○○法ガールになりたい。

○○法ガールといえるほど法学をマスターしたいなと思い作成したブログ。司法試験受験生。最近勉強なんてやめて結婚に逃げたい。

百選起案 民法Ⅰ(第8版) 31~40

百選Ⅰ-31 代表理事の代表権の制限と民法110条

1 XのYに対する売買契約に基づく本件土地の所有権移転登記手続請求は認められるか。

 この請求が認められるためには、売買契約が有効に成立している必要があるところ、確かに、Xは、Yの代表理事Aと本件土地をその目的物とする売買契約を締結している。

 もっとも、本件において、Aは、固定資産の処分に際しては、「組合長はこの組合を代表し、理事会の決定に従って業務を処理する」とされていた。そうであれば、本件においては、それにもかかわらず、Aが、本件売買契約に際して理事会の決定を経ていなかった以上、Aは、本件売買契約の締結につき無権限であったといえる。それゆえ、本件売買契約の効果はYに効果帰属していないことになる。

 それゆえ、Xの上記請求は認められないことになりそうである。

2 もっとも、Xとしては、一般法人及び一般財団法人に関する法律第77条5項、民法110条の適用により、本件売買契約上の責任をYは負うことになるはずである、と主張することが考えられる。

(1) もっとも、Xは、「代表理事」であるAの、「業務に関する一切の…権限」につき「制限」が加えられていたことにつき、「善意」であったとは言えない。

 それゆえ、法77条5項による主張は不可能である。

(2) そこで、Xとしては、上記の通り自身はAに加えられた「制限」につき悪意であったものの、理事会の承認決議があったものと誤信し、よって、「当該具体的行為の代表行為の代表権限があると正当に信頼した」ものとして、民法110条によって保護される、と主張することが考えられる。

 もっとも、Xは、Y組合の定款上本件土地の売却には理事会の承認が必要であることを認識していたというのであり、そうであれば、Xが、本件土地の売却につき理事会の承認があり組合長Aが本件売買契約締結の権限があるものと信じたとしても、そう信じるにつき正当の理由があるとはいえない。

 それゆえ、この主張も奏功しない。

3 よって、Xの上記請求は認められない。

 

百選Ⅰ-32 代理権授与表示の範囲を超えてされた代理行為と表見代理

1 Xらは、Yに対して、本件山林の所有権移転登記手続請求をすることが考えられるところ、その根拠は、XY間で締結された交換契約(以下「本件交換契約」という)に求められる。したがって、Xらの請求が認められるためには、本件交換契約がXらとYとの間に効果帰属することを要する。

 本件交換契約は、互いに、XY間で、それぞれに代理人B、Cをして締結されている。

 まず、Xの代理人であるCについては、「その権限内において本人のためにすることを示して」代理行為をしているから、有権代理が成立し、「本人」たるXら「に対して直接にその効力を生ずる」(99条1項)ことになる。

 一方、確かに、Yの代理人とされたBは、Yからの白紙委任状を所特していたが、かかる委任状はAへの本件山林の所有権移転登記手続のため交付されたものであって、Yは、Bに本件交換契約を締結する「権限」(99条1項)は与えていなかったというのであるから、Bの行為は、無権代理行為(113条1項)であるといえ、本件交換契約が「本人」たるY「に対して直接にその効力を生ずる」(同項)ことはないのが原則である。

2 そして、本件では、本人たるYがBの無権代理行為を追認したとの事情はない。よって、本件山林交換契約の効果は、113条1項によっては、Yに帰属しない。

3 もっとも、表見代理(109条2項)が成立し、本件山林交換契約のYへの効果帰属が認められないか。

(1) まず、上記白紙委任状により、「第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した」(同項。以下「代理権投与表示」という。)と認められるか。

ア 代理権授与表示を要件とした同項の趣旨は、代理権を与えていないにもかかわらずそのように第三者に表示した本人においては、第三者保護のための十分な帰責性が認められ、本人保護の要請が低くなる点にある。すなわち、同項の趣旨は、本人と第三者の利益衡量のための規定であるといえる。

 そこで、本件のように、白紙委任状が、それを正当に取得した者ならだれが行使しても差し支えないという趣旨で交付されたものではない場合においては、白紙委任状を交付された本人若しくはこれと同視しうる者が相手方欄若しくは委任事項欄を濫用したにすぎない場合や、そうでなくとも、②転得者による委任事項の濫用が顕著とはいえない場合は、代理権授与表示を肯定することができるものというべきである。このような場合には、本人が覚悟していたのとほぼ同じ結果が生じるだけであり、本人保護の必要性は大きくないためである。他方、転得者による委任事項の濫用が顕著な場合には、本人保護の必要性が大きいため、代理権授与表示があったものと認めるべきではないということになる。

イ これを本件について見ると、上記のとおり、上記白紙委任状は、Aの本件山林の所有権移転登記手続のため交付されたものであって、転々流通を常態とするものでない書類として交付されているのであるから、本件白紙委任状は、それを正当に取得した者ならだれが行使しても差し支えないという趣旨で交付されたものではないと認められる。そこで、無権代理人Bが、「白紙委任状を交付された本人若しくはこれと同視しうる者が相手方欄若しくは委任事項欄を濫用したにすぎない場合」に該当するか否かを検討する必要がある。

 これを本件について見ると、Yは、本件山林の所有権移転登記手続のため本件書類をAの代理人Bに交付し、Bは、これをAに交付したが、Aは、ふたたびBを代理人とし、Bに本件書類を交付してBをしてXらとの間に本件山林とXら共有の山林の交換にあたらせ、Bは、Xらの代理人Cに対し、Yから何ら代理権を授与されていないにもかかわらず、本件書類を示してYの代理人のごとく装い、契約の相手方をYと誤信したCとの間に本件交換契約を締結するに至ったというのであって、本件書類はYからBに、BからAに、そしてさらに、AからBに順次交付されてはいるが、Bは、Yから本件書類を直接交付され、また、Aは、Bから本件書頬の交付を受けることを予定されていたもので、いずれもYから信頼を受けた特定他人であってたとえ本件書類がAからさらにBに交付されても、本件書類の収受は、Yにとって特定他人であるB間で前記のような経緯のもとになされたものにすぎないのであるから、Bを直接の被交付者と同視し得るような特別の事情がある。

 それゆえ、本件において、無権代理人Bは、「白紙委任状を交付された本人と同視しうる者」に該当する。

ウ したがって、代理権授与表示は認められる。(なお、ここでの表示は、山林の売買契約の表示であるといえる。本件山林の交換契約は表示された「その代理権の範囲」(109条1項)にとどまるものでないから、同項によるYへの本件山林交換契約の効果帰属は認められない。)

(2) また、上記のとおり、Bには本件交換契約を締結する「権限」は与えられていないのであるから、本件交換契約の締結は、「代理権の範囲外の行為」(2項)にあたる。

(3) では、「その行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由がある」(2項)といえるか。

ア 「正当な理由」の要件は、代理権に対する相手方の正当な信頼があったことを意味するから、代理権の存在についての善意・無過失と同義であると解する。そして、その判断に当たっては、取引の内容、取引の主体、取引の方法等の諸般の事情を総合的に考慮すべきである。

イ (以下、「正当な理由」の有無について論じる。)

※ 佐久間『民法の基礎1』には、109条2項(旧民法109条と110条の競合適用)について、「代理権授与表示に示されている委任事項と異なる事項について、相手方が代理権の存在を信じたことに正当理由が認められることは、ほとんどな」く、「そのような正当理由が認められる場合」は、「代理権授与」表示があったとみてよいため、「この場合には、端的に、109条(1項)の表見代理が成立するはずであ」り、109条2項を適用する必要はないとある。教科書にあげられたケース(百選㉜)は、授権表示が「売買」の範囲に限定されていたのに、実際には「交換」が実行された稀なケースです。このように、(実際は代理権を与えていないがその者に代理権があると)表示してしまったその内容と、無権代理人により実際になされた事項が一致しない場合には、無権代理人に実際になされた事項につき権限があると信ずる正当な理由がある場合に限り、相手方が保護されることになります(①授与表示アリ(109条1項)、②表示された内容以上のことをしてしまった(109条2項))。もっとも、このように表示された内容と実際に行われた内容が食い違っているのに、代理人に「実際に行われた行為」につき権限があるのだと信ずる正当な理由がある場合は、なかなかないのではないか? 正当な理由がある場合には、もはや、そもそも「実際に行われた行為につき授与表示があった」といえる場合がほとんどなのではないか? ということ。そうすると百選㉜の差戻審では「正当な理由はなかった」と判断されたのではないかと(私は)予想している。

 

百選Ⅰ-33 消滅した代理権の範囲を超えてされた代理行為と表見代理

1 XのYに対する連帯保証契約に基づく履行請求は認められるか。

2(1) 本件において、Yは、Aに上記契約を締結する「権限」(99条1項)を与えていなかったというのであるから、Aが、上記連帯保証契約を締結したことは、無権代理行為(113条1項)であるといえる。

それゆえ、本件連帯保証契約が「本人」たるY「に対して直接にその効力を生ずる」(同項)ことはないのが原則である。

(2) そして、本件では、本人たるYがBの無権代理行為を追認したとの事情はない。よって、本件連帯保証契約の効果は、113条1項によっては、Yに帰属しないことになりそうである。

3 もっとも、Xとしては、112条2項の適用により、本件連帯保証契約の責任を、Yに追及することはできるか。

(1) 本件では、かつて、AがYの代理人として保証契約に関与したことがあるというのであって、Yは、Aという「他人に代理権を与えた者」であるといえる。

 また、Aの「代理権」は、既に、上記保証契約の締結という行為を完了することによって「消滅」している。そして、その「後」に、Aは、Xとの間でYの代理人として上記連帯保証契約を締結している。

(2) もっとも、本件において、Aは、かつて有していた保証契約に関する「代理権の範囲」を超えて、連帯保証契約を締結している。

 それゆえ、本件は、Aが、「その代理権の範囲内」である保証契約の締結をしていた場合であれば」、Yが、112条1項の規定により「その責任を負うべき場合」で、かつ、Aが、「その代理権の範囲外の行為をしたとき」に該当する。

(3) そこで、本件連帯保証契約について、Aに代理権があると、その相手方であるXが「信ずべき正当な理由があ」ったといえる場合には、Xの上記請求は認められることになるところ・・・

4 よって・・・

 

百選Ⅰ-34

1 Xは、Yに対して、無権代理人の「履行…の責任」として(117条1項)、500万円の支払を請求することが考えられる。そこで、その要件を検討する。

 Yは、「他人」Bの「代理人」として、Xとの間で連帯保証「契約をした」(同項)と認められる。また、Yは、「自己の代理権を証明」することも、「本人の追認を得」る(同項)こともできていない。したがって、Yは、「相手方」Xの「選択に従い」、「履行…の責任を負う」(同項)のが原則である。

2 これに対して、Yとしては、以下のように反論することが考えられる。

(1) まず、Yとしては、表見代理が成立する場合には無権代理人の黄任は発生しないから、無権代理人は、表見代理が成立することを抗弁として主張することができると反論することが考えられる。

(2) しかし、無権代理人の責任をもって表見代理が成立しない場合における補充的な責任、すなわち表見代理によっては保護を受けることのできない相手方を救済するための制度であると解すべき根拠はなく、両者は、互いに独立した制度であると解するのが相当である。したがって、無権代理人の責任の要件と表見代理の要件がともに存在する場合においても、表見代理の主張をすると否とは相手方の自由であると解すべきであるから、相手方は、表見代理の主張をしないで、直ちに無権代理人に対し117条の貴任を問うことができるものと解するのが相当である。

 そして、表見代理は本来相手方保護のための制度であるから、無権代理人が表見代理の成立要件を主張立証して自己の責任を免れることは、制度本来の趣旨に反するというべきである。

(3) したがって、無権代理人は、表見代理が成立することを抗弁として主張することはできないものと解するのが相当である。

3 次に、Yとしては、Yが「代理権を有しないことを」相手方Xは、「過失によって知らなかった」として、Xの上記請求は認められないと主張することが考えられる(117条2項2号本文)。

(1) ここで、「過失」の意義について、無権代理人の責任は、本人側の責任を原因とする表見代理によっては保護を受けることのできない場合の相手方を救済し、もって取引の安全を確保しようとするもので、無権代理人の責任を原因とするものであるから、「過失」とは、相手方を保護することが却って信義則(1条2項)ないし公平の原理に反することになる場合、すなわち相手方に悪意に近いほどの重大な過失がある場合を指すとの見解がある。しかし、無権代理人の責任は表見代理が成立しない場合の補充的な責任でないことは上記のとおりである。

 また、民法は、「過失」と「重大な過失」とを明らかに区別して規定しており、「重大な過失」を要件とするときは特にその旨を明記しているから、単に「過失」と規定している場合には、その明文に反してこれを「重大な過失」と解釈することは、そのように解すべき特段の合理的な理由がある場合を除き、許されないというべきである。

 そして、112条による無権代理人の責任は、無権代理人が相手方に対し代理権がある旨を表示し又は自己を代理人であると信じさせるような行為をした事実を責任の根拠として、相手方の保護と取引の安全並びに代理制度の信用保持のために、法律が特別に認めた無過失責任であり、同条2項の規定は、同条1項が無権代理人に無過失責任という重い貴任を負わせたところから、相手方において代理権のないことを知っていたとき若しくはこれを知らなかったことにつき過失があるときは、同条の保護に値しないものとして、無権代理人の免責を認めたものと解すべきである。以上の趣旨に徴すると、「過失」は重大な過失に限定されるべきものではないと解するのが相当である。

(2) (以下、「過失」の有無について論じる。)

 

百選Ⅰ-35 本人の無権代理人相続

1 YのXに対する本件建物の所有権移転登記抹消手続請求及び、本件建物の明渡し請求は認められるか。

2 この請求が認められるためには、Y所有の建物につき(無権限で)Xの登記が存在していること、および、Y所有の建物をXが無権限に占有していることが必要である。

(1) 本問においてXは、本人Yの代理人を名乗るAと、本件建物の売買契約を締結しているが、実際にはAは無権代理人であったため、追認がない限り、その効果は本人Yには帰属しないのが原則である(113条1項)。そして、Yの本請求は追認の拒絶に他ならないから、Yには本件売買契約の効果は帰属せず、その結果、Yの請求は認められるのが原則である。

(2) もっとも、本問においてYは、相続により、無権代理人たるAの権利義務を包括的に承継している(896条)。そのため、相続により無権代理人たる地位も本人たるYに承継され、両地位が同一人に帰属し融合することによって、AX間の売買契約は当然に有効になるのではないかが問題となる。

 しかし、このように解すると、相続という偶然の事情により、本人の追認拒絶権(113条2項)・相手方の取消権(115条)が奪われることになり、双方にとって妥当ではない。

 そこで、相続により本人が無権代理人たる地位を承継した場合であっても、本人たる地位と無権代理人たる地位は本人の下で併存すると解する。

(3) そして本人たるYは、被相続人無権代理行為の追認を拒絶しても何ら信義に反するところはない(1条2項)。

(4) よって、Yは、Xの無権代理につき追認を拒絶することができる。

3 以上より、YのXに対する請求は認められる。

 とはいえ、Yは、Xの無権代理人たる地位も兼ね揃えているのであるから、無権代理人の責任(117条)を免れることはできない。しかしこの場合に本人Yに売買契約の履行として甲土地の所有権移転登記をさせることを認めてしまうと、上述のように考えた意味がなくなってしまうため、本人Yは、損害賠償責任を負うにとどまると解する。 

 

百選Ⅰ-36 無権代理人の本人相続

1 本件における、XのYに対する連帯保証責任の追及は、認められるか。

 YはAからBに対する貸金債権を譲り受けていることから、Yは、保証債務の随伴性により連帯保証人に対してもその責任を追及することができる。そして、YはCの死亡により、Cの連帯保証責任を相続(896条)していることから、XのYに対する請求は認められるはずである。

 しかし、これが認められるためには、そもそも本件連帯保証契約が有効に成立していることが必要であるところ、本件連帯保証契約は、Yが無権代理人としてCの名をかたってAと締結したものであるから、本人に対してその効力を生じないのが原則である。とすると、XのYに対する連帯保証責任の追及は認められないこととなる。

2 とはいえ、本件において無権代理人たるYは、相続により、Dとともに1/2ずつの持分割合で本人たるAの権利義務を包括的に承継している(896条)。そのため、無権代理人たるYのもとに、Aの本人たる地位が1/2の割合で承継され、両地位が同一人に帰属し融合することによって、当該AX間の契約は1/2の範囲で当然に有効になるのではないかとも思える。しかし、こう解すると、相続という偶然の事情により、本人の追認拒絶権(113条2項)・相手方の取消権(115条)が奪われることになり、双方にとって妥当ではない。そこで、相続により本人が無権代理人たる地位を承継した場合であっても、 双方の地位は本人の下で併存するものであると解されるから、売買契約の効力が1/2の割合で当然に有効となるものではないと解される。

3 しかし、無権代理人Yが、本人たる地位を以て、無権代理行為の追認を拒絶するのは信義に反する(民法1条2項)というべきであるから、無権代理人たるYは、相続分たる1/2の割合で追認を強制されるのではないか。

 ここで、追認権・追認拒絶権はもともと、その一部を分割して行使できるものではない(264条、251条参照)。それゆえ、その性質上、これらの権利は共同相続人全員に不可分に帰属しているというべきである。また、このように考えることが、追認権・追認拒絶権の分割行使による法律関係の複雑化を防止する観点からも妥当である。それゆえ、他の共同相続人全員が無権代理行為の追認をしている場合に無権代理人が追認を拒絶することは信義則上許されないとしても、 他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理人の無権代理行為は、追認権の不可分性から、無権代理人の相続分に相当する部分においても、信義則により追認を強制され当然に有効となるものではないと解するのが妥当である。

4 よって、共同相続人Dが追認をしない以上、Yの追認拒絶は1/2についても信義則上当然に強制されない。

 それゆえ、Dが追認をしない場合には、Yは、Xの請求のすべてを拒むことが可能である。もっとも、この場合であっても、Yは自身の無権代理人たる地位を理由に、無権代理人としての責任(117条)を負うため、Xは、Yに対して連帯保証人としての責任追及又は損害賠償の請求をすることができる。

 

百選Ⅰ-37 無権利者を委託者とする販売委託契約の所有者による追認の効果

1 Xは、Yに対して、Xが所有していたブナシメジを目的物とする、AY間売買契約(販売委託契約)に基づく代金支払い請求権を、Aによる他人物売買を追認することによって自らが取得したと主張して、行使することが考えられる。

2 では、これは認められるか。

 このように、「無権利者を委託者とする物の販売委託契約が締結された場合に、当該物の所有者が、自己と同契約の受託者との間に同契約に基づく債権債務を発生させる趣旨でこれを追認したとしても、その所有者が同契約に基づく販売代金の引渡請求権を取得すると解することはできない」と解すべきである

 なぜならば、この場合においても、販売委託契約は、無権利者と受託者との間に有効に成立しているのであり、当該物の所有者が同契約を事後的に追認したとしても」売買目的物、同契約に基づく契約当事者の地位が所有者に移転し、同契約に基づく債権債務が所有者に帰属するに至ると解する理由はないからである。仮に、上記の追認により、同契約に基づく債権債務が所有者に帰属するに 至ると解するならば、上記受託者が無権利者に対して有していた抗弁を主張することができなくなるなど、受託者に不測の不利益を与えることになり、相当ではない

3 よって、上記請求は認められない。

 

百選Ⅰ-38 他人の権利の処分と追認

1 XのYに対する、所有権に基づく甲不動産の抵当権設定登記抹消登記手続請求は認められるか。上記請求が認められるためには、Xが甲不動産の所有権を有しており、他方、Yが甲不動産に月抵当権設定登記がなされている必要があるところ、これについて争いはない。そうすると、上記請求は認められるのが原則である。

2 もっとも、Yとしては、本件においては、Aとの間で抵当権設定契約を締結している。それゆえ、これを挙げて登記保持権限を主張することになろうが、他方で、Xとしては、Aは甲不動産につき無権利であるから、Aのいう抵当権設定契約は無効であり、よって、登記保持権限の主張は認められないと主張することになろう。とはいえ、Yとしてはさらに、Xが、AY間の抵当権設定契約を追認したことを挙げ、さかのぼってその効力が生じていたとして、登記保持権限の主張は認められるものと主張することが考えられる。

 これについては、このように、「或る物件につき、なんら権利を有しない者が、これを自己の権利に属するものとして処分した場合において真実の権利者が後日これを追認したときは、無権代理行為の追認に関する民法116条の類推適用により、処分の時に遡って効力を生ずるものと解するのを相当とする。」

 それゆえ、結局、Yの反論が妥当することになろう。

3 よって、XのYに対する請求は認められない。

 

百選Ⅰ-39 未成年当時にした行為についての法定追認の成否

1 XのYに対する消費貸借契約に基づく貸金返還請求は認められるか。

2(1)  XY間では消費貸借契約があった以上、上記請求は認められるのが原則である。

(2) もっとも、上記消費貸借契約締結時、Yは、未成年であったと。そこで、Yとしては、120条1項により、上記契約を取消すことで、遡及的に無効にすること(121条の2)を主張しうる。

(3) そこで、Xとしては、既にYは、貸金返還債務の一部を履行することにより、法定追認(125条)をしていることから、本件消費貸借契約を取消し得ないと主張することが考えられる。

(4) 他方で、Yとしては、さらに、これに対して、自身は法定追認の際、上記消費貸借につき120条1項の取消し原因があったことを知らなかったと主張することになろう。

 ここで、124条1項は、「取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない」としている。そして、これは、未成年が、120条1項の取消し原因がある場合において、125条に基づき法定追認をする場面においても(125条にいう「追認をすることができる時」とは、「取消の原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った時」としか読めない)、適用される。そうすると、上記の通り、Yが、法定追認の際、120条1項の取消し原因があったことを知らなかったというのであれば、本件においては、法定追認の効力が生じていないということになる。

3 よって、XのYに対する上記請求は認められない。

 

百選Ⅰ-40 故意の条件成就

1 Xの、Yに対する、執行文付与に対する異議の訴えは認められるか。

2 Yは、Xに対して、Xが和解条項に違反する行為をしたという停止条件成就を以て、その違約金1000万円の支払い義務の発生を主張している。そして、Xが和解条項に反する行為を行ったのは事実である。そうすると、Yの主張は認められることになりそうである。

 そこで、Xとしては、異議事由として、130条2項に基づき、本件では和解条項の条件は成就していないから、違約金は発生していない、と主張することが考えられる。

(1) すなわち、130条2項は、「条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができる」としているところ、Xは、この適用があると主張することになろう。

(2) ここで、「不正に」とは、「条件を付した趣旨に反して故意に」という意味である。

 本件においては、かつてXがYの特許権を侵害したことから、今後、そのようなことがないよう、和解条項が設定され、それを担保する趣旨で、違約金の定めが置かれたのである。

 そして、Yは、本件において「単に本件和解条項違反行為の有無を調査ないし確認する範囲を超えて、Bを介して積極的にX…を本件和解条項…に違反する行為をするように誘引し」ている。これは、上記和解条項の趣旨に反して、「故意に条件を成就させたもの」といえる。

(4) それゆえ、本件においては、和解条項による条件は、「成就しなかったものとみな」される。

3 よって、XのYに対する異議の訴えは認容されるものというべきである。