○○法ガールになりたい。

○○法ガールといえるほど法学をマスターしたいなと思い作成したブログ。司法試験受験生。最近勉強なんてやめて結婚に逃げたい。

ケースブック刑法 起案 第13講

第13講 不作為と共同正犯・幇助

設問1

第1 Xの罪責

1 Xが殺人の故意をもって、Aに授乳等をしなかったことについて、不作為による殺人罪(199条)が成立しないか。不作為の場合に、作為の場合と同様の実行行為性が認められるかが問題となる。

(1) 実行行為とは構成要件的結果発生の現実的危険性を有する行為である。とすると、不作為によってもかかる危険を発生させることは可能であるのだから、これを肯定するべきである。そこで、不作為であってもそれが作為と同視しうるときは、実行行為性が認められると解する。

(2) そして刑法上要求される作為義務に違反した場合には、これが肯定されると解する。この作為義務が存在するかは、法令や契約をはじめ保護の引き受け、排他的支配の有無、先行行為の存在等の事情から総合的に判断して決すべきである。とはいえ、法は不可能を強いるものではないため、作為可能性・容易性がない場合は作為義務の存在を否定されるべきである。

(3) 本問についてこれを見ると、XはAの母親であることからAを扶養する法令上の監護義務があり(民法820条)、Aの保護を期待される地位にある。

また、Aはアレルギーで母乳しか飲めなかったのであるから、Aの生命の危険は、専らAによる授乳等の有無にかかっていた。そのため、Xは、Aの生命の危険が切迫化する過程について排他的支配を有していたといえる。

また、XがAに授乳することは、同居しているZに妨害されていたわけでもないのだから、容易に行うことが可能だったはずである。

以上から総合的に判断すると、XにはAを保護する作為義務があったといえる。それにもかかわらず、甲がAに授乳等を一切しなくなったことは、作為義務を怠ったものであると評価できる。

(4) よって、遅くとも、Aの生命の危険が生じた、Xの授乳時から24時間を経過した時点で、Xの実行の着手が認められ、甲の不作為には殺人の実行行為性が認められる。

2 次に、Xの不作為とAの死の結果について、因果関係は認められるか。Aの直接の死因は、Xの不作為によってではなく、タクシーに衝突されたことで生じた脳挫傷によるものであることから問題となる。

(1) 因果関係は、行為の持つ危険性が結果へと現実化したといえる場合に認められる。そして本問のように行為と結果との間に介在事情がある場合には、①行為それ自体が持つ危険性が結果へと現実化されるのを、②介在事情の有する危険性が結果へと大きく寄与することによって妨げていないかを判断する必要がある。もっとも、介在事情の持つ危険が結果へと大きく寄与したといえる場合(②)であっても、③行為者の行為が結果を誘発したといえるような場合には、行為の持つ危険性が介在事情を経由して結果を現実化したといえるため、行為と結果との間に因果関係を認めるべきである。

(2) 本問では、仮にYが事故にあうことなくAを病院に連れて行き、適切な治療を受けさせたとしても、Aが助かる可能性はなかったのであるから、Xの不作為自体の持つ危険性はかなり大きかったといえる(①)。しかし、介在事情たる自動車事故も、Xの不作為と同程度、もしくはそれ以上に危険なものである。また、Aの直接の死因はこれによって生じているのであるから、介在事情の結果への寄与度はかなり大きかったと評価できる(②)。では、Xの行為(不作為)自体が持つ危険性が結果を誘発したといえるか。確かに、本問においてYは、Xにより瀕死の状態に追いやられたAを助けようとしたところを、Aとともに事故にあっているのであるから、Xの不作為がAの死に少なからず関係していることは否定できない。しかし、この自動車事故はタクシー運転手の過失に大きく起因するものであり、これはXの不作為とは別個の原因に基づくものであるから、Xの行為が持つ危険性が、「タクシーに衝突されたことで生じた脳挫傷」による死亡という結果を誘発したとまでは言えない(③)。

(3) 以上より、Xの不作為とAの死亡結果の間に因果関係は認めらない。

(4) とはいえ、Aの生命の危険が生じた時点においてもXは不作為を継続していることから、Xの殺害の決意は維持されており、殺意が認められるので、Xには殺人未遂罪(203条、199条)が成立する。

3 もっとも、Xは7月3日の夕方の時点で、翻意して授乳を再開していることから、中止犯(43条但書)が認められないか。Xが、「自己の意思により」「中止した」といえるかが問題となる。

(1) そもそも、中止犯が必要的に減免される根拠は、責任の減少にあるのであるから、「自己の意思により」とは、外部的な影響を受けずに行為者が自発的な動機に基づいて犯罪を中止することを言い、「中止した」とは行為者の真摯な努力をしたことを要し、実行行為が終了している場合には、すでに生じた危険を消滅させ、結果発生の防止のために積極的な措置をとることが必要であると解する。

(2) 本問では、XはAの衰弱した姿を見てかわいそうになって授乳を再開しており、外部的な影響を受けずに自発的に不作為を止めている。

とはいえ、Xが授乳を再開した時には病院で適切な治療を受けさせない限り救命が不可能な状態になっていたのであるから、授乳を再開しただけではAの死の危険を消滅させたことにならない。また、Xは警察に発覚することを恐れてAを病院に連れて行かなかったのであるから、Aを助けるために積極的な措置をとったとは言えず、真摯性に欠ける。

よって、Xに中止犯は成立しない。

4 以上より、Xには殺人未遂罪が成立する。

第2 Yの罪責について

1 YがX方に立ち入った行為について、住居侵入罪(130条前段)は成立するか。

(1) 「侵入」とは、住居権者の意思に反した立ち入り(若しくは住居の平穏を害する場合)を言う。そこで、本件のアパートの「住居権者」は誰かが問題となる。

本問では、問題となるアパートの名義はYのままとなっており、家賃もYが支払っているが、実際に住んでいたのはXなのであるから、実際の住居権者はXであるといえる。そして、Yはアパートを出ていく際、「二度とここには来るな」とXから告げられており、XとYは離婚こそしていないものの別居状態にあったこと、YはXには内緒で合鍵を所持していたことを考慮すると、本件のX方への立ち入りは、住居権者たるXの意思に反する立入であるといえ、よって、これは、「侵入」にあたる。

(2) 「正当な理由」があるか。X方のアパートは、Y名義で借りている。しかし、X方の家賃はYが支払っていること、現実にそこに住んでいるのはYらであったことに鑑みれば、名義があるというだけで立ち入りに「正当な理由」があるとはいえない。また、いまだXYが婚姻を解消しておらず、Yは法律上はXの夫であることも、それのみをもって「正当な理由」を基礎付けることはできない。

(3) そしてYもそれを認識していたはずであるから、Yには住居侵入罪の故意も認められる。

(4) よって、Yの行為は「侵入」にあたり、Yには住居侵入罪が成立する。

2 では、YがAをX方から連れ去った行為につき、未成年者略取罪(224条)は成立するか。

(1) YがAを連れ去った行為が「略取」といえるかが問題となる。略取とは、暴行又は脅迫により被略取者を生活環境から離脱させて、行為者又は第三者の実力的支配下に置くことをいう。そしてYがAを抱きかかえて連れ去った行為は、有形力を行使してAを生活環境である甲方から離脱させ、Yの実力的支配下に置くものといえるから、略取に当たる。

(2) そして本罪の保護法益は未成年者の自由・安全、および親権者等の監護権であるから、未成年の同意がある場合であっても、他方の親権者の監護権を害するような場合は、親権者も本罪の主体となりうる。

(3) もっとも、親権者の一人が他方の親権者の監護下にある子を略取した場合において、監護養育上それが現に必要とされるような特段の事情がある場合は、社会通念上許容され得る枠内にとどまる限り、違法性を阻却すべきである。

しかし、本問においてYは、衰弱したAを救出するために略取したわけではない。よって、Yの行為の違法性は阻却されないというべきである。

(4) よって、Yには未成年者略取罪が成立する。

3 以上より、Yには住居侵入罪と未成年者略取罪が成立し、両罪は牽連犯(54条1項)となる。

第2 Zの罪責

1 Zに殺人未遂罪(203条、199条)が成立しないか。Zは、6月1日頃からX方でAのおむつを交換したり、入浴させたりとAの世話をしていたが、次第にうとましくなり、6月20日頃からは、一切Aの世話をしていないというにすぎず、先行行為はない。また、危険の引き受けもないから、ZにはAに対する不作為の殺人未遂罪は成立しない。

2 Zに殺人未遂罪の共同正犯(60条、203条、199条)が成立しないか。

Zは、XがAを殺害しようとしているという意図を7月2日の昼頃に察しているが、XはZが気づいているとは思っていない。刑法60条の共同正犯の成立には、「共同して」行うこと、すなわち犯罪についての意思連絡が必要であるところ、この意思連絡がXZ間でなされていないから、殺人未遂罪の共同正犯は成立しない。

3 そこで、Zに殺人未遂幇助罪(203条、199条、62条1項)が成立しないか。

(1) まず、Zが7月2日昼前にZがAの衰弱に気づいて以降、Aを放置した行為について、不作為による殺人未遂幇助罪が成立しないか。

幇助とは、結果発生を容易にする行為を言う。そうであれば、不作為による幇助であっても、正犯者の結果発生を容易にすることは可能である以上、作為による幇助と同価値であると認められる限り、成立しうるものと解すべきである。

しかし、Zは、1と同様、作為義務をかすことはできない。よって、Zに殺人未遂幇助罪は成立しない。

(2) 次に、Zが7月3日夕方にXの母の来訪を阻止した行為に作為による殺人未遂幇助罪が成立しないか。「幇助」とは、結果発生を容易にする行為をいう。また、幇助行為と結果との間の因果関係は、幇助行為が結果発生を促進したかどうかで判断する。

Zは、7月3日夕方にXの母親に対し、噓をつき、X方に来訪させていない。Zがこのような行為をしなければ、Xの母親がAを直ちに病院に連れて行き、Aは救命されていたといえるところ、ZはXの母親の来訪を阻止することで、XによるA殺害を容易にしている。また、Xの母親をX方に来訪させない行為により、A殺害は促進されている。

(3) よって、Zには殺人未遂幇助罪(62条1項、199条)が成立する。

1 不作為の共同正犯

不作為の共犯(双方が不作為である場合)

 双方が不作為である場合には、2人の間で共謀があったとしても、少なくともどちらかに作為義務が必要となる。そして、どちらかに作為義務が認定された場合には、もう片方については、共謀を結んだことをもって、作為関与をしたととらえることにより、作為義務を不問のものとすることができる。したがって、双方不作為の共同正犯において、いずれかに作為義務が認められることで足りると考える。 ※ 作為義務を身分と考えない説に立った場合。作為義務を身分と考える場合には、別途65条が問題となる。

 

2 不作為の幇助

不作為の幇助

事例 Xは、内縁関係にあるAがXの次男Bに対し顔面、頭部を殴打するなどのせっかんを加え同人を死亡させた際、Aがせっかんを開始したことを認識しつつ、Aの行動には無関心を装っていた。

1 本事例では、まずXに殺人罪の共同正犯が成立することが考えられる。

  • ここで、Xは、殴られるだけでBが死ぬことはないだろうと思っていれば、殺人の故意が認められず、殺人罪の単独正犯ないし幇助犯となることはない⇒傷害致死罪を検討することになる

2 共同正犯の認定

→XとAの間に意思連絡はないから、共同正犯が成立することはない→3・4へ

意思の連絡は認め、正犯性の要件で切った場合、直接4へ

3 共同正犯は成立しないとしても、殺人罪の単独正犯は成立しないか (=単独正犯と幇助の区別が問題となる)。

そもそも、正犯と狭義の共犯の区別は、「自己の犯罪」として行ったか否かによって区別されるところ)Xは~

傷害致死の場合):たしかに、Xは「殴られて多少けがをするのは仕方ない」と考えているものの、Aの暴行に加担したわけではなく、これを黙認したにすぎないから、積極的関与がない。 したがって、自己の犯罪として行ったものとは認められず、幇助犯の成否を検討する

4 では、幇助犯は成立しないか。

(1) ここで、「幇助」とは、実行行為以外の行為によって正犯の実行行為を容易にすることをいう。そして、不作為により正犯の実行行為を容易にすることも可能であることから、不作為も「幇助」にあたりうると解する。ただし、自由保障の観点から、当該不作為が、作為による幇助に匹敵する程度の強度の違法性を有している場合にかぎり、「幇助」にあたると解する。具体的には、❶法的な作為義務の存在と❷作為の可能性・容易性が必要であると解する。また、③幇助と正犯の実行行為との間に因果性が要求される。とはいえ、正犯と異なり、作為による幇助実行行為を促進し、容易にすることで足りると解することの均衡から、犯行を確実に阻止できなくても、犯行を困難に出来た可能性があれば足りると解する。

(2) まず、①XはBの監護権者であり、Bを監護する法律上の義務がある。また、室内にはABの他はXしかおらず、Bの生命身体の保護はXに依存する部分が大きい。したがって、Xに法的な作為義務は肯定される。

②Aは、Xが妊娠していることもあって決して暴行は加えることはなく、Xが数メートル離れた台所の流し台にいたという場所的近接性も考え合わせれば、XがAを制止しうる可能性及びその要請も認められる。

最後に、③上記のように、XがAを制止すれば、AはBに対する暴行を思いとどまった可能性は否定できず、犯行を確実に阻止できなくても、少なくともそれを困難にできた可能性はあったものと考えられる。

(3) 以上から、XはBに対する○○の不作為犯となりうる。なお、XとAの間にBに対する暴行について意思の連絡は無いが、幇助犯は正犯の犯行を促進し、容易にすることで足りるので必ずしも、意思の連絡は必要ないものと解すべきである(片面的幇助)。