滑な都市活動を確保し、良好な都市環境を保持するように定めることとしているところ、このような基準に従って都市施設の規模、配置等に関する事項を定めるに当たっては、当該都市施設に関する諸般の事情を総合的に考慮した上で、政策的、技術的な見地から判断することが不可欠であるといわざるを得ない。そうすると、このような判断は、これを決定する行政庁の広範な裁量にゆだねられているというべきであ」る。

(2) 裁量の逸脱・濫用

そうすると、「裁判所が都市施設に関する都市計画の決定又は変更の内容の適否を審査するに当たっては、当該決定又は変更が裁量権の行使としてされたことを前提として、その基礎とされ重要な事実に誤認があること等により重要な事実の礎を欠くこととなる場合、又は、事実に対する評価らかに合理性を欠くこと、判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるとすべきものと解するのが相当である。」

上記のことからすれば、「本件鉄道事業認可の前提となる都市計画に係る平成5年決定を行うに当たっては、本件区間の連続立体交差化事業に伴う騒音、振動等によって、事業地の周辺地域に居住する住民に健康又は生活環境に係る著しい被害が発生することのないよう、被害の防止を図り、…東京地域公害防止計画に適合させるとともに、本件評価書の内容について十分配慮し、環境の保全について適正な配題をすることが要請される」。

そして、諸般を総合すると、平成5年決定は、「本件区間の連続立体交差化事業に伴う騒音等によって事業地の周辺地域に居住する住民に健康又は生活環境に係る著しい被害が発生することの防止を図るという観点から、本件評価書の内容にも十分配慮し、環境の保全について適切な配慮をしたものであり、公害防止計面にも適合するものであって、都市計画法等の要請に反するものではな」いため、「鉄道騒音に対して十分な考慮を欠くものであったということ」はできない。

したがって、「平成5年決定が考慮すべき事情を考慮せずにされたものということはできず、また、その判断内容に明らかに合理性を欠く点があるということもできない。」

4 結論

 

5-2 品川マンション事件

1 訴訟選択

2 訴訟要件

3 本案

  Yは、申請(建築基準法 6 条 1 項)を受けたにもかかわらず、3カ月(5カ月)にわたって行政指導を行い、申請を留保している。そこで、このような建築確認の留保は違法ではないかが問題となる。

 相手方の任意の協力の下であれば行政指導を行うことも許されること(行手法32条1項)、また、行政指導の目的を達するためには応答を留保する必要がある場合もあることからすれば、法の目的に照らし社会通念上合理的と認められる場合には申請の留保も認められると解すべきである。もっとも、①相手方が、留保されたままでの行政指導にもはや協力できないとの意思を真摯かつ明確に表明している場合には、②当該相手方が受ける不利益と公益上の必要性を比較衡量し、不協力が社会通念上正義の観念に反するような特段の事情が存しない限り、処分を留保することは違法になると考える。このことは、行政手続法(と同一の内容である行政手続条例)において、行政指導を行うについて、「申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず当該行政指導を継続すること等により当該申請者の権利を妨げるようなことはしてはならない」(33 条)との規定が置かれていることからも読み取れよう。

①;本件について見るに、Xは、「もはや確認処分の留保を背景として付近住民との話合いを勧める上告人の行政指導には服さないこととし、同年三月一日受付をもつて東京都建築審査会に『本件確認申請に対してすみやかに何らかの作為をせよ』との趣旨の審査請求の申立をした、というのであり」、「もはやこれ以上確認処分を留保されたままでの行政指導には協力できないとして直ちに確認処分をすべきことを求めた真摯かつ明確な意思の表明と認めるのが相当である」。

②;「また、Xはそれまで上告人の紛争調整担当職員による行政指導に対し積極的かつ協力的に対応していたというのであつて、この間に当該行政指導の目的とする付近住民との話合いによる紛争の解決に至らなかつたことをひとりXの責に帰することはできないのみならず、…本件建築確認の申請から三か月以上も後」の「行政指導をも受けるに至」った時点において、「右新高度地区の実施日が一か月余に迫つていたことからすれば」、Xが右「時点で、右審査請求という手段により、もはやこれ以上確認処分を留保されたままでの行政指導には協力できないとの意思を表明したことについて不当とすべき点があるということはできず、他に被上告人の意思に反してもなお確認処分の留保を受忍させることを相当とする特段の事情があるものとも認められないというべきである。」そして、Yらは、この時点において、「真摯に確認申請に対する応答を求めていることを知つたか、又は容易にこれを知ることができたものというべきである」から、「右審査請求が提起された…日以降の行政指導を理由とする確認処分の留保は違法というべきであ」る。

▽ 他方・・・中野区特殊車両通行認定事件

②’;「…道路管理者としての権限を行う中野区長が本件認定申請に対して約五か月間認定を留保した理由は、右認定をすることによつて本件建物の建築に反対する附近住民と上告人側との間で実力による衝突が起こる危険を招来するとの判断のもとにこの危険を回避するため」である。また、「留保期間は約五か月間に及んではいるが、…中野区長は当初予想された実力による衝突の危険は回避されたと判断し」た場合には認定を行うとの前提でおり、実際、この前提に基づき、「本件認定に及んだというのである」から、当該相手方が受ける不利益と公益上の必要性を比較衡量したとき、X側の不協力が社会通念上正義の観念に反するような特段の事情があったものといえる。

よって、「中野区長の本件認定留保は、その理由及び留保期間から見て前記行政裁量の行使として許容される範囲内にとどまるものとい」える。

4 結論

 

5-3 武蔵野市水道法違反事件

  • 行政処分の留保が許されるかという論点。
  • 行政指導を真摯かつ明確に拒絶していたため、特別の事情の有無が問題となる。
  • 「水道法の趣旨は、都市環境の整備を図ろうとすることにあり、都市環境を害するものをチェックすることを含むものではない。また、水道は生活に不可欠なライフラインであるから、給水拒否という権限発動は限定すべきである。よって、『正当の理由』とは、水道事業者の正常な企業努力にも関わらず、給水契約を拒まざるをえない理由を指すと言うべきである。すなわち、原則として、事業の運営上給水困難な場合や水道料金を支払わない場合に限り、『正当な理由』を認め、それ以外の場合は、給水契約の申込みを拒否すべきである。」
  • 本件はそのような場合に当たらないから、やはり行政処分の留保は違法である。
    • もっとも、例外的に、①公序良俗その他一定の違法な状態があり、②給水拒否しても生活に支障がない場合には、「正当な理由」があると考えるべきである。
  •  他方・・・ 5-4 武蔵野市教育施設負担金事件
  • 行政処分の留保が許されるかということが問題となったのは同様だが、行政指導を真摯かつ明確に拒絶していなかったため、上記規範に照らせば行政処分の留保は違法ではない、ということになる。
  • もっとも、「指行政指導として教育施設の充実に充てるために事業主に対して寄付金の納付を求めること自体」が「強制にわたるなど事業主の任意性を損う」場合には、「違法」となる。「指導要綱は、法令の根拠に基づくものではなく、…事業主に対する行政指導を行うための内部基準であるにもかかわらず、水道の給水契約の締結の拒否等の制裁措置を背景として、事業主に一定の義務を課するようなものとなっており、また、これを遵守させるため、一定の手続が設けられている。そして、教育施設負担金についても、その金額は選択の余地のないほど具体的に定められており、事業主の義務の一部として寄付金を割り当て、その納付を命ずるような文言となっているから、右負担金が事業主の任意の寄付金の趣旨で規定されていると認めるのは困難である。」「しかも、事業主が指導要綱に基づく行政指導に従わなかった場合に採ることがあるとされる給水契約の締結の拒否という制裁措置は、水道法上許されないものであり(同法一五条一項最高裁昭和六〇年(あ)第一二六五号平成元年一一月七日第二小法廷決定・裁判集刑事二五三号三九九頁参照)、右措置が採られた場合には、マンションを建築してもそれを住居として使用することが事実上不可能となり、建築の目的を達成することができなくなるような性質のものである。また、被上告人がAに対し教育施設負担金の納付を求めた当時においては、指導要綱に基づく行政指導に従うことができない事業主は事実上開発等を断念せざるを得なくなっており、これに従わずに開発等を行った事業主は山基建設以外になく、その山基建設の建築したマンションに関しては、現に水道の給水契約の締結及び下水道の使用が拒否され、その事実が新聞等によって報道されていたというのである。さらに、Aが被上告人の担当者に対して本件教育施設負担金の減免等を懇請した際には、右担当者は、前例がないとして拒絶しているが、右担当者のこのような対応からは、本件教育施設負担金の納付が事業主の任意の寄付であることを認識した上で行政指導をするという姿勢は、到底うかがうことができない。右のような指導要綱の文言及び運用の実態からすると、本件当時、被上告人は、事業主に対し、法が認めておらずしかもそれが実施された場合にはマンション建築の目的の達成が事実上不可能となる水道の給水契約の締結の拒否等の制裁措置を背景として、指導要綱を遵守させようとしていたというべきである。被上告人がAに対し指導要綱に基づいて教育施設負担金の納付を求めた行為も、被上告人の担当者が教育施設負担金の減免等の懇請に対し前例がないとして拒絶した態度とあいまって、Aに対し、指導要綱所定の教育施設負担金を納付しなければ、水道の給水契約の締結及び下水道の使用を拒絶されると考えさせるに十分なものであって、マンションを建築しようとする以上右行政指導に従うことを余儀なくさせるものであり、Aに教育施設負担金の納付を事実上強制しようとしたものということができる。指導要綱に基づく行政指導が、武蔵野市民の生活環境をいわゆる乱開発から守ることを目的とするものであり、多くの武蔵野市民の支持を受けていたことなどを考慮しても、右行為は、本来任意に寄付金の納付を求めるべき行政指導の限度を超えるものであり、違法な公権力の行使であるといわざるを得ない。」

 

5-5 白石市産廃処理申請書返戻事件

  • 行手法7条は、行政庁に対し、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始することを義務づける。同条は、いわゆる不受理返戻等、申請の有無を行政庁が決定する実務を排斥するため、申請が事務所に「到達」すれば申請があったものとし、それによって行政庁には,当該申請に対する審査応答義務が発生する旨を確認的に定めたものである。そして、この「到達」とは、物理的な意味において、申請が行政庁に到達した(届いた)ことを意味し、行政庁に到達の有無(申請の存否)を判断する権限は認められない。このことは、法は、私人が行政庁に対し法14条及び15条所定の申請をした場合、行政庁の受理等の行為を予定していないこと、不受理の場合を念頭においた規定もないことからも明らかである。そのため、何らかの法的効果を伴う行政処分であると認めることはできないから、原告主張の受理拒否処分は存在するとはいえない。
  • 他方、被告は、本件申請に対し右のとおり審査を開始することが義務付けられているにもかかわらず、何ら審査をしていない。右申請に対する不作為が存在することは明らかであるところ、本件で問題となる不作為の違法確認の訴えにおける違法性と、行政指導を理由とする処分の留保に関する国家賠償請求における不作為の違法とでは質的に異なるから、不作為の違法確認の訴えにおける相当期間経過の正当性の判断の際には、上記処分の留保の違法性を判断する基準は妥当しない。よって、「行政庁が処分をなすに通常必要とする期間を基準に判断し、手続法上要求される標準処理期間を経過した場合には、原則的に違法となるが、例外的に期間経過を正当とするような特段の事情がある場合には適法となると考える」との基準を用いるべきである。そして、本件においては、相当の期間が経過していることは明らかであるところ、本件の諸般の事情に鑑みると、被告の本件申請に対する拒否の判断の遅延及びそれに伴う相当期間の経過に正当な理由があるとはいえない以上、本件申請に対し何ら処分をしていないのは違法である、とすべきである。