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百選起案 民法Ⅱ(第8版) 51~70

 

百選Ⅱ-51

1 XのYに対する売買契約に基づく代金支払い請求は認められるか。

 本件においては、XY間で本件機械を目的物とする売買契約が締結されていることから、この請求は認められるのが原則である。

2 もっとも、Yとしては、本件売買契約を解除することで、上記請求を拒むことが考えられる。

(1) 本件のような不特定物売買の場合は、X売買契約に基づく目的物の引渡義務(555条)を履行したといえるためには、特定(401条2項)がされている必要がある。

 そうすると、Xが契約内容に適合しない物を提供したにすぎない場合、「給付をするのに必要な行為」(401条2項)がなされたといえず、特定しないのが原則であるから、そのような場合は、Xは、売買契約に基づく引渡義務を「履行し」ていないものといえ、よって、Yは、本件売買契約を債務不履行解除しうる。

(2) そこで、本件機械が契約の内容に適合しないものであるといえるかが問題となるところ、一般に、放送機械を売買契約の対象とする場合、雑音や音質不良のない放送機械を目的物とする契約が成立しているのが通常である。そうすると、当然、XY間の契約においても、雑音や音質不良のない放送機械を目的物とすることが合意されていたはずである。それにもかかわらず、「引き渡された」本件放送機械には、雑音及び音質不良があり、付近の住民から苦情が出るほどであったから、これは、契約内容に適合しないものであるといえる。

  • 確かに、Yは一旦本件放送機械を受領している。仮に、これが、買主が契約不適合の存在を認識した上でこれを履行として認容したと評価できる場合には、当事者の合意によってその時点で特定が生じると解して良い。とはいえ、Yは一旦本件放送機械を受領はしたが契約不適合があることが判明した後は給付を完全ならしめるようXに請求し続けていたものであって、Yは、契約不適合の存在を知りつつ本件機械の引渡しを履行として認容していたとはいいがたい。とすればやはり特定は認められない。

(3) よって、本件において、Yは、本件売買契約を解除しうるところ、その他の解除の要件は満たされるか。

ア  Yは、本件において、Xの担当者に本件放送機械を持ち帰り完全に修理するよう催告しているが、Xはこれを放置して修理しなかったのであるから、「相手方が…その履行の催告をし、その期間内に履行がない」(541条本文)と認められる。(なお「催告」の趣旨は、債務者に最後の履行の機会を与える点にあるから、「相当の期間」を定めることは必ずしも必要でない。)

イ さらに、上記のとおり、本件放送機械には雑音及び音質不良があり、付近の住民から苦情が出るほどであったというのであるから、そのような本件放送機械の引渡しでは本件売買契約の目的を達することができず、「債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微である」(同条但書)とは認められない。

ウ 以上より、本件においてはその他の解除の要件も満たされる。

(4) したがって、Yの上記反論は認められる。

3 よって、Xの請求は認められない。

 

百選Ⅱ-52 数量に関する契約不適合における損害賠償責任

1 XらはYに対して、契約不適合責任の追及として、「数量」が不足していなければその値上がりによって得られるはずであった利益を喪失したことの損害賠償請求をすることが考えられる(415条1頂本文、564条)。

2 そこで、第一に、本件機械が契約の内容に適合しないものであるといえるかが問題となる。

(1) まず、Xらは、Yから一応その目的物である各土地の引き渡しを受けている(562条)。

(2) そこで、上記各土地は、「目的物が…数量…に関して契約の内容に適合しないものである」といえるか、本件売買契約において数量不足のない各土地をその目的物とすることがその契約内容となっていたといえるかが問題となる。

 「数量」が契約の内容となるためには、当事者において目的物の実際に有する数量を確保するため、その一定の面積、容積、重量、員数又は尺度あることを売主が契約において表示し、かつ、この数量を基礎として代金額が定められたことが必要である。

 本件においては、Aは、各土地を売り渡すにあたり、各土地の売買代金を実測図記載の各面積に従って算出することを合意して、単価を坪当たりで定めその面積分をもって売買代金の総額とすることを決めたのであるから、当事者において目的物の実際に有する数量を確保するため、その一定の面積あることを売主が契約において表示し、かつ、この数量を基礎としで代金額が定められたといえる。

 したがって、数量不足のない各土地をその目的物とすることが、XY間の契約の内容となっていたというべきである。

(3) よって、本件において引渡された各土地は、契約の内容に適合しないものであるといえる。

3 また、不足分の面積を追完して「契約の内容に適合」する土地をXらに引き渡すことは、「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして」(112条の2第1項)「履行が不能である」(415条1頂本文)。さらに、かかる債務不履行に「よって」、数量不足とされた各土地部分につき得るべきであった利益を喪失するという「損害」(同項本文)が生じている。

 よって、本件においては、上記請求は認められることになる。

4 では、この場合、賠償させるべき「損害」額をいかに解すべきか。

 すなわち、上記両「損害」が損害賠償の範囲(416条)に含まれるか、「通常生ずべき損害」(同条1項)、「特別の事情によって生じた損害」(同条2項)の意義が問題となる。

(1)  そもそも、損害賠償請求が契約の拘束力ゆえに認められることからすれば、債務者の債務不履行がなければ債権者が有していたであろう仮定的利益状態と、債務不履行により債権者に生じている現実の利益状態における差額が「損害」として認められるべきである。もっとも、民法416条は、賠償すべき損害を、相当といえる範囲に限定している。そのうえで、通常生ずべき損害については予見可能性を問題とすることなく相当因果関係がある損害として当然に賠償請求を認める趣旨である一方(同条1項)、債務不履行時に当事者に予見可能性が認められる場合に限り例外的に特別事情に基づき生じた損害についても賠償責任を認めたものであると解される。

(2) そこで、まず、上記「損害」が「通常生ずべき損害」であるといえるかが問題となる。

 これについて、本件においては、上記の通り数量に着目して売買契約がなされていたのであるから、売買契約当時の数量不足分の評価額が「通常生ずべき損害」に当たることは間違いないというべきである。当時の評価額分については、契約においてその利益が保証されていたものといえるためである。

 他方、本件売買契約の目的物は土地であるところ、一般に、土地の面積不足は、買主がした評価の中で必ずしも高い比重を占めていたとはいえない。また、買主は商人ではなく、土地の転売が予想されていたというわけでもない。以上に鑑みると、価格高騰分の「損害」については、契約においてそのような利益が保証されていたとは言えず、本件契約につき債務者の側に債務不履行があったことから「通常生ずべき損害」とはいえないというべきである。

(3) そこで、次に、この「損害」が発生することを、「当事者」、すなわち債務者が、債務不履行時に予見するべきであったといえるかが問題となるが、Yが債務不履行当時(土地を引渡した当時)、土地の価格が将来高騰することを予想していたとは言えないことからすれば、Yは土地の数量が不足した場合に価格高騰分の損害が生じるおそれを予見していたとはいえないし、また、当時一般人においても土地の価格高騰が予想できなかったことからすれば、Yがこのような損害が生じるおそれを予見すべきであったということもいえない。

(4) したがって、価格高騰分の「損害」は、「通常生ずべき損害」にも、「特別の事情によって生じた損害」にもあたらない。

5 よって、Xは、Yに対して、その賠償を請求することはできない。

  • なお、一応、免責事由の有無が問題となる。これについては、(当事者間においてそのような事情から生じるリスクを債務者が引きうけていたかどうかを、契約および取引上の社会通念(415条1項但書)を考慮して、合理的に解釈して判断するべきであるところ、売買契約において売主は契約内容の適合する目的物を引き渡すことをその債務の内容として、仮に不適合があった場合のリスクを売主自身が負うことを当然の内容としていたものと解されるから、特段の事情がない限り)認められないというべきである。

 

百選Ⅱ-53 契約不適合の担保責任の期間制限と消滅時効

1 Xは、Yに対して(契約不適合責任の追及として、)履行遅滞に基づく損害賠償を請求することが考えられる(415条1項本文、564条)に求められる。そこで、その要件を検討する。

2(1) まず、XY間では本件宅地の売買契約が締結されている。そして、本件宅地の一部には道路位置指定があるところ、(これは契約内容に適合しないものといえるか。すなわち、本件宅地売買契約の目的物は道路位置指定のない本件宅地であったということができるか(562条)、このような契約に基づき、)Yは、道路位置指定が存在しない本件宅地を引き渡す「債務」(415条1項本文)を負っていたといえるかが問題となる(564条、415条1項本文)。

 「契約」の「内容」、及び、「債務」の内容については、売買契約締結当時の取引観念をしんしゃくして判断すべきである。

 Xは、本件宅地を宅地として買い受けたものであるところ、道路位置指定が存在すると本件宅地上の建物の改築にあたり床面積の大幅な縮小を余儀なくされるため本件宅地に道路位置指定がないことはXY間の売買契約において当事者が当然に予定していたものといえる。

 したがって、Yは、道路位置指定が存在しない本件宅地を引き渡す「債務」を負っていたといえるから、「債務の本旨に従った履行をしない」(415条1項本文)といえる。

(2) また、かかる債務不履行に「よって」、Xに「損害」(同項本文)が生じている。

(3) さらに、Yが宅建業者という不動産取引の専門家であることに鑑みると、本件宅地の一部に道路位置指定があることを知り得たはずであり、Yは、このような事態が発覚した場合のリスクを当然引受けていたはずであるといえるから、「その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものである」(415条1項ただし書)とは認められない。

(4) 加えて、Xは、その代金を支払っているから、同時履行の抗弁権(533条)は消滅しており、債務不履行が達法である。

(5) 最後に、「売主が…品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として…損害賠償の請求⋯をすることができない」(566条本文)ところ、Xが「その不適合を知った」のは平成6年2月ないし3月である一方、Xは同年7月ころ損害賠償を請求する旨を「通知」しているから、「1年以内」の要件も満たす。

3 これに対して、Yは、本件宅地の引渡しがされたのは昭和48年5月であるから、「権利を行使することができる時から10年間行使しないとき」(166条1項2号)にあたるものとして、 上記損害賠償請求権は、「時劾によって消誠」(同項柱書)したと主張することが考えられる。

(1) そこで、契約不適合責任に基づく損害賠償請求権について、166条1項の適用があるか問題になる。

(2) これについて、買主の売主に対する契約不適合による損害賠償請権は、売買契約に基づき法律上生ずる金銭支払請求権であって、これが116条1項にいう「債権」にあたることは明らかである。また、上記のとおり、この損害賠償請求権については、「買主がその不適合を知った時から1年以内」という期間の定めがあるが、これは法律関係の早期安定のために、買主がその不適合を知ったときは権利の行使期間を制限しても良いという許容性のもと、買主が権利を行使すべき期間を特に限定したものにすぎない。そうすると、この期間の定めがあることをもって、契約不適合による損害賠償請求権につき(買主がその不適合を知らなかったときなどにも)166条1項の適用が排除されると解することはできない。さらに、買主が売買の目的物の引渡しを受けた後であれば、遅くとも通常の消滅時効期間の満了までの間に契約不適合を発見して損害賠償請求権を行使することを買主に期待しても不合理でないと解されるのに対し、契約不適合による損害賠賞請求権に消滅時効の規定の適用がないとすると、買主が契約不適合に気付かない限り、買主の権利が永久に存続することになるが、これは売主に過大な負担を課するものであって、適当といえない。

(3) したがって、契約不適合による損害賠償請求権には166条1項の適用があると解するのが相当であり、Yの主張は認められる。

4 よって、Xの請求は認められない。

 

百選Ⅱ-54 建物の敷地の欠陥と敷地賃借権の契約不適合

1 Xは、本件において、Yに対して、契約不適合責任の追及として、本件建物の所有権及び敷地の賃借権の売買契約を解除し(541条本文、564条)、原状回復請求権(545条1項本文)を行使したうえで、損害賠償請求権(415条1項本文、564条)を行使することが考えられる。

では、この請求は認められるか。

2 まず、「引き渡された」「目的物が…品質…に関して契約の内容に適合しないものであ」ったといえるかが問題となる。

(1) 本件において、建物と共に売買の目的とされたものは、建物の敷地そのものではなく、敷地の賃借権であるところ、Xは、Yから、本件建物を「引き渡され」ると同時に、敷地の賃借権を譲り受けている。

(2) そして、「引き渡された」「目的物」の一つである本件建物には、契約内容に適合しないところはない。

 他方、「引き渡された」敷地の賃借権については、契約内容に適合しないところがあるのではないか。建物と共に本件売買契約の目的物とされたのは、上記の通り、敷地そのものではなく、敷地の賃借権であるところ、敷地の賃借権は、敷地賃貸人を介して建物賃貸人から与えられる債権であって、敷地の欠陥については、賃貸人の修繕義務の履行により補完されるべきものであり、Xとしても敷地の賃貸人に対してその修繕を請求すべきものである(606条1項)のであるから、敷地に欠陥があるからと言って、原則として、これが、建物賃貸人が責任を負うべき(562条、563条、564条・415条、564条・541条、542条)瑕疵(契約不適合)を構成するものではないというべきである。

 確かに、敷地の面積の不足、敷地に関する法的規制又は賃貸借契約における使用方法の制限等の敷地賃貸人の修繕義務の履行により補完されない客観的事由によって敷地の賃借権が制約を受け、これによって、売買の目的を達することができない場合には、敷地の賃借権に契約内容に適合しないところがあったということができると解すべきである。しかし、本件売買契約において、上記客観的事由によって賃借権が制約を受けて売買の目的を達することができないとの事情は認められない。

(3) 従って、本件において、敷地の賃借権が契約内容に適合しないものであったということはできない。

3 そのため、Yは、本件売買契約に基づき、契約内容に適合した物をXに引き渡したということができ、「債務」を「履行をし」た(541条本文、415条1項本文)ものといえるから、Xの上記請求は認められない。

 

百選Ⅱ-55 買主の引渡義務

1 Xは、Yに対して、債務の履行遅滞に基づく損害賠償請求権(415条1項本文)を行使して、336万余円を請求することが考えられる。 

2(1) そこで、その要件を検討するに、Yは、確かに、本件売買契約に基づき、「代金を支払う」債務(555条)を負っていた。

 もっとも、本件売買契約においては硫黄鉱石の引渡しが先履行となっていたのであり、それにもかかわらず、Xは未だ、硫黄鉱石の引渡しをしていない。

 そのため、Yが代金を支払わないとしても、「債務の本旨に従った履行をしない」(415条1項本文)とは認められず、よって、Xの上記請求は認められないのが原則である。

(2) そこで、その根拠を、受領遅滞(113条)に求めることが考えられる。

ア まず、その要件を検討するに、Yは引取りを拒絶しているから、「債権者が債務の履行を受けることを拒」んでいる(同条)といえる。

イ そこで、これを以て債務不履行として、これに基づく損害賠償請求が認められないかが問題となる。

 しかし、債権はあくまで権利であって義務(債務)ではない。また、受領遅滞にある債権者の多くは、同時に自己の負う反対債務(代金支払)に関して履行遅滞に陥っており、その効果として、債務者は契約解除及び損害賠償が可能であるから、殊更債務不履行の特則とみる必要はない。

 したがって、受領遅滞は、公平の観点から、履行遅滞から生ずる(増加費用の負担や危険負担を負い続ける等の)不利益を債権者に負担させることとした法定責任であると解する。

ウ かように解すると、受領遅滞の効果として、損害賠償請求は認められないのが原則である。

(3) もっとも、具体的な事案によっては信義則(1条2項)を機拠に受領義務を認め、かかる義務達反を理由として履行遅滞に基づく損害賠償請をすることもできると解すべきである。

ア 本件売買契約においては、Xが契約期間を通じて採掘する銀石の全量が売買されるべきものと定められており、XはYに対し当該鉱石を継続的に供給すべきものなのであるから、信義則に照らして考祭するとき、Xは、その採掘した鉱石全部を順次Yに出荷すべく、Yはこれを引き取り、かつ、その代金を支払うべき法律関係が存在していたものと解するのが相当である。

 したがって、Yの引取り拒絶は、「債務の本旨に従った履行をしない」場合にあたる。

イ また、かかる債務不履行に「よって」Xに336万余の「損害」(415条1項本文)が生じている。

ウ さらに、上記事情に鑑みると、Yの損害賠償責任を免じることは相当とはいえないから、「その借務の不履行が契約その他の借務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものである」(415条1項ただし書)とは認められない。

エ したがって、その要件を充たす。

3 よって、Xの請求は認められる。

 

百選Ⅱ-56 制限超過利息を任意に支払った場合と賃金業法43条

(前提)

 判例法理 ◇

 

法理

 利息制限法は強行法規であり、同法所定の制限を超える債務は存在しない。

 それゆえ、債務者は、金融機関側に対して不当利得返還請求権を負う。

法理2

 制限超過分の利息として任意に支払ったものでも、同様、原則として、元本に充当される。(以上、最高裁大法廷判決昭和39.11.18等により導かれる原則)

「債務者が任意に支払った制限超過部分は残存元本に充当されるものと解することは、経済的弱者の地位にある債務者の保護を主たる目的とする本法の立法趣旨に合致するものである。」

それゆえ、「債務者が、利息制限法(以下本法と略称する)所定の制限をこえる金銭消費貸借上の利息、損害金を任意に支払ったときは、右制限をこえる部分は民法491条により残存元本に充当されるものと解するを相当とする。」「債務者が利息、損害金の弁済として支払った制限超過部分は、強行法規である本法1条、4条の各1項により無効とされ、その部分の債務は存在しないのであるから、その部分に対する支払は弁済の効力を生じない。従って、債務者が利息、損害金と指定して支払っても、制限超過部分に対する指定は無意味であり、結局その部分に対する指定がないのと同一であるから、元本が残存するときは、民法491条の適用によりこれに充当されるものといわなければならない。」

法理3

元本充当により完済となった後に支払った金額は、不当利得として返還しなければならない。

「利息制限法1条、4条の各2項は、債務者が同法所定の利率をこえて利息・損害金を任意に支払ったときは、その超過部分の返還を請求することができない旨規定するが、この規定は、金銭を目的とする消費貸借について元本債権の存在することを当然の前提とするものである。けだし、元本債権の存在しないところに利息・損害金の発生の余地がなく、したがって、利息・損害金の超過支払ということもあり得ないからである。」「したがって、債務者が利息制限法所定の制限をこえて任意に利息・損害金の支払を継続し、その制限超過部分を元本に充当すると、計算上元本が完済となったとき、その後に支払われた金額は、債務が存在しないのにその弁済として支払われたものに外ならないから、この場合には、右利息制限法の法条の適用はなく、民法の規定するところにより、不当利得の返還を請求することができるものと解するのが相当である。」

・     債務者が利息制限法所定の制限を超える利息・損害金を任意に支払った場合、制限超過部分は元本に充当されるから、その後、元本が完済となった場合は、もはや元本債権が存在しないために、そもそも利息制限法1条2項・4条2項の適用はない。

法理4

・     当事者間に弁済の充当に関する合意があったとしても、制限超過部分に対して充当の合意は無意味であると。それゆえ、上記判例法理通り、元本に充当することが可能である。なお、基本契約の有無を問わず充当は認められる。

・      

 

  • 18.1.13について(みなし弁済規定は削除されたので期限の利益喪失特約の効力について見る)
  • 「制限超過部分の支払を怠った場合に期限の利益を喪失するとする部分は、利息制限法1条1項の趣旨に反し、無効である」。

 

百選Ⅱ-57 第三者による目的物の占有と妨害排除

1 XのYに対する、賃借権に基づく妨害排除請求権としての本件建物収去土地明渡請求は認められるか。

2 そもそも、賃借権に基づく妨害排除請求権が認められうるかが問題となる。

(1) 確かに、妨害排除請求権は、物権の直接支配性・排他性を根拠とするものである以上、対人的請求権である債権には認められないのが原則である。

(2) しかし、不動産賃借権の社会的機能は、物権たる地上権とほとんど異ならない(直接支配性)。また、賃借権が対抗力を備えた場合には、排他性を有し(605条、借地借家10条、31条)、物権と債権の差異としてもっとも根本的な点で物権と同一の効力を持つことになる(排他性)。

(3) したがって、対抗力を備えた賃借権には妨害排除請求権が認められるものと考えるべきである。

3 本件において、「Xが右借地上に所有していた家屋は昭和20年3月戦災に罹り焼失したが」、このことをもって、「Xの借地権は当然に消滅するものでな」い(建物が消失しても地上を使用収益することはなお可能だからである)。

 そして、本件においては、「罹災都市借地借家臨時処理法の規定によって昭和21年7月1日から5箇年内に右借地について権利を取得した者に対し右借地権を対抗できるわけであるところは本件土地に主文掲記の建物を建築所有して右土占有しているのであるがその理由はYは土地所有者のCから昭和22年6月に賃借したというのであるからYはXの借地権をもって対抗される立場にあ」る。

4 よって、Xの上記請求は認められる。

 

百選Ⅱ-58 他人名義の建物登記と借地権の対抗力

1 XのYに対する、本件土地の所有権に基づく、本件土地上の建物収去土地明渡請求は認められるか。

2(1) 本件においては、AY間で本件土地の賃貸借契約が締結されていたところ、その後、Xは、Aから本件土地を交換契約により取得し(登記を備えている)ている。それゆえ、上記請求は認められるのが原則である。

(2) 他方、仮に、Yが、借地借家法10条による賃貸借の対抗要件を備えておれば、Yは本件土地賃借権をYに対抗できる。※ それゆえ、同時に、本件土地の賃貸人たる地位が当然AからYに移転することになる(605条の2第1項)。そこで、Yは、自身が借地借家法10条の要件を満たしたとして、本件土地の占有保持権限を有することを主張することが考えられる。

ア もっとも、本件において、Yは、長男であるB名義の建物所有登記しか有していない。そこで、他人名義の建物登記によって、「借地借家法……10条……による賃貸借の対抗要件を備え」ていたものといえるかが問題となる。

イ そもそも、借地借家法10条1項の趣旨は、建物所有権を対抗できる登記のあることを前提として、これをもって土地賃借権の登記に代えることができる点にある。すなわち、土地上に土地所有者とは異なる者の所有する建物があると公示されている場合には、登記簿を見た者は土地所有者と建物所有者との間に土地賃貸借契約があると考えるのが通常であるため、借地借家法10条1項所定の場合には、賃借権の登記がある場合と同様の公示力があるのである。しかし、他人名義の登記によっては借地人が地上建物の所有者であると推知することはできず、上記趣旨は妥当しない。このような場合には、取引の安全を害するし、そもそも、他人名義の登記は現実の権利状態に符合しない無効なものなのである。

ウ そうであれば、他人名義の登記では対抗力は認められないものといわなければならない。

(3) それゆえ、Xは本件土地賃借権をYに対抗することができない。当然、Yが賃貸人たる地位を承継するものでもない。

3 よって、Yの反論は認められないため、Xの請求は認められる。

 

百選Ⅱ-59 賃貸人たる地位の主張

1 XのYに対する、本件土地所有権に基づく本件建物収去本件土地明け渡し請求は認められるか。

(1) 上記請求が認められるためには、①Xが本件土地所有権を有していること、他方、②Yが本件土地上に建物を有し以て本件土地を占有していることが必要である。そして、本件土地は、AからB、BからXへと譲渡されており、Xは、その所有権を有して言える(①)。また、②についても問題はない。それゆえ、上記請求は認められるのが原則である。

(2) もっとも、本件においては、YとBとの間で、本件土地につき、賃貸借契約を締結されている。そこで、これを占有権限として主張し、Yは、Xの上記請求を拒むことができないか。

ア 本件土地は、本件土地賃貸借契約の賃貸人であったBから、その目的物である本件土地がXに売却されている。それゆえ、「不動産が譲渡された」と言えるところ、仮に、Yが、本件土地賃貸借につき対抗要件たる登記を備えていた場合や、「借地借家法……10条……による賃貸借の対抗要件を備えた場合」は、いわゆる当然承継の法理が適用されることになる(605条の2第1項)。

イ 本件において、Yは、本件土地上に、Y自身の名義の登記をした建物を所有している。

ウ そのため、Yは、Xに対して本件土地賃借権を対抗できる結果、本件土地の賃貸人たる地位は、本件土地の譲受人たるYに移転することになる

(3) よって、Xの上記請求は認められない。

2 そこで、Xは、賃貸人たる地位を承継したことを前提に、賃料不払いがあることを理由とする賃貸借契約の解除の主張をし、以て、1の請求をすることができないか。

(1) 法は、当然承継の法理ができようされた場合、賃借人の賃料二重払の危険を回避すべく、新賃貸人に対抗要件として、「賃貸物である不動産について所有権の移転の登記」(605条の2第3項)を要求している。 ※ これは、土地賃借人としてその賃借地上に登記ある建物を所有するYはその土地上の所有権の得喪につき利害関係を有する第三者であり、177条の適用を受けることの当然の帰結であるともいえる。

(2) もっとも、本件においては、未だ、Xは本件土地につき登記を備えていない。

(3) そうすると、Xが本件土地の賃借人としてYに対し賃料不払いを理由として本件土地の賃貸借契約を解除する権利を有するということはできない。

(4) よって、Xの上記主張は認められない結果、やはり、1のXのYに対する請求は認められない。

 

百選Ⅱ-60 信頼関係破壊の法理

1 Xらの、Yに対する、本件土地所有権に基づく、本件建物収去土地明渡請求は認められるか。

 上記請求が認められるためには、①Xらが本件土地所有権を有していること、他方、②Yが本件土地上に建物を有することにより本件土地を占有していることが必要であるところ、Xらは、Aから本件土地を相続しているため、①の要件を満たす。また、②の要件についても問題はない。

 それ故、上記請求は認められるのが原則である。

2 他方で、Yは、Aとの間で本件土地につき賃貸借契約を締結していることを主張することが考えられる。

 譲渡の場合と異なり、相続により賃貸目的物を承継取得場合は、当然に賃貸人たる地位は移転する。

 それゆえ、Yは、対抗要件なくして、Xに対してその占有権限を主張することができるはずである。

3 そこで、Xとしては、債務不履行に基づき本件賃貸借契約を解除したうえで、1の請求(若しくは原状回復請求権としての本件建物収去土地明け渡し請求)をすることが考えられる。

(1) そのうえで、Xとしては、YからCへの賃借権の譲渡があったということを債務不履行の理由として主張することが考えられる(415条1項、612条)。

(2) そして、賃貸借契約は信頼関係を基礎とした契約であることから、その解除(541条、542条)のためには、信頼関係の破壊があったといえることが必要である。

もっとも、賃借権の譲渡、無断転貸(612条2項)は、類型的にその信頼関係を破壊する行為であると認められる。

(3) そのため、このような場合には、賃貸借契約を解除しうる。 ※ この場合も、催告解除をする場合は541条の「軽微性」の要件の中で信頼関係不破壊の抗弁が妥当するかを判断する。他方、催告解除の場合は、542条1項5号の契約目的不達成の要件の中で信頼関係の破壊を判断する。また、無断転貸の場合であっても、催告解除の場合は賃借人が例外的に「軽微であること(信頼関係不破壊)」を抗弁として主張すべきであり、他方、無催告解除の場合は賃貸人が契約目的の不達成を解除の要件として主張すべきである。もっとも、上記の通り、無断転貸は類型的に信頼関係を破壊するものとして規定されていることから、事実上主張立証責任は転換さるのではないかと思われる。

4 もっとも、ここで、Yとしては、Cに本件土地を使用させるようになったのは、事業譲渡に伴う、実質的には法人内部での経営陣の入れ替わりにすぎない事象によるものであるから、「第三者」に本件土地を使用させたということにはならないとして、そもそも賃借権の譲渡(債務不履行)の事実はないと主張することが考えられる。 ※ 信頼関係不破壊の抗弁ではなく、債務不履行事実の否認。

(1) そもそも、民法612条に定める「賃借権の譲渡が賃借人から第三者への賃借権の譲渡を意味することは同条の文理からも明らかである」のであるから、①「賃借人が法人である場合において、右法人の構成員や機関に変動が生じても、法人格の同一性が失われるものではないから、賃借権の譲渡には当たらないと解すべきである。」

 そうであれば、②「特定の個人が経営の実権を握り、社員や役員が右個人及びその家族、知人等によって占められているような小規模で閉鎖的な有限会社が賃借人である場合」で、かつ、「持分の譲渡及び役員の交代により実質的な経営者が交代し」た場合は、上記と同様に解すべきである。このような場合には、①の場合と実質的に異なるところはないためである。 ※ なお、「賃借人に有限会社としての活動の実体がなく、その法人格が全く形骸化しているような」、612条の規定の潜脱手段として独立の法人格が利用された場合は別である。

(2) そして、本件は、②の場合に当たる。

(3) 以上より、賃借人Yによる賃借権の譲渡の事実はないため、これを以て、債務不履行があるということはできない。

5 よって、Xの債務不履行の主張は認められないため、Xの請求は認められないことになりそうである。

 他方で、「本件賃貸借契約につき他の解除事由」がある場合には、「賃借人である有限会社の経営者の交代の事実が、賃貸借契約における賃貸人・賃借人間の信頼関係を悪化させるものと評価され」る結果、その他の」解除自由「と相まって賃貸借約解除の事由となり得る」。

 

百選Ⅱ-61 正当事由と建物賃借人の事情

1 XのYらに対する、賃貸借契約終了を理由とする、本件建物退去明渡請求は認められるか。そして、その根拠は、Xによる本件賃貸借契約の更新拒絶に求められる。

2 では、Xによる更新拒絶の主張は認められるか。

(1) 借地契約の更新拒絶の主張は、①賃貸借契約の存続期間が満了し、②上記期間満了の1年前から6か月前までの間に、「更新拒絶の通知」をした場合で、かつ、③上記「更新拒絶の通知」時から上記期間満了までの間に、更新を拒絶するについて「正当な事由」が存在している場合に(借地借家法6条)、することができる。

(2)ア 本件においては、①②は認められる。

イ では、「正当な事由」があるといえるか。「正当な事由」の有無については、土地所有者側の事情と借地人側の事情を比較衡量して判断すべきである(※ その際、具体的には、土地賃貸人及び土地賃借人が建物の使用を必要とする事情、従前の経過、建物の利用状況、建物の現況、立退料の申出(借地借家法28条)等を考慮する)

 では、その際、土地上の建物の賃借人の事情も、土地賃借人の事情の一つとして、考慮することはできるか。これについては、建物賃借人は借地契約の当事者ではないから、その事情を借地人側の事情として考慮できるのは、借地契約が当初から建物賃借人の存在を容認し、または実質上建物賃借人を借地人と同視できる場合のみであると考える。

  • ①Cは、借地契約の当事者ではなく、かつ、借地の転貸借と異なり、Aは建物賃貸借に関与しうる立場にないため、そのようなCの事情によって借地契約終了の可否が左右されるとすれば、Aが不測の不利益を蒙るおそれがある、②Cの建物賃借権はBの建物所有権ひいては借地権に従属すべき権利であり、また、建物所有を目的とする借地においてAが予め第三者による建物利用を予想・認容していたとしても、それはあくまでBによる借地利用の一環として許容する趣旨にすぎないため、Bと別個にCの事情を考慮すべき理由はない、③Cの保護については借地契約終了後において別途図ればよい(すなわち、建物買取請求権(借地借家13条)の行使によりB・C間の建物賃貸借がAに承継されるため、Cの事情は建物賃貸借終了の段階において考慮するのが論理的かつ妥当である)、ということが理由として挙げられる。

   以上を前提に、本件について見るに・・・

   よって、「正当な事由」は・・・

 ウ 以上より、本件においては、更新拒絶の要件を・・・

 (3) それゆえ、Xの主張は・・・

3 よって、Xの請求は・・・

 

百選Ⅱ-63 消費者契約である建物賃借契約における更新料条項の効力

1 YのXに対する本件更新料条項に基づく更新料の支払い請求は認められるか。

2 そもそも、本件更新料条項が有効であるかが問題となる。

(1) 更新料条項が一般に認められうるかについて

 これについては、契約自由の原則からは、更新料条項も、一般に認められうるものと解すべきである。

(2) 本件更新料条項の有効性について

ア もっとも、消費者契約法10条は、任意規定と比較して、「消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、…消費者の利益を一方的に害する」ものは、「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して」無効となりうるとしているところ、賃借人Xは、「事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く」「個人」、即ち「消費者」であるから(消費者契約法2条1項)、この規定の適用がある。

イ 「消費者契約法10条…にいう任意規定には、明文の規定のみならず、一般的な法理等も含まれる…。」そして、更新料条項における更新料…がいかなる性質を有するかは、賃貸借契約成立前後の当事者双方の事情、更新料条項が成立するに至った経緯その他諸般の事情を総合考量し、具体的事実関係に即して判断されるべきであるが…、更新料は、賃料と共に賃貸人の事業の収益の一部を構成するのが通常であり、その支払により賃借人は円満に物件の使用を継続することができることからすると、…一般に、賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有する」ところ、これは、「一般的には賃貸借契約の要素を構成しない債務を特約により賃借人に負わせるという意味において、任意規定の適用による場合に比し、消費者である賃借人の義務を加重する」ものである。

 このような規定が、「当該条項が信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるか否かは、消費者契約法の趣旨、目的(同法1条参照)に照らし、当該条項の性質、契約が成立するに至った経緯、消費者と事業者との間に存する情報の質及び量並びに交渉力の格差その他諸般の事情を総合考量して判断されるべきである」ところ、「更新料の支払には経済的合理性がないとは言えないこと、一定の地域において、期間満了の際に賃借人が賃貸人に対して更新料の支払をする例が少なからず存することは公知であること、および、従前、裁判上の和解手続等において更新料条項は公序良俗に反するとの判断がなされていことから、更新料条項が賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載され、賃借人と賃貸人との間に更新料の支払に関する明確な合意が成立している場合に、賃借人と賃貸人との間に、更新料条項に関する情報の質及び量並びに交渉力について、看過し得ないほどの格差が存するとみることもでき」ず、「更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法10条にいう『民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの』には当たらない」ものと解すべきである。

ウ そうすると、本件では、更新料条項が本件契約書に一義的かつ明確に記載されており、更新料の額も契約期間が1年であるのに対して賃料の2か月分であることから、無効とは言えない。

3 よって、Yの請求は認められる。

 

百選Ⅱ-64 債務不履行による賃貸借契約の解除と承諾がある転貸借の帰趨

1 Xとしては、Yらに対して、転貸借契約に基づき、昭和63年12月以降、平成2年10月30日に転貸借契約が解除されるまでの転借料の支払請求をすることが考えられる。

2(1) この請求が認められるためには、昭和63年12月以降、平成2年10月30日まで、本件転貸借契約が存続している必要がある。

(2) しかし、Xが昭和61年5月分以降の賃料の支払を怠ったことから、本件賃貸借契約は、債務不履行を原因として昭和62年1月31日限りで解除されている(541条本文)。となると、本件転貸借契約も終了しているのではないか。

ア 前提として、Aが債務不履行解除による本件賃貸借契約の終了をYらに対抗するにあたり、Yらに対する「催告」(同条本文)が必要ではないかが問題となる。

 もっとも、債務不履行をされた原賃貸人の保護を考える必要があるから、転借人に対する催告を要すると解すると、貨貸人に過大な負担を強いることになる。また、賃貸人は転借人に何ら義務を負うものではない(613条1項前段反対解釈)こと、転貸借は、賃貸借の存在を前提とするものであって、転借人の地位はもともと賃貸借の帰趨によって影響されるものであり、転借人もそのことを承知して転貸借契約を締結しているとみることができることに鑑みれば、信義則上、代払の機会を与える必要があるような特段の事情がある場合を除き、転借人に対する催告は不要とすべきである。

 そして、かかる特段の事情は見当たらない。

 したがって、Yらに対する「催告」は不要であり、Aは債務不履行解除による本件賃貸借契約の終了を対抗することができる。

イ もっとも、本件賃貸借契約の終了を対抗できるとしても、本件転貸借契約までもが終了していたといえるかは別途問題となる。賃貸借の終了のためには、「賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった」といえる必要があるためである(616条の2)。

 「使用及び収益をすることができなくなった」といえるか否かは、「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして」(412条の2第1項)判断すべきである。

(ア) まず、転貸借契約における「使用及び収益を相手方にさせる」債務(601条)は、単に目的物を転借人の占有下において事実上使用収益させるにとどまらず、原賃貸借契約を有効に存続させて、転借人が賃貸人との関係においても転借権を対抗し得る状態にしておくこともその内容とするのであるから、賃貸借契約が債務不履行解除された時点においては、未だ転貸借契約は終了しないと解すべきである。賃貸人が新たに転貸人と再び貨貸借契約を締結するなどして賃借権を対抗し得る状態に回復することが期待し得るからである。

(イ) これに対して、賃貸人が転借人に対して明渡請求を行った場合には、そのような状態に回復することはもはや期待し得ないから、その時点で、転貸借契約は終了するものと解すべきである。

ウ Aは、X及びYらに対し、昭和62年2月25日に、本件建物の明渡し等を求めて訴訟を提起しているから、この時点で本件転貸借契約も終了しているといえる。

(3) したがって、昭和63年12月以降平成2年10月30日まで本作転貸借契約が存続しているとは認められない。

2 よって、Xの請求は認められない。

 

百選Ⅰ-3 ▽ 更新拒絶の場合

1 Xは、Yに対して、所有権に基づく返還請求権として、本件転貸部分二の明渡しを請求することが考えられる。Xの請求が認められるためには、①Xが本件転貸部分二を所有していること、②Yが本件転貸部分二を占有していることが必要である。

 そして、Xは、本件転貸部分二を含む本件ビルを建築して所有しているから、①の要件を充たす。また、Cは、本件転貸部分二を占有しているから、②の要件も充たす。

2 これに対して、Yは、本件賃貸借、本件転貸借及び本件再転貸借に基づく賃借権を占有正権原として主張することが考えられる。他方、Xとしては、さらに、本件賃貸借は、Aが本件賃貸借を更新しない旨の通知をしたことから、期間満了により終了しており、よって、Yの占有権限も失われると主張することが考えられる。

(1) では、賃借人による更新拒絶による賃貸借の終了を、転借人に対抗することができるか。条文上、賃借人による更新拒絶の場合に転借人を保護する規定はない(借地借家法6条、28条参照)ことから、問題となる。

(2) 確かに、Xは、Yへの(再)転貸借を承諾している。しかし、賃借人からの更新拒絶は、賃貸人にとって防ぎようのない事態であることからすると、それによる賃貸借の効果を賃貸人が(再)転借人に対して主張することは、転貸の承諾と矛盾した態度であるとはいい難い。また、398条は、期間の定めのない地上権の放棄及び期間の定めのある地上権の期間途中における放棄の場合について規定するものであって、期間満了による終了の場合について規定するものではないから、賃借人からの更新拒絶による期間満了に基づく終了について、同条の趣旨は妥当しない。さらに、賃貸人の立場からすると、賃借人との人的信頼関係を基礎とする賃貸借が存続する範囲で転貸を承諾するというのが通常の意思であり、自ら選定したのではない転借人による使用収益の係属を強いられるのは不当である一方、転借人としても、転貸であることを承知の上で借り受けたのであれば、賃借人の更新拒絶の結果建物の使用収益権を失うことになったとしても、それは自らそのような賃借人と契約した結果であって、賃借人に対して損害賠償請求をすることも可能であるから、酷とはいえない。

 とすれば、賃借人による更新拒絶による賃貸借の終了は、転借人に対抗することができるのが原則である。

(3) もっとも、転借人保護の観点から、賃貸人は、信義則(1条2項)上、賃貸借の終了を転借人に対抗することができない場合があると解すべきである。具体的には、賃貸借が賃借人の更新拒絶により終了した場合であって、賃貸人が転貸借を承諾したにとどまらず、転貸借の締結に積極的に関与したと認められる特段の事情があるときは、賃貸人は、賃貸借の終了をもって転借人に対抗することはできないと解する。

 Xは、建物の建築、賃貸、管理に必要な知識経験、資力を有するAと共同して事業用ビルの賃貸による収益を得る目的の下に、Aから建設協力金の拠出を得て本件ビルを建築し、その全体を一括してAに貸し渡したものであって、本件賃貸借は、AがXの承諾を得て本件ビルの各室を第三者に店舗又は事務所として転貸することを当初から予定して締結されたものであり、Xによる転貸の承諾は、賃借人においてすることを予定された賃貸物件の使用を転借人が賃借人に代わってすることを容認するというものではなく、自らは使用することを予定していないAにその知識経験等を活用して本件ビルを第三者に転貸し収益を上げさせるとともに、Xも、各室を個別に賃貸することに伴う煩わしさを免れ、かつ、Aから安定的に賃料収入を得るためにされたものというべきである。他方、Cも、Aの業種、本件ビルの種類や構造などから、上記のような趣旨、目的の下に本件賃貸借が締結され、Xによる転貸の承諾並びにX及びAによる再転貸の承諾がされることを前提として本件再転貸借を締結したものと解される。そして、Cは現に本件賃貸部分二を占有している。このような事実関係の下においては、本件再転貸借は、本件賃貸借の存在を前提とするものであるが、本件賃貸借に際し予定され、前記のような趣旨目的を達成するために行われたものであって、Xは、本件再転貸借を承諾したにとどまらず、本件再転貸借の締結に加功し、Cによる本件転貸部分二の占有の原因を作出したものというべきであるからAが更新拒絶の通知をして本件賃貨借が期間満了により終了しても、Xは、信義則上、本件賃貸借の終了をもってCに対抗することはできない。

3 よって、Xの請求は認められない。

 

類型

⑴ 債務不履行解除 ( 613条3項;明文化 )

  賃貸借契約が債務不履行解除となった場合、転借人は転借権をもって賃貸人に対抗できないとされている(最判昭36.12.21)。;矛盾した行動(398条等参照)とはいえないし、賃貸人の転貸借の承諾はこのような場合にまで転借人の利益を保証するためになされたものとはおよそ言い難い。他方で賃借人は債務不履行をするような転貸人を選んでいる。また、このような場合には親亀こければ子亀もこけるということを予想していたはずである。

⑵ 賃貸人の更新拒絶又は解約申入れによって終了する場合

「正当の事由」(借地借家法6条、28条)が認められれば、転借人は転借権を持って賃貸人に対抗できない。;同上

(3) 賃借人の賃借権放棄・合意解除

  賃貸人と賃借人が賃貸借契約を合意解除した場合は、特段の事情がない限り、適法転借人は賃貸人に転借権を対抗できるとされている(最判昭38.2.21)。

;放棄;矛盾挙動。538条や398条の法理。賃貸人も「!?」って感じなので賃貸人に不利益とは言えない。

;合意解除;そもそも合意解除は相対効しか有さない。538条や398条の法理。賃借人、(承諾)賃貸人双方の矛盾挙動。

  • もっとも、債務不履行解除が可能だった場合において、合意解除の形式を採ったに過ぎない場合は、賃貸人は転借人に合意解除を対抗できると考えられている(最判昭3.24、傍論)。
  • 土地賃借権の放棄・合意解除の場合の建物賃借人への対抗の可否 ; 建物賃借人の利益状況は事実上土地の転借人と同じである。そこで、土地賃借権の放棄ないし合意解除を建物賃借人に対抗できないと考える。このとき、土地賃貸人が建物を買い取った場合と同じ法律関係が生じ、建物賃貸人たる地位が土地賃借人に移転すると考える。

(4) 賃借人の更新拒絶・解約申し入れ

賃貸人が転借人を承諾したにとどまらず、転貸借の締結に積極的に関与したと認められる特段の事情があるときは、賃貸人は、信義則上、賃貸借の終了をもって転借人に対抗することができない(最判平14.3.28参照)。

 

百選Ⅱ-65 賃借家屋明渡債務と敷金返還債務との同時履行

1 Xは、Yに対して、所有権に基づく返還請求権として、本件建物の明渡請求をすることが考えられる

(1) かかる請求権が認められるためには、①Xが本件建物を所有していることと、②Uが本件建物を占有していることが必要である。

(2) Xは、競落により本件建物の所有権を取得しているから、①を充たす。また、Yは、本件建物を占有しているから、②も充たす。

(3) よって、Xのかかる請求は認められるのが原則である。

2 他方、これに対して、Yは、敷金返還請求権(622条の2第1項柱書)、及び、造作買取請求権(借地借家法33条1項)に基づく留置権(295条1項本文)及び同時履行の抗弁権(533条)を主張して、その明渡しを拒むことが考えられる。

(1) まず、前提として、本件建物の賃貸借契約はAY間で締結されたものであるから、Xが本件建物の「賃貸人」といえるかが問題となる。敷金返還債務を負うのは「賃貸人」だけ(622条の2第1項柱書)であるし、造作買取請求権は「建物の賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができる」権利(借地借家法33条1項)だからである。

 ここで、Yは、Aとの賃貸借契約に基づき本件建物の「引渡し」(借地借家法31条1項)を受けているから、「借地借家法…第31条…の規定による賃貸借の対抗要件を備えた」(605条の2第1項)といえる。また、上記のとおり、Xに対して「その不動産が譲渡され」ているので、「その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人」Xに「移転する」(同項)。さらに、Xは本件建物の「所有権の移転の登記」をしているから、「賃貸人たる地位の移転」を「賃借人」たるYに「対抗することができ」る(同条3項)。

 したがって、Xは本件建物の「賃貸人」といえる。

(2) では、それぞれの請求は認められるか。以下、まずは敷金返還債務について検討する。

ア まず、Xが敷金返還債務を負うかが問題となるも、「賃貸人たる地位が譲受人…に移転したときは…敷金の返還に係る債務は、譲受人…が承継する」(同条4頂)ため、肯定される。

イ では、敷金返還請求権に基づく留置権及び同時履行の抗弁権によって、本件建物の明渡しを拒むことはできるか。

 敷金返還請求権は、「賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けた」こと(622条の2第1項1号)を停止条件として発生するところYは本件建物の「返還」を未だしていない。また、敷金契約は、賃貸人が賃借人に対して取得する賃貸借終了までの債権を担保するために締結されるものであるし、敷金契約は、賃貸借契約に付随するものではあるが、賃貸借契約そのものではないから、賃貸借の終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務とは一個の双務契約によって生じた対価的債務の関係にあるものとすることはできない。さらに、両債務の間には著しい価値の差が存しうることからしても、両債務を相対立させてその間に引換給付の関係を認めることは、必ずしも公平の原則に合致するものとはいいがたい。

ウ したがって、敷金返還請求権に基づく留置権及び同時履行の抗弁権によって、建物の明渡しを拒むこともできないと解すべきである。

(3) では、造作買取請求権に基づく留置権及び同時履行の抗弁権によって、本件建物の明渡しを拒むことができるか。

ア 確かに、造作買取請求権の行使によって売買契約類似の法律関係が成立するため、留置権及び同時履行の抗弁権によって、造作の引渡しを拒むことはできるとも思える。

イ しかし、造作は一般に建物に比して価値が低いから、建物の明渡しまで拒めるとすると、建物所有者(賃貸人)の不利益が大きいし、他方、造作は建物から取り外すことができるので、物理的に建物の明渡しが不可能であることもない。

ウ したがって、造作買取請求権に貼づく留置権及び同時股行の抗弁権によって、建物の明渡しを拒むことはできないと解すべきである。

3 よって、Xの請求は認められる。

 

百選Ⅱ-66 土地賃借権の移転と敷金の承継

1 XのYに対する、YA間賃貸借契約終了に基づく、敷金返還請求は認められるか。

2 本件においては、YA間賃貸借契約に基づく借地権が旧賃借人Aから新賃借人Xに、Yの承諾の上、譲渡されている。そこで、YA間賃貸借契約に基づきAがYに対して有していた敷金返還請求権が、新賃借人Xに承継されるかが問題となる。

 敷金契約は、賃貸借契約に従たるものではあっても、それとは別個の契約である。にもかかわらず敷金関係の承継を当然に認めるならば、敷金交付者たる旧賃借人に予期に反して不利益を被らせる。他方、賃貸人は、譲渡時の承諾の際に新たに賃借人との間で敷金を取り決めて自らの利益を確保できる。

 そこで、敷金交付者たる旧賃借人が、新賃貸人との間で、旧賃借人が交付した敷金をもって新賃借人の債務不履行の担保とすることを約し、又は賃借人に対して敷金返還請求権を譲渡するなどの特段の事情のない限り、賃借権が譲渡されても敷金関係は承継されないと考える。

 なお、仮に敷金交付者であり旧賃貸人であるAが、新賃借人の債務不履行の担保とすることを約し、又は賃借人に対して敷金返還請求権を譲渡するなどした場合であっても、それより以前に敷金返還請求権が国税の聴衆のため国税徴収法に基づいて既に差し押さえられている場合には、その同意や譲渡は、国に対抗することはできない。

3 よって、XのYに対する請求は認められない。

 

  • 敷金関係の承継(賃貸人の交替)

 賃貸借契約存続中に賃貸人の地位が移転した場合、敷金も当然に承継されるか。

 そもそも、敷金の趣旨は、賃貸借契約において賃借人が負担する一切の債務の履行を負担する点にある。そうだとすれば、敷金は賃貸人のための担保として賃貸人の地位と密接に結び付くものであり、随伴性を有する担保権と同様に理解し得る。また、敷金返還請求権に対する賃借人の期待を保護すべきである。

 したがって、敷金関係の承継を肯定すべきと考える。ただし、未払い賃料があれば当然に控除され、新賃貸人はその残額のみを承継すると考える。

 ※ 従たる契約である敷金契約が、主たる契約上の賃貸人の地位の移転に随伴して新賃貸人に移転する(87条2項類推)との見解もある。 

  • 敷金関係の承継(賃借人の交替)

 この点、敷金契約は、賃貸借契約に従たるものではあっても、それとは別個の契約である。にもかかわらず敷金関係の承継を当然に認めるならば、敷金交付者たる旧賃借人に予期に反して不利益を被らせる。他方、賃貸人は、譲渡時の承諾の際に新たに賃借人との間で敷金を取り決めて自らの利益を確保できる。

 そこで、敷金交付者が、賃貸人との間で敷金をもって新賃借人の債務不履行の担保とすることを約し、又は賃借人に対して敷金返還請求権を譲渡するなどの特段の事情のない限り、賃借権が譲渡されても敷金関係は承継されないと考える。 

  • 賃貸借契約終了後の不動産譲渡と敷金の承継

 敷金は、賃貸借契約に付随するが、なお独立した権利である。また、賃貸借契約が終了した以上、新所有者が賃貸人たる地位を承継することもなく、敷金関係を移転させる必要もない。したがって、敷金関係は、新所有者には当然には移転しない。

 

百選Ⅱ-67 サブリースと賃料減額請求

1 Yの、Xに対する賃料減額請求は認められるか。

2(1) Yとしては、借地借家法32条1項に基づいて賃料の減額を主張することが考えられる。もっとも、「前記の事実関係によれば、本件契約は、不動産賃貸等を目的とする会社であるYが、Xの建築した建物で転貸事業を行うために締結したものであり、あらかじめ、YとXとの間において賃貸期間当初賃料及び賃料の改定等についての協議を調え、Xが、その協議の結果を前提とした収支予測の下に、建築資金としてYから約50億円の敷金の預託を受けるとともに、金融機関から約180億円の融資を受けて、Xの所有する土地上に本件建物を建築することを内容とするものであり、いわゆるサブリース契約と称されるものの一つであると認められる。」そこで、このようなサブリース契約に、借地借家法が適用されるのかが問題となる。しかし、サブリースも使用収益の対価として賃料を支払うという内容が含まれている以上、賃貸借契約というべきであり、借地借家法の適用があると考える。

 「本件契約には本件賃料自動増額特約が存するが、借地借家法32条1項の規定は、強行法規であって、本件賃料自動増額特約によってもその適用を排除することができないものであるから…本件契約の当事者は、本件賃料自動増額特約が存するとしても、そのことにより直ちに上記規定に基づく賃料増減額請求権の行使が妨げられるものではない。」

(2) しかし、常に減額が認められるわけではない。実際に減額請求が認められるか否かを判断するにあたっては、賃貸借契約の当事者が賃料額決定の要素とした事情その他の事情を総合的に考慮すべきである。

ア 「本件契約は、Yの転貸事業の一部を構成するものであり、本件契約における賃料額及び本件賃料自動増額特約等に係る約定は、XがYの転貸事業のために多額の資本を投下する前提となったものであって、本件契約における重要な要素であったということができる。これらの事情は、本件契約の当事者が、前記の当初賃料額を決定する際の重要な要素となった事情であるから、衡平の見地に照らし、借地借家法32条1項の規定に基づく賃料減額請求の当否(同項所定の賃料増減額請求権行使の要件充足の有無)及び相当賃料額を判断する場合に、重要な事情として十分に考慮されるべきである。」「そこで、Yは、借地借家法32条1項の規定により、本件賃貸部分の賃料の減額を求めることができる」ものと解すべきである。

イ では、その具体的な額はいかに算定すべきか。「この減額請求の当否及び相当賃料額を判断するに当たっては、賃貸借契約の当事者が賃料額決定の要素とした事情その他諸般の事情を総合的に考慮すべきであり、本件契約において賃料額が決定されるに至った経緯や賃料自動増額特約が付されるに至った事情、とりわけ、当該約定賃料額と当時の近傍同種の建物の賃料相場との関係(賃料相場とのかい離の有無、程度等)、Yの転貸事業における収支予測にかかわる事情(賃料の転貸収入に占める割合の推移の見通しについての当事者の認識等)、Xの敷金及び銀行借入金の返済の予定にかかわる事情等をも十分に考慮すべきである。」

ウ そうすると・・・

(3) よって、YのXに対する上記請求は○○円の範囲で認められる。

 

百選Ⅱ-68 注文者の責めによる仕事の完成不能と請負人の報酬請求・利得償還義務

1 Xは、Yに対して、XY間で締結された請負契約に基づき、報酬請求権を行使することが考えられる。

2(1) もっとも、請負契約は、仕事完成を先履行とするものであるから、報酬請求のためには、請負契約の成立だけでなく、請負人による仕事完成を要する。

 それにもかかわらず、本件においては、Xの負うべき請負契約に基づく仕事完成債務は、「おそくとも…昭和47年1月19日の時点では、社会取引通念上、履行不能に帰していた」というのである。

 そして、しかも、この履行不能は、Xの仕事完成債務(工事の履行)をYが拒んだことに基づくのであるから本件においては、「債権者」(注文者)の「責めに帰すべき事由によって」請負人(債務者)が仕事完成「債務を履行することができなくなった」ものといえる。

 それゆえ、「債権者」(注文者Y)は、「反対給付の履行を拒むこと」ができない(536条2項)。すなわち、「請負人は、…民法536条2項によって、注文者に請負代金全額を請求することができ、ただ、自己の債務を免れたことによる利益を注文者に償還すべき義務を負うにすぎない」。

(2) これを本件についてみると、「本件冷暖房設備工事は、工事未完成の間に、注文者であるYの責に帰すべき事由によりXにおいてこれを完成させることが不能となったというべき」である。「しかも、Xが債務を免れたことによる利益の償還につきなんらの主張立証がないのである」

(3)  よって、Yは、Xの上記請求を拒むことができない。また、536条2項に基づくYのXに対する請求も認められない。

3 よって、Xの上記請求は認められる。

 

百選Ⅱ-69 請負契約における所有権の帰属

  • ロープラ20 判例と同様の事例

1 設問(1)について

(1) CがAに対して248条に基づく賞金請求をするためには、「第242条から前条までの規定の適用によって損失を受けた者」(248条)に当たることを要するところ、Cはこれにあたるか。242条から247条までの規定は加工等による所有権の喪失を前提とするものであるところ、Cがその施工した建前について所有権を取得し、これを利用して完成された甲建物の所有権がC以外の者に帰属するにいたったような場合には、Cは建前の所有権の喪失という「損失」をこうむることになり、上記要件を満たしうるため、問題となる。

(2) まず、建前の所有権の帰属については、加工の法理(246条参照)に従い、原則として建物の材料の主要部分の提供者が誰であるかにより判断すべきと解するところ、下請負人であるCが自ら材料を調達・提供して工事を行っていたような場合には、原則として建前の所有権はCに帰属するものと解される。 ※ 下記とは若干異なる見解で書いています。

(3) もっとも、AB間の請負契約では工事中に契約を解除したとしても、建前の所有権はAに帰属する旨の特約が付されていた。そのため、工事中にBとの請負契約をAが解除した場合であっても、かかる特約を根拠として帰属した建前の所有権を、Aは、cに対抗できるのではないか。

 そもそも契約の拘束力は当事者間にしか及ばないのが原則であり、下請負人には特約の効力は及ばない。しかし、下請契約の性質上、元請契約の存在及び内容を前提として元請負人の債務を履行することを目的とするものであって、下請負人は注文者との関係では元請負人のいわば履行補助者的立場に立ち、このような下請人は、依頼人と元請人間の契約とは別個の内容を主張することはできないというべきである。特に本件では一括下請けであり、それを知って受注しているのだから、注文者と元請人との契約内容に下請人は信義則上拘束される。また、実質的にも、依頼人の預かり知らない元請負人下請負人との間の下請負契約の内容によって依頼人の地位が弱まってしまうというのは妥当ではなく、他方、履行補助者的立場にたつにすぎない下請人にそのリスクを課すことはこのような依頼人の下ではやむを得ないというべきである。よって、元請負人と依頼者との間の特約の効力は下請負人にも及ぶというべきである。

 以上に鑑みると、本件では、上記の通り、建前の所有権がAに帰属する旨の特約が注文者Aと請負人Bとの間の請負契約に存する以上、建前の所有権はAに帰属していたといえる。

(4) そうすると、本件ではcに建前の所有権は帰属しないから、cが所有権喪失の「損失」をこうむることはなく、248条適用の前提を欠くことになるから、cの上記請求は認められないこととなる。

  • 司法試験令和元年 設問1

第1 設問1について

1 前段について

(1) 前提として、建物は、構成物が土地に定着したとしても、土地に附合することなく、独立の不動産として取り扱われるため(86条1項、370条参照)、敷地とは別に所有権の客体となる。それ故、本件においても、土地所有者であるAにその上にある甲建物の所有権が当然に帰属するということにはならない。

そこで、甲建物の所有権が、注文者であるAか、請負人であるBの、いずれに帰属するかが問題となる。

(2) そもそも、材料の所有権が積み上げられて完成した建物となることに鑑みれば、材料の全部又は主要部分を提供した者が、その完成した加工物の所有者となるのが物権法の原則である(246条1項)。そうであれば、請負人Bが必要な材料を全て自ら調達して、甲建物を完成させることが予定されていた本件においては、AB間においては、完成した建物の所有権は原始的に請負人に帰属することとされていたものと考えるべきである。そのうえで、合理的に推測される契約当事者の意思に従えば、請負人Bに、Bが提供した材料費と報酬債権を担保させるために、注文者Aが代金の全額若しくは大部分を支払うまでは建物の所有権を請負人に留保することを、請負契約においてABが合意していたと考えるのが自然である。

(3) そうすると、Aは、本件事故が発生するよりも前にBに代金の大半を支払っていたといえるのであるから、本件事故発生時における甲建物の所有者は、Aである。

 

百選Ⅱ-70 瑕疵修補に代わる損害賠償請求と報酬請求権との同時履行

1 Xは、Yに対して、XY間で締結された請負契約に基づき、請負残代金1184万円余及び遅延損害金の支払請求をすることが考えられる。

2 これに対して、Yは、Xに対して履行遅滞に基づく損害賠償請求権(415条1項本文、599条、561条)を有しているとして、「債務の履行に代わる損害賠償の償務の履行」との同時履行の抗弁権(533条かっこ書)を主張することが考えられる。

(1) そこで、まず、Yが履行遅滞に基づく損害賠償請権を有しているかについて検討する必要がある。

ア まず、Yは、本件請負契約に基づき、「仕事を完成ずる」債務(632条)として、契約不適合のない建物を建築する義務を負っていたところ、引き渡された建物には10か所の契約不適合が存在したから、Yが「債務の本旨に従った履行をしない」(415条1項木文)といえる。

イ また、かかる債務不履行に「よって」、修捕費用132万円余の「損害」(同項本文)が生じている。

ウ さらに、Yが住居建築の専門業者であると考えられることに鑑みれば、Yの損害賠償責任を免じることは相当とはいえないから、「その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものである」(同項ただし書)とは認められない。

エ したがって、Yは132万円余の履行遅滞に基づく損害賠償請求権を有していると認められる。

(2) もっとも、上記損害賠償請求権132万円余と請負残代金1184万円余の全額が同時履行関係に立つのか。

ア 634条2項は、注文者の瑕疵修補請求権・損害賠償請求権と請負人の請負代金請求権とを同時履行の関係に立たせている。

 このように、修補請求権の存在を理由に請負代金との同時履行関係が認められることとの均衡から、修補に代わる損害賠償請求権と請負代金請求権は全体として同時履行の関係にあるというべきである。すなわち、追完請求に代わる損害賠償債権はそれ自体可分であっても、その内容はまさに追完請求であるから、不可分なものとして、報酬債権の全額につき同時履行の関係に立ち支払いを拒絶できるのが原則である。もっとも、賠償額の程度や契約当事者の交渉態度等にかんがみ、全額の支払いを拒絶することが信義則に照らし妥当でない場合には、損害賠償請求の範囲の対等額に同時履行の主張は限定されると考える。

イ YはXに修捕を求めたが、Xは一部につき拒絶し修捕工事を昭和62年12月10日頃中止した。また、Yは残代金を1000万として粉争を解決する提案をしたが、Xは拒否したのみで、修補費用・代金減額についての対案を出すこともなかった。このように、Yは真染な態度で交渉に臨んでいる一方、Xは、不識実な態度で交渉に臨んでいる。また、契約不適合が10か所にも及ぶこと、修補費用は132万円余に過ぎないことに鑑みれば、契約不適合が重大である一方で、その修補に過分の費用を要するとはいえない。

ウ 以上に鑑みれば、Yが同時履行の抗弁を主張して支払を拒むことが信義則に反するような特段の事情は認められない。

(3) したがって、上記損害賠償請求権132万円余と請負残代金1181万円の全額が同時履行関係に立つ。

3 よって、Xの請負残代金の支払請求は、132万円余の支払と引き換えにのみ認められる。他方同時殿行の抗弁が認められることで、Yの代金支払債務の不履行の違法性は阻却されるため、遅延損害金の支払請求は認められない。